(後編)持続化給付金の給付対象と申請期限に注意!

(前編からのつづき)

①確定申告書・第一表における「収入金額等」欄(「総合譲渡」、「一時」を除く)のうち、「雑・その他(ク)」又は「給与(カ)」欄に含まれる「業務委託契約等に基づく事業活動からの収入」が、他の収入区分を含めた中で最も大きいこと
②確定申告書・第三表の「収入金額」欄(譲渡所得、退職所得の収入を除く)に、事業活動からの収入が含まれる「雑・その他(ク)」又は「給与(カ)」より大きい収入がないこと

 そして、中小法人や事業所得のある個人事業者等と同様に、売上の減少要件があり、2020年1月から12月までの任意のひと月(対象月)における業務委託契約等の収入(売上)が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2019年の月平均の同収入と比較して50%以上減少していることが要件になります。

 なお、会社等に雇用されている人(サラリーマン、パート・アルバイト・派遣・日雇い労働等を含む)や、被扶養者は給付対象になりませんが、2019年中に独立・開業した場合は対象になる可能性がありますので、該当されます方はあわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年12月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)持続化給付金の給付対象と申請期限に注意!

 持続化給付金とは、新型コロナウイルス感染症拡大により、営業自粛等で特に大きな影響を受けている中小企業者等に対して、事業全般に広く使える給付金をいい、申請期間は2020年5月1日から2021年1月15日となりますので、給付を受けようと検討される方は期限にもご注意ください。

 個人事業者等(フリーランスを含む)で、主たる収入を雑所得又は給与所得で確定申告をしている場合でも、持続化給付金の給付対象になり、一定の条件を満たすことにより、中小法人や事業所得のある個人事業者等のように、雑所得や給与所得の場合でも給付を受けることができますので、該当されます方はご確認ください。

 具体的には、2019年以前から、雇用契約によらず、業務委託契約等に基づく事業活動から収入を得ている事業者で、これらの収入を確定申告における主たる収入とし、雑所得又は給与所得で収入計上していて、今後も事業を継続する意思のある事業者が対象になります。
 例えば、学習塾の講師、プログラマーなどが該当し、「主たる収入」にあたるかは、2019年分の確定申告書において、以下2つの要件を満たす必要があります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年12月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》保険料控除証明書を電子データで取得する方法

◆政府の旗振りで年末調整もオール電子化?
 平成30年度税制改正により、令和2年分の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等について、勤務先へ電子データにより提供できるよう手当されたことなどを受けて、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施されています。
 たしかに、電子化されれば、従業員は控除証明書等をデータで取得し、保険料控除等申告書もデータで作成して自動計算され間違いがなくなる、勤務先においてもデータをもとに年税額を自動計算し、データの紙保管も不要となる等、良いことずくめです。はたして、現状はどうでしょうか?

◆保険会社側の電子データ提供の状況(8社)
 11月末日の時点で、保険会社からの保険料控除証明書の電子提供は、8社から行われています。9月23日現在42社ある保険会社のうちの8社ですから、大手で提供があるとはいえ、まだまだカバーできていません。加入する保険会社が未対応ですと、後述する他の準備は万全でも、電子データでの資料準備はかなわないことになります。

◆従業員側の電子データ取得の環境準備
 保険会社から控除証明書を電子データで受け取るには、政府が運営するオンラインサービスであるマイナポータルを使わなければなりません。手順は下記の通りです。
(1)マイナンバーカードの取得
 マイナポータル利用のためには、マイナンバーカードの取得が必須です。顔写真を撮影し、交付申請をして、市区町村が交付通知書を発送するまで、概ね1か月程度かかっており、ここが一番のハードルかもしれません。特別定額給付金(10万円)申請等ですでにマイナンバーカードを取得済みの方は、すぐに(2)に着手できます。
(2)マイナポータルの利用
 他のサイトをマイナポータルと一体的に使えるようになる「もっとつながる」から、「e-私書箱(野村総合研究所)」とつながり、「つながる」サービスで、保険会社から保険料控除証明書の電子データを入手できるようになります。自身が加入している保険会社の対応が終わっていれば、いままでのはがき等の紙の証明書から電子データに移行できます(勤務先での電子対応が大前提)。
 少し前まで、国が、キャッシュレス化推進やマイナンバーカード取得とマイナポータル利用促進のキャンペーンを行っていましたので、環境が整っている方は意外と多いかもしれません。踏み出してみましょう。

