【時事解説】国民感情と乖離するインフレ目標 その1

 近年、インフレがすっかり定着し、かつて話題になった「インフレ目標」という言葉が聞かれなくなりました。今、到来しているインフレも日銀が掲げたインフレ目標の結果ではないことは明らかです。インフレ目標は国民感情と乖離するものではなかったかという気がします。ここで、インフレ目標とは何だったのかを、振り返ってみたいと思います。

 日銀は2%のインフレ目標を設定しました。インフレになれば賃金が上がり、経済が好循環に入るというのが、日銀の論理です。しかし、インフレになれば必ず賃金が上昇するという保証はありません。賃金上昇率がインフレ率を上回るかどうかが、今の焦点です。リフレ派は今回の物価上昇はデマンドプル型ではなくコストプッシュ型だから、その転換のためにも高い賃金上昇が必要だと主張します。たとえリフレ派が主張する通り、賃金が上昇すれば経済の好循環が生まれるとしても、賃金上昇より物価上昇が先にあるのですから、賃金が上昇するまでの間、国民には物価の先行上昇に耐えてもらわなければなりません。

 日銀がインフレ目標を本気で達成しようとするなら、それこそ総力を挙げて、国民に「賃金が上がるまでの間、物価上昇に我慢してくれ」とお願いしなければならないはずです。しかるに、今回の一連の経緯を見れば、日銀にそこまでの覚悟はないように見えます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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