【時事解説】どこまで進むかブロックチェーン技術の応用 その1

2017年、仮想通貨バブルが起こり、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格が短期間で何倍にも跳ね騰がりました。なかでも、ブロックチェーンは仮想通貨の中核技術として注目を集めました。ところが、2018年に入るとビットコインなどの仮想通貨はのきなみ価格が急落してしまいます。バブルがはじけるとともに、ブロックチェーンは人々の記憶から徐々に消え去りました。

 その後、仮想通貨は暗号通貨と改称されます。そして、最近では再びブロックチェーンに注目が集まるようになりました。ただ、今回は暗号通貨としてではなく、別の分野にブロックチェーン技術を応用し、新たな取り組みを生んでいます。

 もともと、ブロックチェーンの主な機能はデータを記録することにあります。取引に関する履歴を記録すれば、ブロックチェーンは台帳のような役割を果たします。そして、この台帳は流通など、多岐に渡る利用が可能なのです。また、ブロックチェーンの最大の特徴は情報が改ざんされにくい点にあります。

 これらの特徴を活かした応用例を挙げると、食品偽装防止への取り組みが挙げられます。ブロックチェーンの中には文字通りブロックが多数存在し、これらは鎖のように連なっています。ブロック上に原材料の生産から加工、出荷まで、いつ、だれが、どこで行ったかといった情報を記録します。そうすることで、生産地の偽装などが防げます。

 ブロックチェーンは物流システム以外にも、たとえばPCR検査結果の証明書を発行するためのデータ管理、従業員のコミュニケーションの記録、芸術作品の管理など、さまざまな事項に応用できます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるテレワーク導入 その2

 では、中小企業におけるテレワーク導入においては具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。そこで『中小企業白書2020年版』において、「感染症BCP」に基づきテレワークなどの感染症対策を速やかに実施した企業として紹介されたサクラファインテックジャパン株式会社(本社:従業員数170名、東京都中央区)の事例ついてみていきましょう。

 同社は、医療用機械器具の製造・販売を行う企業です。同社では2013年の風疹の流行を踏まえ、同年から会社の全額費用負担で風疹・インフルエンザワクチンの社内での集団予防接種を実施しました。
 また、事前対策だけでなく、実際に感染症が流行した場合や従業員が感染した場合にも備える必要があると考え、東京都の感染症対応力向上プロジェクトへの参加を契機に2016年に「感染症に係る業務継続計画」(「感染症BCP」)を策定しました。同計画では、感染症流行時の具体的な対応策として、従業員の衛生管理の徹底や在宅勤務(テレワーク)が有効と記載されています。

 2020年春に新型コロナウイルスの発生を受け、同社では感染症BCPに基づき、すぐに発熱者の出社禁止などの措置を開始するとともに、メール、電話会議システム、チャットアプリを活用したテレワークを推奨しました。各部門内でチームを編成し、チームごとにオフィスと自宅とで勤務場所を分けてシフトを組むことで、感染予防と業務継続の両立を図りました。さらに、働き方改革の一環として導入していた時差勤務制度を拡充し、部門ごとに通勤時間を割り振ることで、感染リスクの低減を図りました。
 このように、感染症対策への備えが、テレワークや時差勤務の拡充へとつながっていったのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるテレワーク導入 その1

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中小企業においてもテレワーク導入が求められています。
 ここでは『中小企業白書2020年版』において紹介されたテレワーク導入の現状についてみていきましょう。

 総務省「平成30年通信利用動向調査」によると、全体ではテレワークを導入している企業の割合は19.0%となっています。資本金規模別にみると、資本金規模が小さい企業ほど、テレワークを導入している割合が低い傾向となっています。

 テレワークを導入しない理由についてみると、「テレワークに適した仕事がないから」と回答した割合が71.6%と最も高くなっており、次いで「業務の進行が難しいから(22.3%)」、「情報漏えいが心配だから(20.1%)」、「導入するメリットがよく分からないから(20.1%)」の順となっています。

 一方で、テレワークを「導入している」企業が導入の効果を感じているかどうかについてみると、「非常に効果があった」、「ある程度効果があった」と回答した企業の割合の合計は全体の79.2%を占めています。資本金規模別にみると「1,000万円未満」で56.5%、「1,000万円~3,000万円未満」で74.0%と中小企業規模でもテレワーク導入の効果を感じている企業の割合が高いことがわかります。

