【時事解説】働き方改革、介護休業へ取り組む企業の増加 その2

介護休業制度の整備に力を入れる企業が増えています。高齢化が進む中、介護離職者は年間で約10万人にのぼり、企業は対策を迫られています。とりわけ、これまで介護離職というと女性が多いとされていましたが、最近では男性の離職者も増えています。年齢は40~50歳代の管理職というのも特徴です。ある日、突然、プロジェクトのリーダーが退職し、進捗に支障が生じるケースも多くなっています。仕事を支える重要なポジションにいる人の離職は会社にとって打撃となります。
 こうした中、働く場所や時間を自由にできるテレワーク制度や介護休暇の延長といった施策に取り組む企業が増えています。

 ほかにも、フレックスタイム制度のコアタイム撤廃を実施する企業があります。一般的にフレックスは午前10時半~正午、午後1時~3時といったコアタイムがあり、この時間帯には会社に出社していなければなりません。介護で親の病院に付き添う際、診察が何時に終わるかはっきりしないときは、あらかじめ有給休暇をとらなければなりません。有給休暇を使い切ってしまった場合、病院の付き添いができなくなるといった問題が生じます。コアタイムを撤廃することで、午前11時や午後出社も可能になるので、有給休暇をとらなくても済みます。また、ある大手建設会社では、社員の希望により、勤務地を実家の近くにある事業所に異動した例もあります。

 介護に関する制度を率先して取り入れることは、会社のイメージアップにもつながるので、優秀な人材を採用するうえでもメリットとなります。ただ、制度を整えても、活用しづらい雰囲気が職場に漂っていたのでは元も子もありません。介護をしやすい職場環境を整えるには、まだまだ多くの課題が残っていそうです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】働き方改革、介護休業へ取り組む企業の増加 その1

働き方改革が国策として掲げられ、多くの企業で取り組みが施されています。働き方改革といえば育児休暇や労働時間短縮といった施策に目が行きがちです。その中、最近は介護休業制度を充実させる企業が増えています。

 具体例としてエネルギー大手企業を挙げると、同社ではテレワーク制度を導入しました。これは社員が時間や場所にとらわれることなく、いつどこでも仕事をしてもよいという制度です。従来、親の介護で実家を訪れるときは休暇をとる必要がありました。が、制度を活用すると、たとえば親の介護として朝食の準備、服薬の支援、デイサービスへの送り出しなどを済ませたあと、会社の会議システムでミーティングを行うといったことが可能になります。ほか、親が就寝した後の空き時間をうまく活用することで、メールや資料作成といった仕事もできます。現在、テレワーク制度の導入は、仕事の状況が把握できないといった理由で、認めていない企業が多くあります。が、介護への有効な対応策として導入する企業が増えることが予想されます。

 また、介護休暇の期間を延長する企業も増えています。先のエネルギー企業では、従来1年間の介護休暇を2倍の2年間に延長しています。
 企業が介護休業制度の整備に力を入れる背景には、高齢化が進む中、親の介護により突如、離職しなければならないケースが増えたことがあります。厚生労働省によると2017年、介護などによる離職は約9万人に上りました。これは離職理由の約1.2%にもなります。今後、離職する可能性のある予備軍まで入れると介護離職者は100万人にものぼるという試算もあります。優秀な人材を失うことは企業にとって打撃となり、今後ますます対応が必要となります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】小規模企業における事業承継の現状と課題 その2

では、小規模企業における事業承継問題の解決にあたっては、具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。そこで、中小企業庁編『小規模企業白書2019年版』において、小規模事業者の後継者のマッチング支援を行う自治体の事例として取り上げられた滋賀県東近江市の取り組みについてみていきましょう。

 滋賀県東近江市は、同県の廃業率が他県と比較して高いこと、後継者不在のために黒字状態で廃業する事業者がいることに問題意識を持ち、中小企業・小規模事業者の後継者候補探しを支援する取り組みとして「まるごと東近江あとつぎさん募集事業」を実施しました。

 同市では、2018年1月に、同市の魅力をPRすることを目的に、市内の商工会・商工会議所、工業会、観光協会、JAなどを構成団体として、「まるごと東近江実行委員会」を立ち上げました。そこで、特に商工会・商工会議所から、同市の魅力を伝えることで、事業承継を支援することにつながる事業ができないかとの提案があり、同事業が進められました。

 同事業の取り組みとして、2018年11月には東京駅近郊で「事業承継個別相談会」を実施しました。この相談会は、同市内の黒字だが後継者がいない事業者と、首都圏の様々なスキルを持った人材を後継者候補としてマッチングさせることを狙いとして行われました。地道な広報活動が奏功し、各事業者はおおむね10~30件程度の相談者と面談することができました。相談会後の事業承継に関するやり取りは、商工会・商工会議所が支援しながら進めています。

 このように、小規模企業の事業承継支援にあたっては、行政機関、商工会・商工会議所などといった様々な支援機関が連携して取り組むことが重要となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】小規模企業における事業承継の現状と課題 その1

