【時事解説】イベント自粛、損失を抑える工夫とは その2

新型コロナウイルスは私たちの健康だけでなく、経済に大きな打撃を与えています。中でもエンターテインメント業界が受ける打撃は極めて大きいものがあります。ただ、先日、窮地に陥った音楽ユニットが、ネット配信を通して1億円もの収益をあげました。どのようにして収益を挙げたのでしょうか。

 YouTubeにはスパチャ(スーパーチャット)といって、路上ライブの投げ銭のような機能があり、ライブの配信動画を観ている観客はスパチャを通して、配信者を応援することができます。金額は100円から最大5万円まで、自分が選んだ金額を配信者に送ることが可能なシステムです。金額が200円以上ならばメッセージを送ることも可能で、自分が送ったメッセージは投げた金額に応じて一定時間、画面に残ります。また、金額が多いほど目立つ色に装飾表示されます。メッセージを目立たせることで、配信者の目にとまりやすくなります。先の音楽ユニットのライブでは、ファンから、励ましのメッセージがたくさん届きました。ピンチはチャンスといいますが、この音楽ユニットは金銭面だけでなく、ファンとの絆を強めたという側面もあります。

 同様に、あるビジュアル系ロックバンドもツアー中止にともない、「エアライブ」が話題になりました。エアライブは文字どおり、実際は開催されていない架空のライブを指します。このロックバンドのファンがツイッター上であたかもライブがあるようなつぶやきをしたのです。一人、二人と数が増え、これにバンドのヴォーカルが自身のツイッターで「リハなう」と投稿。過去のライブの写真をアップし、ファンに応えるという心温まるやり取りがありました。

 打撃を完全に回避することは難しいですが、工夫次第で普段は得られない大切なものを得ることができるといえます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】イベント自粛、損失を抑える工夫とは その1

 感染拡大が懸念される新型コロナウイルス。世界での感染者は累計で23万人を超え、死者は1万人に達しました(3月20日現在)。WHO(世界保健機関)は「パンデミック」、世界的大流行の状況にあると表明。混乱状態が続いています。

 健康を害する脅威だけでなく、経済への打撃を懸念する声も上がっています。家に引きこもる人が増えたため、小売業や飲食業は売上げが減り雇用の維持が危ぶまれています。また、2019、20年度のGDPは2年連続のマイナス成長になるとの予想もあります。

 サービス業の中でもエンターテインメント業界が受ける打撃は計り知れないものがあります。コンサートなどのイベントが軒並み中止となりました。アーティストの中には、チケットの払い戻し代金などで負債を抱えるケースも生じています。小さい芸能事務所にとって、負担は死活問題です。

 先日、ある音楽ユニットが全国ツアーを中断しました。ただ、このユニットは絶望的な状態を抜け出すことができました。何を実施したかというと、無観客でライブ開催、そして、その様子をインターネットで配信しました。実は、YouTubeには、スパチャ(スーパーチャット)といって、路上ライブの投げ銭のような機能があります。ファンはユニットの経済的な損失を心配し、スパチャで送金することにしたのです。結果、このアーティストには1億円を超えるスパチャが集まり、窮地を脱することができました。

 日本国内では、イベント中止のほかにも、外国人観光客の減少によるインバウンド需要の減少や部品供給の停滞による生産中止など、様々な困難が降りかかっています。そんな中、諦めずに解決策を見つけることが大切といえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略 その2

では、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略において新たに追加された2つの横断的な目標とはどのような内容なのでしょうか。以下でその内容についてみていきましょう。

 まず、横断的な目標の1つ目として、「多様な人材の活躍を推進する」が掲げられました。
 上記の目標に向けては施策の柱が2つ設定されています。1つ目が「多様なひとびとの活躍による地方創生の推進」です。地方創生の取組みの継続・発展には、地域に関わる一人ひとりが地域の担い手として自ら積極的に参画する必要があることから、そのための施策を推進します。
 2つ目が「誰もが活躍する地域社会の推進」です。若者、高齢者、女性、障害者、外国人などといった多様な人材のそれぞれが居場所と役割を持ち活躍できるための施策を推進します。