 

《コラム》法定相続情報証明制度

◆法定相続情報証明制度とは
 相続人が法務局に対して、戸籍謄本等の必要書類及び相続関係を記載した一覧図を提出することにより、登記官がその内容を確認し、認証文付の一覧図の写しを交付する制度です。
 平成29年5月29日から全国の法務局でスタートした比較的新しい制度です。

◆なぜ、この制度が必要となったのか?
 相続登記や預貯金の解約などの相続手続において必要となる書類は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等の多くの戸籍関係書類が必要となります。これらを手続ごとに提出し、何度も同じ書類を集めなければなりませんでした。
 この法定相続情報証明制度がスタートしたことにより、登記官が内容を確認して交付された認証文付きの一覧図の写しを提出することにより法定相続人が一目瞭然となるため、相続人及び提出先の担当部署の負担が相当軽減されることとなりました。

◆必要書類
 夫、妻、長男、長女という家族で夫が死亡した場合の必要書類を記載していきます。
① 夫の出生から死亡までの戸籍謄本
② 妻、長男、長女の戸籍謄本
③ 夫の住民票の除票又は戸籍の附票
 ①~③の書類を収集し、申出書を作成し管轄法務局に提出します。
 法定相続情報一覧図に妻、長男、長女の住所を記載して欲しい場合には、上記①~③に加えて妻、長男、長女の住民票を提出します。

◆最後に
 相続手続における戸籍関係書類の収集を1回にし、法務局に提出することにより戸籍関係書類に代わる法定相続情報一覧図を交付してもらい、相続人の戸籍収集の負担を軽減し、提出先(銀行等の金融機関)の担当部署の戸籍謄本等の解読が不要となり法定相続情報一覧図によって明らかになるということです。
 相続人にもメリットですし、提出先にもメリットともなるので積極的に利用していきたい制度です。

【時事解説】VUCA時代のリーダーシップとは その2

コロナ禍では世界が一変し、新たな常識が生まれました。そんな先の見えない今、「VUCA(ブーカ)」というキーワードが注目されています。これは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(多義性)」の頭文字を連結した言葉です。

 VUCAの時代に適したリーダーシップのスタイルとはどのようなものでしょうか。ハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル教授が提唱する「羊飼い型リーダーシップ」はVUCAの時代に適したリーダーシップの姿だと言えます。

 具体的な特徴を説明しましょう。羊は羊毛や食肉として用いられます。羊を飼育する際、羊飼いは群れを野原に連れ、草を食べさせなければなりません。ときには、オオカミなどの敵から羊を守り、あるいは迷子になったものがいれば探して群れに戻すことが必要になります。

 羊飼いは群れの最後方に位置するのが特徴です。先頭は別の人が立つ形をとります。たとえば、移動の際、橋がかかっていない川に直面したなら、橋を架けることを得意とする人が先頭をとります。新規の野原に向かうときは、道に詳しい人が先頭に変わります。時には、牧羊犬を走らせ、羊を目的地に誘導するときもあります。このように、状況次第で先頭が次々と変わっていきます。

 リーダーが先頭に立っていると、前はよく見えますが、自分よりも後方に位置する景色は見えにくいものです。環境の変化をいち早く察知し、状況を的確に把握したうえで場面に適した人材を据えるには、リーダーは後方にいたほうが都合がよいのです。このように、VUCAの時代では、必要とされる能力も変わります。何が重要なのか、意識をしながら、対応していくことが必要です。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】VUCA時代のリーダーシップとは その1

最近、「VUCA(ブーカ)」というキーワードが注目されています。これは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(多義性)」の頭文字を連結した言葉です。もともとは軍事用語として用いられていました。この言葉が生まれた背景には、アルカイダのような非国家が前面に出たことで、過去の常識は通用しなくなったことが一つとしてあります。その後、世の中は落ち着きを取り戻したものの、コロナ禍で再び不確実性が高まり、VUCAが注目されたのです。

