棚卸資産の評価方法 届出の棚卸評価をしなかった場合

◆棚卸資産の評価方法の選定・変更
 法人が商品・製品・原材料などの棚卸資産を有することとなる場合には、その事業の種類(又は事業所)ごと・棚卸資産の区分ごとにどのような方法で評価を行うか選択し、その「届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません(提出がない場合には、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」となります)。
 ●期末評価:原価法・低価法
 ●算定方法:個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法

 この棚卸資産の評価方法を変更しようとする場合には、その新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、「変更申請書」を所轄税務署長に提出し、承認を受けなければなりません(原則として選択した方法で3年以上継続適用後)。

◆届け出た評価方法で評価しなかった場合
 もし、「届出書」と異なる評価方法により評価を行った場合、どのような形になるでしょうか。この場合、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」(一定の場合、その法人が行った評価方法)により評価することとされています。
 例えば、「総平均法」の届出を行っている会社が変更手続きを経ないで「先入先出法」を行っている場合には、税務署の行う更正・決定の場面では、「最終仕入原価法」により評価する場合もあるということになります(一定の場合、届出の「総平均法」で是正も認められます。自主的な修正申告の場合には、この例が多いと思います)。
 一方、「総平均法」の届出を行っている会社が変更手続きを経ないで「最終仕入原価法」を適用して申告した場合には、適法とはいえませんが、結果的には認められることになります。ただし、青色申告の取消事由として「選定した評価方法による評価額で行われていない場合」が挙げられているため、高リスクといえます。

◆評価方法を設立第1期目に変更できる?
 設立当初に、ある評価方法で届け出ていたが、最初の申告時に別の評価方法を採用したいという場合では事情が異なります。
 設立後最初に提出する法人税申告書の提出期限内であり、その変更後の評価方法を最初の申告で採用しているときは、当初の「届出書」からの変更が認められています。

言葉を理解するAI家電の可能性

 最近、人間の言葉を理解する「AI家電」が注目を集めています。ヒトが話しかけた内容を理解するので、声だけで家電を操作することができます。パネルを見なくても利用できるので、「ノールック家電」、(no-look:操作パネルを見る必要のない家電)とも呼ばれています。

 AI家電の中でも、スマホの次のブームになると期待を集めているのがGoogle Home(グーグルホーム)やAmazon Echo(アマゾンエコー)といったAIスピーカーです。外観は小型のスピーカーのような形をしています。「テレビをつけて」と語りかけると、わざわざスイッチを押しに行かなくても、AIスピーカーがテレビをつけてくれます。自動掃除機がAI対応のもの(お掃除ロボット、ルンバなど)ならば、「掃除して」と話しかけると、AIスピーカーがお掃除ロボットに掃除をするように信号を送り、掃除がはじまります。また、AIスピーカーは話すこともでき、天気予報などを訊ねると、AIスピーカーが「今日は晴れのち曇りです」といった具合に答えます。

 着目したいのは、利用回数が増えると使い手の好みを学習する点です。音楽ならば、最初は様々なジャンルの音楽を再生しますが、ジャズが好みの人には次第にジャズを多く再生するようになります。また、じゃんけんなどの遊びもでき、「楽しい」といった感情を使い手と共有することもできます。何年も一緒にいると、やがて家族の一員のような、なくてはならない存在になるのかもしれません。

 現在、AIスピーカーに関する技術は米国が優勢で、グーグルやアマゾンが先行しています。日本ではLINEが独自でAIの開発を進め、健闘している状態です。

 スマホの次にブームになると期待されているAI家電。技術の開発競争において、世界全体では米国が優勢な状態にあります。米国内で、もっとも先行しているのがグーグルとアマゾンで、日本ではLINEが独自で開発を進め、健闘している状態です。LINEは自社のメインサービス「LINE」を強みに、利用者が機器に話しかけた言葉をメッセージとして相手に送る機能を目玉にしています。

 LINEのほかには、ソニーやパナソニックなどがAI家電の開発に取り組んでいます。ただ、ソニーとパナソニックは、言葉を理解する部分に関しては、グーグルの技術を用いて、そこに自社独自の技術を加え、新たな製品を提供しようとしています。パナソニックは洗濯から衣服の折り畳みまで自動化した洗濯機の製品を欧州の家電見本市に参考展示しました。また、ソニーは独自の顔認識技術を用いて、コミュニケーションロボットを開発しています。こちらは家族の顔を判別する機能に特徴があります。外出先で手持ちのスマホから「家族の様子を教えて」と打ちこむと、「5分前に○○くん(子どもの名前)を見かけました」などと、返事を送ってくれます。

