【時事解説】仮想通貨による資金調達と可能性 その2

最近、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)という、仮想通貨を用いた資金調達の手段に注目が集まっています。企業にとって、ICOのメリットはIPO(新規公開株、株式上場)と比べて、手軽に資金を調達できる点にあります。投資家のメリットは、トークン(株式のようなもの)の価格や、仮想通貨の価格が上がれば、売却益を得ることができます。
 とはいえ、リスクも多くあります。投資先のプロジェクトが失敗すれば、株式と同じように投資家は損失を被ります。しかも、株式と違い、議決権がないので、投資対象の企業が破綻しても、残余財産を受け取ることができません。

 もう一つの懸念は、仮想通貨の価格が安定しないことです。仮想通貨は多数の種類がありますが、もっとも有名なビットコインは、昨年12月に約240万円程度の価格をつけました。しかし、2018年1月、価格が大幅に下がり、100万円を割れたこともあります。企業は仮想通貨で資金を集めても、仮想通貨の価値が下がると、せっかく集めたお金の価値が下がってしまいます。
 また法が整っていないため、詐欺まがいの案件が生じていることもあげられます。
 このほか、大きな懸念は、中国や韓国など、ICOによる資金調達を禁止する国が出ていることです。その一方で、スイスなど、規制を緩めICOを容認する国もあります。また、米国やカナダなど、ICOについて育成の姿勢をみせる国もあります。日本は禁止の姿勢はみせておらず、法整備を進めている段階にあります。リスクは多いもののメリットも多いICO。今後に注目です。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

【時事解説】仮想通貨による資金調達と可能性 その1

 最近、ビットコインなどの仮想通貨に注目が集まっています。昨年末、仮想通貨の価格が暴騰し、億単位の利益を得た投資家が続出しました。そのため、投機的な商品として話題になっています。
 実のところ、仮想通貨は投資だけでなく、企業の資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)の手段としても活用が進んでいます。ICOとは、どのようにして資金を集める方法なのでしょうか。
 資金調達といえば、IPO(新規公開株、株式上場)が手段の一つとしてよく知られています。ICOの仕組みはIPOと共通点が多くあります。IPOの場合、企業は株式を発行し、投資家に株式を買ってもらい資金を集めます。ICOは株式の代わりに、トークンとよばれるデジタル権利書を発行します。企業は投資家に事業内容などを説明し、賛同する投資家はトークンの代金として仮想通貨を払い込みます。資金として、現金ではなく、仮想通貨を払い込んでもらうところに特徴があります。

 ICOは、米国では盛んに行われています。日本では端緒についたばかりですが、すでに109億円を調達した企業も出ています。なにより、ICOのメリットは、IPOと比べて審査が簡便なので、手軽に実施できる点にあります。IPOよりも早く資金を調達できることが魅力です。
 投資家のメリットはトークンが仮想通貨の取引所に上場されれば、新たな仮想通貨として取引できます。加えて、トークンは株式と同じように売買時の価格(株式でいえば株価のようなもの)がつきますが、価格が上昇すれば、株式と同じように、売却による差益を得ることができます。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

【時事解説】地方創生とまち・ひと・しごと創生総合戦略 その2

 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の遂行にあたっては、人口減少克服・地方創生を実現するための5つの政策原則として、①自立性、②将来性、③地域性、④直接性、⑤結果重視を掲げています。
 また、4つの基本目標を、「①地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」、「②地方への新しいひとの流れをつくる」、「③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、「④時代に合った地域をつくり、安全なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」としています。
 さらに、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、評価基準として「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)」が施策ごとに設定されています。さらに、施策の進行管理を適切に行い、その成果を高める仕組みとして、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返すPDCAサイクルが組み込まれています。

 例えば、2017年12月22日に改訂された国の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、基本目標「①地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」の主要施策として、「地域の中核企業、中核企業候補支援」、「観光業を強化する地域における連携体制の構築」、「農林水産業の成長産業化」を掲げています。このうち「農林水産業の成長産業化」においては、6次産業化市場10兆円、農林水産物・食品の輸出額1兆円というKPIを設定しています。
 このように「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、上記のような特徴ある戦略遂行を通じて、地方創生の着実な推進に向けた取組みが行われているのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

【時事解説】地方創生とまち・ひと・しごと創生総合戦略 その1

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改訂が、2017年12月22日に閣議決定されました。
 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は「まち・ひと・しごと創生法」に位置づけられています。同法によると地方創生とは、まち(国民が夢や希望をもち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形成)、ひと(地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保)、しごと(地域における魅力ある多様な就業機会の創出)の創生を指し、これら3つを一体的に推進することが求められています。
 地方創生に向けた政策の展開についてみると、日本創成会議・人口減少問題検討分科会が2014年5月に公表した「ストップ少子化・地方元気戦略」において、20~39歳の女性の数が2010年から2040年にかけて5割以下に減る自治体を「消滅可能性都市」と位置付け、全国の市区町村の半分にあたる896自治体を指定し、早急な人口対策の必要性が提示されました。
 こうした流れの中、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と「まち・ひと・しごと創生法」、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(国の総合戦略)」が2014年12月までに策定され、2015年度を初年度とする5か年の目標、施策に関する基本的方向等が定められました。
 また、「まち・ひと・しごと創生法」では、地方版総合戦略として、都道府県が都道府県版総合戦略、市町村が市町村版総合戦略の策定に努めることが謳われています。
 このように「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は国、都道府県、市町村のそれぞれが策定し、地方創生を推進していくことが求められているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