 テレワークを「導入している」企業の導入目的について最も回答割合が高いのは「定型的業務の効率性(生産性)の向上(56.1%)」となっています。また、「非常時(地震、新型インフルエンザ等)の事業継続に備えて」と回答した割合も15.1%と少ないながら存在することがわかります。

 このように中小企業のリスク対策の観点からもテレワーク導入の重要性が高まっているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》交際費の損金不算入制度

◆交際費課税の現状
 現在の交際費課税は以下のようになっています。
① 大前提として1人5,000円以下の飲食等については、交際費としなくてもよい。
② 資本金が1億円以下である法人は、交際費の50%を損金に算入するか、800万円までを損金に算入するかのどちらかを認める。
③ 資本金が1億円を超える法人は、交際費の50%を損金に算入することを認める。
④ 資本金が100億円を超える法人は交際費の損金算入は一切認めない。
 何をもって交際費とするかは諸説ありますが国税局は以下のように言っています。
「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」

◆企業は交際費をどれくらい使っているの
 国税局の最新(平成30年)の統計情報によれば、1億円以下の法人は、1社平均90万円弱です。それに対し1億円超の法人は1社平均1,000万円強です。全額否認される100億円超の法人は1社平均1億500万円です。全体の数字では圧倒的に数の多い1億円以下の法人が多いですが、1社当たりで見るとかなりの開きがあります。
 1億円以下の法人は800万円までの損金算入で十分かと思われますが、1億円超の企業は交際費の損金算入が認められれば、もっと交際費は増えると思われます。

◆コロナで飲食店は大打撃
 ご存知のように、コロナ騒ぎで飲食業界は大きく売上げを落とし大打撃を被っております。特に接待を伴う飲食店の打撃は大きなものがあります。
 景気が良くなるとはお金が実体経済でたくさん循環することです。
 本来交際費の損金不算入制度は、政策的な制度です。景気の動向を見て数年に一度は限度額や制度そのものを変更してきました。Go To Eatも結構ですが、この際交際費の損金不算入制度の見直しをしてもよいのではないかと思われます

《コラム》より拡充されるiDeCoとiDeCo+

iDeCo(イデコ)とiDeCo+(イデコプラス)の制度がより拡充されています。

◆iDeCo(イデコ)とは
 iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です。iDeCoは加入者が自分で申し込み、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用します。
 iDeCoでは、掛金を払い込むと所得控除の対象となり、運用期間中の運用益は非課税とされ、そして給付を受け取るときには退職金又は公的年金として扱われ、税制上の優遇措置が講じられています。

◆iDeCo+(イデコプラス)とは
 iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)とは、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)を実施していない中小企業(従業員300人以下に限る)の事業主が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、iDeCoに加入している従業員が拠出する加入者掛金に追加して、掛金を拠出できる制度です。
 事業主が拠出した掛金は、全額が損金に算入され、こちらも税制上の優遇措置が講じられています。実際に導入するには労使で合意し、イデコの実施主体である国民年金基金連合会に届け出る必要があります。

◆改正点
①iDeCoの改正
 これまでiDeCoでは60歳未満の国民年金被保険者が加入可能でしたが、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、2022年5月からは国民年金被保険者であれば加入可能となりまました。これにより60歳以上のiDeCoについては、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者であれば加入可能となります。また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。
②iDeCo+の改正
 2020年10月から、従業員要件が100人以下から300人以下に拡大されました。これにより加入可能者が一気に4割増え、2253万人に増えるそうです。

《コラム》「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定

◆副業・兼業ガイドラインの改定
 厚生労働省は、令和2年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、「副業ガイドライン」)を改定しました。
 我が国の労働および社会保険諸法令では、特に正社員が複数企業で雇用されることは前提とされていませんでした。
 一方、労働力人口の減少や副業・兼業のニーズが高まったことで、複数企業での雇用に配慮した制度が求められていました。
 厚生労働省は、平成30年1月に「モデル就業規則」を改定し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と副業・兼業を認める内容に変更していましたが、当時策定された「副業ガイドライン」で不明確だった論点が、今回整理されたことになります。

