【時事解説】損益計算書の下からの賃上げ その1

 個人消費がなかなか盛り上がりません。個人消費はGDP(国民総生産)の大よそ6割を占めますから、個人消費が活性化しなければ、GDPも増えません。そこで、政府は個人消費を増やすべく様々な対策を打っています。

 その中で注目を浴びるのが賃上げです。政府は賃上げが望ましい理由を次のように説明します。賃上げで個人所得が増えれば、個人消費が活性化し、企業の売上が増加し、その結果、利益が増える経済の好循環に入るのだから、賃上げは最終的に企業のためになる。また、財源面からも、企業の内部留保は空前に積み上がっており、内部留保から賃上げができるはずだ。さらに、法人税率を引き下げ、今後も賃上げをした企業の税率引き下げも検討しているから、財源はあるはずだ、と。

 まず、財源論から考えてみましょう。内部留保からの賃上げ論には首を傾げざるをえません。なぜなら、内部留保は損益計算書の結果である当期純利益の集積であり、内部留保から直接、賃金(給与)を支払うことはできないからです。賃金は損益計算書の費用項目で、内部留保は貸借対照表の純資産項目です。その両者は損益計算書の当期純利益を媒介としなければつながりません。つまり、賃金を払い、損益計算書の最終利益である当期純利益を赤字にすることにより初めて内部留保が減少します。いくら内部留保が豊富でも、このルートからの賃金支払いに経営者が躊躇するのは当然です。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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