年金機構が源泉徴収票でミス

国税庁は日本年金機構が年金受給者に送付した「公的年金等の源泉徴収票」の記載内容の一部にミスがあったことを受け、源泉徴収票の記載に誤りがある人は再送付を待ってから確定申告書を作成するように呼び掛けました。

 日本年金機構はミスがあったことを1月19日に公表。源泉徴収票に記載された「控除対象配偶者」と「控除対象扶養親族」の氏名欄に一部誤りがありました。支払い金額や源泉徴収税額など、他の項目に誤りはないとのことです。そのため税額に影響する誤りではありません。

 国税庁は納税者に対し、1月に送られてきた徴収票を確認し、誤りがあれば新しく発送された徴収票を使うように求めています。

 機構は1月末までに該当者に正しい源泉徴収票を再送付しています。送付費用は国民が支払った保険料の一部にほかならず、機構のミスで無駄遣いされることになります。機構では年金の計算誤りや書類の送付ミスなど様々な問題が相次いで発覚しており、批判の声が高まっているところです。

 なお、すでに提出した申告書の源泉徴収票に誤りがあり、是正が必要な人は、税務署からその旨の連絡が来ることになっています。
<情報提供:エヌピー通信社>

脱税事件に異例の懲役7年半

輸出免税の還付制度を使って約17億円を脱税したとして、消費税法違反などの罪に問われていた宝飾店販売業を営む被告に、大阪地裁は懲役7年6カ月、罰金6千万円の実刑判決を言い渡しました。脱税だけで執行猶予なしの実刑判決が下されること自体がまれで、過去にない長期間の懲役刑を科された理由には、計画的かつ常習的とみなされた脱税の悪質性があるようです。

 起訴状などによると、被告は2010年~16年にわたって香港からの高級腕時計の架空仕入れを計上する手口で、不正に消費税11億円の支払いを免れたほか、輸出免税制度を利用して4社合わせて約6億8千万円の不正還付を受けたそうです。

 消費税は、「国内で消費される財貨やサービスに対して課せられる税」で、国外との取引には原則的に課税されません。しかし国内の事業者から商品を仕入れる際には消費税分が上乗せされているので、国外取引を行う事業者は、仕入れにかかった消費税額を申告することで、その分の還付を受けることができます。この制度を悪用し、架空の海外取引を計上して消費税の還付を受ける手口は横行しています。
<情報提供:エヌピー通信社>

国税庁:仮想通貨の計算方法などFAQを公表!

国税庁は、仮想通貨の計算方法や具体例などを説明するFAQを同庁ホームページで公表しております。
 それによりますと、すでにビットコインなどの仮想通貨の取引で得た利益の所得区分について「原則として、雑所得に区分する」との取扱いを明らかにしておりますが、さらに仮想通貨の売却や、仮想通貨での商品の購入、仮想通貨と仮想通貨の交換、仮想通貨の取得価額など9項目を掲載し、架空の事例をもとに所得の計算方法などをFAQにて示しております。

 例えば、3月9日に200万円(手数料を含む)で4ビットコインを購入し、5月20日に0.2ビットコイン(同)を11万円で売却したケースでは、保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額の差額が所得金額となります。
 計算式は、「11万円(売却価額)-(200万円÷4BTC)(1ビットコイン当たりの取得価額)×0.2BTC(支払ビットコイン)=1万円」で、1万円が所得金額となります。

 また、3月9日に200万円(手数料を含む)で4ビットコインを購入し、9月28日に15万5,000円の商品購入に0.3ビットコイン(同)を支払ったケースでは、保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額の差額が所得金額となります。
 計算式は、「15万5,000円(商品価額)-(200万円÷4BTC)×0.3BTC=5,000円」で、5,000円が所得金額となります。

 そのほか、仮想通貨の取引により、雑所得の金額に損失が生じたが、この損失は、給与所得等の他の所得と通算できるのかとの問いに対しては、雑所得の金額の計算上生じた所得については、雑所得以外の他の所得と通算できないと説明しております。
 所得税法上、他の所得と通算できる所得は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得とされていますが、あらためて、雑所得はこれらの所得に該当しないので、他の所得と損益通算できないことを示しております。
 該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年1月19日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》個人情報の利用目的の変更