 AIスピーカーはグーグルやアマゾンが先行していますが、自社独自の機能を提供することで、後発企業でもAI家電の分野で十分戦えるといえます。
今後は、家庭での利用だけでなく、企業からの需要にも期待できます。既に、一部の企業では活用がはじまっています。ある小売店は店内の案内にAIスピーカーを用いています。ほか、会社の受付けなど、様々な分野での活用が期待できそうです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

よろず支援拠点による小規模企業支援

 よろず支援拠点は、国による中小企業・小規模事業者に対する総合的な支援機関として2014年6月に各都道府県に設置されました。よろず支援拠点による主な支援内容は、①売上拡大等の課題解決策を提示する「経営革新支援」、②資金繰り改善や事業再生等の課題解決策を提示する「経営改善支援」、③どこに相談すべきかわからない事業者に対して的確な支援機関等を紹介する「ワンストップサービス」に大別されます。よろず支援拠点には、経営相談に対応する専門家であるコーディネーターが配置され、中小企業・小規模事業者からの経営相談に対するきめ細やかな対応を行っています。

 以下で「小規模企業白書2016年版」に沿って、よろず支援拠点の特徴についてみていきましょう。

 まず、相談者の規模についてみると、創業前の者が約1割、従業員数20人以下の事業者が約7割となっており、小規模企業の占める割合が高いことがわかります。

 次に、よろず支援拠点に配置されている専門家の経歴についてみると、経営コンサルタントが最も多く、他にも民間企業出身者、支援機関出身者など幅広い専門家を揃えていることがわかります。

 相談の解決手法としては、コーディネーターによる直接的なアドバイス以外にも、相談内容に応じて適切な支援機関や専門家を紹介する「ワンストップ支援」や、外部の支援機関等と支援チームを構成して課題解決にあたる「チーム支援」など外部の支援機関の専門家と連携した対応も行っています。

 このように、よろず支援拠点では他の支援機関とも連携しながらとくに小規模企業が抱える様々な経営相談にワンストップで対応することが期待されているのです。

 では、よろず支援拠点においては具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。ここでは「小規模企業白書2016年版」において、よろず支援拠点の事例として紹介されている木村屋菓子店(宮城県柴田郡村田町)への支援の取組みについてみていきましょう。

 同店は1904年(明治37年)創業の老舗の菓子店で、「まんじゅう」や「もち菓子」、「ようかん」など和菓子を中心に製造・販売しています。近年では町内の常連客だけでなく、観光客へと販売を拡大するため、町の歴史や風情を取り入れたオリジナル商品の開発にも力を入れています。

 ここ最近有名菓子店の近隣への出店という環境変化を受け、同店は商工会の経営指導員に対応策を相談しました。相談を受けた商工会の経営指導員は、同店が開発したオリジナル商品のブランド化を急ぐ必要があると感じ、商標登録を勧めました。しかし、商標登録申請には専門的な知識も必要であるため、宮城県よろず支援拠点のコーディネーターに協力を依頼し、宮城県発明協会とも連携して同店への支援を開始しました。具体的には看板商品の商標登録に向けた支援や、その後の事業展開に向けた支援を商工会とよろず支援拠点とが連携して行っています。

 上記のように相談者の支援に対し専門的に知識が必要な場合は、一つの支援機関だけでは対応できない場合もあります。こうした中、相談内容に応じて適切な支援機関や専門家を紹介するといったよろず支援拠点がもつ「ワンストップ支援」の機能を活用することによって、小規模企業が抱える様々な経営課題に対して効果的な解決策を提供することが可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

 

2016年度の再調査の請求・訴訟等の概要を公表

 国税庁・国税不服審判所は、2016年度の再調査の請求や審査請求、訴訟の概要を公表しました。
 それによりますと、2017年3月までの1年間(2016年度)の再調査の請求・審査請求・税務訴訟を通しての納税者救済・勝訴割合は9.4%となりました。

 納税者が国税当局の処分に不満がある場合は、税務署等に対する再調査の請求(改正前:異議申立て)や国税不服審判所に対する審査請求という行政上の救済制度と、訴訟を起こして裁判所に処分の是正を求める司法上の制度があります。
 再調査の請求の発生件数は、消費税(58.1%減の484件)をはじめ、ほとんどの税目が減少したことから、全体では前年度から47.5%減の1,674件となりました。
 処理件数は、「取下げ等」が275件、「却下」208件、「棄却」1,199件、「一部取消」100件、「全部取消」23件の合計1,805件(前年度比43.6%減)となりました。
 納税者の主張が一部でも認められたのは計123件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度を1.6ポイント下回る6.8%となりました。

