《コラム》役員引当金取崩しでも当期の損金

◆役員賞与の損金算入要件
 法人の役員賞与は原則として損金不算入ですが、事前確定届出をしておけば、損金算入できるようになります。
 損金算入の要件としては、株主総会の決議で定めること、職務の執行の開始の日から1月を経過する日までに所轄税務署に届け出ていること、が要求されています。
 職務執行開始前に職務執行の対価としての役員賞与を事前に定めるのです。職務執行期間は、当該株主総会終了時から、次の株主総会終了時までです。

◆役員賞与引当金の計上の場合
 次期以降に支払いが生ずる役員賞与だが、その給付の原因たる職務執行が当期間に行われていた、という場合に会計処理として、(借)役員賞与/(貸)引当金 とすることがあります。支払い時は、(借)引当金/(貸)現金預金 という会計処理になります。
 この場合の支払時の役員賞与は、過去の職務執行期間における執行対価なので、事前確定届出賞与には該当しません。
 ところが、仙台国税不服審判所が令和5年2月3日、引当金処理をして支給した役員賞与を損金算入事前確定届出賞与として認める旨の裁決を行っています。

◆会社の処理と当局の否認
 会社の申告書別表処理としては、引当金計上期には「引当金損金不算入」として別表加算、賞与支払期には「前期否認引当金当期認容」として別表減算処理しているものと推測されます。
 会社側は、引当計上は、会計処理の継続性及び保守主義の観点からしているものであり、その額は、次期の事前届出賞与の額確定のための参考値にすぎない、との主張をしており、税務署側は、役員賞与について賞与引当金を計上し、支給時にこれを取り崩す会計処理をしていたのであるから、本件各役員賞与に係る職務執行期間は事前ではなく過去である、と主張しています。

◆審判所の判断
 裁決は、運用実態において引当金計上通りに支給がなされているわけではなく、引当金額は具体的な支給額の決定の参考情報にすぎず、議事録にいつの職務執行に対する役員賞与として決定したかを明確に示す記載はなく、各役員給与が過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もないのであるから、事前確定届出賞与の各要件を充足する、としています。

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