 つぎに、横断的な目標の2つ目として、「新しい時代の流れを力にする」が掲げられました。
 上記の目標に向けては施策の柱が2つ設定されています。1つ目が「地域におけるSociety 5.0の推進」です。Society 5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を指します。こうした社会の実現に向けて人工知能などの未来技術の地方での活用を推進します。
 2つ目が「地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり」です。SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年を期限とする国際社会全体の17の開発目標を指します。SDGsの理念に沿ってまちづくりを進めることで、政策の全体最適化や地域課題解決の加速化が期待できます。
 このように最近の社会・経済情勢の変化を踏まえ、新たに横断的な目標が追加されたのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略 その1

2015年度を初年度とする5か年の地方創生に向けた目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が2014年12月に公表されてから5年が経過しました。
これを受けて第1期の5年間で進められてきた取組みの検証を行いつつ、2020年度を初年度する今後5か年の目標や施策の方向性等を取りまとめた、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略が2019年12月に公表されました。

 第2期総合戦略では、第1期総合戦略で掲げた4つの基本目標一部見直しが行われたことに加え、新たに2つの横断的な目標が追加されたことが特徴としてあげられます。
 4つの基本目標の変更点についてみると、基本目標1「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」において、「稼ぐ地域」という表現が追加されることで、地域の特色・強みを活かした産業振興や企業の競争力強化を図り、効果的に域外から稼ぐ経済構造の構築を目指す点があげられます。また、基本目標2「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」において、「地方とのつながりを築き」という表現が追加されることで、その地域や地域の人々に多様な形で関わる人々、すなわち「関係人口」を地域の力にしていくことを目指す点があげられます。
 さらに、基本目標4「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」において、「ひとが集う」という表現が追加されることで、人々の様々な希望をかなえる「まち」の魅力をつくることを目指している点があげられます。

 このように、第2期総合戦略では東京一極集中の是正に向けた取組みを強化するために基本目標の見直しが行われたのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》2020年4月以降時間外・休日労働の上限規制が中小企業にも適用

◆時間外労働・休日労働の従来の規制
 1日8時間、1週40時間(44時間の例外あり)を超える時間外労働は、いわゆる36(サブロク)協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで認められています。
 従来、時間外労働は月45時間、年間360時間(1年単位の変形労働時間制の場合、月42時間、年間320時間)が大臣告示による上限とされ、決算や急な納期変更などの特別の事情がある場合、月45時間超の時間外労働は年6回を限度に、36協定に特別条項を締結することで、実質上限なしで認められていました。

◆新たな時間外労働・休日労働の上限
 大企業には既に2019年4月から適用されていますが、中小企業も2020年4月から上限規制が適用されます。
 上限規制では、従来の月45時間、年間360時間に加え、特別な事情がある場合でも、以下の全てを下回ることが必要となります(月45時間超年6回までは同じ)。
①年間720時間(時間外のみ)
②1月100時間(時間外+休日労働)
③複数月平均80時間(時間外+休日労働)
(複数月とは、2~6か月のこと)
 上限を超えた場合は従来の行政指導ではなく、労働基準法32条、36条の6違反として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則対象となります。

◆36協定の新様式とチェックボックス
 また、中小企業が2020年4月以降に届け出る場合、36協定の様式が変更となります。旧様式での届出は受理されないので、注意が必要です。
 新様式には、「上記で定める時間にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと□」とあります。□にチェックがない場合、労働基準監督署は受理せず、その場での補正も認めないようですので、出直しとなります。届出前に必ず確認しましょう。

《コラム》年休付与の賢い方法 5日義務も怖くない!様々な年休消化の仕方

◆年次有給休暇の取得状況
 厚生労働省が2019年10月に発表した就労条件総合調査によると2018年の年次有給休暇取得率は52.4%と前年から1.3ポイント上昇しています。取得日数は平均9.4日で大企業ほど取得率が高くなっています。
 労働者側の自分の仕事が大変になったり職場に迷惑がかかったりするというためらいも、取得が進まない原因になっているようです。厚労省は2020年に取得率7割を目指すとしていますが目標には遠く、2019年4月からの働き方改革の一環で年5日の有給休暇取得義務付けがされました。

