《コラム》チケット払い戻しをしないで、寄附金税額控除を受ける

◆「推し」を助ける? 寄附金控除
 「推し」という言葉をご存じでしょうか。「一推しのメンバー」の略語「推しメン」をさらに短縮させた言葉です。以前から使われていましたが、趣味の重層化によりそのジャンルの中で「特に好きな」ものを指す言葉として近年使われています。
 昨今のコロナ禍により、スポーツや文化イベントは軒並み中止や縮小の憂き目を見ています。推したちが苦しんでいる中、「少しでも助けてあげたい」というファン心理を察した……かどうかは分かりませんが、コロナ対策税制の1つに「イベントチケットを払い戻さない場合は税の控除が受けられる」というものができました。

◆払い戻し放棄で税額控除になる
 申請を行い、文部科学大臣指定を受けた主催者側は、チケットを買ったお客さんの払戻請求権放棄の申し入れを受けたら、「払戻請求権放棄証明書」と「指定行事証明書(写し)」を渡します。お客さん側はその2点をもって確定申告することにより、税額控除が受けられるようになります。
 控除される所得税額は(チケット代金-2,000円)×40%(※所得税率45%の場合は所得控除の方が有利)となります。住民税側についての控除も用意はされていますが、政令によって指定された場合のみの対応となりますので、お住まいの自治体により異なります。また、一個人の控除になるチケット代金は年間20万円が上限です。
 チケット代金を全額返金してもらった場合と比べると、この控除を使うと約40%が返金となり、戻りは悪くなります。ただしチケット代全額が主催者側の売上げになるため「推しを助ける」という寸法です。

◆対象にならないものもある
 大前提として、イベント主催者側が国に対して申請をしなければ、この寄附金控除は受けられません。
 国内開催も要件に含まれていますから、海外のイベントだとNGになります。「払い戻しがされた、もしくはされる予定があること」も条件ですから、「払い戻しはしません」というアナウンスがされているイベントの場合は、国への申請が通りません。

【時事解説】インフレ目標に対する違和感 その2

しかし、金融政策の前向きの有効性は減退したとしても、間違えたときの後ろ向きの弊害には依然大きいものがあります。必要以上に金融を膨らませることにより、貨幣の信頼性の失墜を招けば、国民生活は悲惨なものになります。
 もはや、その実力もないのに、できるといってインフレ目標に執着するのではなく、弊害も考慮した金融システムの維持に政策の重点を移した方がいいのではないかと思います。

 さらに、インフレ目標に執着することの弊害をもう一つ挙げておきます。それは物価を高めるということに対する庶民感情としての違和感です。一般庶民の普通の感覚とすれば、物価は低いに越したことはないからです。

 物価が上がることにより、消費が刺激され、生産が拡大し、個人所得が拡大し、経済の好循環が継続するという当局の意図は分からなくもないのですが、今のところ、そんな循環は起きそうにありません。物価上昇は物価上昇単独で終わってしまう危険性が大です。形式的な物価上昇だけを目標とするのであれば、原油価格の上昇や場合によっては消費税の増税も歓迎されることになってしまいます(日銀が目標とするインフレは増税分やエネルギー価格は除いて算定されることになっています)。

 個人所得の増大を伴わない物価上昇は庶民に望ましくはありません。物価上昇が個人所得を増大させるという明確な経路を提示できないなら、インフレ目標への執着は庶民感情からしても合理的な政策目標とはいえないと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】インフレ目標に対する違和感 その1

日銀はインフレ率2%を目標に、金融緩和を行ってきましたが、目標達成はなかなか難しい状況です。日銀は目標の達成時期を何度も延期はしてきましたが、インフレ目標そのものの旗は降ろしていません。当初の意気込みが大仰だっただけに、目標の撤回は難しいのでしょうが、そろそろ、インフレ目標に執着することの弊害にも気を付けた方がいいように思います。

 昔は物価のコントロールは日銀の専権事項であることに誰も疑いを持っていませんでした。この間の日銀の金融政策手段は、主として公定歩合操作を中核とする金利政策でした。しかし、民間にマネー余剰が蓄積し、金利が0に近づくにつれ、金利政策の実行が困難になり、日銀の物価コントロール能力に疑問が生じるようになります。ここで日銀の金融政策について大きく2つの見解が対立することになります。伝統的な金利政策は有効でないとしても、非伝統的な量的金融緩和により、物価をコントロールできるとするリフレ派と、量的金融緩和では物価のコントロールは難しいとする反リフレ派です。

