《コラム》軽減税率Q&A

◆2019年10月よりスタート
 軽減税率制度は、大まかに言えば「食品は8%」なのですが、その細部に着目すると、疑問が出てくることも。国税庁のWebサイトで、個別のQ&Aが例示されています。
 例えば「肉用牛の販売」は「その販売の時点において、人の飲用又は食用に供されるものではないので、軽減税率の対象ではない」。それに対して「食用の生きた魚の販売」は「食用なので軽減税率の対象」となるそうです。

◆まるでなぞなぞ、軽減税率
 なぞなぞのような疑問についても、Q&Aは答えています。「賞味期限切れの食品を廃棄するために譲渡する場合」については「期限切れで廃棄するための食用に供さないので、軽減税率対象ではない」としています。
 また、酒類については軽減税率の対象外です。酒類は「酒税法」に規定するものですからその範囲である「みりん」は軽減税率の対象にはなりません。しかしながらアルコール分が一度未満の「みりん風調味料」は軽減税率の適用対象です。
 水に関しても「飲用に供されるもの」ならば軽減税率適用、風呂や洗濯といった生活用水として供給されるものが一緒に提供されていると、軽減税率の対象とはなりません。また、ウォーターサーバーのレンタルと水を併せて販売している場合は「レンタル料」は軽減税率対象外で、「水の販売」は軽減税率の対象です。
 その他、「金箔」「重曹」「炭酸ガス」「カタログギフト」等、判定が微妙な例示がされていますが、見抜くコツとしては「食用なのか」と「役務の提供ではないか」を注視すると分かり良いかもしれません。

◆分からない場合は詳しい人に聞くのが一番
 軽減税率かどうか、判断に困る場合は専門家に聞くのが一番です。
 また、国税庁は「消費税軽減税率電話相談センター」を開設しています。軽減税率制度の対象品目の判定や、帳簿・請求書の書き方など、一般的な質問を受け付けてくれます。

【消費税軽減税率電話相談センター】
平日(2019年9月・10月は土曜日も受け付け)の9時から17時
TEL:0120-205-553

《コラム》所得税における所得の概念

所得税は、所得を課税の対象とする租税ですが、「所得とは何か」について明確な定義はありません。「所得」って何でしょうか。

◆制限的所得概念(所得源泉説)
 各種の勤労、事業、資産から生ずる継続的な収入から得られる所得のみを課税対象とするものです。毎年発生する経済的利得のすべてが所得を構成するのではなく、所得の範囲を限定しようとする立場であり、一時的、偶発的、恩恵的な利得は所得の範囲から除く考え方です。
 イギリスおよびヨーロッパ諸国の所得税制度は、伝統的にこの考え方に基づいていました。

◆包括的所得概念(純資産増加説)
 継続的に一定の収入源から生ずる利得のみに所得の範囲を限定せず、その発生の原因のいかんを問わず、およそ一定期間内に各人について生じた純資産の増加額がすべて所得であるとする考え方です。一時的、偶発的、恩恵的な利得も所得を構成します。
 1913年にアメリカ合衆国で作られた連邦所得税制度は、この考え方を基本的に採用しています。

◆日本の所得税法では?
 日本の所得税は、明治20年に導入されました。第二次世界大戦前は、所得の範囲は制限的に考えられていました。
 第二次世界大戦後は、シャウプ勧告などを経て、包括的な概念である今日のような制度に整備されました。

◆包括的所得概念のメリット
 この概念の採用により、必要経費の概念は従来より大幅に拡張され、雑損控除・医療費控除といった所得控除も拡充されました。租税法の金子宏教授はこの概念のメリットを次のように指摘しています。①一時的・偶発的・恩恵的利得であっても、利得者の担税力を増加させるものである限り、課税の対象とすることが公平負担の原則の要請に合致する。②すべての利得を課税の対象とし、累進税率の適用のもとにおくことが、所得税の再配分機能を高める。③所得の範囲を広く構成することによって、所得税制度の持つ景気調整機能が増大する。(金子宏『租税法』第23版)

未払い残業代の平均711万円

時間外労働に対する割増賃金が未払いだった企業が、労働基準監督署の監督指導を受けた後に社員に支払った未払い分の額は、昨年は1社あたり平均で711万円に上ることが厚生労働省の報告書で明らかになりました。2018年4月から19年3月の支払い額を取りまとめたもの。政府が推進する「働き方改革」では、労働時間の把握義務が法制化されるなど企業側の説明責任がこれまで以上に重くなっていますが、違反した時の金銭面の負担も重いことが分かります。

 厚生労働省によると、不払いだった割増賃金を労働者に支払った企業のうち、その支払い額が100万円以上だったのは1768社でした。このうち支払い額が1千万円以上の企業は228社でした。支払われた割増賃金の総額は125億6381万円で、1社当たり711万円。対象となった労働者の総数は11万8837人でした。社員1人当たりでは11万円。

