《コラム》産業雇用安定助成金の創設について

◆「従業員シェア」による雇用維持を
 コロナ禍においてこれまでと同じ人件費を抱えきれなくなった企業が、人手不足の企業に従業員を出向させる動きがあります。航空業界からコールセンター業界へ、あるいは飲食業界から小売業界への出向など話題になっていますが、この「従業員シェア」を支援するための助成金が新設されました。
 支援の対象となるのは、新型コロナウィルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主で、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合となります。
 主な要件としては、
・出向期間終了後は元の企業に戻って働くことを前提としていること
・出向元と出向先が親子関係にないなど、独立性のある関係であること
・出向先で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと
・出向者は雇用保険被保険者であること
などがあります。

◆受給額と申請手続き
 受給額は、賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費などの一部であり、以下の条件で計算されます。
・出向元が解雇などを行っていない場合:中小企業9/10、中小企業以外3/4
・出向元が解雇などを行っている場合:中小企業4/5、中小企業以外2/3
 12,000円/日を上限(出向元・出向先の合計)とし、出向初期経費も別途10万円/1人が助成されます。対象期間は、令和3年1月1日以降、申請先は都道府県労働局やハローワークです。
 出向の人材マッチングについては、(公財)産業雇用安定センターのほか、各自治体で取り組んでいる場合もあります。詳細は、「産業雇用安定助成金ガイドブック」で確認してみましょう。(→https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000735077.pdf)
 まずは雇用維持の優先度が高いと思われますが、これまでとまったく異なる業界への出向は、従業員への大きな負担となる可能性もあります。教育訓練などのサポートやストレス軽減の施策について、出向先と出向元の連携が期待されます。

《コラム》マイナンバーカードが健康保険証として利用可能に:令和3年3月~

◆マイナンバーカードが健康保険証に?
 令和3年3月から、医療機関・薬局においてマイナンバーカードの健康保険証利用が開始されます。
 既に、マイナンバーカードの健康保険証利用申込みが、令和2年8月から始まっていることをご存じでしょうか?

◆健康保険証として利用するためには
 マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、事前に利用の申込みが必要です。具体的には、マイナンバーカードを準備した上で、下記①~③のいずれかの手続が必要となります。
①スマートフォンでの申込み
 マイナンバーカード読み取り可能な機種で「マイナポータルAP」をインストールして「健康保険証利用申込」から申し込みます。
②パソコンでの申込み
 パソコンとマイナンバーカード読み込みカードリーダーを用意して、「マイナポータル」トップページの「健康保険証利用の申込」から申し込みます。
③マイナポータル端末での申込み
 自治体に設置されたマイナポータル端末から「マイナポータル」サイトにアクセスして申し込みます。

◆マイナンバーカードで何が変わる?
 医療機関・薬局の受付に設置された顔認証付きカードリーダーで、本人確認と保険資格の確認が行われます。
 高額医療費制度を利用する場合、「限度額適用認定証」の申請が不要となり、窓口での限度額を超える医療費の一時払いも不要となります。また、転職や結婚による新しい健康保険証の発行前でも受診可能になります。
 さらに、確定申告の医療費控除もe-Taxとの連携で簡便になります。

◆令和5年3月までには全ての医療機関で
 マイナンバーカードを健康保険証として使うには、医療機関・薬局での顔認証付きカードリーダーの設置が前提ですが、令和5年3月までには概ね全ての医療機関・薬局で利用できるようになる見通しです。
 健康保険証は将来的には廃止が検討されていますが、当面発行されます。

《コラム》新事業転換への応援施策~事業再構築補助金の勧め~

◆ポストコロナ時代の社会への対応支援
 新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す、以下の要件をすべて満たす企業・団体等の新たな挑戦を支援します。

◆要 件
①申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
③補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

◆補助金額(中小企業の場合)
〇 通常枠 補助額 100万円~6,000万円 補助率 2/3
〇 卒業枠※ 補助額 6,000万円超~1億円 補助率 2/3
※卒業枠については、400社限定。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。
※中小企業の範囲については、中小企業基本法と同様。