 白川前総裁時代の日銀は反リフレ的立場を取っていたのですが、安倍政権の誕生以降リフレ派に転換します。総裁、副総裁以下現在の日銀の審議委員の多くはリフレ派であり、大胆な金融緩和を行ってきましたが、インフレ目標は達成できていません。今でも、インフレにならないのは量的緩和不足だと言っているリフレ派もいますが、筆者はリフレ論争はリフレ派の敗北ということで決着がついたと思っています。日本で物価が上がらない理由は理論的に解明されていませんが、はっきりしているのは金融政策だけでは物価は制御できないということです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

《コラム》令和2年度 産業保健関係助成金

◆新たに副業・兼業者の健康診断を助成
 独立行政法人労働者健康安全機構では、事業者が行う労働者の健康管理、健康教育などの産業保健活動を支援する事業を行っています。例えば、従業員50人未満でストレスチェックが努力義務となっている事業主に対し、実施促進のために支給するストレスチェック助成金など、以下の助成金があります。
<令和2年度版 産業保健関係助成金>
https://www.johas.go.jp/tabid/1689/Default.aspx
①治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース・制度活用コース)
②ストレスチェック助成金
③職場環境改善計画助成金(事業場コース・建設現場コース)
④心の健康づくり計画助成金
⑤小規模事業場産業医活動助成金
⑥副業・兼業労働者の健康診断助成金

 この⑥が今年度から新たに設置されたものです。副業・兼業で働いている人は、一般に1つの企業での就労時間数が短く、健康診断の実施義務の対象外となってしまうことから、この助成によって実施を促進しようとするものです。

◆助成を受けるための要件
 この助成金の対象となる「副業・兼業労働者」とは、a)40歳未満、b) 本業や副業を問わず、雇用されている全ての事業場において1週間の労働時間数が当該事業場における同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満、の2点となります。
 助成額は、1労働者当たり1万円、対象者が複数いる事業場の場合は10万円が上限です。申請は5月29日から受け付けがスタートしています。
 副業・兼業での働き方は、まだ法整備が追い付いていないこともあり、企業側にとっては対応が難しい部分もありますが、不安定な雇用環境を背景に広がっていくと考えられます。より優秀な人材を集めるためにも、助成金の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

《コラム》居住用特例重複適用

◆会計検査院が実態報告
 会計検査院の検査報告によると、新居を購入し住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に売却して居住用資産譲渡の3000万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成28年、29年の2年間で37人いたとしています。措置法特典の重複適用の指摘です。そして、この37人の重複減税額の合計が5011万円であった、としています。

◆立法作業の疎漏の指摘か
 会計検査院は、法の想定外の事態として、重複適用になってしまっている、と把握しています。これが本当に、元々法の予定していなかった措置法特典の重複適用なのか、そうでないかは不明です。
 例えば、居住用財産譲渡の3000万円控除と10%軽減税率は、共に措置法規定ですが、重複適用排除はされてないので、重複適用排除の原理があるわけではありません。
 会計検査院の言うようにあるべきでない重複適用なのだとしたら、それは、立法作業における法律の規定が疎漏だったということになります。

◆疎漏の内容は期間のズレ
 法律の規定が疎漏だったとした場合のその内容は、居住用財産の譲渡所得からの3000万円特別控除の規定の適用が、居住の用に供さなくなってから3年を経過する日の年末までの間に譲渡した場合に適用されることになっているのに対し、住宅ローン控除の適用の規定は、新居に入居した年、その前年又は前々年、また、翌年又は翌々年中に、旧居につき居住用財産の特例の適用を受けていないこと、となっていて、両者の期間にズレがあることです。
 3000万円特別控除の規定は居住終了から足かけ4年、住宅ローン控除の適用の規定は新居に異動してから足かけ3年、と異なっていたことです。

◆今年の税制改正で対応
 会計検査院の指摘を受けて、この期間のズレ問題は、今年の税制改正の一項目になり、住宅ローン控除の規定の中にある「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」という文言に改正され、この疎漏だったかもしれない点は消滅しました。
 なお、同じ条文に、親の居住用財産を相続した後に空き家譲渡した時の3000万円特別控除がありますが、これは特に制限されていません。