◆副業・兼業における問題点
 副業・兼業による複数企業での雇用によって、以下のような問題が生じます。
・複数事業所間での労働時間管理
・時間外労働に対する割増賃金の負担
・労働保険・社会保険の適用
 使用者は、労働者の申告により、副業・兼業先の事業内容や従事する業務、労働時間の通算対象を確認した上で、新たに策定された「管理モデル」を基に、労働時間の管理や割増賃金を負担することになります。
 労災保険は複数適用で、雇用保険は複数適用が原則認められませんが、令和4年1月以降、65歳以上で合算して条件を満たす場合は適用が認められるようになります。
 社会保険は事業所毎に判断するため、複数の事業所で適用される場合はいずれかの事業所の保険者を選択して、適用されます。

◆副業・兼業で労使に生じる義務
 「副業ガイドライン」の改定で、使用者は安全配慮義務、労働者は秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務を負うことが明確にされました。
 労働者には、秘密保持や競業避止など従来と同様の義務が課されますので、使用者はこれらの義務が履行されない懸念がある場合には、副業・兼業を禁止または制限しても構いません。

《コラム》カレンダー上の祝・休日と会社の休日は同じではないの?

◆正月休みはカレンダー上の休日ではない?
 関与先で働く外国人から「周囲の人たちの話を聞くと1/2-3は休業日らしいが、カレンダーではそんな記載はされていない。何を参照すれば休日がわかりますか?」という質問がありました。当たり前と思っていた正月休みも確かにカレンダー上は祝日ではありません。どんな背景でしょうか?

◆国民の祝日と行政機関・銀行の休日
 国民の休日は「国民の祝日に関する法律」で定められていますが、1/2-3は祝日ではありません。一方、「行政機関の休日に関する法律」では12/29-1/3が行政機関の休日とされています。一般的には、銀行の休日(年末は12/31-1/3)に合わせて年末休みの開始日が変わってくるものと思われます。
 行政機関や銀行が休みだし、年末年始休暇が慣習的にあるので、1/2-3の正月休みが定着しているものと考えられます。

◆労働基準法で規定の労働時間、休憩、休日
 労働者の労働時間や休日は労働基準法で定められています。
(1) 労働時間、休憩
 労働時間は、原則として休憩時間を除き、1週間について40時間・1日8時間(法定労働時間)を超えてはいけません。労働時間が6時間超の場合は45分以上、8時間超の場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。
(2)休日 
 労働基準法では、休日に関し、「使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」(法定休日)と規定されているだけで、いつを休みとするかは規定されていません。
 ただし、一般的な労働時間制限では1週間に1度の休日では、週の労働時間が40時間を超えてしまうため、休日をもう1日設けなければいけないことになります。もう1日は会社が自由に決められる所定休日(法定外休日)となります。会社の創立記念日や国民の祝日を休日と定めた場合も、それらは所定休日となります。
 休日とは、日曜日や祝祭日である必要はなく、事業主と労働者の合意により任意に決定することができます。業種や労働環境で一律には決められません。
 以上の背景から、「一般的に、週休2日で土日を休みとし、年末年始・お盆休暇を設けている。よって、日本では1/2-3を休業日としている会社が多い」というのが冒頭の質問に対する回答と言えます。

《コラム》 解明待ちの「土地の上に存する権利」

◆小規模宅地特例と配偶者敷地利用権
 相続税に於ける小規模宅地特例は、「土地又は土地の上に存する権利」について適用されるとしているので、配偶者居住権に基づく敷地利用権が「土地の上に存する権利」に該当しなかったら、小規模居住用宅地特例の対象にはなりません。

◆昨年、令和元年度政令改正
 昨年は、租税特別措置法では配偶者居住権について特別な改正をしていません。それにも拘わらず、配偶者居住権に基づく敷地利用権は小規模居住用宅地に当然に該当すると考えられたらしく、その計算規定が政令に、新規挿入されています。
 法改正なしでの政令規定新設の理由が財務省「税制改正の解説」で確認できます。すなわち、配偶者居住権は、借家権類似の建物についての権利であるが、配偶者居住権に付随するその目的となっている建物の敷地を利用する権利(敷地利用権)については、当然に「土地の上に存する権利」に該当すると理解されるから、ということのようでした。