 コロナ禍では常識が覆され、世界が一変しました。先の見えない現在、まさにVUCAの時代です。VUCAの時代では、これまでの基準が変わり、良いとされていたものが必ずしも良いとは限らなくなっています。

 一例を挙げると、リーダーシップのあるべき姿がそうです。従来、リーダーシップというと、カリスマ性を備え、先頭に立って部下を率いるタイプがもてはやされる傾向がありました。ただ、VUCAの時代では、変動性や不確実性が高くなったため、リーダーの要素としては、いかに迅速に変化へ対応できるかといった能力がより重要になっています。

 具体的に、どのようなリーダーが変化に対応しやすいのでしょうか。一つに、「羊飼い型リーダーシップ」があります。これは、ハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル教授が提唱したリーダーのあるべき姿です。「羊飼い型」と銘打たれているように、リーダーは群れの後方に位置して、全体をつかさどります。後方にいる方が、全体がよく眺められ、変化への対応が迅速になります。これまでとは全く異なるリーダーのスタイルが危機を救うには適しているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業成長促進法について その2

2020年10月1日に中小企業成長促進法が施行されたことに伴い、中小企業目線での政策体系の整理が行われています。以下でその概要についてみていきましょう。

 中小企業の計画支援のスキームは、成長段階に応じた体系に簡素化されました。まず、基礎体力をつける段階の計画としては、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」が位置づけられています。これは経営資源の有効活用により、経営の向上を図るものです。

 次に新分野進出を目指す段階の計画としては、中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」が位置づけられています。これは新事業活動により経営の相当程度の向上を図るものです。新事業活動の定義に研究開発等が明示されるなど経営革新計画の定義見直しが行われたことを受けて、特定ものづくり基盤技術に関する研究開発等を行う特定研究開発等計画や、事業分野が異なる事業者の連携により新事業分野の開拓を行う異分野連携新事業分野開拓計画は廃止となり、経営革新計画への支援措置に包含されることとなりました。

 さらに地域全体の活力向上を目指す段階の計画としては、地域未来投資促進法に基づく「地域経済牽引事業計画」が位置づけられています。これは産業集積、観光資源、特産物など「地域の特性」を活かして、地域に対して相当の経済的効果を及ぼすものです。今回の政策体系の整理を受けて、地域の特産物など「地域資源」を活かして、新商品やサービスの開発・生産を行う地域産業資源活用事業計画は廃止となり、「地域経済牽引事業計画」による支援措置に包含されることとなりました。

 このように、類似の計画制度を統合し、中小企業の成長段階に応じた体系に簡素化されたのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業成長促進法について その1

 2020年10月1日に中小企業成長促進法が施行されました。この法律は、中小企業の廃業を防ぐとともに、中小企業が積極的に事業展開を行い、成長できる環境を整備するために必要な措置を講ずるものです。以下で同法の特徴についてみていきましょう。

 1点目の特徴として、経営者保証解除スキームの拡充による事業承継の促進があげられます。具体的には、経営承継円滑化法の認定企業が事業承継する際に、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度(経営承継借換関連保証)が新設されました。事業承継時における経営者保証が大きな課題となるなか、2020年4月よりスタートした事業承継特別保証においては、一般枠の範囲内で事業承継時に経営者保証を不要とする信用保証制度が措置されました。今回の中小企業成長促進法の施行を受けて、上記に加え、一般枠ではカバーできない融資に対して、経営者保証を不要とする信用保証の特別枠(最大2.8億円)が法律上措置されています。

 2点目の特徴として、中堅企業への成長環境の整備があげられます。これは、中小企業が、増資や従業員増加により中小企業要件から外れても、地域経済牽引事業計画の実施期間(5年以内)は、中小企業とみなす措置を講じることで、中小企業向け支援を継続するものです。

 3点目の特徴として、海外展開支援の強化があげられます。これは、海外拠点の分散化の促進など、中小企業の海外展開にかかる取組みを一層支援するため、日本公庫によるクロスボーダーローンを措置し、資金調達手段の多様化を図るものです。

