【時事解説】通信5Gサービス開始と規格競争の行方 その2

2020年春から、日本でも次世代通信規格「5G」のサービスが開始されます。5Gにより、スマホやゲームだけでなく、家電や自動車までもがインターネットにつながり、より豊かな生活が実現すると言われています。ただ、課題があるのも事実です。最も懸念されることはプライバシーやセキュリティーに関することです。5Gは様々なものがインターネットに繋がり、利便性が高まる一方で、利用者の個人情報が外に流れるリスクがさらに高まります。

 また、5Gの開発競争で、日本企業は出遅れてしまいました。特許数をみても、米国や中国のほか、フィンランド、スウェーデンなどが多く保有しており、日本は数で劣ります。その中にあって、通信技術の先端分野では、次々世代にあたる6Gの開発が進んでいます。実用化は2030年ごろと見込まれています。5Gでは後じんを拝した日本ですが、6Gでは巻き返しを狙いたいところです。

 現在の開発状況は、NTTが6Gに関し、「IOWN(アイオン)」と呼ぶネットワーク構想を発表しました。世界標準になることを目指していますが、標準技術となるかどうかは、一社の力だけでは足りません。多くの有力企業と手を組む必要があります。そこで、NTTはソニーや米インテルと6Gの開発で連携すると発表しました。

 また、最近は、6Gに関する要素技術が少しずつ姿を見せ始めました。日本の活躍に期待ができるニュースとしては、昨年、NTTが理論的な通信容量の上限である「シャノン限界」を達成したことが挙げられます。通信規格は開発が進むごとに、超高速・大容量化が進みます。シャノン限界は理論的に超えられないとされています。シャノン限界を達成した日本は、他国と比べ一歩前を歩み始めたといえます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】通信5Gサービス開始と規格競争の行方 その1

 2020年春から、次世代通信規格「5G」のサービスが開始されます。すでに米国や韓国では始まっており、ようやく日本でも開始されます。通信規格は1980年前後に始まり、1Gから2G、3G…と進化を続けました。規格がグレードアップすることで、よりよい通信インフラが整備され、同時に自動車電話や携帯電話、そして着メロやiモードといった、便利で生活を豊かにするものが誕生しました。

 次世代の5Gはあらゆるものを一変させるといわれています。特徴は、「超高速・大容量」、「超低遅延」、「多数同時接続」といったことが挙げられます。多数同時接続とは、同時に多数の端末を使えるようになることを指します。結果、あらゆるモノがインターネットにつながる社会が実現します。これまで、インターネットには、PCやスマホ、テレビなどがつながっていましたが、今後は、洗濯機、冷蔵庫などの家電や自動車、さらには時計や洋服、テニスラケットといった身の回りのものまでが繋がるようになります。自動車がインターネットにつながると、一台ごとの位置情報が正確にわかるようになります。すると、渋滞をしている地域が明らかになり、ドライバーは比較的空いている道を選んで走行できるようになります。

 「超高速・大容量」「超低遅延」の特徴を活かしたものには、映像やゲームがあります。近年、YouTubeによるゲーム実況が人気を博していますが、将来は、視聴者はYouTubeで他者のプレーを観るだけでなく、リアルタイムで自由にゲームへ参加できるようになります。

 また、これまでの仮想現実(VR)は乗り物酔いに近い症状(VR酔い)が生じてしまい、今ひとつ普及しませんでした。が、5Gの超低遅延の技術により、VR酔いが解消され急速に広まる可能性も出てきました。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における自然災害への備え その2

では、中小企業の防災・減災に向けてどのような支援が行われているのでしょうか。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2019年版』においてハザードマップの情報を基に利用者・従業員の安全確保に注力する企業の事例として取り上げられた有限会社池ちゃん家・ドリームケア(所在地:静岡県焼津市、従業員数40人)の取り組みについてみていきましょう。

 同社は、2000年に設立された介護事業者です。同社では設立当初より地震災害を念頭に置いた防災体制を構築していましたが、東日本大震災での津波被害を見た結果、自社の防災体制に不安を感じ、事業継続計画(BCP)に関するセミナーに参加するに至りました。その後は、緊急時における他事業所への利用者の受入体制整備や、紙で行っていた施設利用者の健康情報管理の電子化などの事前対策に取り組みました。

