【時事解説】初任給大幅引き上げが意味するもの その1

 昨年あたりより、人手不足感が強まり、初任給を大幅に引き上げる企業が相次いでいます。特に、メガバンクでは5万円程度の引き上げを行いました。銀行の収益力の減退がささやかれる中で、従来の初任給のほぼ4分の1に相当する5万円のアップはかなり思い切った引き上げです。これは、単に優秀な人材を採用するために初任給を引き上げるということに止まらない、賃金制度の大きな変革につながるインパクトを持つように思います。

 銀行は年功序列型賃金体系を採用する代表的な業界です。年功序列型賃金では、賃金は原則として、業績への貢献度より当該会社の在籍年数を重視して増加していくため、企業業績に対する貢献度と賃金がアンバランスになるところに特徴があります。

 一般的には、若いときはハードワークが強いられる割には、業績への貢献に比べ、給与は低くなりがちですが、年齢を重ねるにつれ、貢献に比し給与が多くなるといった形になります。若いときの損を、年を重ねるにつれて取り返す、という形で、定年まで勤めることで最終的に帳尻が合うようになっています。いわば、終身雇用制に適合した給与体系だといえます。ですから、かつては、新卒の志望者に対して、銀行は次のようなセールストークを行っていました。

「最初のうちは、他の業界に比べれば、給料は低いと思われるかもしれないが、その差額は徐々に埋めて早晩逆転できる。そして、定年まで勤めた場合の退職金や退職後の企業年金も含めて一生涯で考えれば、あなたに与えられる待遇は決して悪くありません。」

 しかし、かつては魅力的であったこのセールストークも今の時代の若い人には、以下のような理由から、まったく響かないものになっています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

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