 また、国税不服審判所への審査請求の発生件数は、法人税等(50.9%増の504件)など、ほとんどの税目が増加したことから、18.6%増の2,488件となりました。
 処理件数は、「取下げ」が269件、「却下」191件、「棄却」1,258件、「一部取消」192件、「全部取消」49件の合計1,959件(前年度比15.2%減)となりました。
 納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は同4.3ポイント増の12.3%となりました。

 一方、訴訟となった発生件数は、徴収関係(38.4%増の54件)が増えたものの、所得税(5.9%減の80件)や相続・贈与税(22.3%減の28件)などが減少したことから、前年度を0.5%下回る230件となりました。
 終結件数は、「取下げ等」が25件、「却下」20件、「棄却」189件、「国の一部敗訴」5件、「同全部敗訴」6件の合計245件(前年度比6.5%減)で、国側の敗訴(納税者勝訴)割合は同3.9ポイント減の4.5%となりました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年11月13日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

重複適用の可否 投資促進税制と圧縮記帳

平成29年度税制改正で中小企業投資促進税制の一部が見直しされました。その概要は次のとおりです。
 対象資産から器具備品が除かれ、また、上乗せ措置としてあった特定生産性向上設備等については、新たに創設された中小企業経営強化税制に移行されました。

◆中小企業投資促進税制の税額控除
 特定中小企業者等が特定の機械装置等(以下、設備)をした場合には、その資産の取得価額の7%に相当する金額について税額控除の適用があり、当該控除額が法人税額の20%を超えるときは、法人税額の20%相当を限度として、法人税額から控除することができます。
 なお、特定中小企業者等とは、中小企業者等のうち、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人(農業協同組合等を除く)以外の法人をいいます。

◆国庫補助金等に係る圧縮記帳
 事業者は、国又は地方公共団体等からの補助金等の交付を受けて固定資産を取得した場合、法人税法上、当該補助金等で取得した固定資産については圧縮記帳の特例が適用できます。この特例の概要は、次のとおりです。
 その取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額(圧縮限度額)の範囲内で損金経理により直接減額し、当該金額をその事業年度の損金の額に算入するものです(積立方式も可)。

◆重複適用の可否
 特定中小企業者等も自治体からの補助金を受けて投資促進税制の対象となる特定の設備を取得することがあります。この場合、「税額控除」と「圧縮記帳」どちらか一方しか適用できず重複適用ができないのでは、と思ってしまいます。
 しかし、法人税上の圧縮記帳と租税特別措置法上の税額控除との重複適用については、それを禁止する規定がありませんので、重複適用は可能です(特別償却も可)。
 その適用に当たっては、損金算入された国庫補助金等の交付金額(予定額も含む)を控除した金額を取得価額として税額控除限度を計算することになります。
 なお、国庫補助金等交付予定額を控除しない金額を取得価額として税額控除限度額を計算して申告したときは、固定資産の取得の後に国庫補助金等を受けても圧縮記帳はできません。

年金受給開始70歳超えも選択肢に

◆年金受給開始を70歳超まで選択可能に? 
 内閣府の「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」は、公的年金の受給開始年齢を70歳以降まで繰り下げることを可能にする仕組みつくりを盛り込んだ案をまとめました。これをもとに年内に長期的な高齢者施策の「高齢社会対策大綱」の改正案を閣議にはかる予定です。
 現在は年金の受給開始年齢は原則65歳です。現行法では60歳から70歳の間で開始年齢について「繰り上げ」もしくは「繰り下げ」ができます。開始年齢を早めれば65歳から開始するのに比べて最大30%減額、遅くすれば1年ごとに0.7%ずつ増え、最大42%増える仕組みになっています。今回の提案では希望すれば70歳を過ぎてからの受給開始が可能になり、その分年金額が増える制度を導入しようと考えています。

◆年内に「高齢社会対策大綱」策定
 骨子案として「すべての高齢者の意欲・能力を活かして活躍できるエイジレス社会を目指す」とし「年齢区分で人々のライフステージを画一的にくくることを見直すことが必要」としています。「意欲ある高齢者が働き続けられ、また就業ができる仕組みを構築できることが基本」であり、併せて「高齢者の低所得を防止」する視点も望まれるとしています。60歳の定年後に再雇用される仕組みだけではなく、新たな職域としてそれまでの経験や知識を生かした仕事や社会活動、地域社会のコミュニティ作り、資産活用等も盛り込まれています。

