顔認証システムで何が変わるか

 最新型のiPhoneに搭載され話題となった顔認証システム。顔認証とは、目、鼻、口などの特徴をとらえて、持ち主かどうかを識別する機能を指します。スマホに自身の顔をかざすだけでログインができる手軽さが魅力です。
 古くから顔で本人かどうかを識別する技術はありましたが、最新のシステムはAI(人工知能)を用い、精度が著しく進歩した点が特徴です。普段素顔の人が厚化粧する、女装をはじめとする変装をするなど、人間の目では判断を誤るようなケースでも正確に識別できるようになっています。
 顔認証の魅力は、立体的に顔をとらえ照合するため、指紋認証などと比べると偽造されにくい点が一つとしてあります。加えて、従来のようにパスワードを忘れるといった心配もありません。
 顔認証はスマホのログイン機能として広く知られていますが、実は、幅広い分野での応用が可能な技術です。テーマパークの入場チェックのほか、会社のパソコンにログインする、万引きからテロまでの犯罪防止、さらにはマーケティングなどにも利用されています。
 最近では、東京2020オリンピック・パラリンピックに備え、空港でのゲートの自動化に取り入れられることになりました。羽田空港ではすでに日本人の帰国手続で実用化されています。従来は、あらかじめ顔のデータを登録する必要がありましたが、現在は事前登録は不要になっています。パスポートを機械にかざすだけでよいので手続の時間短縮といったメリットがあります。顔認証システムは、使い勝手が優れていることから、今後もより多くの分野で活用されることが予想されます。

 近年、スマホのログインなどでは顔認証システムが用いられるようになりました。顔認証はカメラに顔をかざすだけ、といった手軽さから技術の応用範囲が拡大しています。なかでも、従来はセキュリティに関する分野が主流でしたが、マーケティングへの応用も期待されています。
 一例を挙げると、白目と黒目の割合から視線の方向を割り出し、顧客の視線を追うことが可能になりました。結果、小売店では、顧客がどの商品を目にしたかがわかります。これにより、顧客にとってより興味のある商品を前面に配置するなど、ディスプレイの改善に繋がります。
 また、駅などの複数の広告を掲げている場所では、どの広告に目を向けたかを把握することが可能です。収集したデータは、より効果の高い広告づくりの手助けとなります。
 現在、世界の中で、顔認証システムに携わっている企業は多くあります。中でも、識別に関して高い技術を有するのはNECです。米国政府機関主催のベンチマークテストでは連続で第1位を獲得しました。多くの企業が、NECの技術を用いて、顔認証を用いたシステムの構築を進めています。
 今後、顔認証システムは、数多くのビジネスチャンスにつながる分野だといえます。ただ、技術は著しい進歩を遂げてはいますが、精度の面では課題が残ります。たとえば、一卵性双生児の場合、見分けがつかないこともあります。また、店舗などでの利用では、だれがどの店に入り、何に興味を示したかが記録に残るので、プライバシー面での課題が残ります。経済産業省は顔認証で情報を取得している店については、その旨を張り紙などで顧客に知らせるといった、配慮事項をまとめています。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

地方大学の振興と若者雇用に向けて 

2017年12月8日に「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の最終報告が公表されました。この報告書では、地方の特色ある創生のための地方大学の振興に関する方向性や、地方における若者雇用の創出に向けた提言が示されています。
 同報告書の内容に沿って地方大学の振興についてみていくと、地方大学は「総花主義」から脱却し、産学官が連携して地域産業の特性等を踏まえつつ各大学の強みのある学問領域・研究分野のさらなる強化に取り組み、特定分野においてはグローバルに競争力を持つ拠点を構築することが重要となります。
 また、地域の技術開発力やマーケティング力を高めるため、首都圏の大学や海外の大学等との連携により、ベンチャー企業の創出やイノベーションに向けた取組を支援する視点が重要となります。
 上記のような基本的認識の下、地方大学の振興に向けた具体的取組として、国の基本方針を踏まえつつ、首長のリーダーシップの下で産官学連携のコンソーシアムを構築し、地域の中核的な産業の振興(ものづくり産業、観光業、農林水産業等)やその専門人材育成などの振興計画を策定すること、そのうち地方創生の優れた事業として国が認定したものに対しては、新たな交付金により重点的に支援することが示されています。また、東京圏と地方の大学の学生が相互に対流・交流する取組の促進や、地方公共団体や企業と連携しながら、地域に貢献する大学を目指し改革を進める地方私立大学を支援するなど、学生の対流・交流の促進や地方私立大学の改革の推進に関する内容も提示されています。

