《コラム》テレワークの労務管理上の課題

◆テレワークを実施している割合は?
 内閣府が2020年6月に公表した調査によると、全国でテレワークを経験した人の割合は34.6%でした。テレワークは以前からありますが、コロナ禍でより身近な働き方になったと感じる人も多いのではないでしょうか? 調査ではテレワークの導入率が「ほぼ100%」は全体の10.5%、感染者の多い東京23区では20%以上という高い割合です。「50%以上」の働き方も11%と約1割あります。東京都では昨年12月の実施率が15.7%であったものが、2020年4月では49.1%が実施、2.5倍に増えています。実施が多い業種は、1.教育・学習支援、2.金融、保険、不動産業、3.卸売業、4.製造業です。
 テレワークの実施率は業種別、雇用形態別、地域別で大きく異なっています。

◆労務管理上の課題
 テレワークを実施していない企業から上がってくる意見は「適した業務がない」「セキュリティー上のリスク」「インフラ整備の問題」などがあります。他には次に上げるような意見もありました。
(1)「部下が本当に集中して働いているか」
 不安に感じる上司の一方で働く側は「サボっているとは思われたくない、業務に集中するあまり長時間労働となってしまう」という回答もあります。一部に多少サボっている人がいるとしても、テレワーク中の全員を監視するようなことは働く意欲をなくしてしまいます。会社と社員で認識を統一して、制度がきちんと運営される土台を作ることが大切です。
(2)労働時間の把握が難しい
 在宅勤務中にも出社時と同じ労働時間管理をしている企業は8割ありますが、電話、メールで始業・終業に連絡、クラウド上の勤怠システム、パソコンのログ、日報などの報告があります。本人の都合で時間をずらして働くときは事前・事後に申請させるなどして実態を把握しましょう。
(3)コミュニケーションがとりにくい
 コミュニケーション手段は主にメール、チャット、WEB会議、電話等になりますが、対面よりは簡潔な表現にならざるを得ないので情報共有漏れが出ないともかぎりません。在宅勤務は孤独感や相談相手がいない等、精神面でのフォローも必要不可欠です。

《コラム》贈与税の配偶者控除と登記

◆居住用不動産を贈与したときの配偶者控除
 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除(配偶者控除)できます。
 この特例の適用を受けるには贈与税の申告書と次の書面の提出が必要です。
①贈与日後10日経過後の戸籍謄本・抄本
②同戸籍の附票の写し
③居住用不動産の登記事項証明書等

◆店舗兼住宅の持分贈与を受けた場合
 店舗兼住宅について、例えば居住用部分の50%の贈与をしたとして、登記面ではそれが全体の25%の持分贈与と表記されたとしても、居住用部分のみの贈与と扱われることになっています。
 また、居住用部分がおおむね90%以上の場合は全て居住用不動産として扱うことができます。

◆居住用不動産贈与と相続税の扱い
 配偶者控除適用居住用贈与不動産は、相続開始前3年内贈与加算の対象外です。
 また、その贈与が相続開始年になされた場合は、その居住用不動産のうち、贈与税の配偶者控除があるものと仮定して控除される部分は、相続税の課税価格に加算されず、相続税の対象となりません。

◆所有権移転登記は要件か?
 贈与の対象となった居住用不動産の登記事項証明書の添付は、この贈与税の配偶者控除特例の適用要件でした。でも、贈与による所有権移転登記そのものは、適用要件ではありません。
 それで、平成28年に、贈与による居住用不動産取得の事実が確認できる書類を添付する事に省令改正されました。登記事項証明書は、その事実確認書類の一つの例示例となっています。

◆登記を要件にできない色々な理由がある
 登記には第三者対抗要件はあるものの、義務ではなく、任意なので、税法の適用要件に登記を義務づけることは憚られるのだと思われます。
 それに、店舗兼住宅での登記のように、居住部分のみの登記は受け付けられないし、大きな敷地の一部の居住部分の贈与の場合、分筆等が必要となる場合などを考慮すると、測量費なども含め、登記費用負担が居住用不動産贈与の特例適用の妨害要因になってしまうからなのだと思われます。

 

《コラム》法改正情報!子の看護休暇・介護休暇の時間取得

◆「子の看護休暇」とは
 子供の急な発熱や体調不良、けが等は心配なものです。育児と仕事を両立する労働者にとっては、看病のために仕事を休む必要がある場合もありますね。
 そのような時に取得できる休暇として、育児介護休業法による「子の看護休暇」があります。
 これは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、病気、けがをした子の看護、または子に予防接種、健康診断を受けさせるために、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。