◆高齢者の定義が変わる?
 日本老年学会などは今年の1月に現行法で65歳と定められている「高齢者」の定義を「75歳」以上に引き上げ65歳から74歳は、准高齢者として区分すべきと提言しました。同学会は10年前に比べると現在の65歳以上の人の知的・身体能力は5歳から10歳若返っていると判断したということです。准高齢者年齢とされた人々は近い将来働くことが通常な年齢となるかもしれません。少子高齢化で人口が減る中、政府は多くの高齢者に働き続けてもらいたいとのことでしょう。そうすれば年金の財源の安定にもつながるということかもしれません。

個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱い

はじめに
 法人税では、固定資産等を購入した際に支出する登録免許税、不動産取得税及び自動車取得税等の租税公課は、損金算入の選択が企業経理に委ねられています(法基通7-3-3の2)。しかし、所得税では、個人の帳簿への記帳等が不十分であることから、これら租税公課の取扱いが業務用資産と非業務用資産で異なります。
 そこで、本稿は、個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱いについて解説します。

Ⅰ 業務用資産の場合
 個人事業者が支出した業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除きます。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等の租税公課は、その業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されます(所基通37-5)。
 なお、「業務の用に供される資産」には、贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」といいます。)により取得した資産を含むものとされます。

Ⅱ 非業務用資産の場合
 個人が支出した業務の用に供される資産以外の資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課は、その固定資産の取得費に算入されます(所基通38-9)。

Ⅲ 減価償却資産の場合
 個人が支出した減価償却資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)をその資産の取得価額に算入するか否かについては、次のとおりとされます(所基通49-3)。
 なお、減価償却資産には、贈与等により取得した減価償却資産を含むものとされます。
① 特許権、鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入されます。
② 船舶、航空機、自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができます。
③ 上記①及び②以外の資産に係るものは、取得価額に算入されません。

Ⅳ 贈与等の際に支出した費用
 「贈与等により取得した資産の取得費等(所法60①一)」に規定する贈与等により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、その贈与等に係る受贈者等がその資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときは、その費用のうちその資産に対応する金額については、前述したⅠ及びⅢの規定により各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、その資産の取得費に算入することができます(所基通60-2)。

おわりに
 個人が贈与、相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)によって取得した減価償却資産の取得価額については、その減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなして計算することとされますので、減価償却費の計算の基礎となる取得価額及び取得時期は、贈与者又は被相続人の取得価額及び取得時期を引き継ぐこととされます(所法60①一,所令126②)。
 この場合における減価償却の方法の選定に関しては、取得価額を計算する場合の「減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなす」旨の規定は働きませんので留意して下さい(所令120の2①一,所基通49-1)。例えば、250%定率法を適用していた減価償却資産を平成24年4月1日以後に贈与を受けた場合には、贈与者が250%定率法による減価償却の方法を適用していても、受贈者において償却の方法を選定していなかった場合には、定額法(個人の法定償却方法)によることとされます。

2017年度税制改正:中小企業向け租税特別措置の適用停止に注意

 2017年度税制改正において、多額の所得があり、財務状況が脆弱とは認められない企業が、中小法人課税の適用対象となっているとの批判をふまえ、一定所得金額を超える事業年度の租税特別措置の適用を停止する措置が盛り込まれました。
 具体的には、「法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を停止する」とされました。
 なお、この停止措置の適用前に適用期限を迎える租税特別措置についても、2018年度以降の税制改正で適用期限が延長された場合には、この租税特別措置の停止措置の適用対象に含まれます。

 また、この適用停止措置について、設立後3年を経過していない等の事由がある場合には、その計算した金額に一定の調整を加えた金額により判定するなどの判定方法が政令により明らかにされております。
 それによりますと、適用停止となるのは、各種租税特別措置適用前の3年以内に終了した各事業年度(基準年度)の所得金額の合計額をその各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じた金額が「15億円を超える法人」が該当します。

 具体的に、政令から調整事由とそれに対する調整金額をみてみますと、「3年以内に終了した各事業年度」がない、設立後3年を経過していない法人は、基準年度の所得金額の年平均額をゼロとすることができます。
 また、判定する際の所得金額が欠損金繰越控除後の金額とされていることのバランスから、欠損金の繰戻し還付の適用があった場合には、その還付の計算の基礎となった欠損金額相当額を還付対象の基準年度の所得金額から減らす必要があります。