◆今年の、令和2年度税制改正の解説
 ところが、同じ、財務省「税制改正の解説」の今年度版(9月11日公開)には、対価を伴う配偶者居住権の消滅には譲渡と同じ効果がある、所得としては総合課税の譲渡所得と考えられる、配偶者敷地利用権は「土地の上に存する権利」には該当しない、と書かれています。
 配偶者敷地利用権は、土地に関係する権利ではあるが、鉱業権・温泉利用権・借家権の仲間であり、「土地の上に存する権利」と言われる借地権の仲間ではない、ということです。
 昨年と今年で明らかに相違しており、この相違に問題が無い、との解説は今のところ出ていません。

◆土地の上に存する権利と相続税・所得税
 昨年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は相続税の改正の項目に関するものでした。今年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は所得税の改正の項目に関するものでした。
 相続税では、配偶者敷地利用権は土地の上に存する権利に該当するとされ、所得税では扱いが異なり、土地の上に存する権利には該当しない、とされたことについて、誰しもが疑問としているところなので、解明が待たれるところです。

《コラム》台風で休んでも給与は発生する?災害時の労務管理

◆突然の災害! その時社員は…
 日本は、災害列島と表現されることもあるほど、自然災害の多い国です。
 日本各地で発生する地震や台風、豪雨、津波、噴火などの厳しい自然災害は、私たちに突如として襲いかかり、日常生活を大きく変えてしまいます。
 災害に備え、いざという時に慌てないためにも、日頃から避難経路の確認や防災用品の備蓄を心掛けたいですね。
 ところで、もし職場にいる時や出勤前に災害が起こったら、労務管理上はどのような対応になるのでしょう。
 交通網が麻痺していない限りは出勤するべきなのでしょうか。また、危険を回避するために自己判断で休んだ場合、給与の取扱いはどのようになるでしょう。

◆労働者都合か、使用者都合か
 まず、労働基準法第26条に、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中該当労働者に、その平均賃金の100 分の60 以上の手当を支払わなければならない」とあります。
 しかし、天災は「使用者の責に帰すべき事由」には当たりません。例えば、台風により公共交通機関が停止して、職場に通勤不可能であった場合も、通勤は可能であったが労働者側が危険回避等のため自己判断で休んだ場合も、使用者都合とは言えず、ノーワーク・ノーペイの原則に則り、従業員が勤務しなかった部分については、給与を支払う必要はありません。
 ただし、労働者判断ではなく、労働者への配慮として会社側の判断で自宅待機、早退等とした場合は、前述の「使用者の責めに帰すべき事由」となるので、休業手当を支払う必要があります。

◆特別休暇の整備など柔軟な対応を
 天災は誰の責任でもありません。法律上は休業補償が必要ではない状況ではあっても、会社側は、可能であれば有給休暇や特別休暇として積極的に休暇取得を促した上で通常勤務分の賃金を支払う等、なるべく社員の気持ちに寄り添った対応をしたいものです。
 地震や大雨による事業所の被災でやむなく休業し、その際に休業に関する手当を支払った場合は、雇用調整助成金の対象となる場合がありますので併せて確認してみましょう。

 

【時事解説】役員報酬における『縦の公平性』と『横の公平性』 その2

役員報酬の決定には、ある種の公平感が必要となりますが、その公平感には二種類あります。一つは、株価や業績を評価基準にして他の同業他社の経営者との比較を行う、いわば「横の公平性」であり、もう一つが、同じ会社の一般社員との比較による「縦の公平性」です。

 これまで、日本では「縦の公平性」を重視してきましたが、経営報酬の透明化はもっぱら「横の公平性」を基軸としたものとならざるをえません。一方、経済成長の鈍化で、全体のパイは変わりませんから、「横の公平性」を重視すればするほど、「縦の公平性」は失われていきます。その結果、経営層と従業員との給与格差は拡大していくでしょう。

 一般社員の給与と関係なく、経営者報酬だけが右肩上がりになるのは社会にとって決して望ましいことだとは思いません。高所得者には使い切れない資金が残る一方、低所得者の窮乏化は進み、社会の分断は加速し、トータルとしての消費にはマイナスに作用します。また、経営者報酬の株価連動化がより鮮明になれば、経営者は短期的な株価の上昇ばかりを気にかけ、長期的な会社の成長がおろそかになることも懸念されます。

 そんな懸念をよそにグローバル化の名のもと、「縦の公平性」を犠牲にした「横の公平性」が一層幅をきかす時代になりそうです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)