 では、「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の最終報告では、地方における若者雇用の創出についてどのような点が指摘されているのでしょうか。
 同報告書では以下の4点を具体的取組として提示しています。
 1点目は、「魅力のある良質な雇用機会の創出・確保」です。地域に新たなビジネスや雇用を創出するための官民一体となった起業・創業の支援、新たな事業展開を支える経験豊富なプロフェッショナル人材の活用促進などがあげられます。
 2点目は、「東京に本社を持つ大企業等に求められる取組」です。地方拠点強化税制における対象要件の引下げ等の更なる拡充によるインセンティブ強化、大企業の選考・採用に関しての実態の把握や好事例の周知等を通じた積極的な地方での採用活動促進などがあげられます。
 3点目は、「企業を知る機会の提供、早い段階からの職業意識形成」です。地方公共団体による地元の優良企業を選定し学生に紹介する取組の推進、中高生等の早い段階から職業意識形成を図り地元企業等の魅力の浸透に取り組むことなどがあげられます。
 4点目は、「学生等の地方還流促進」です。東京圏の学生等のUIJターンにより地方企業への就職を促進するための奨学金返還支援の全国展開、地方創生インターンシップに関する地方公共団体と首都圏の大学との緊密な連携体制の構築を促進するためのプラットフォームの形成などがあげられます。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

紙申告に10万円のペナルティー

2018年度の税制改正大綱には、事業者の電子申告にかかる見直しが盛り込まれています。

 一つ目は、資本金1億円超の大企業に限り、2020年から法人税や消費税などの電子申告を義務付けるというもの。大企業は独自の経理システムを導入していることが多く、中小に比べても電子化が進んでいません。完全義務化によって、一気に税務申告の電子化を推し進めたい狙いがあります。

 二つ目は、自営業者や個人事業主が税務申告の際に電子申告を使えば、青色申告者に認められる「青色申告特別控除」の控除枠を紙申告の人と比べて10万円上乗せするというもの。大企業への義務化と同じ20年から導入します。

 ただし、税制改正では、青色申告特別控除の控除額を現行の65万円から55万円に一律10万円引き下げることとしています。前述のように電子申告をした人に限っては10万円を上乗せできるわけですが、実態としては電子申告の人は従来通りの65万円を控除でき、紙申告の人は現行より10万円控除枠が縮小するということになります。電子申告者へのボーナスというよりは、紙での申告を続ける人に対する10万円のペナルティーの意味合いが強い見直しと言えます。
<情報提供:エヌピー通信社>

大阪市の固定資産税規定に違法認定

大阪市が独自に定める固定資産税の計算ルールを巡り、大阪地裁は計算方法の一部を違法と認定し、取りすぎていた税額を返還するよう命じる判決を下しました。同じルールに沿って税額を計算された建物は市内に無数にあるとみられ、今後同様の返還請求が多く起こされることも予想されます。

 大阪市を訴えていたのは、市内に賃貸マンションを所有する納税者2人。それぞれ1999年からの16年分、94年からの21年分の固定資産税額が過大徴収に当たるとして、返還を求めていました。

 固定資産税の税額を計算する基礎となる評価額は、原則として国が規定した「固定資産評価基準」が用いられます。しかし同税が地方税であることから、実際の運用には自治体ごとのローカルルールが用いられることも珍しくなく、大阪市も1979年から、建物の基礎工事で使われるくいの長さや太さに応じた独自の補正率を採用していました。

 裁判長は、大阪市の独自の計算ルールについて「合理的な根拠がない」として、計算方法の一部を地方税法に反すると認定。原告の求めに応じて過徴収した税額の全額返還を命じた上で、一部については国家賠償法の時効である20年を超えるとして訴えを退けました。

 自治体が定めた固定資産税の規定を巡っては、札幌市でも、同じマンション内にある住宅部分と事務所部分で異なる算定方法を用いたローカルルールが適正かどうかを争う裁判が起こされています。一審では納税者の主張が認められましたが、控訴審では逆転し、市の計算方法は適法との判断が示されています。