わが国の企業数減少に至る主な問題・事例として、2016年現在で企業数全体の84.9%を占める小規模企業が減少していることがあげられます。企業数減少の主な要因として、後継者不在を理由に廃業せざるをえない企業の存在があること等から、小規模企業における事業承継問題の解決が喫緊の課題となっています。

 中小企業庁編『小規模企業白書2019年版』では、小規模企業における事業承継の実態や課題を「事業承継した個人事業主」と「事業承継した小規模法人の経営者」に区分して分析しています。
 同白書において、中小企業・小規模事業者の経営者を引退した者を対象に実施したアンケート調査によると、引退した経営者と事業を引き継いだ後継者の関係においては、個人事業主では親族内承継が86.4%を占めており、その大半は子供(男性)への承継となっています。他方、小規模法人では親族内承継が60.3%を占める一方で、親族外の承継も3割を超えています。

 事業承継した経営者が引退に向けて懸案事項などを相談した「外部の専門機関・専門家」についてみると、個人事業主、小規模法人ともに事業承継に係る手続きを行ううえで接点の多い「公認会計士・税理士」を相談相手とする割合が最も高くなっています。次に、個人事業主においては「商工会議所・商工会」、小規模法人においては「取引先金融機関」の割合が高くなっており、小規模な個人事業者及び法人にとって、地元の商工会議所や商工会、金融機関が事業承継の相談窓口として機能していることが示されています。

 このように、小規模企業の経営者が事業承継の課題を解決するためには、様々な専門機関・専門家と連携して経営者引退の準備をすることが重要となるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(後編)金融庁:2020年度税制改正要望を公表!

(前編からのつづき)

 そこで、企業が従業員に対して一定の要件を満たす規約に基づき支給するつみたてNISA奨励金については、毎月1,000円を限度として非課税とすることを3年の時限措置として要望しております。
 また、顧客が行うNISA口座の新規開設手続きは、マイナンバーの活用で完全ペーパーレスでの対応が可能となっている一方、NISA口座に係る金融機関変更・廃止手続きや金融機関と税務署間の一部手続きは、書面での提出・交付が必要な書類も残っており、利用者・金融機関の双方にとって非効率であることから、NISA口座の手続書類(開設・変更・廃止等)の電子化を可能とすることを求めております。

 金融所得課税の一体化では、金融商品間の損益通算の範囲は、デリバティブ取引・預貯金等については、未だ損益通算が認められておらず、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境の整備は道半ばであり、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する等の観点から、金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大することを要望しております。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)金融庁:2020年度税制改正要望を公表!

 金融庁は、2020年度税制改正要望を公表しました。
 それによりますと、
①資産形成を支援する環境整備の観点から、NISAの恒久化・期限延長、NISAの利用促進と利便性向上(つみたてNISA奨励金の非課税措置、NISA口座の手続書類の電子化等)
②簡素で中立的な投資環境の整備の観点から、金融所得課税の一体化、上場株式等の相続税評価の見直し
③生命保険料控除制度の拡充や特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長等を求めております。

 NISA制度については、時限措置であるため、制度の持続性の確保を求める声が多く、NISA制度について恒久措置とすることを要望しております。
 とくに、つみたてNISAについては、開始時期にかかわらず、20年間のつみたて期間が確保されるよう、制度期限(2037年)を延長することを要望しております。
 つみたてNISAについては、一部の企業で従業員の資産形成をより一層支援すべく、その積立金に対して奨励金を支給している事例もありますが、この奨励金は、所得税・地方税の対象となるため、奨励策の効果が減殺されるとの指摘もあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》デジタル手続法 社会保険手続きの動向

◆5月に法律が成立 デジタルファーストへ
 デジタル手続法は行政手続きオンライン化法、住民基本台帳法、マイナンバー法、公的個人認証法の4法を中心とした一括改正から成立しました。例えば転入・転出の届出や死亡・相続に伴う行政手続きなどを原則インターネットで実施可能にし、手続きに必要な添付書類は行政機関間の情報連携で省略することができるようになるものです。日本社会をデジタルで変革してゆくとともに私たちの生活や仕事に大きな影響を与えていくことが予想されます。今までは電子申請・届出を行っても添付書類を郵送しなければならないとか別途納付手続きが必要になる、交付物を受け取る必要があるなど利用者にとって使い勝手が良いとは言いがたいものでした。スマートフォン世帯保有率も75%となった現在、デジタル手続法の推進でますますデジタルを前提にした情報の流通が活発となるでしょう。

