金融には産業の新陳代謝を促す機能も期待されています。金利負担に耐えられない低収益の企業には退出してもらい、新しい成長性の高い企業が参入し、人的、物的資源を低収益企業から高収益企業に移動することにより、経済は成長することができます。ただ、新陳代謝機能を十分に発揮させるためには、金融の量的制限とある程度の金利が必要です。しかし、現在のような大量の低金利融資が蔓延すると、低収益企業が温存されてしまい、成長企業への資源移転がうまくいきません。もし、ここで急に金利が上昇すれば、人的、物的資源の受け皿になるべく成長企業が十分に存在しないまま、低収益企業が退出しなければならなくなってしまいます。
このように、日本経済は低金利のぬるま湯の中で、厳しい選択を迫られることなく、何となく生存できている、といってもいい状況です。本来アベノミクスでは、金融緩和で時間稼ぎをしているうちに、成長戦略を実行するはずでした。しかし、肝心の成長戦略が起動しない中で、時間稼ぎであるはずの低金利の金融緩和だけが継続し、経済全体がそれに甘える体質となってしまいました。
金融緩和が続く限り、現状維持は可能でも、いつまでもこの状況を続けることはできません。今の金融緩和は病巣を膨らませながら、解決を先送りにしているに過ぎません。今は日銀が主体的に金融政策を判断できていますが、国債発行が累増し国内貯蓄を食い潰してしまうとか、あるいはその前に個人貯蓄が海外に流出するキャピタルフライトが本格化すれば、資金不足になり、マーケットに追い込まれる形で利上げせざるをえなくなる可能性もあります。そうなると、より厳しい選択を迫られるようになることも想定しておかなければなりません。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)