 固定資産税は自治体が税額を算定して納付書を送付する「賦課課税方式」を採用していますが、近年になって過徴収が全国で発覚したことから、自身に課された税額を改めて確認する納税者が増えています。長年にわたって運用されてきた自治体の独自ルールに疑問を提起する動きは今後も増えそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>

タワーマンションの固定資産税の計算方法を規定

 2017年度税制改正において、タワーマンションの固定資産税の計算方法が見直され、総務省令により、計算方法が規定されました。
 原則として、この計算方法は2018年1月1日時点で新たに課税対象となるタワーマンションから適用されます。
 ただし、改正法施行日前の2017年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含む既存のマンションには新たなルールは適用されませんので、該当されます方は、ご注意ください。

 税制改正大綱では、「高さが60メートル超の建築物(「超高層建築物」)のうち、複数の階に住戸が所在しているものについては、その居住用超高層建築物(いわゆるタワーマンション)全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いるその各区分占有者の専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差異による床面積当たりの取引価格の変化の傾向を反映するための補正率(「階層別占有床面積補正率」)により補正する」としていました。

 その階層別占有床面積補正率は、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値とします。
 具体的には、中間の階の固定資産税額は現在のルールと同じにして、1階上がるごとに約0.26%ずつ税額が増えるようにし、中間階より1階下がるごとに約0.26%ずつ税額が下がるようにします。
 算式で示しますと、「各住戸の固定資産税=一棟全体の固定資産税額×<各住戸の専用床面積×階層別占有床面積補正率{100+(10/39)×(居住の用に供する専有部分が所在する階-1)}/占有床面性(補正後)の合計>」となります。

 また、専有部分において、天井の高さや附帯設備の程度、仕上げ部分(外壁や屋上防水等)が他の部屋より充実している場合などは、別途その差異に応じた補正を行うことになります。
 なお、高層マンションの区分所有者全員による申し出があった場合には、その申し出た割合により固定資産税額を按分することもできます。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

平成30年度税制改正 個人所得課税編

平成29年12月14日、平成30年度税制改正大綱が発表されました。先ず、個人所得課税から主な改正内容を概観してみます。なお、これらの改正は、平成32年分以後の所得税からの適用となっています。

●給与所得控除等
 次の見直しがなされています。
(1)控除額を一律10万円引き下げる。(2)給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、その上限額を195万円に引き下げる。
 また、特定支出控除の範囲も、次のような見直しがなされています。
(1)職務の遂行に直接必要な旅費等で通常必要と認められるものを加える。(2)単身赴任者の帰宅旅費1月4往復の制限を撤廃する等。

●公的年金等控除
 次の見直しが行われています。
(1)控除額を一律10万円引き下げる。(2)公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額については、195万5千円を上限とする。(3)公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円を超える場合には、上記(1)または(2)の見直し後の控除額からさらに一律10万円、2,000万円を超えると一律20万円、それぞれ引き下げる。

●基礎控除
 次の見直しがなされています。
(1)控除額を一律10万円引き上げる。(2)合計所得金額2,400万円を超える個人については、その合計所得金額に応じて逓減し、2,500万円を超えると適用できないこととする。

●所得金額調整控除
 この控除は、(1)給与等の収入金額が850万円を超える場合であっても、22歳以下の扶養親族や特別障害者控除の対象者が同一生計にいる場合には負担増とならないように、また(2)給与等と公的年金等の両方の収入がある場合、それぞれの所得計算の段階で控除額が10万円引き下げられると計20万円の引き下げとなり負担増となる、これらを調整するため新たに設けられた控除です。

●青色申告特別控除
 この控除は、55万円に引き下げられますが、次の追加要件を満たすことで現行の65万円控除が受けられます。
(1)電子帳簿の作成及び保存、又は
(2)所得税の確定申告書を電子申告していること。

