デジタル赤字という言葉を耳にする機会が増えました。デジタル関連のサービスは、GAFAMを代表とする米国の大手IT企業が高いシェアを獲得しているため、日本は赤字になりやすい傾向があります。
ただ、デジタル赤字は日本国内で、デジタル活用やDXが進んでいる証拠といえます。企業においては、デジタル活用の流れを止めずに、今後はデジタルについていかに多くの価値を提供できるかが問われています。
デジタル赤字を減らそうと、米国のGAFAMを真似て同じビジネスを展開しても、多くの利益は期待できません。日本企業がとるべき道は、既存の技術などを活用し、日本独自の価値を提供していくことが必要だといわれています。
こうした流れを受けて、日本独自の技術を活用して、競争力を高めようとしている企業も数は少ないものの現れ始めました。AI事業の垂直統合戦略を進めている日本のあるスタートアップは、大手エネルギー会社と共同で、分子解析ソフトウエアを開発しました。AIが膨大な原子構造データを学習し、未知の物質の組成をシミュレーションするものです。エネルギー会社の素材開発の知見と、自社のAI技術を組み合わせて生まれた事業です。
材料研究や最適な組成を設計するうえで役立つもので、自動車会社などで導入されています。ポイントは、「日本の強み」と「デジタル」の融合にあります。日本は、半導体製造装置や自動車などで高い競争力を維持しています。こうした、日本の得意分野にデジタルを組み合わせることで、競争力を高めることにつながります。ものづくりなど日本企業が持つ優れた知見とAIを組み合わせれば、日本全体の競争力が高まると予想されます。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)