◆すべての事業者が個人情報保護法の対象に
 平成27年9月3日に成立した改正個人情報保護法が、平成29年5月30日から全面的に施行され、すべての事業者が個人情報取扱事業者として同法の適用を受けることになりました。
 個人情報取扱事業者は、個人情報の利用目的を特定したうえで、個人情報を取得した際に、これを公表または本人に通知しなければならないとされています。
 しかし、本人に通知していた利用目的に漏れがあったり、事業の拡大により利用目的の追加が生じることも考えられます。その場合はどのように対応すればよいのでしょうか。

◆利用目的の変更が認められる範囲
 まず、一旦通知した個人情報の利用目的を一方的に事業者が変更できるとすれば、事前に利用目的を通知しなければならないとした趣旨を没却することになります。そこで、原則として、本人の同意がなければ利用目的を変更することはできません。本人の同意を得る手続は、事業者にとって非常に負担の大きいものとなります。
 もっとも、例外的に、「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲」については、変更後の利用目的を本人に対して通知するか、公表することにより、個人情報を利用することができるとされています。
 例えば、フィットネス事業者における「顧客の食事メニューの指導」と「当該食事メニューに関する食品販売」という利用目的は、関連性を有するものとして認められると考えられています。

◆目的外利用に対する制裁とは
 では、本人の同意を得ずに利用目的を変更した場合など、本人に通知していた目的の範囲外で個人情報を利用した場合はどうなるのでしょうか。 
 個人情報保護法では、法令に基づく場合(例:裁判官の令状による場合)など目的外利用が認められる例外事項が列挙されています。しかし、これらに該当しない場合には同法違反の行為となりますので、個人情報保護委員会という組織より、指導・助言、勧告・命令などを受ける可能性があります。また、これらの監督に従わなかった場合には、罰則が設けられています。

 

《コラム》健康保険の被扶養者が収入増で外れるとき

◆健康保険の被扶養者とは
 健康保険の扶養家族となる被扶養者とは被保険者の収入により生計を維持している人を言い、被扶養者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、弟妹、兄姉、および被保険者と同居している三親等以内の親族や事実婚の配偶者の父母、子も対象です。
 生計を維持しているとは被保険者の収入により生活していることで、その基準としては年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)である事です。

◆配偶者控除の改正でどうなる?
 所得税法の改正で平成30年分の所得から配偶者控除が引き上げられることになりました。これにより給与所得だけの配偶者の場合、従来は収入が「103万円」まで配偶者控除が適用されていましたが「150万円」まで拡大されます。
 健康保険の被扶養者でパートで働く配偶者は税制メリットを受けるので働く時間を増やして収入を増やそうと考える場合もあるでしょう。しかし健康保険上の被扶養者の収入要件の変更はないので、年収が130万円未満でないと被扶養者でなくなってしまいます。勤務する会社の健康保険・厚生年金保険に加入するか、自ら国民健保や国民年金に加入することになります。

◆健保の被扶養者を外れる時
 収入が増えて被扶養者でなくなる時期はいつの時点なのでしょうか。税法上の配偶者控除対象者は1月から12月の1年間の所得を見ますが、健康保険の被扶養者の認定は今後1年間の収入額の見込み額で判断します。したがってパートやアルバイトの給与収入だけであれば過去1年分の給与の合計が130万円以上となった時点で被扶養者から外れるのではなく、これから1年間で130万円以上が見込まれるようになった時点で被扶養者でなくなります。この場合の給与収入には通勤手当も含まれます。
 具体的には目安ではありますが1か月の収入が108,333円(130万円÷12か月)を常に超していれば、超えることがはっきりした時点で外す手続きをとることになります。
 雇用契約の変更による勤務日数や時間の増加で130万円を超えると見込まれたときは、その契約開始日が被扶養者でなくなる日となります。

犬銀ってどんな税金?

江戸時代の租税制度「犬銀」の内容を問うクイズを、税務大学校が国税庁のホームページに掲載しています。問題は三択で、選択肢は①飼い犬の頭数に応じて飼い主が納めるぜいたく税、②藩主の飼い犬の餌代として領民が納める租税、③犬を売買した頭数に応じて納める取引税の3つ。

 犬銀は信州松代藩が課税していた税金。藩は領民から徴収する租税で鷹狩の猟犬の餌代をまかなっていたそうです。つまりクイズの答えは②。当時の諸大名は自領内に狩場を設けたほか、参勤交代で江戸に滞在しているときは幕府に狩場を借りて鷹狩を楽しんだそうです。

 税務大学校は戌年にちなんで今回のクイズで犬銀を紹介していますが、2年前には「犬税」を取り上げています。クイズは京都府と群馬県で高い税率を掛けられていた特定の犬種を当てる問題で、答えは狆(ちん)。上流階級や花柳界で近世から盛んに飼育されていた日本原産の小型犬で、愛玩犬の代表格だったことから、ぜいたく税として狙い撃ちされたとのことです。
<情報提供:エヌピー通信社>