役員報酬の決定には、ある種の公平感が必要となりますが、その公平感には二種類あります。一つは、株価や業績を評価基準にして他の同業他社の経営者との比較を行う、いわば「横の公平性」であり、もう一つが、同じ会社の一般社員との比較による「縦の公平性」です。
これまで、日本では「縦の公平性」を重視してきましたが、経営報酬の透明化はもっぱら「横の公平性」を基軸としたものとならざるをえません。一方、経済成長の鈍化で、全体のパイは変わりませんから、「横の公平性」を重視すればするほど、「縦の公平性」は失われていきます。その結果、経営層と従業員との給与格差は拡大していくでしょう。
一般社員の給与と関係なく、経営者報酬だけが右肩上がりになるのは社会にとって決して望ましいことだとは思いません。高所得者には使い切れない資金が残る一方、低所得者の窮乏化は進み、社会の分断は加速し、トータルとしての消費にはマイナスに作用します。また、経営者報酬の株価連動化がより鮮明になれば、経営者は短期的な株価の上昇ばかりを気にかけ、長期的な会社の成長がおろそかになることも懸念されます。
そんな懸念をよそにグローバル化の名のもと、「縦の公平性」を犠牲にした「横の公平性」が一層幅をきかす時代になりそうです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)