平成30年度税制改正 消費課税・納税環境整備編

 消費税と納税環境整備に関する主な改正項目を概観してみます。

●消費税について
 消費税に関しては、個別企業の課税実務に大きな影響を及ぼす改正はありませんでした。改正は補完的なものです。
①消費税における長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等について延払基準により資産の譲渡等の対価の額を計算する選択制度は廃止されます。但し、経過措置が講じられています。
②簡易課税制度について、軽減税率が適用される食用の農林水産物を生産する事業者を第2種事業とし、そのみなし仕入率を80%(現行:70%)とする。
 適用は、平成31年10月1日を含む課税期間からです。
③輸入に係る消費税の脱税犯に係る罰金刑の上限について、脱税額の10倍が1,000万円を超える場合には、脱税額の10倍(現行:脱税額)に引き上げる。
適用は、法律の公布日から起算して10日を経過した日以後の違反行為からです。
④外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充です。具体的には、「一般物品」と「消耗品」の合計で下限額の要件(5,000円以上)等を満たす場合には、外国人旅行者向けの消費税の免税販売を認める。
 適用は、平成30年7月1日以後に行われる課税資産の譲渡等からです。

●納税環境整備について
 改正の中心は、申告手続の電子化促進のための環境整備です。
 大法人の法人税、地方法人税、消費税、法人住民税及び法人事業税の電子申告の義務化です。申告書は、確定申告書、中間申告書、修正申告書が対象で、消費税においては還付申告書も含みます。
 上記の大法人とは内国法人のうち事業年度開始日の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人及び特定目的会社をいいます。
 なお、消費税については、国及び地方公共団体も含みます。
 適用は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度からで、消費税に関しては、同日以後に開始する課税期間からです。
 なお、上記申告手続の電子化に伴って、法人税等の申告書における代表者及び経理責任者等の自署押印制度を廃止するなど幾つかの環境整備がなされています。

事業承継税制が抜本的見直し

2009年に創設されて以降、毎年のように小さなリニューアルが施されてきた「事業承継税制」に、ついに抜本的な見直しが図られます。中小企業の経営者の高齢化がとまらず、事業承継が進まないなかで、税制面から強く後押しをすることで、一挙に世代交代を図りたい狙いです。

 これまでの事業承継税制は、先代から後継者に自社株を相続・贈与で引き継ぐ際に、譲り渡した自社株と後継者がもともと持っていた自社株の合計のうち発行済議決権株式の3分の2までの部分を、相続税なら評価額の8割、贈与税なら全額を納税猶予するというものでした。

 18年度改正大綱では、まず、これまで最大でも発行済議決権株式の3分の2までしか猶予できなかったところを、100%に引き上げました。また相続税なら評価額の8割が上限であったところを、これも10割まで拡大します。仮に評価額6千万円の株式を持ち株ゼロの後継者に相続で渡したとすれば、3分の2×8割=3200万円までしか猶予されなかったところが、6千万円全額について猶予されることになるわけです。

 また経営が悪化して雇用を維持でなくなっても、認定支援機関など専門家の意見を記載した書類を提出することで、猶予を打ち切られずに済みます。その他、これまで後継者は1人のみを選ぶことを求めてきましたが、複数人への自社株引き継ぎにも利用できるようになります。

 大綱では10割の猶予を認める見直しを中小企業の世代交代のための「特例措置」として位置付け、その期限を10年間と切っています。具体的には、18年1月1日から27年12月31日までの間に引き継がれた自社株についての相続・贈与が対象となります。
<情報提供:エヌピー通信社>

小規模宅地の「家なき子」特例厳格化

 2018年度税制改正大綱で、不動産を使った代表的な相続税対策である「小規模宅地特例」について、適用要件が厳格化されることになりました。同特例は、一定規模以下の宅地にかかる相続税評価額を引き下げる制度。被相続人が住んでいた土地なら330平方メートルまでの部分の課税価格が8割、貸付事業に使っていた土地なら200平方メートルまでの部分の価格が5割、それ以外の事業のための土地なら400平方メートルまでの価格が8割引となります。

 制度の本来の趣旨は、住んでいた家を相続税負担によって出ていかざるを得なくなることにならないよう、宅地に大幅な評価減を認めることで残された家族の生活を守るものです。ただし親から宅地を相続する子が親と同居していなくても、持ち家がない時には、特例が適用されることになっています。

 そこで、子がもともと持っていた自分の家を親族らに贈与した上で借り受け、形式上の「家なき子」となって特例措置を使う税逃れが横行していました。特例適用による税収減の概算は16年度で1350億円と、3年で実に倍近くまで伸びているのが実情です。

