輸入品の脱税、総額の8割が金密輸

輸入品に対する関税や消費税に関する犯則事件の、脱税額の8割が金地金の密輸で占められていることが分かりました。昨年から罰則が強化されたことで金密輸は減少傾向にありますが、依然として密輸による闇ビジネスの主役である状況に変わりはないようです。

 財務省の調査によると、昨年7月~今年6月の1年間の処分(検察官への告発または税関長による通告処分)は、告発9件(前年12件)、通告262件(同524件)の計271件。全体の件数としては前年から49%減少しました。脱税額は、総額で4億5180万円でした。
 特筆すべきは処分した事件のうち金地金の密輸事件が199件、脱税額は約3億6千万円と、処分件数では約7割、脱税額では約8割を占めている点です。

 金を国内に持ち込む際には消費税分を納めなければいけませんが、密輸すれば税関を通らないため、持ち込んだ金を国内で売却すれば消費税分がまるまる儲けになります。近年、金密輸を利用した脱税は著しい増加傾向にありましたが、コロナ禍による旅客の急減に加えて、昨年から罰金が引き上げられるなど厳罰化されたことなどで件数は減少に転じています。それでも全体の8割を占める現状からは、金密輸による脱税の旨味がどれほど大きいものかを物語っていると言えそうです。

《コラム》役員変更登記

◆役員と任期
 会社法上、役員とは取締役、監査役、会計参与となります。取締役及び会計参与の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなりますが、非公開会社は定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができます。
 一方、監査役の任期は原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなります。定款によって選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができるのは取締役及び会計参与と同様です。
 また、任期を定款に定めることによって選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと伸ばせる非公開会社とは、定款において全ての株式に譲渡の制限が付されている株式会社のことをいいます。なお、有限会社は、譲渡の制限の定めがあるとみなされています。

◆役員の任期の実情
 公開会社であるメリットはあまりないため、上場会社であるような大きな会社を除き、新たに設立する会社のほとんどが非公開会社です。そうなると役員の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定款で定めている会社が多いはずです。
 平成18年5月1日に会社法が施行され、非公開会社の役員の任期が、10年まで伸ばせるようになりましたが、平成18年の会社法の施行後に役員の任期を伸長した会社は、任期を伸長した定款変更から10年を経過していれば、役員の任期は満了しており、役員の変更登記をしなければなりません。平成28年で会社法の施行から10年が経過しました。よって、役員の任期も満了している会社は多いのではないでしょうか。

◆確認してみて下さい
 株主総会を開催し役員の改選を行い、役員変更登記まで完了している会社は問題ありませんが、もし気になれば、この機会に定款や任期を伸長した議事録を見返してみてはいかがでしょうか。

《コラム》企業による社会貢献活動の拡大

◆経営理念の実現に加え、社員の成長も
 経団連が9月に発表した「社会貢献活動に関するアンケート調査結果」によると、社会貢献活動の役割や意義について、回答企業の9割以上が「企業の社会的責任の一環」と回答しました。SDGsの浸透もあり、企業側の社会的責任に対する認識も定着してきています。
 そして、8割以上が社会貢献活動を「経営理念やビジョンの実現の一環」とし、「社員が社会的課題に触れて成長する機会」と回答した企業が4%から53%と、前回調査から大幅に増えていることも特徴的です。経営戦略の一部として捉え、社員の参画を重視し、それが社員の成長にもつながるという新しい視点が加わっていることがわかります。
 活動内容については、回答企業の93%が「寄付金等の資金的支援」で最も多く、「自社製品やサービスの無償提供」、「設備・施設の貸し出し」などの物的な支援が6割前後となります。社員がより深く関わっている活動としては、「技術協力、ノウハウ提供」が48%、「出向等の人材派遣」や「社員によるプロボノ支援」が3割強、「社員による寄付やボランティア活動の推進」が87%です。