 そして、判定する法人が合併等により設立された場合や、支配関係がある法人を被合併法人等とする合併、休眠法人を合併法人等とする合併が行われた場合には、原則、その合併等に係る被合併法人等の所得の金額を合併法人等の基準年度の所得金額に加算することを明らかにしており、法人の成り代わりによる租税特別措置の適用停止措置逃れを防止するため、基準年度がない場合に年平均額をゼロとする措置は適用されません。
 上記の改正は2019年4月1日以後に開始する事業年度から適用されますので、該当されます方は、ご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年11月13日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

女性の就業率過去最高

 政府は平成29年版「男女共同参画白書」を閣議決定しました。これは男女共同参画基本法に基づき作成している年次報告書で、今年は女性活躍推進法施行後の現状と課題を挙げています。
 同白書によると平成28年の15歳から64歳の女性の就業率は66.0%で過去最高となりました。これは男女雇用機会均等法が施行された昭和61年(1986年)の53.1%から13ポイント上昇したことになります。

◆地域別の就業率は?
 都道府県別で見ると、平成27年時点の女性の就業率は福井県74.8%が最も高く、次いで富山県72.2%、島根県71.8%となっています。北陸地方が高い理由としては2世代、3世代が一緒に住んでいる家庭が多いため子育ての負担が軽減でき、出産後も仕事に復帰しやすい環境が整っていること等が挙げられています。
 また、就業率が低いのは奈良県58.5%、兵庫県60.6%、大阪府61.4%となっています。福井県と奈良県の差は16.3ポイントもあることから、地域によってばらつきがあることがわかります。

◆海外では北欧が高い
 また、海外諸国とでは日本の女性就業率はOECD(経済協力開発機構)35カ国中16番目(OECD平均58.6%)です。
 最も高い国はアイスランド81.8%。以下スイス、スェーデン、ノルウエーが続き、北欧は女性が働きやすい環境が整っている様子が伺えます。

◆2020年までに女性管理職を30%に
 日本の女性管理職の割合は全国平均13.4%です。高知県21.8%、青森県20.3%で20%を超えますが、滋賀県、石川県ともに8%と10%未満も6県あります。
 女性活躍推進法が施行されて1年以上たちましたが、政府は2020年までに女性管理職の割合を30%にするという目標を掲げています。数字だけ見るとなかなか難しい状況に見えますが、政府は女性活躍の目標設定や情報の見える化をさらに進めていくとしています。各企業がどう取り組むのかが問われるでしょう。

やむを得ない役員給与の改定・変更 臨時改定事由・業績悪化改定

◆やむを得ない役員給与の改定・変更
 法人税法上、損金算入ができる「定期同額給与」「事前確定届出給与」は、職務執行前(定時株主総会)に「あらかじめ支給時期・支給額が定められているもの」に基づき支払われることを前提としています。
 ただ、給与を「先決め」した後に経営環境が変化することは、よくあること。そこで、次の「臨時改定事由」「業績悪化改定事由」による改定・変更が認められています。

◆「臨時改定事由」とは
 「臨時改定事由」とは、次の①や②に類する役員給与を変更せざるを得ないやむを得ない事情をいいます。
①役員の職制上の地位の変更
②役員の職務の重大な変更
 ①は役員の分掌変更があったケースです(例えば、社長が任期途中で退任したことにより副社長に就任した場合)。この「役員の職制上の地位」とは定款や総会決議等により付与されたものをいい、「自称専務」などは該当しません。
 ②は組織再編成があったケースなどが該当します(例えば、合併法人の取締役で、その職務内容に大幅な変更がある場合)。
 会社の不祥事に当たり役員給与を一定期間減額するケースも、社会通念上相当であれば、定期同額給与の減額改定・増額改定とも臨時改定事由に当たるとされています。

◆「業績悪化改定事由」とは
 「業績悪化改定事由」とは、その事業年度において会社の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する事由をいいます(減額改定のみ)。財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことのほか、次のような場合が該当します。
(業績悪化改定事由の例)
①株主との関係上、業績悪化等について経営上の責任を問われ減額した場合
②取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議で要請され減額した場合
③経営悪化の状況下で取引先等からの信用確保のため、経営改善計画が策定され、役員給与減額が盛り込まれた場合
 これらは、会社の経営上、役員給与を減額せざるを得ない「客観的な事情」(例 主要取引先の倒産やリコール発生により業績悪化が不可避)があるかどうかにより判定します。裁決では経常利益6%減の会社が行った減額改定が否認された例があります。