海外の銀行口座に保有する資産を「国外財産調書」で届け出なかったとして、京都市で家具輸入販売会社を営む社長が大阪国税局に告発されたことが分かりました。国外財産調書制度が導入された2014年以来、調書の不提出による摘発は全国で初となります。
告発された社長は、15年1月~17年12月の間に、タイ在住の知人の口座に売上を入金したり、知人名義で家具業者と業務契約を結んだりして、約2億1500万円の所得を申告していませんでした。さらに売上の一部を入金していた香港の自身名義の口座に約7300万円をプールしていたにもかかわらず、義務付けられている国外財産調書を提出しませんでした。大阪国税局は社長が故意に調書を提出しなかったとして、所得税法違反および国外送金等調書法違反罪で京都地検に告発しました。重加算税などを含む追徴税額は約1億1千万円に上る見通しで、すでに大半を納付したそうです。
国外財産調書は、富裕層の持つ海外資産の把握と適正な課税を目的として、合計5千万円超の資産を海外に有している人に提出が義務付けられています。国税庁がまとめた17年分の提出状況によると、調書の提出件数は9551件で前年より4.9%増加し、総財産額は3兆6662億円でした。
制度がスタートしたのは13年ですが、提出数は伸び悩んだことから15年1月に正当な理由のない未提出、虚偽記載に対する罰則規定を導入し、それ以降は微増傾向を続けています。17年のデータでは、国外財産調書を提出していなかったことで加重されたケースは194件あり、51億1095万円の加算税が上乗せされました。同制度では、逆に調書提出後に記載財産について申告漏れがあった時には加算税が軽減される措置もあり、これまでに加算税が軽減されたケースは168件、金額にして45億7467万円ありました。
国税当局は近年になり、富裕層が海外に持つ資産に対する監視を強めていて、今回の調書未提出による初摘発もその流れをくんだものと言えるでしょう。調書の提出件数は年々増えてはいるものの、未提出者はまだ相当数いるとみられています。
<情報提供:エヌピー通信社>