【時事解説】テレワークがもたらす日本型雇用制度の改革 その2

コロナ禍によりテレワーク(在宅勤務)が広まりつつある中、ジョブ型雇用を導入する企業が増えています。ジョブ型雇用では仕事の達成度合いが評価の基準になります。

 先日、日立製作所は約2万3000人を対象に、ジョブ型雇用の導入を表明しました。ほかにも、NTTグループやカルビー、資生堂など、多くの企業で導入を表明しています。ようやく、日本の労務管理のあり方にも変化の兆しが見えるようになりました。

 とはいえ、成果主義の導入は、1990年初のバブル崩壊や2000年初頭のITバブル崩壊など、経済危機が訪れるたびに話題となりました。それでも、日本の社会には馴染めず定着しませんでした。
 理由は多岐に渡りますが、評価基準に対して社員の不満が拭えないことが一つとしてあります。労働に対して職務の達成度が評価の基準となれば、短期間で成果を挙げた人が高く評価されるようになります。会社にとって大切な仕事なのに、地味で成果が見えにくい仕事に就くと不当に低く評価されてしまうことも不満の要因になりました。
 また、中には、お金を多くもらうことが必ずしもモチベーションに繋がらないという人もいます。お金よりもやりがいのある仕事に就き、徐々に重要なポジションに就くことがモチベーションに繋がるという人も少なくありません。このような層に対しては、仕事の達成度で賃金を支払うだけでは十分とは言えません。達成度が高ければ、次はさらにやりがいのある仕事や重要なポジションに就けるといったインセンティブが必要になります。

 今回のジョブ型雇用は日本社会に根付くのか。あるいは、かつての成果主義のように消滅していくのか注目したいところです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】テレワークがもたらす日本型雇用制度の改革 その1

働き方や人事評価制度について改革の必要性が叫ばれて久しいのですが、これまでは一向に進みませんでした。ところが、コロナ禍によりテレワーク(在宅勤務)が広まり、雇用体系にも変化が表れ始めています。

 変化の一例を挙げると、ジョブ型雇用の導入があります。ジョブ型雇用とは成果を重視する雇用制度で、働き手は、まず自身の業務内容を職務定義書に定めます。賃金は職務の達成度合いを重視して支払われるというものです。日本企業の多くは、働き手に対して労働時間をもとに管理し、賃金を支払う形をとってきました。ただ、テレワークが広まり労働の状況を時間で管理するのが難しくなりました。そこで、時間以外の基準で管理することが必要になり、ジョブ型雇用を導入する企業が増えたのです。仕事の達成度で評価すれば、時間で管理しなくても評価できるようになります。
 働き手にとっても、働き方の自由度が増すというメリットがあります。子育てや家事の隙間時間を活用すれば、より多くの仕事ができます。また、親の介護と仕事の両立も可能になります。

 変化は管理の基準だけでなく、採用にも現れました。社員の採用で、出社を前提としない雇用契約を結ぶ企業も生まれています。また、「国内ならどこに住んでいてもいい」とルールを設定した会社もあります。
 近年、人材不足に悩む企業は少なくありません。テレワークを前提に採用できるようになると、オフィスに通えない遠隔地に住む人材も採用でき、多様な人材を獲得できるチャンスが広がります。
 テレワークの導入には、これまで社会が抱えていた課題の解決に繋がるといったメリットもあります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》配偶者居住権は譲渡性資産か

◆配偶者居住権への昨年の税制措置
 平成30年の民法改正で創設され本年4月1日から制度がスタートしている配偶者居住権等については、その権利設定期間中の権利放棄や合意解除は可能と解されるものの、民法では、終身性の一身専属権ゆえ「配偶者居住権は、譲渡することができない」と規定されています。
 昨年の税制改正で相続税法に配偶者居住権等の評価規定が定められ、その上で、配偶者居住権等消滅に当たり対価がなければ、贈与課税の対象となる、と通達で明らかにされているところです。

◆配偶者居住権消滅の場合の譲渡所得
 本年改正では、収用や権利消滅で補償金や権利消滅の対価を受け取り、その結果、配偶者居住権等が消滅するときは、譲渡所得の計算をすることになりました。
 収用による配偶者居住権等の権利消滅の直接の相手は収用機関で、権利消滅の対価は譲渡収入とみなすとのみなし譲渡の規定になっています。
 また、収用に限らず、配偶者居住権等の権利消滅一般の場合の規定も作られ、自動的に譲渡所得の計算をするとされ、こちらについてはみなし譲渡の文言はありません。