◆取得促進のための各制度
 年休は原則1労働日単位での取得ですが、各社で決まりを作っておけば良く、半日年休も60%以上の企業が利用していますし、計画年休も35%が導入しています。
 それぞれの特徴を見てみます。
・半日単位年休……労使間の合意により半日年休制度を設け、半日単位で与えることも可能です。年休を半日単位で付与するにあたって就業時間のどの時刻で前半と後半に分けるかは労使合意により決めます。
・時間単位年休……年次有給休暇は労使協定により年5日までは時間単位で付与することができます。従業員はプライベートな用事に充てることもでき小刻みに休みをとることで仕事が溜まってしまうということもないのでありがたいのですが、企業側は時間管理の手間がかかることもあるのでシステムなどとの連携が必要かもしれません。
・計画年休制度……労使協定に基づいて企業側で計画的取得ができるもので一斉に又は部署ごとに夏季、年末年始休暇などに合わせて設定もできます。各人の付与日数の5日を超える日数について計画的に取得してもらうことができます。
・働き方改革の年休時季指定……2019年4月から働き方改革の一環で休暇が10日以上付与されている従業員に年5日の有給休暇を時季指定しなくてはならなくなりました。本人が自分で取得した日や計画年休もこの5日に含まれるので、5日以上取得している方は対象ではありません。この時季指定を今まで本来休業日であった休暇に代えて5日の有給休暇に充てるのは法の趣旨に反するので労使でよく話し合って協定を交わし、就業規則に載せるのが良いでしょう。

《コラム》成年後見制度と障害者控除

◆成年後見制度とは
 不動産・預貯金などの財産管理や、介護などのサービスや施設への入所に関する契約の締結、相続が発生した場合に遺産分割協議などをする必要があっても、認知症や知的障害などの理由で判断能力が不十分になると、これらを自分ですることが難しくなってきます。また、判断能力が不十分になってしまうと、自分に不利益な契約であってもよく理解ができずに契約を締結してしまい、悪徳商法の被害にあう危険もあります。
 成年後見制度は、このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。従来の禁治産・準禁治産制度に代わり、平成12年4月からスタートしています。

◆税理士会も支援しています
 税理士は、普段より、事業を営む方の税や経営に関することや個人の方々の資産管理に関することをお手伝いしています。 その豊富な経験を活かし、成年後見制度においても支援の必要な方々の貴重な財産の保全と適切な管理をお手伝いしています。
 全国各地の税理士会は成年後見支援センターを開設し、成年後見制度に関するご質問に対して無料で相談を受け付けています。
 また、日本税理士会連合会は、成年後見制度のパンフレットを作成し、各地の税理士会は、家庭裁判所へ成年後見人等の候補者となる税理士の名簿を提出するなどして、この制度を支援しています。

◆成年被後見人は特別障害者に該当
 家庭裁判所が鑑定人による医学上の専門的知識を用いた鑑定結果に基づき、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判をした場合には、所得税法上も、成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当し、障害者控除の対象となる特別障害者に該当します。居住者又は控除対象配偶者若しくは扶養親族が特別障害者である場合には、40万円の障害者控除が可能となります。(「成年被後見人の特別障害者控除の適用について」平成24年8月31日/照会者:一般社団法人 静岡県社会福祉士会/回答者:名古屋国税局審理課長)

《コラム》持続化補助金活用のススメ(小規模事業者向けの補助金です)

◆小規模事業者対策として
 小規模事業者には自社の商品を宣伝しブランド力を高めるといった共通の課題があります。しかし自社努力だけではなかなか解決できません。そんな事業者に最適な補助金で、地域の商工会議所や商工会の助言を受けながら計画を策定します。その計画に沿った販路開拓や業務効率に取り組めば費用の2/3が補助されます。補助上限は50万円です。