◆改正法で時間単位での取得が可能に
 これまで、子の看護休暇は「1日」もしくは「半日」の単位で取得可能であり、そもそも労働時間の短い労働者(1日の予定労働時間が4時間以下の者)は半日単位での取得対象外とされていました。
 これだと、予防接種や軽度の病気である場合、数時間程度の休暇で事足りるのに、必要以上に休暇を取ることになり使い勝手が良くないという声がありました。
 この点、令和3年1月1日から、この休暇をより柔軟に取得できるよう法改正がなされ、時間単位での取得ができることになります。

◆介護休暇も同様に対象となる
 同じ育児・介護休業法で定める「介護休暇」は、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者が、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。こちらも、今回の改正で時間単位での取得が可能となります。

◆事業主は規定の見直しを!
 法改正に伴い、育児介護休業規定の見直しが必要です。更に、法の求めを上回り、労働者により配慮した措置として、始業・就業時間に連続しない「中抜け」を認める制度とするかの検討が必要です。
 また時間単位の取得により、勤怠管理に影響が出る点も注意してください。

◆両立支援等助成金について
 時間単位で利用できる有給の、子の看護休暇や介護休暇を導入し、休暇を取得した労働者がいる等、一定の要件を満たした事業主は、国からの両立支援等助成金の支給対象となりますので、対象となるか確認してみましょう。

 

【時事解説】余剰資金の使い道から考える会社観の違い その2

しかし、我が国では会社を株主のものと単純には割り切れません。会社は確かに株主が作った組織ですが、その後の運営は役員や従業員が主体となります。会社が上げた利益は、従業員が力を合わせ皆で稼いだものと考えますから、株主というより従業員のために使うべきではないかという思想も捨て切れません。

 欧米的には、株式会社はある特定の事業を行い、利益をあげることを目的に作ったものですから、その事業が時流に合わなくなれば、新陳代謝があるのはやむを得ないと考えます。従業員もそれに応じて職場を変わるものとして、雇用の流動化に慣れています。とすれば、会社の存続のために自己資本比率を闇雲に高くする必要はなく、余剰資金の株主分配も当然と考えます。

 しかし、日本の従業員にとっては、会社は単なる給与をもらう場所というに止まらず、精神的なよりどころといった側面も併せ持ちます。また、雇用の流動化も進んでおらず、普通の従業員は会社を変えることは相当な苦痛を伴いますから、どんな形であれ、会社にはできるだけ存続してもらいたいと思っています。社会のセーフティネットの一部を会社が担っているという見方もできます。とすれば、会社存続の社会的要請が強くなり、いたずらな株主還元の増加に慎重にならざるを得ません。

 大手上場企業ではグローバルスタンダードで株主還元が重視される傾向にありますが、その考え方が一般的な上場企業にまでに広がっているとはいえません。今後、成熟経済に入り、再投資は益々難しくなりますから、余剰資金の使い方は上場企業にとり大きな課題であり続けると思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】余剰資金の使い道から考える会社観の違い その1

日本企業には内部留保が大きく積み上がっており、その使い道が問われています。資金の用途として最も望ましいのは、将来の成長のための設備投資です。しかし、少子高齢化で人口減少が進み、潜在成長率が下がっている我が国で、企業の成長に資する投資がそう簡単に見つかるものではありません。投資機会がないまま、利益が上がり続ければ、内部留保と現金が積み上がります。その結果、常に株主価値の上昇を求められる上場企業では、余剰資金の使い方が大きな課題となります。

 欧米であれば、答えは明快で、配当や自社株買いなどの株主還元に使うべきということになります。しかし、日本ではそのように簡単に割り切ることできません。そこには欧米とは異なる会社観の存在が背景にあるように思います。

 会社観とは突き詰めれば、「会社は誰のものか」ということに行き着きます。答えは、株主と従業員の二つに大きく分けられます。

 株式会社論的に言えば、株式会社は株主が自らの利益をあげるために作った組織です。従業員はそのために雇われているに過ぎませんから、従業員が前面に出てくることはありません。会社の余剰資金を再投資して会社が成長し、株主価値が増加するなら、再投資することに株主に異存はありません。一方、余剰資金を会社内で使い切れなくなれば、株主に返還するのが筋です。配当や自社株買いを行えば、自己資本が減少しますから、株主が最も重視するROE(自己資本利益率=当期純利益÷自己資本)が増加します。自己資本比率が高く、現金預金が豊富な会社がたどりつく当然な選択になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》特例措置は2021年2月末まで雇用調整助成金