◆人材の採用にも影響
 社会貢献活動は、いまいる人材の育成だけではなく、より優秀な人材の採用にも影響する可能性があります。
 2021年卒の大学生を対象とした「就活生の企業選びとSDGsに関する調査(DISCO)」によると、就職先企業に決めた理由については「社会貢献度が高い」が最も多い結果となっています。「給与・待遇が良い」や「将来性がある」を上回り、2019年卒、2020年卒と3年間続いている傾向です。
 企業の社会貢献活動は、社会からの期待の高まりにともない、長期的な視点での事業活動への影響も大きくなっていると考えられます。
 これまで取り組んでこなかったという企業も、自社の事業領域との関連、あるいは地域社会とのつながりから検討してみてはいかがでしょうか。連携先を探す場合には、地域のボランティアセンターなどの相談窓口が利用できます。

 

《コラム》「業務委託」「在籍出向」「副業」の労務管理

◆労働力の活用方法の多様化
 新型コロナウィルス感染症の影響もあり人材の動きにも影響が出ています。仕事が減った事業のある一方で人手不足の事業もあり働き方も多様化しています。
 雇用以外で仕事を受け負う形態も有り、その違いを知り企業間の労務管理や契約書を交わすことが求められるでしょう。いくつかの契約形態の例で見てみます。

1、業務委託
 自社で対応できない業務を外部に委託する契約の総称です。
 請負契約や委任契約はこの部類です。
 社員を送る側の会社(受託者)は自社の社員に命令して社員を受け入れる側の会社(委託者)から依頼された仕事を請け負います。委託者は受託者に対し、業務委託手数料を支払います。
 業務上の指示を出すのは受託者です。委託者が指示を出すといわゆる「偽装請負」とみなされ労働者派遣法の罰則に該当してしまいます。自社が委託者で業務の進め方に注文があれば受託者に話を通す必要があります。賃金、労働時間管理(委託先での労働時間を働いた人が受託先に報告)、社会保険・労働保険の適用は受託者が行います。

2、在籍出向
 在責出向は社員を送る側(出向元)との労働契約を維持したまま、受け入れる側(出向先)とも労働契約を締結して働くことです。出向を命じられた社員は出向先の指揮命令を受けて働きます。出向先が出向契約にない業務を命じる場合は都度出向元と相談が必要でしょう。
 賃金、労働時間、社会保険・労働保険の取り扱いは出向契約で決めますが、賃金は通常出向元が負担、その場合、社会保険や雇用保険は出向元で加入します。労災保険は出向先の保険を適用することが一般的です。労働時間は通常出向先で管理します。

3、副 業
 副業とは本業と掛け持ちで他の仕事をすることで本業先が自社の社員を副業先に紹介した場合は、副業先も労働契約を結びます。業務中の指示も副業先が出します。労働時間は副業先では副業先が管理します。
 時間外労働は本業と副業先と両方で働く場合、両方の労働時間を通算し法定労働時間を超えた時間が副業先(原則労働契約時期が遅い方)での支払いになります。社保加入は条件を満たせば2社の適用になり、雇用保険は賃金の多い方で加入します。

《コラム》勘定合って銭足らず

◆勘定合って銭足らずとは
 会社の事業の儲けは基本的に利益です。しかし利益が出たからといってその分お金が増えているかというと、そうでもない場合があります。というよりもそうでもない場合の方が多いかと思います。
 そういった状況が「勘定合って銭足らず」です。原因は多岐にわたりますが、設備投資等大きな投資をしたような場合は、原因がはっきりしているので、多くの場合経営者は自覚的で特に問題にはなりません。原因が分からない場合が問題です。

◆銭足らずの比較的分かりやすい原因
 ①在庫が異常に増えている場合
 ②売掛金や受取手形等の売掛債権が異常に増加している場合
 ③買掛金や支払手形等の買掛債務が異常に減少している場合
 このような場合、要は儲かった銭が在庫や債権債務に姿を変えているということです。決算書を注意して見ればある程度分かります。経営者としては、当然の注意義務です。また経験の長い経営者なら「おや?」と気が付くものです。

◆銭足らずの分かりにくい原因
 慢性的に銭足らずの場合があります。どういう場合かというと、借金を返済している場合です。設備投資等大型の投資を借入金でまかない、その返済をしているような場合は、往々にして「勘定合って銭足らず」となっている場合があります。
 要は借金の返済をするには儲けが少なすぎるという場合です。

◆利益が十分か再確認してみましょう
 税引き後利益と減価償却費の合計から年間の返済金額を引いてみてください。また配当などをしている場合は、その分もマイナスしてください。結果がマイナスであればその金額を65%で割り返した金額分利益が不足しています。毎年銭足らずとなります。逆にプラスであればその分資金は増えているはずです。
 税引後利益が分からない場合、安全を考えて利益の65%としてみてください。

