2019年10月の消費税率アップで損失が拡大するとして、日本医師会が負担分を税で還付する制度を設けるよう政府に求めています。ただ財務省は従来の増税時に講じた対策を踏襲する考えを崩していません。政治力の大きい医療界が年末の予算編成と税制改正までにどう攻め込むのか、永田町と霞が関の注目を集めています。
厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」は10月31日の会合で、消費増税への対応を議論しました。そこで「何らかの新たな仕組みが必要だ」と抜本的な対策を打ち出すよう訴えたのが、日本医師会です。保険医療の費用は非課税になっており、診察料は公定価格で消費税を上乗せできません。一方、医療機器などは課税の対象になっているので、病院の収支は悪化しやすい状況です。
このため政府は、消費増税のたびに全国一律で診察料を引き上げて病院の負担を軽減する措置を取ってきました。しかし医療機関ごとに収支はバラバラで、特に高額な医療機器を導入する必要がある大病院にとって増税の影響は深刻。厚労省の調査でも、診察料引き上げによる増税負担の軽減率は、消費税率が8%に上がった14年度が83%、16年度も85%にとどまります。1病院あたりの持ち出しは年間約300万円で、医療界全体だと200億円規模に上っているという試算もあります。
日本医師会は診察料の引き上げで補てんされた分と、消費増税で増えた負担分を病院ごとに集計し、差額について税で還付を受ける制度を要求しています。ただし財源が不明なうえに、診察料などを消費税の課税対象にしなければ還付は税制上難しいため、財務省がそのままのむ可能性は低そうです。
<情報提供:エヌピー通信社>