◆どんな取組が対象となるのか
 航空機部品製造がロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立ち上げ、あるいは伝統工芸品製造がECサイトでの販売に転換。喫茶店経営が飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施。衣料販売業が衣料品のネット販売やサブスクリプション形式のサービスに転換…などが考えられます。

※公募開始は3月となる見込みです。
※jGrants(電子申請システム)での申請受付を予定しています。GビズIDプライムの発行に2~3週間要する場合がありますので、補助金の申請をお考えの方は事前のID取得をお勧めします。

《コラム》新入社員研修のオンライン化

◆2021年入社の新人研修の実施方法は?
 2020年は多くの企業がコロナの影響を受けましたが、事業だけではなく人材育成についても影響が出ています。ある民間調査によると、新入社員を迎えた企業の8割方は、オンライン対応が間に合わず集合研修を実施したようです。一方で、オンラインやe-ラーニングで実施した企業も増加はしていて、部分的にでもオンラインで実施した企業も少なくありません。
 そして2021年4月入社者の研修については、集合型が根強く残るものの、オンラインとリアルを組み合わせて実施する企業も多いようです。
 オンラインのメリットは、コロナ対応だけではありません。会場設営の手間やコストが減少し、複数拠点に対して研修の同時開催が可能なことなどもあげられます。また、今年度、多くの大学ではオンラインで講義が行われています。コロナ後についても、部分的にはオンラインが残ると言われており、今後はこの環境で育ってきたリモートネイティブが社会に出てくることになります。彼らにとっては、集合型の研修のほうが違和感のあるものになっていく可能性があり、企業側の対応力が問われます。

◆研修オンライン化のためのポイント
 研修のオンライン化を進めるにあたっては、オンラインに適している部分と適さない部分を明確にし、オンライン化する箇所については、ZOOMなどの機能を使うか、e-ラーニングや動画配信などを使うか、ツールの選択を行いましょう。
 たとえば、意識の醸成や人間関係の構築には集合型が向くと考えられます。座学の講義についてはオンラインがよさそうですが、チャット機能や投票機能を使うことで、より双方向なコミュニケーションが可能となります。
 また、オンラインの場合は、集合型の場合よりも、伝える内容をより明確にする必要があるとも言われています。これまでは身振り手振りも含めた空気感で伝えられたことも、言語化が求められます。集合型研修をオンラインに移すというだけではなく、そもそもの研修の目的、意義を再確認しながら、オンラインに適した研修の再構築をすることが、よりよい育成につながるでしょう。

《コラム》消費税納税義務と相続承継

◆相続による事業の承継と可否判定
 相続による事業の承継には、非事業者であった相続人が相続により事業者になる場合のほか、相続人も被相続人も事業者の場合があります。
 相続承継後翌年以後の課税・免税事業者の判定は、承継前の相続人と被相続人の事業の各基準期間の課税売上を全部合計して、合計額が1千万円を超えるかどうかで判定することになります。
 被相続人の事業を2以上の相続人が分割承継又は共同相続した場合には、相続開始年の翌年以後の課税・免税事業者の判定に取り込むのは、各相続人の承継割合に応じた課税売上となります。

◆相続開始年だけは特殊な扱い
 ただし、相続開始年に限っては、扱いが少し異なります。①課税事業同士の相続承継、②相続人の課税事業への被相続人の免税事業の相続承継、③相続人の免税事業への被相続人の課税事業の相続承継、④免税事業同士の相続承継、これら4ケースがあります。
 相続人の課税・免税事業者判定は、①②のケースは年間を通じた課税事業者、③は相続日の翌日からその年の年末までの期間の課税事業者、④は免税事業者です。

◆相続開始年に遺産分割確定した場合でも
 年末までに遺産分割が済んでいる場合でも、未分割の場合と同じく、基準期間における被相続人の課税売上高を各相続人の法定相続分で按分した金額により相続人の納税義務を判定してよい、との「文書回答事例」が公開されています。