 こうした経緯を踏まえ18年度大綱では、(1)相続開始前3年以内に、3親等以内の親族か関係のある法人が所有する家に住んでいたことのある人、(2)相続開始時に住んでいた家を、過去に所有していたことがある人――については、小規模宅地の特例を認めないとしました。見直しの内容は18年4月以降に相続や遺贈で取得した宅地に適用されます。大綱では、「本来の趣旨を逸脱した悪用を防止する」と強い口調で、見直しの理由を説明しています。
<情報提供:エヌピー通信社>

医療費控除は領収書の添付が不要に

はじめに
 平成29年度税制改正では、平成30年1月1日以後に平成29年分の所得税の確定申告で医療費控除(セルフメディケーション税制による特例は除きます。)の適用を受ける場合には、原則として医療費の領収書の提出が不要とされ、医療費の明細書を提出することとされます。
 また、社会保険診療分の医療費については、医療保険者から交付を受けた医療費通知(いわゆる健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」など)を添付すれば、医療費の明細の記載も省略することが可能とされます。
 そこで、本稿では、改正された医療費控除を適用する場合における留意点について解説します。

Ⅰ 添付書類等の見直し
 医療費控除の適用を受ける者は、「医療費控除の明細書」及び医療保険者等の「医療費通知」を確定申告書の提出の際に添付しなければならないこととされます(所法120④)。
 この場合において、税務署長は、その適用を受ける者に対し、確定申告期限等から5年間、その明細書等に係る医療費の領収書(「確定申告書の提出の際に、医療保険者から交付を受けた医療費通知を医療費の明細書として添付した場合におけるその医療費通知に係る医療費の領収書」及び「e-taxを使用して確定申告を行った際に、医療保険者から通知を受けた医療費通知情報でその医療保険者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを医療費の明細書として送信した場合におけるその医療費通知情報に係る医療費の領収書」に該当するものを除きます。)の提示又は提出を求めることができます(所法120⑤)。

Ⅱ 医療費の明細書の意義
 「医療費の明細書」とは、所得税の確定申告書に記載された医療費控除を受ける金額の計算の基礎となる控除適用医療費の額等の記載のある明細書とされます(所法120④一)。
 また、控除適用医療費の額等の記載のある明細書(医療保険者等の医療費通知が確定申告書に添付された場合におけるその書類に記載された控除適用医療費の額等に係るものを除きます。)には、次に掲げる事項を記載することとされます(所規47の2⑧)
①医療を受けた者の氏名
②病院・薬局などの支払先の名称又は氏名
③医療費の区分(診療・治療、介護保険サービス、医薬品の購入、その他の医療に区分されたものにチェックマークを記載)
④支払った医療費の額
⑤④のうち生命保険や社会保険などで補填される金額

Ⅲ 医療費通知の添付
 医療保険者等の医療費通知の交付を受けた者は、①各月に交付を受けた「医療保険者等の医療費通知」に記載された自己が負担した社会保険診療分の医療費の合計額と②「医療保険者等の医療費通知に係る医療費以外(いわゆる自由診療分など)」の医療費について医療費控除適用者自らが作成した控除適用医療費の額等の合計額を医療費控除の明細書に併せて記載することとされます。
 ただし、医療保険者等の医療費通知に記載された医療費の額は、実際に支払った金額と異なる場合がありますので、領収書等で確認し、修正する必要があります。

おわりに
 前述したⅠからⅢの改正は、平成30年1月1日以後に平成29年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用され、同日前に確定申告書を提出した場合又は同日以後に平成28年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については、なお従前の例によることとされます(平成29年改正法附則7①)。
 また、経過措置として、平成29年分から平成31年分までの各年分の所得税に係る確定申告に限り、従来どおり、医療費の領収書の添付又は提示による医療費控除の適用も可能とされています。この場合において、その添付又は提示をした領収書に係る医療費については、税務署長の求めの対象外とされます(平成29年改正法附則7②)。
 なお、この経過措置は、一部の医療費についてのみ選択適用することもできますので、社会保険診療分などの医療費については「医療保険者等の医療費通知書」を添付することにより簡素な手続を利用し、それ以外の自費診療分などの医療費については従来どおり医療費に係る領収書を添付することも可能とされます。