◆雇用調整助成金特例措置終了予定
 新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置として、令和3年2月末まで日額上限額の引き上げ等が行われていますが、3月以降段階的に縮小し、5~6月にリーマンショック時並みの特例とする方針が12月8日に総合経済対策で表明されています。そして令和3年1月末及び3月末時点の感染状況や雇用情勢が大きく悪化している場合、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業について特例を設ける等、柔軟に対応するとされています。

◆3月以降はどのようになる?
 雇用調整助成金の特例措置がなくなるとどのようになるでしょうか? リーマンショック時の主な特例措置を参考に出しますと次のようになっていました。
①助成率:中小企業4/5、大企業2/3(コロナ特例措置では雇用を維持している場合、中小企業10/10、大企業3/4)
②生産指標要件:最近3か月の生産量等が直前3か月又は前年同期と比べて原則5%以上減少(コロナ特例措置では1か月5%以上減少)
③対象被保険者:雇用保険被保険者6か月未満の者も助成(コロナ特例では緊急雇用安定助成金により被保険者でない労働者も助成)
④支給限度日数:3年300日(コロナ特例措置では令和2年4月1日から令和3年2月末までの期間+1年100日、3年150日)

◆在籍型出向による雇用維持支援にシフト
 今後は産業雇用安定助成金(仮称)を創設し出向元と出向先の双方を支援、出向元には雇用調整助成金、出向先には労働移動支援助成金による受け入れ企業への支援の方向になるでしょう。
 また、人手不足企業にはコロナ禍による離職者等で就業経験のない職業に就くことを希望する求職者を一定期間試行雇用する事業主に対する賃金助成制度(トライアル雇用助成金)を創設、紹介予定派遣を通じた正社員化(キャリアアップ助成金)の促進なども予定されています。
 雇用調整助成金の特例措置を使っている企業は期間延長が終了したときの変更の対応を検討する必要があるでしょう。

《コラム》民泊用建物の仕入税額控除

◆専門誌の気になる記事
 税理士業界の専門誌に、国税庁消費税課課長補佐、税務大学校研究部教授等々を歴任した人が、民泊事業に係る消費税について、次のように書いていました。
 民泊用建物は「居住用賃貸建物」に該当し、民泊事業は「住宅宿泊事業」なので、住宅の貸付けに該当しないから消費税の課税対象になるものの、令和2年10月1日以後取得するものは仕入税額控除の対象にならず、さらに、第3年度の末日までその建物を消費税の課税対象である民泊用に供していたとしても、課税賃貸割合に基づく調整控除の対象にはならない、と。

◆令和2年10月以後取得の仕入税額控除
 居住用賃貸建物に係る仕入税額について、購入後に課税売上割合が著しく変動する場合、購入時の仕入税額控除の後、第3年度に調整計算を行うという制度から、物件購入期での仕入税額控除を不可とし、第3年度の課税期間の末日において課税賃貸割合に応ずる消費税額を算定し、その期の仕入消費税額とするという制度になりました。

◆物件を買い民泊に供して3年
① 民泊事業を、他人に有料で住宅を貸す行為と解すると、民泊専用住宅を購入後、課税事業者として継続して民泊用に供した3年経過後の課税賃貸割合は100%です。
② 民泊事業とは、個人で言えば事業所得になる行為で、不動産所得となる行為ではないので、不動産賃貸事業に該当しないことになり、従って3年経過後の課税賃貸割合は0%です。
 冒頭の専門誌の筆者は ② に該当するとして、3年経過後の仕入税額控除を否定しているわけです。

◆3年後ではなく物件購入年で控除では
 冒頭の筆者は、また、民泊用建物は「居住用賃貸建物」だから物件購入年でも仕入税額控除不可としています。
 しかし、法令では、建物の構造・設備で居住用賃貸住宅非該当が明示出来れば、仕入税額控除は可としています。
 もし、税理士がマンションを購入して、様々な必要な設備を整えて税理士事務所として利用する場合、物件購入の仕入税額控除がそれで可であるのならば、民泊利用でも固有な設備の設置が必要なので、同じく仕入税額控除可となりそうに思われます。