◆改正税法と民法規定との関係
 みなし譲渡なら、民法の譲渡不可の規定と矛盾しないかもしれませんが、対価のある配偶者居住権の権利消滅につき無条件に譲渡所得計算をする、ということになると、配偶者居住権を譲渡性資産と認定するに等しく、民法との矛盾は明確です。
 その上、収用では、借地権の場合と同じく、配偶者居住権者と所有者の両方が譲渡当事者となることを前提としていますが、税法は、収用以外の譲渡一般でも、そのようなケースが生じることを想定しているのかもしれません。

◆譲渡課税が当然との体制整備は未だ?
 収用による権利消滅が譲渡で、土地建物所有者との合意や放棄による権利消滅も譲渡で、その他収用類似の権利消滅もみな譲渡だとすると、配偶者居住権は自ずと居住用の財産と認識されますので、居住用財産の3000万円控除、軽減税率、買換え特例の適用などについての手当が必要になってくるように思われます。
 これらについて法改正を今年の4月1日以後に向けて何故に用意してないのか、不思議です。

《コラム》職場のハラスメント行為防止 取り組み強化のポイント

◆企業のパワハラ対策を義務化
 職場でのいじめや嫌がらせなど、パワーハラスメントについては、これまでも社会問題として多くの議論がありました。
 パワハラは労働環境を悪化させ、労働者に精神的・身体的苦痛を与える行為で、それをきっかけに労働者が休職や離職に追い込まれる場合も少なくありません。
 一方で、その対応については企業の自主性に任されてきました。
 2020年6月から、労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」が施行されます。本改正により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となり、適切な措置を講じていない場合には是正指導の対象となります(企業規模等によって義務化の時期が異なります。中小企業は2022年4月より施行)。また、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

◆パワーハラスメントに当たる行為とは?
 パワハラに対処する上で課題となっているのは、適切な教育・指導との線引きが曖昧な点です。何でもパワハラだと決めつけることで、必要な指導が行われない事態は避けなくてはなりません。
 政府は、職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
①優越的な関係を背景とした
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
③就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
 これに加え、政府が示す「パワハラに該当すると考えられる例・しないと考えられる例」も参考に、一見該当しないケースでも幅広く労働者の相談に乗るなど、適切な対応が求められます。

◆セクハラ、マタハラ防止対策も強化
 パワハラ防止に加え、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法の改正により、セクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業等のハラスメント等の防止対策についても、対策の強化が求められています。  
 セクハラ等に関して相談した労働者に対して不利益な取扱いを行うことが禁止される等の改正点を確認しておきましょう

【時事解説】中小M&Aガイドラインについて その2

では、2020年3月に中小企業庁によって策定された「中小M&Aガイドライン」ではどのようなことが書かれているのでしょうか。そこでM&Aガイドラインの骨子についてみていきましょう。

 まず、第1章「後継者不在の中小企業向けの手引き」の骨子をみると、第1節「後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義等」においては、中小M&Aの20の事例を紹介しています。また、後継者不在企業におけるM&A検討にあたっての基本姿勢や留意点などについて示しています。
 第2節「中小M&Aの進め方」においては、中小M&Aの基本的なプロセスを図解するとともに、仲介者等を選定する場合における注意事項や、契約締結時のセカンド・オピニオンの重要性など、実践的な進め方を提示しています。
 第3節以降は「M&Aプラットフォーム」、「事業引継ぎ支援センター」の特徴などを紹介するとともに、手数料の種類などについて解説しています。

 つぎに第2章「支援機関向けの基本事項」の骨子をみると、第1節「支援機関としての基本姿勢」においては、中小M&A支援機関に対し、事業者の利益の最大化の基本姿勢を提示するとともに、支援機関同士による積極的な連携の必要性について述べています。
 第2節以降は、支援機関を①M&A専門業者、②金融機関、③商工団体、④士業等専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士等)、⑤M&Aプラットフォーマーに大別し、各支援機関の中小M&A支援の特色や、求められる具体的な支援内容や留意点について示しています。

 このように「中小M&Aガイドライン」は中小企業経営者と支援機関の双方に対し、中小M&Aの適切な進め方を提示しているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)