【時事解説】購買動機は内的要因が重要 その2

政府が行う経済対策でモノの値段が下がることがあっても、それに安易に乗るのは考え物だということです。モノを買うときのベースはあくまで自分自身における必要性です。必要性が先にあり、その必要性と見比べた時、採算が合うかどうかという判断をして、モノを購入するというのが手順です。モノの値段が安いから必要性を探すというのは正しい考え方ではありません。確かに政府の対策でモノの値段が下がっていれば、モノを購入しやすくなるということはあるでしょう。しかし、それはあくまで必要性があっての話です。必要性の吟味をおろそかにしたまま、モノの値段だけで安易にモノを購入しない方がいいということです。

 スーパーに行って、5%引きや10%引きの値札があるので思わず買ってしまったが、家に帰ってみたら、自分が欲しかったものではなかったという経験がある人もいるかと思います。これは内的要因を軽視して外的要因に振り回された結果です。消費行動は外的要因に左右されないことが大切です。

 本年はコロナ禍もあり、外的要因が大きく変動します。こうしたときこそ、モノを買うときには、外的要因に踊らされることなく、必要性をしっかり吟味することが必要だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】購買動機は内的要因が重要 その1

コロナ禍による消費低迷で、政府は様々な経済対策を用意します。政府の対策にどのように対応するかは重要なことですが、余りに過敏に反応しすぎるのも疑問です。

 京セラフィロソフィーで有名な稲盛和夫氏も次のように言っています。
 『京セラでは、原材料などの購買について、毎月必要なものは毎月必要な分だけ購入するようにしている。場合によっては、毎月ではなくて、毎日必要な分だけを買うようにしているケースもある。私はこれを「一升買い」と呼び、資材購入の原則としてきた。たとえ、一斗樽でまとめて買えば安くなりますよと言われても、今必要な一升だけを買うようにしてきたのである。
(中略)
使う分だけ当座買いするから、高く買ったように見えるが、社員はあるものを大切に使うようになる。余分にないから、倉庫も要らない。倉庫が要らないから、在庫管理も要らないし、在庫金利もかからない。これらのコストを通算すれば、その方がはるかに経済的である。セラミックのように腐らないものならまだしも、腐るものを扱う場合には、気がついてみたら使えなくなっていたということになりかねない。』(「稲盛和夫の実学」より)

 モノを購入する時の思考パターンを考えてみましょう。まず、自分がそのモノを必要としている状況があり、その必要性をベースに、モノの値段の妥当性を判断して、購入を決断するというのが普通です。必要性は「内的要因」、モノの値段は「外的要因」といってもいいかもしれません。稲盛氏がここで言っているのは、モノを購入するときに大切なのは外的要因ではなく、内的要因だということです。自身の必要性を十分検討することなく、モノの値段を主体にして購入を判断することは、正しい消費行動とはいえません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》令和2年の年末調整 紙の場合の変更点

◆とても長い名前になってしまった用紙
 年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。各種「控除申告書」を経理担当者等に出すことになりますが、去年は「給与所得者の配偶者控除等申告書」という名前だった用紙が、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という、とても長い名前に変わりました。なお、「給与所得者の保険料控除証明書」に変更はありません。

◆基礎控除変更と所得金額調整控除新設
 基礎控除は令和2年から、所得によって減額が行われるようになりました。控除額は、所得金額(給与所得控除後の金額+給与所得以外の所得額)が、
2,400万円以下   48万円
2,400万円超2,450万円以下  32万円
2,450万円超2,500万円以下  16万円
2,500万円超 基礎控除は     0円
に変更となります。
 所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える給与所得者で、
①本人・同一生計配偶者・扶養親族いずれかが特別障害者
②年齢23歳未満の扶養親族が居る
①か②のどちらかの条件を満たしていれば(給与収入金額-850万円)×10%=控除額となります。
 なお、給与所得と年金所得の両方がある方は、確定申告で所得金額調整控除を受けられますが、年末調整は給与収入の税額の調整を行うものなので、この控除申告書では計算をしません。