◆応募の要件
 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)は常時使用する従業員の数5人以下で、サービス業のうち宿泊業・娯楽業と製造業その他の業種は常時使用する従業員の数20人以下がそれぞれ要件となります。また、持続的な経営に向けた経営計画を策定していることが応募の前提となります。
 事業計画期間において「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすことが加点要件になっています。
 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者については、補助上限額が100万円に引き上がります。

◆どんな取り組みが対象になるの?
 販路開拓の取り組みとして、飲食店が売り上げを伸ばすためにインバウンド向けの英語表記のメニューやのぼりの作成が考えられます。また、宿泊業者が外国人向けのwebサイト作成にも活用できます。業務効率の取り組みとして、POSレジの導入や経理会計ソフトを購入することにより、販売管理業務や決算業務の効率化することも可能です。ただし、公序良俗に反するおそれや、公的な支援を行うことが適当でないと認められるものは対象外となります。

 応募の手続きは従来の郵送方式のほかに、政府が開発した統一的な補助金申請システム(名称:Jグランツ)による電子申請の利用が可能です。令和2年度は6/5、10/2、2/5がそれぞれ締め切り日となっています。そのため、自社の必要な時に必要なタイミングで申請をすることが可能です。用途は幅広くありますので、該当事業者は活用の検討をお勧めします

【時事解説】内部留保の使い方 その2

その点、配当は損益計算書を通さずにキャッシュ流出額がそのまま内部留保の減少になりますから、内部留保の使い道としては最も有効です。また、本来の株式会社理論からいっても理にかなっています。つまり、会社で使い道のなくなったキャッシュは株主に返還すべきだというのが株式会社の本筋だからです。

 ただ、この理論にも問題があります。この考え方は、会社は株主のものという思想が背景にあるからです。会社が純粋に株主のものであるなら、余剰資金は全額株主に分配して、稼げなくなった会社は解散するというのはおかしな話ではありません。しかし、会社は株主のものと単純に割り切るわけにもいきません。会社は従業員のものでもあります。今勤めている会社がなくなってもすぐに他の会社に移動できるような雇用の流動化が進んでいる国ならまだしも、我が国はそういう国柄ではありません。会社の業績が多少悪くなってもある程度持ちこたえ、次の展開を考えてくれる会社でなければ、従業員は安心して働けません。そう考えると、内部留保があるからといって、安易に配当として株主に分配してしまうのも素直にうなずけません。

 高度成長時代には、成長機会がふんだんにあり、賃金や設備投資が旺盛で、企業の悩みは資金調達でした。現在の成熟経済における資金の使い道に困るということはそれに比べれば贅沢な悩みかもしれませんが、なかなか解決の難しい問題でもあります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】内部留保の使い方 その1

企業の潤沢な内部留保が注目を集めています。そこで内部留保の使い方を考えてみましょう。

 内部留保は財務諸表上の用語ではないため、統一的な概念規定はありません。本稿では比較的狭くとらえ、企業が課税後積み立てた利益剰余金として論を進めます。利益剰余金ですから、貸借対照表の純資産の一部になります。純資産は貸方ですから、借方に内部留保に対応する資産があるはずです。その資産が何であるかは一義的に特定できませんが、内部留保の大きい会社はキャッシュも潤沢なことが多いので、「内部留保=キャッシュ」という発想につながります。その結果、「内部留保を使う(減らす)」ということは「キャッシュを使うことにより内部留保を減らす」ということになるわけです。

 「豊富な内部留保がある企業はもっとキャッシュを使うべきだ」というとき、キャッシュの使い道としてよく出てくるのは、従業員に対する賃金の引上げ、設備投資、株主に対する配当の3つです。賃金、設備投資、配当いずれもキャッシュを使うことには変わりがありませんが、内部留保を減少させる道筋は異なります。

 賃金と設備投資は損益計算書の当期純利益を通して、内部留保に影響を与えます。賃金はキャッシュ流出額の全額がその期の損益計算書の費用となりますが、設備投資は減価償却費という形で徐々にしか費用化できませんから、その期の損益に与える影響は軽微になります。また、賃金も設備投資も内部留保を減らすためには、損益計算書の最終損益を赤字にしなければなりませんから、経営者としては容易に決断できる話ではありません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)