◆特定遺贈又は死因贈与の場合
 なお、相続の際、被相続人の消費税納税義務を考慮するのは、「相続(含包括遺贈)」による承継の場合のみです。
 たとえ相続承継であったとしても、特定遺贈・死因贈与による承継の場合には、上記の納税義務可否判定規定の適用はありません。これは、通達で示されている考え方で、この場合には、特定財産受遺者又は死因贈与契約受贈者の、自分の事業のみの基準期間課税売上高のみによって判定します。
 消費税法には、「相続」には包括遺贈を含むと規定されていて、そのことにより、特定遺贈・死因贈与は、包括的承継としての相続承継から除外されていると反対解釈されるため、通達でそれを示しているわけです。

【時事解説】成功体験を否定できるか その2

同様なことは新聞の宅配にもいえます。かつて情報へのアクセスが容易ではなかった時代には、宅配網を全国に持っていることが新聞の強みでした。しかし、電子データにより、記事をパソコンやスマホに送ることができるようになれば、紙に印刷し、人力で配る宅配はコストがかさみ、新聞経営の重荷になります。

 強みは永遠に強みではあり続けるわけではありません。環境の変化はかつての強みを一気に弱みにしてしまいます。それはいつの時代にもあることですが、ネットの普及はその変化を加速させているように思います。
 銀行の店舗も新聞の宅配も、かつては強みであっただけに、そこにはかなりの経営資源を割いています。こうした経営資源が環境の変化により弱みに転化した時、スリム化することは容易ではありません。

 強みが弱みに転化することは銀行や新聞業界だけではなく、どこの業界でも起こり得ることです。かつての強みが強みであるうち、新しい強みを開拓しなければなりませんが、銀行や新聞に次代を担う新しい強みが見いだせないところが問題です。
 経営者は、強みがいつまでも同様に輝き続けないということを再認識し、状況の変化に柔軟に対応できるようにしなければなりません。人間だれしも昔の成功体験を否定することは容易ではありませんが、それこそが変化の激しい時代に経営者に求められる資質だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】成功体験を否定できるか その1

 銀行の強みは顧客との密着度の高さだと言われてきました。それを支えたのは、至る所に張り巡らされた店舗網と、そこに配置された人員です。近くに店舗があることで、地域の人が気軽に来店でき、担当者が顧客の店や自宅を頻繁に訪問することで、顧客との密着度を高めます。銀行によって商品力は違い、金利の高い銀行や低い銀行がありますが、たとえ多少商品力が劣っていても、顧客との親密度の高さで商品の劣後性をカバーし、取引の維持・拡大を図るというのがこれまでの銀行の基本戦略だったと思います。

 しかし、今になってみると、商品の劣後性を顧客との親密度でカバーできたのは、情報の遮断性が大きな要因として作用していたことが分かります。ネットの普及前は、他銀行の金利等の商品情報を広く収集することは、普通の人にはかなり困難なことでしたし、また、たとえ情報を収集できたとしても、対面営業が原則でしたから、取引することはもっと大変でした。

 しかし、ネットの普及は軽々とその壁を乗り越えます。商品情報の収集・比較は極めて容易ですし、パソコンやスマホでの電子取引も簡単にできるようになりました。しかも、銀行が取扱うカネという商品には困った特色があります。他の形のある商品なら、デザイン性とか機能性に特色をつけることで、値段の差を跳ね返すことが可能ですが、カネは金利以外の差異を見つけにくいのです。金利だけを比較すればいいので、ネットが普及すると、簡単に優劣がついてしまいます。こうなると、かつては強みであった稠密な店舗網は一気に重荷に転化してしまいます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》コロナで売上の減少した中小事業者に対する一時支援金の支給

◆緊急事態宣言の延長を受けて
 政府はコロナウイルスの影響を受けた事業者支援として、売上高が半減した中小事業者に支給する「一時給付金」の給付額を増額することを決めました。これまで法人は40万円、個人事業主は20万円としていましたが、それぞれ60万円、30万円に引き上げられます。昨年の持続化給付金同様に受付から支給まで時間のかからない範囲で支給していく予定です。

◆対 象
 緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛により影響を受け、売上が減少した中堅・中小事業者が対象となります。