 このように中小企業成長促進法の下では、上記のような支援を通して、新型コロナ危機下での事業継続と雇用維持を後押ししているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》テナント等の場合の令和3年度固定資産税減免措置

◆令和3年度固定資産税の減免措置
 新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2~10月の任意の連続する3か月の事業に係る収入が前年同期比30%以上50%未満減少した場合は、令和3年度の固定資産税・都市計画税が1/2に軽減、50%以上減少した場合は全額免除されます。
 ただし、減免される対象は事業用家屋及び設備等の償却資産に対する固定資産税と、事業用家屋に対する都市計画税に限定されています。土地は対象ではないのでご注意ください。

◆賃料を猶予した場合のカウントに注意
 この減免措置は、不動産所有者がテナント等の賃料支払いを減免した場合や、書面等により一定期間賃料支払いを猶予した場合にも収入の減少として扱われます。
 ただし、テナント等の賃料支払いを猶予したことによる収入減で、この措置を受けようとする場合は、3か月以上の賃料を、それぞれの賃料の支払い期限から3か月以上猶予していることが条件となります。
 例えば、3~5月分の賃料を猶予した場合に、猶予された分の賃料は、3月分は6月以降に、4月分は7月以降に、5月分は8月以降に支払われる必要があるということです。
 3~5月の賃料の猶予を6月に一括払いするとか、3月の賃料を4月に払う等、1か月のみのスライドをする等の措置では、収入の減少にカウントされません。

◆固定資産税減免以外の措置
 法人・個人が行った賃料の減額が、
①取引先が新型コロナウイルス感染症関連で事業継続が困難・困難になりそうなとき
②賃料の減額が取引先の復旧支援を目的としていて、それが書面で確認できるとき
③取引先等に被害が生じた後、営業再開するための復旧過程にある時期に減額されたとき
のいずれかの条件を満たしていれば、その減額分については寄附金には該当せず、税務上の損金として計上することが可能です。
 また、支援策はオーナーだけでなく、物件を借りている事業者等へは家賃支援給付金制度があります。

《コラム》脱炭素化のためのグリーン化税制

菅首相は臨時国会の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロ(森林吸収分などを差引き後の値)とし、脱炭素社会を目指すことを宣言、再生可能エネルギーなどグリーン化投資推進を成長戦略に位置付ける方針を示しました。対応策の一つと検討されるのが、グリーン化税制(炭素税、エネルギー税、車体課税、投資減税など)です。

◆炭素税と排出量取引
 炭素税は、温室効果ガス排出量に応じて課税されます。排出量に応じた価格付け(カーボンプライシング)を行い、市場メカニズムを通じて排出量の削減をはかります。  
 カーボンプライシングには、炭素税のほかに排出量取引があります。これは、排出者に排出量の上限を定め、他の排出者との取引を認める制度です。どちらも高い削減効果が認められますが、反面、経済成長を抑制する側面もあるといわれています。
 日本では、炭素税「地球温暖化対策のための税」が導入されており、原油や石油製品など化石燃料に対して課税しているほか、東京都や埼玉県では、燃料・熱・電気の使用量の大きな事業者に対してCO2削減を義務付け、排出量取引制度が行われています。

◆エネルギー税、車体課税と投資減税
 エネルギー税は、化石燃料等の消費や、CO2を排出する車体に課税されます。揮発油税、軽油引取税など化石燃料の引取りや、自動車税など自動車の取得・所有に課税します。
 投資減税は、CO2排出量が少なく、エネルギー効率の高い設備や製品への研究開発投資に対する税額控除や、減税措置など優遇措置をとり、経済的インセンティブを高めます。これらは排出量に応じた措置でなく、削減効果は限定的といわれています。

◆グリーン化投資を新たな事業機会に
 ESGに取り組む上場企業への株式投資を促す開示制度(TCFD)も開始されており、世界は、低炭素でレジリエントな社会への転換を目指しています。
 ポストコロナ下での経済は、環境と共存できることが求められます。中小企業にとっては、グリーン化のための製品・サービス開発が新たな事業機会となるかもしれません。