 自社の地域のハザードマップを確認したところ、焼津市内の1事業所が津波浸水想定地区にあることがわかりました。そこで同社社長は、津波浸水想定地区でない高台へ一部の事業所を移転することを検討しました。移転費用の負担は大きなものでしたが、災害時における利用者や従業員の安全を確保し事業継続を図る上では必要不可欠と捉え、2012年6月に移転を行いました。

 また、施設利用者の多くが移動困難な方であることに配慮し、災害時には避難所に避難することなく施設で引き続きサービスを受けられるようにするため、災害発生時において必要な備品を調達することを目的とし、日常から地元の複数業者と取り引きを行っています。

 このようにセミナーへの参加やハザードマップの確認などを通じて自然災害への事前対策を講ずることが求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における自然災害への備え その1

中小企業が自然災害への備えを図るうえでは、自社が自然災害のリスクをどの程度抱えているかを知ることが重要になります。中小企業庁編『中小企業白書2019年版』では中小企業における自然災害に対する具体的な備えの取り組み状況などについて調査しています。

 同白書に基づき、自然災害への備えに具体的に取り組む中小企業の割合についてみると、「取り組んでいる」と回答した企業の割合は45.9%と半数以下にとどまっていることがわかります。
 自然災害に対する備えに取り組んでいる企業について、その理由を回答割合の高い順にみると、「自身の被災経験(33.3%)」、「国内での災害報道(29.1%)」、「行政機関からの勧め(14.7%)、「販売先からの勧め(13.6%)」となっており、行政機関や販売先など、周囲の関係者から勧められて取り組みを始めた企業も一定割合存在することがわかります。

 自然災害への備えに取り組んでいない企業について、その理由を回答割合の高い順にみると、「何から始めれば良いか分からない(31.8%)」、「人手不足(23.9%)」、「複雑と感じ、取り組むハードルが高い(19.9%)」となっており、中小企業では災害への備えについてのノウハウが不足しがちであることから、こうした企業に対して周囲の関係者が支援を行う必要性があることがわかります。また、自然災害への備えにおいて「何から始めれば良いか分からない」と回答した企業のうち、自社の地域のハザードマップを見たことがある割合は28.9%にとどまっています。ハザードマップは各地方自治体などで公開されていることから自然災害対策を考えるにあたり、まずはハザードマップを確認することから始めるのが良いといえるでしょう。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》中小企業関連の補正予算案を閣議決定

令和元年12月に令和元年度の補正予算案が閣議決定されました。中小企業庁より地域・中小企業・小規模事業者関連の予算案が公表されました。中小企業が抱える「経営者の高齢化」「人手不足」と今後も慢性的に抱える課題を重視した取り組みになっています。更には働き方改革や社会保険適用拡大、インボイス導入など相次ぐ変更への対応も考慮しています。

◆事業承継・再編・創業等で新陳代謝の促進
 事業承継を契機とした生産性向上や経営資源引き継ぎ型の創業、事業承継時の一部廃業を支援に盛り込んでいます。また、事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証メニューの創設や、専門家の確認を受けた場合に保証料を減少させる支援もあります。

◆生産性向上・デジタル化
 働き方改革やインボイスなど法制度変更への対応による後手になりがちな生産性向上施策を継続的に支援します。毎年恒例となったものづくり補助金やIT補助金、小規模事業者持続化補助金を一体運用する内容です。また、AI導入を支援する多面人材の育成や普及も行います。予算額が令和元年補正3,610億円となっていますが、単年ではなく複数年にわたる予算と考えられます。

◆地域の稼ぐ力の強化・インバウンド拡大
 地域経済を発展させる企業を重点的に支援し、イノベーションによる新事業展開を促進します。大企業の中堅人材による地方での起業や中小企業への就職を後押しし、生産性向上を図ります。地域や社会課題を解決するビジネスモデルや地域における創業も支援します。

◆経営の下支えや事業環境の整備その他
 マル経融資を含む日本政策金融公庫による政策金融として205億円もあります。昨年日本を襲った台風被害からの復旧・復興や強靭化対策として令和元年度の補正として375億円の予算があります。
 毎年3月ころから動き始めます。中小企業庁などのホームページで募集の発表がありますので、情報収集には注意しておきましょう。