奨学金の代理返済で節税効果

学生時代に借りた奨学金を本人に代わって勤務先企業が返済できる新制度を、日本学生支援機構が4月にスタートさせます。代理返済をした企業にとっては、援助した金額を損金に算入して節税できるほか、同機構のウェブサイトで社名を公表することで社会貢献のPRにもつながります。

 多額の返済負担が社会人となってからの生活を圧迫するケースは珍しくありません。機構の調査によれば、奨学金を返済している社会人は現在450万人いて、そのうち5人に1人が返済を滞納したことがあるそうです。延滞した理由は「家計の収入が減った」が67.1%で最も多く、その後も延滞を継続してしまう理由は「本人の低所得」が64%と群を抜いていました。返したくても返す余裕がないという若者は多い状況です。

 奨学金の返済苦が社会問題化していることを受け給与に上乗せする形で返済を支援する企業も増えつつあります。しかしこのやり方では、会社側は支援分を給与として損金に算入できますが、支援を受けた本人は所得税の負担が増えてしまいます。

 今回、機構が打ち出した制度では、企業が機構に直接返済をできるようにするというものです。従来のやり方に比べて、本人の給与とならないため所得税が非課税となる点が特徴。また会社にとっては代理返済した分が損金となるため、法人税の節税になることに加え、制度に登録した企業は機構のホームページで公表されるため、社会貢献のPRになり、優秀な人材確保につながるなどのメリットがあります。そして何より、社員本人の返済不安を解消することで業務に与えるポジティブな影響が一番の恩恵かもしれません。

<情報提供:エヌピー通信社>

【時事解説】スマートシティーで生活はどのように変わるか その2

スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した街づくりを指します。国内でスマートシティー関連事業に取り組む地域は現在160ほどあります。

 福島県会津若松市を例に挙げると、同市では様々な実証実験が進められています。観光名所の鶴ヶ城では、新型コロナウイルス感染症対策のため密集回避システムが稼働しています。これは、AIを搭載した3Dカメラが人の動きを感知。人との間隔が1.5メートル以内になると赤色で表示されます。結果、人との距離を保ち、密を避けることができます。

 こうしたビジネスチャンスは国内にとどまらず、輸出での利益にも期待が寄せられています。背景には、政府がインフラ輸出に関する新たな戦略を明らかにしたことがあります。従来、インフラの輸出といえば、道路や鉄道といった「重厚長大」が中心でした。が、今後は、ESG(環境・社会・企業統治)分野に重点が置かれるようになります。スマートシティーは環境技術を駆使するため、輸出の強化が掲げられています。

 現在、ベトナムの首都ハノイやミャンマーの都市マンダレー、インドなど、東南アジアでは多くの都市がスマートシティー建設を決定しています。1都市のインフラ開発事業に参加するだけでも数百億円規模のビジネスになるともいわれています。これらビジネスチャンスを得るため、政府は日本企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)で手がけるスマートシティー事業を後押しする姿勢でいます。

 競合する中国や韓国にどこまで対抗できるか。スマートシティー事業が日本に大きな利益をもたらすことに期待したいところです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】スマートシティーで生活はどのように変わるか その1

スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した次世代の街を指します。技術で都市機能や暮らしを向上させることが目的です。サービスは多岐に渡りますが、交通分野ならば、車の走行データなどのビッグデータを活用し、渋滞の緩和や物流の効率化といったことが挙げられます。

 国内には「スマートシティー構想」を掲げ関連事業に取り組む地域や本格事業化を進める企業が多数あります。行政のデジタル化の機運が高まる中、街づくりにもその波が押し寄せているともいえます。
 渋谷エリアではアプリサービス「shibuya good pass」の実証実験が始まりました。これは、渋谷区の在住者や渋谷エリアで働く人を対象としたアプリです。ユーザーは月額基本料を支払うと、連携する都市サービスを利用できるというものです。

 当初用意されるサービスは、約10ジャンルあります。一例を挙げると、小型車やマイクロバスを使った月額乗り放題のサービスがあります。利用者はスマートフォンから車を呼び出します。すると、AIが最適ルートを導き出し、近くを走る車両を配車します。家から2キロメートル先の店で食事がしたい。そんな時、アプリを利用すれば軽自動車などが家の近くまで迎えにきてくれます。月額乗り放題なので、タクシーのようにメーターを気にすることもありません。このほかにも、月額オフィス会員サービスや再生可能エネルギーの提供、都市農園など、多岐に渡るサービスが用意されています。こうしたサービスをまず渋谷で実装し、その後は国内の複数の都市に展開することでさらに収益を上げていくことが可能になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)