◆社会保険手続きのデジタル化
 行政手続きのデジタル化は多岐分野にわたりますが人事労務では社会保険手続きがあります。すでに社会保険手続きも電子申請はありましたが任意でした。しかし令和2年度からは「特定法人」と定義される資本金1億円以上の企業などに対し一部の手続きで電子申請が義務化されます。
 健保・厚生年金は「賞与支払届」「月額算定基礎届」「月額変更届」、雇用保険では「資格取得届」「喪失届」「転勤届」「高年齢雇用継続給付支給申請」「育児休業給付支給申請」、労働保険では「概算・確定保険料申告書」「一般拠出金申告書」などが義務づけられます。これから順次手続きが増えていくでしょう。まだ電子申請義務化の対象となっていない手続きや資本金1億円未満の中小企業に対しても、近い将来電子申請が義務化されることが予想されます。

◆企業の対応
 今後、中手企業にも電子申請が義務化されることを考えると自社内で電子申請ができる体制が必要となってきます。e-Gov経由は人事マスターの転記が発生しますので紙に手書きで申請するのと大きな差がなく、人事マスターを兼ね備えた人事労務ソフトが使いやすいでしょう。自社で体制を整えるのが困難な時はクラウドを備えた専門家にアウトソーシングするのも手でしょう。

《コラム》金融検査マニュアルの廃止

金融検査マニュアルとは、銀行など金融機関の経営を監督するための指針です。バブル崩壊後の不良債権処理に効果を発揮しました。債権先を「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分類し、分類に応じた引当金を求めるものでした。再生局面の中小企業は事業再生計画の策定において、自社がどの債務者区分に分類されているかを把握する必要があることから、馴染みになった会社もあるかと思います。

◆廃止は事業性評価融資の促進
 金融庁が2019年12月を目標に従来の検査マニュアルの廃止を明らかにしました。今は廃止後の検査・監督について意見を求めている最中ですが、中小企業に対してどう影響を与えるのでしょうか。貸し倒れ費用を柔軟に計上するよう促すことも求められています。また、2014年の日本再興戦略改訂に、具体策の一つとして「地域金融機関等による事業性を評価する融資の促進等」が盛り込まれています。つまり、国としては、事業性を評価した融資が行われるように促進する方針がすでに出ています。

◆評価に活用される指標
 中小企業の事業を評価する際に活用されるツールとしてローカルベンチマーク(通称:ロカベン)があります。これは企業の経営診断を行うことを目的に、企業の経営者や金融機関、支援機関等が企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための道具で、事業性評価の入口になると期待されるものです。
 具体的には、財務情報として①売上高増加率、②営業利益率、③労働生産性、④EBITDA有利子負債倍率、⑤営業運転資本回転期間、⑥自己資本比率の数値に着目します。非財務情報としては①経営者、②関係者、③事業、④内部管理体制について着目することによって企業の経営状態の変化に早めに気づき、早期の対話や支援につなげていくものです。

◆金融機関の対応変化に注意
 マイナス金利政策が続く中、統廃合等金融機関を取り巻く環境が大きく変化しています。金融検査マニュアルの廃止をきっかけにして、お付き合いのある金融機関の対応が大きく変化するかもしれません。

(後編)文部科学省:2020年度税制改正要望を公表!

(前編からのつづき)

 また、ゴルフ場利用税の見直しも要望しており、1989年度に消費税創設(税率3%)に伴い娯楽施設利用税を廃止する一方、課税対象施設をゴルフ場に限定し、ゴルフ場利用税を創設した上で、標準税率を1,100円から800円に引き下げ、併せて市町村への交付金の交付率を1/2から7/10に変更した後、消費税は5%、8%に引き上げられましたが、その後の見直しは行われていないことから、消費税の10%引上げを契機とした見直しを求めております。

 この要望の背景には、ゴルフ人口やゴルフ場の減少があり、国内のゴルフ人口は1991年の約1,700万人から2016年の約890万人に若い世代を中心に半数近く減少し、ゴルフ場は2012年度の2,460ヵ所から2017年度の約2,257ヵ所に減少しております。
 そのため同省では、ゴルフ場の閉鎖を防止し、ゴルフ場を活用した地域の振興を図るとともに、ゴルフ人口の増加の方策を検討する必要があるとの考えを示しております。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)文部科学省:2020年度税制改正要望を公表!

文部科学省は、2020年度税制改正要望を公表しました。
 それによりますと、同省では2013年から昨年まで7年連続してゴルフ場利用税の廃止を要望しており、2020年度改正に向けては、同税の扱いは長期的に検討していくとした上で、ゴルフ場利用税の非課税措置の拡充を要望しました。

 ゴルフは2016年に112年ぶりにリオデジャネイロ五輪で復活し、東京五輪でも実施が決まっていることから、同省は幅広くゴルフの振興を図り、国民が身近に親しむ環境を整備する上で重要だとしております。
 そして、将来にわたるゴルフ人口の拡大、生涯スポーツとしてのゴルフ振興、健康寿命の延伸の観点から、現在の非課税措置の対象のうち「18歳未満の者」と「70歳以上の者」について、それぞれ「30歳未満の者」、「65歳以上の者」への対象拡充とともに、新たにオリンピックを含む国際競技大会出場選手及び中央競技団体が主催する全国的なアマチュアゴルフ競技出場選手への非課税措置を講ずることを要望しました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。