《コラム》令和2年税制改正大綱 納税環境編

◆振替納税の通知依頼等がe-Taxで可能に!
 令和2年の税制改正により、今まで電子申請・申告ができず、紙の書類で提出していたものが、e-Taxの利用により手続できるようになりそうです。
(1)振替納税・ダイレクト納付の申請
 次の書類の提出は、令和3年1月以後、e-Taxによる電子申請が可能となります。
 ①振替納税の通知依頼
 ②ダイレクト納付の利用届出
 なお、これらの申請手続では、申請者の電子署名や電子証明書の送信は不要とされました(振替納税については、納税地の異動があった場合の手続も簡素化されます)。
(2)準確定申告の電子手続の簡素化
 今まで電子申告ができなかった所得税の準確定申告について、その途が開かれそうです。e-Taxにより所得税の準確定申告書を提出する場合、相続人の電子署名・電子証明書の送信は次のようになります。
 ・申請等相続人:電子署名・証明書送信が必要
 ・それ以外の者:確認証を送信(署名等は不要)
 大綱では、税理士の代理送信等については、明らかとされていませんが、令和2年分以後の準確定申告より適用されます。

◆電子帳簿等保存制度の見直し
 電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法が令和2年10月より追加されます。
 ①発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録の受領・保存
 ②電磁的記録の訂正・削除等が確認できるシステムによる記録の授受・保存
 この改正によりカードや電子マネーの履歴をクラウド上で電子データ保存する方法が認められます(改変不可が条件)。

◆円滑な申告・納税のための環境整備
 納税証明書の電子的請求について、電子委任状を添付して行うことができるようになります(委任者の電子署名等は不要)。

◆利子税・還付加算金等の割合の引下げ
 令和3年以後は、①利子税特例基準割合、②猶予特例基準割合、③還付加算金特例基準割合が年7.3%未満の場合には、次のようになります。
 ・平均貸付割合+年0.5%(現行年1%)
 また、相続税・贈与税に係る利子税は、次のようになります。
 ・利子税の割合×利子税特例基準割合/年7.3%

 

《コラム》企業版ふるさと納税の拡充

◆企業版ふるさと納税って何?
 ふるさと納税と聞くと、「何か会社のお金を寄附して、おいしい物がもらえそうだな」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。残念ながら、企業版ふるさと納税は寄附によって経済的な利益を受けることは禁止されているので、お礼の品が貰える訳ではありません。
 企業版ふるさと納税は地方公共団体が企画する地方創生の取組に対して、志のある企業が寄附をして、地方活性化を応援することを目標にしています。地方公共団体が計画する取組を調べて「これを支援したい」と思う取組について、資金を提供するようなイメージとなります。

◆令和2年税制改正で税額控除額がアップ
 令和元年度までは寄附額の最大6割程度が税額控除(損金算入分約3割、特例税額控除最大3割)となっていたものを、約9割まで税額控除となるようにして、令和6年度まで5年間延長される予定です。
 また、地方公共団体側にも使いやすいように、国の補助金・交付金の併用可能範囲の拡大や、地域再生計画の認定を受けた後であれば、寄附金額の目安の範囲内で事業費確定前の寄附の受領が可能といった変更が加えられています。

◆企業にどんなメリットがあるか
 先に述べた通り、寄附金は税額控除となるものの、支払額と比べて約9割までしか税金が減りませんから、実質的な節税効果はありません。
 また、直接的な経済的利益を受け取れるわけではありませんが、自治体が展開したい事業を上手く選定すれば、人材育成や、環境整備等、その地域を活性化することにより、その地域でサービス展開をしている、もしくは考えている企業であれば、今後の経営にプラスになることもあるはずです。ただし、本社所在の地方公共団体への寄附は対象になりませんのでご注意ください。
 経済的利益の供与は禁止されていますが、「感謝状の贈呈」「寄附活用事例の紹介にあわせて、企業名の紹介」「施設への銘板等の設置」「記念品の贈答」といった一般的な表彰行為はOKとなっているため、事業にプラス効果は無くとも、企業のイメージアップには貢献はできそうです。

《コラム》「スマホで確定申告」の拡充

◆スマートフォンで申告書作成ができる
 国税庁では去年から、スマートフォン専用画面を所得税の確定申告書作成サイトで展開しています。去年は「給与は1か所からで年末調整してなければダメ」「医療費控除と寄附金控除しか所得控除が入れられない」などと、制約が多すぎて、サラリーマンの方でも「これじゃ申告書が作れない」と感じた方が多かったかもしれません。
 今年はそんな声を意識してか、給与所得については年末調整していないものにも、複数箇所からの支給にも対応、さらに年金や雑所得・一時所得にも対応してきました。また、所得控除に関してはすべての控除に対応しています。これで、年末調整でうっかり出すのを忘れてしまった生命保険料の控除もスマホ申告可能です。