◆電子申請の方が楽?
 今年の年末調整は、国税庁が無料ソフトを提供している上に、会計ソフト会社等も、使いやすい年末調整・法定調書等の作成ソフトを販売しています。例えば国税庁のソフトでは、従業員入力を分かりやすくするために、最初に簡単な質問の「はい・いいえ」で入力項目の絞り込みを行う等して、とても長い名前の紙の控除申告書の入力が必要な部分のみを表示してくれます。

《コラム》扶養の「壁」を超えた時、目指す収入額と使える制度

◆「扶養内で働く」とは
 共働きの世帯では、夫・妻ともに正社員のフルタイマーで働いているケースもあれば、片方が会社員としてフルタイムの勤務をし、片方がパートやアルバイト等の短時間労働をしながら家事や育児、介護等を担っているケースもあります。
 ところで、会社員やアルバイト・パートの勤務経験がある方ならば、夫や妻の扶養控除を受けてパート等で働く際に「扶養内で働く」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
 これは、「扶養控除が受けられる範囲の中で働く」という意味で、収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が発生し家計全体の手取り額が減ることがあるため、その一定額以下の収入となるよう勤務時間や収入を調整して働くことを指しています。

◆税金の「壁」、社会保険の「壁」
 扶養控除には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあります。
 税金や保険料が発生する一定収入のラインを年収の「壁」と呼ぶことがあります。
 年収が103万円を超えると、税制上の扶養から外れて、超えた額に対する所得税を自分で納める義務が発生します。
 また、従業員が501人以上の会社で働く人は年収106万円、500人以下の会社では年収130万円以上になると、社会保険上の扶養から外れて、健康保険料や年金保険料を負担する必要が出てきます。
 ただし、社会保険の加入には条件があり、年収で被扶養者から外れても、労働時間が短い等の理由で自分の職場の厚生年金と健康保険に加入できない場合は、国民年金と国民健康保険に加入することになります。

◆「壁」を超えても損しない収入のラインは
 では、配偶者控除の「壁」を超えて勤務をするとしたら、具体的にはどのくらいの収入ならば税金や社会保険料を支払ってでも勤務をしたほうが、家計全体の収入が増加するのでしょうか。
 結果的には130万円の収入を超えて、自分で社会保険料や年金保険料を払い、所得税や住民税の負担もあると考えると、目安として180万円以上働かないと、家計の手取りは減ってしまいそうです。
 ただ、保険料の負担は大きくとも、会社の社会保険と厚生年金に加入できれば将来受け取る年金が増え、病気で休職した際に健康保険の傷病手当金の給付、会社を辞めても雇用保険の失業給付が受け取れるなど大きなメリットもあります。

【時事解説】どこまで進むかブロックチェーン技術の応用 その2

 暗号通貨の中核技術を担うブロックチェーンが近年、様々な分野で応用されるようになりました。ブロックチェーンは台帳のような機能を有しています。しかも、改ざんされにくいのが特徴で、これを利用して物流システムなどに応用されています。

 なぜ、ブロックチェーンは改ざんされにくいのでしょうか。物流システムを例に説明しましょう。ブロックチェーンには情報が詰まったブロックが連なっています。そして、個々のブロックは1つ前のブロックの情報が受け継がれています。中国で生産されたものを日本で生産したことにしようと、ブロックの一部、生産地を書き換えたとしましょう。すると、受け継がれた前のブロックと、書き換えたブロックとの間で、情報の差異が生じるので改ざんが発覚します。

 また、ブロックチェーンのもう一つの特徴は、台帳の管理はマイナーと呼ばれる記帳者らが行っている点にあります。マイナーは世界中、だれでも自由に参加できます。結果、不正を働くには、世界全体、無数に存在するマイナー全員を買収しなければなりません。これでは、不正を働いてもコストが見合わないというわけです。

 ブロックチェーンの台帳の機能を利用して、ある部品メーカーでは、部品の配送や納品状況をリアルタイムで把握するシステムづくりに取り組んでいます。

 アートの世界でも活用が進んでいます。音楽や絵画などの芸術情報に関して、ブロックチェーンを用いて台帳を作成し、オンラインで作品を売買するというものです。新型コロナウイルスの影響で美術館は閉鎖、個展の開催も困難になりました。ブロックチェーン技術の活用は芸術家たちの活動の支えにもなります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)