◆要 件
 緊急事態宣言の再発令に伴い、
①緊急事態宣言発令地域の飲食店と直接・間接の取引があること(農業者・漁業者、飲食料品・割り箸・おしぼりなど飲食業に提供される財・サービスの供給者を想定しています)
 または、
②緊急事態宣言発令地域における不要不急の外出・移動の自粛による直接的な影響を受けたこと(旅館、土産物屋、観光施設、タクシー事業者等の人流減少の影響を受けた者を想定しています)により、本年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年比(or対前々年比)▲50%以上減少していること

◆支給額
 法人は 60万円以内、個人事業者等 は30万円以内の額を支給します。
※算出方法:前年(or前々年)1月から3月の事業収入-(前年(or前々年)同月比▲50%以上の月の事業収入×3)

※前年の確定申告、対象月の売上台帳の写しとともに、宣誓書において、緊急事態宣言によりどのような影響を受けたかを選択肢から選んで自己申告します。なお、一次取引先の納品書、顧客の居住地を示す宿帳、顧客名簿、入込観光客の統計等の保存が義務付けられます。
※3月上旬に電子申請での受付開始を予定しています。該当しそうな事業者は早めに準備しましょう。

《コラム》令和2年分確定申告の申告期限

◆申告期限は1か月延長されました
 令和2年分確定申告の申告期限は4月15日ですが、4月15日を過ぎた場合は期限後申告になるのかというと、そうでもありません。

◆申告・納付等の期限の個別延長
 国税通則法11条に「災害等による期限の延長」というのがあって、特別な事情で申告できない場合は、申告期限の延長を個別に認めてきました。この災害等にコロナ感染の影響による場合が認められています。
 国税庁のホームページでは以下のように述べられています。
 新型コロナウイルス感染症(以下「感染症」といいます。)に関しては、これまでの災害時のように資産等への損害や帳簿書類等の滅失といった直接的な被害が生じていないものの、感染症の患者が把握された場合には濃厚接触者に対する外出自粛の要請等が行われるなど、自己の責めに帰さない理由により、その期限までに申告・納付等ができない場合も考えられます。
 よって、これまでの災害時に認められていた理由のほか、例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別の申請による期限延長(個別延長)が認められることとなります。
 そして理由の事例が何点か紹介されております。その一つに「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること」というのがあり、これはほとんどの方が該当するため申告書の欄外に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載して申告すれば、無条件で個別延長が認められます。結果、申告期限はあってないようなものとなっております。

◆留意点
 ただし、4月15日以降に申告した場合は申告した日が納付の期限日ですのでご留意ください。また申告前に開業届や青色申告の承認申請書等申告以外の提出物を税務署に提出した場合は、個別延長が認められない場合がありますのでご留意ください。

【時事解説】広がる変動価格制、その狙いとは その2

2021年3月から東京ディズニーリゾートのチケットは変動価格制(ダイナミックプライシング)になります。近年、ダイナミックプライシングは遊園地の入園料だけでなく、野球やサッカー観戦と多くの業種で広がりを見せています。
 背景にはAI(人工知能)の発達があります。ダイナミックプライシングのポイントは、価格をいくらにするか、価格の高い期間と安い期間をいつにするかといった点にあります。

 従来から、衣類のバーゲンセールや食品スーパーの閉店前の値下げといった、売れ残りを回避するための値下げは行われてきました。ただ、10%引きにするか、あるいは20%引きにするかは店員の裁量で決められることが少なくありません。値引き率が大きいほうが売れる数は上がる傾向があります。が、価格が高いほうが商品一つあたりの利益率は大きくなります。価格や期間の設定は、もっとも利益が大きくなる点を探し当てることが大切です。

 AIは過去の販売状況や天候などのデータを大量に解析して何が売れ行きを左右するか、さらには休日、天候、気温、風速など、どれが販売数量に大きく影響を及ぼすかなどを計算します。人間が手計算で求めたら膨大な時間がかかる事項をAIは短時間で正解を導きます。AI技術の発展があったからこそ、ダイナミックプライシングが導入しやすくなったといえます。

 とはいえ、AIも完ぺきではありません。価格が高すぎると顧客の反感を買うため、担当者がAIの提示よりも安く価格を設定した事例もありました。まだ、改良の余地はありますが、今後もダイナミックプライシングはさらに広まりそうです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)