◆e-Tax利用方法は去年と同じ2パターン
 スマホから作成した確定申告書はPDFで出力されるので、印刷して郵送・税務署に持ち込みで申告もできますが、そのまま電子的に申告できるe-Taxの利用も可能です。スマホにカードリーダライタ機能がついていれば、マイナンバーカードを読み込むことによって申告が可能です。
 また、リーダライタ機能がない場合は、税務署で発行してもらえる、IDとパスワードがあればe-Taxが可能になります。このあたりの方式は去年と変更はありません。

◆残念ながらできないこともある
 事業所得や不動産所得があったり、住宅借入金等特別控除の初年度の申告や分離課税の申告がある場合は、スマホ専用画面で作成作業が行えません。質問に答えてゆくと、スマホ専用画面でなく、PCの申告書作成画面が出てきますが、スマホでの操作ではものすごく使いにくいので、あまりお勧めできません。
 スマホ専用画面が出ないものに関しては、どうしても入力は多岐にわたり複雑ですし、参照すべき資料も多くなってきます。素直にPCで作成するか、税理士に依頼することも視野に入れたほうがいいでしょう。

【時事解説】“水をさす”会計から“棹さす”会計に その2

しかし、金融のグローバル化は会計の国際化を推し進め、資産評価の時価主義化の流れを強めます。投資有価証券の時価評価、固定資産の減損会計、たな卸資産の低価法などが相次いで導入されました。その上に、税効果会計も加わります。税効果会計では業績が好調で将来収益が見込めれば、繰延税金資産を計上できますが、業績が悪化し赤字予想になれば、それまで積んだ繰延税金資産を取り崩さなければなりません。繰延税金資産を計上するときには損益計算書の利益ですが、取り崩すときには費用が発生します。

 景気が悪いときには当然本業の業績も悪い。その上に資産価格下落の影響を決算書に計上しなければなりません。逆に好景気のときには本業の業績好調に加えて、税効果会計などによる利益が加算される傾向にあります。景気や資産価格の動向が経営者の意思に関わりなく、ヴィヴィッドに決算書に反映されやすくなります。つまり、時代の流れに“掉さす”会計に変わりつつあるのです。

 これからの会計は時代の流れに大きく翻弄されるものになり、調子のいいときには利益が大きく出て、業績が悪化すると赤字が増幅されやすくなります。こうした会計になると、長期的視野に立った経営ができず、短期的な資産価額の変動に大きく経営が左右される、といった批判も出てきます。しかし、会計のこの流れは不可逆的だと考えざるを得ません。経営者はそうしたことも踏まえて経営することが求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】“水をさす”会計から“棹さす”会計に その1

表現は似ているのですが、その意味するところはまったく異なる言葉があります。その代表的なものに“水をさす”と“掉さす”があります。辞書を引くと“水をさす”は「うまく進行している事などに脇から邪魔をする」ことで、“掉さす”は「調子を合わせてうまく立ち回る」ことだとあります。つまり、「時代の流れに水をさす」と言えば、時代の流れを留める、あるいは逆行する、というような意味ですし、「時代の流れに掉さす」といえば、時代の流れに従う、あるいは一層早めるということになります。

 会計のこれまでの変遷を眺めてみると、“水をさす”会計から“掉さす”会計に変わってきており、 IFRS(国際会計基準)導入が広がっている状況を見ても、その傾向は一層強まっていくように思われます。
 以前の会計における資産評価は取得原価主義が基本でした。貸借対照表の資産に計上される金額は期末時点の資産の時価に関係なく、取得価額のまま変わりません。したがって、償却資産を除いた資産の損益は所有したままでは発生せず、売却したときにはじめて実現します。

 その結果、取得原価主義会計の下では、資産の取得価額と時価との差額である含み損益が発生します。含み損益は決算書に現れないので、経営者の手元に残されます。経営者は自分が好きな時に資産を売却して含み損益を実現し、決算書上に表現することができます。本業の業績が悪いときには含み益のある資産を売却して利益をかさ上げし、逆に、業績が良くて利益が多すぎるときには含み損のある資産の売却により利益を圧縮することも可能でした。つまり、決算書に表現される会社の経営成績を時代の潮流から遮断することが可能で、経営者の裁量である程度コントロールすることができたのです。いわば、時代の流れに“水をさす”会計といえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)