競争力のある企業は、ダイバーシティ(D:多様性)だけでなく、エクイティ(E:公正)とインクルージョン(I:包摂)を重視する傾向にあるといわれています。それぞれの頭文字をとりDEI経営と呼ばれ、注目を集めています。背景には、DEI経営はイノベーション創出や人材獲得、定着に有効であることが挙げられます。
世界有数のソフトウェア開発会社では、10年ほど前から、多様性と包摂を優先事項としてさまざまな取り組みを展開してきました。取り組みを開始した当時、この会社は業績が上がらず苦しい時を過ごしていました。その中、ビジネスモデルや事業の構造改革だけでなく、カルチャーを変えることが必要と判断し、DEI経営に取り組みました。
具体的な施策は、障害のある社員が働きながらITスキルを高められるプログラムを発足。ほかには、宗教の異なるさまざまな人材への配慮として、食堂のメニューを豊富にしたことが一つ。さらには、同性のパートナーの結婚については、法的には結婚していなくとも、家族として認め、結婚祝い金や休暇を提供するといった取り組みを実施しました。
多様な人材をひきつける改革は事業にも好影響を与えます。当時停滞気味だったプロジェクトの中には、カルチャーが変わることで、多様な人材が連携して動き出し、次々と革新が起こったといいます。さまざまな改革が功を奏し、この会社は停滞期を乗り越え、再び成長軌道をたどり、存在感を取り戻しました。
多様性や包摂を表面的ではなく、真剣に取り組むことで、改革の停滞した雰囲気を打破できるといわれています。日本でも、化粧品会社やヘルスケア系メーカー、アパレル、地銀など、大手を中心に少しずつ取り組みが増えています。今後の広まりに期待したいところです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)