 業種別の企業数では、製造業(全体の18.8%)、商業(18%)、保健衛生業(13%)、建設業(10.1%)、運輸交通業(6.7%)で続きます。しかし対象となった労働者数で見ると、保健衛生業が2万3981人で全体の20.2%を占めてワーストでした。

 厚労省が発表した違反事例によると、ある会社では残業をしている社員がいるにもかかわらず、管理者が社員全員のタイムカードを終業時刻に合わせて打刻させていました。労基署が立ち入り検査をしたところ、タイムカードの記録と実際の入退館の記録との間に乖離があることが判明したそうです。

 また別の会社は、社員が「労働時間管理表」に記載した記録を基に労働時間を管理していましたが、その自己申告のデータと、パソコンのログ履歴や金庫の開閉記録との乖離があったことから、労基署に是正を求められました。労働者からの内部告発をきっかけに立ち入り検査を行ったとのことです。

<情報提供:エヌピー通信社>

キャラおせちの消費税率は2パターン

百貨店大手各社が来年のおせち料理を発表しました。おせちは、飲食料品などを対象に導入された消費税の軽減税率(8%)が適用されますが、一部商品は税率10%が適用されます。よく似た商品でも税率が異なる場合があり、売り場では混乱も予想されます。

 松屋銀座(東京都)は、10月から「はろうきてぃのおせち詰め合わせ」(税込み1万800円)と「おせち詰合せ/ディズニー」(同1万2100円)のインターネット予約を受け付けています。ともに16センチ四方のプラスチック製容器に入った二段重。人気キャラクターが蓋にあしらわれている点も似ていますが、「はろうきてぃ」の税率は8%なのに対し、「ディズニー」は10%が課税されます。

 同社は「ともにメーカー側が決めた価格で、法令に従い対応する」と説明。軽減税率の対象外となるディズニーのおせちについては、カタログや値札で周知する考えです。ディズニーのおせちは、そごう・西武も販売します。

 同じおせちでも商品によって税率が異なるのは、食品とそれ以外の商品を組み合わせた商品に特別なルールが適用されるためです。
 おせちは8%ですが、器が特別で消費者が再利用すると店側が見込む場合、食品と器のセット商品とみなされ税率が10%となります。ただし、①税抜き価格が1万円以下で、②価格に占める食品の割合が3分の2以上――なら、食品が主役の商品であるとし軽減税率の8%が適用されます。税抜き価格が1万円で食品の割合が3分の2以上を占める「はろうきてぃ」は8%、1万円超の「ディズニー」などは10%となるということです。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)全国銀行協会:2020年度税制改正要望を公表!

(前編からのつづき)

 また、確定拠出年金税制については、運用時課税となる積立金に対する特別法人税を撤廃、少なくとも課税の停止を延長することのほか、iDeCo(個人型確定拠出年金)加入可能年齢の上限引上げ等の見直しを求めております。
 確定拠出年金の積立金に対しては、運用時に特別法人税が企業に課税されますが、2020年3月まで課税が停止されています。

 特別法人税が課税された場合、企業の掛金負担の増加や給付額の減少につながりかねないことから、特別法人税の撤廃又は課税停止の延長を要望しており、拠出限度額のさらなる引上げとともに、現在60歳となっているiDeCoの加入可能年齢を65歳に引き上げることも求めております。
 さらに、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、金融商品間の課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認めることや納税の仕組み等では、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関のシステム開発等に必要な準備期間を設けるなど金融所得課税の一体化をより一層推進することを要望しております。
 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年9月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)全国銀行協会:2020年度税制改正要望を公表!

全国銀行協会は、2020年度税制改正要望を公表しました。
 それによりますと、人生100年時代における家計の安定的な資産形成の促進のために、
①NISAの恒久化及び利便性の向上等
②確定拠出年金税制の拡充等
③金融所得課税の一体化の推進等を掲げております。

 公的年金だけでは老後資金が不安視されているなか、高齢・長寿社会での豊かな老後生活の実現には、現役世代のうちから資産形成を行うことが有用としております。
 2019年3月末時点で、NISAの口座数は1,160万口座で累積買付額16兆円、つみたてNISAの口座数は130万口座で累積買付額1,330億円ですが、時限措置(NISAは非課税期間5年で2023年まで投資可能、つみたてNISAは非課税期間20年で2037年まで投資可能)のため、3つの少額投資非課税制度(NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA)について、非課税期間の恒久化及び制度の恒久化(投資可能期間の恒久化)を行うことを要望しております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年9月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》公的年金の将来像

◆公的年金財政検証結果
 厚生労働省が5年に1度実施している公的年金の健康診断にあたる財政検証結果を公表しました。将来の年金水準についての検証では経済状況が異なる6つのケースを示しています。給付水準は現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合「所得代替率」という指標で示されています。
 2019年度の所得代替率は61.7%です。1~3のケースでは29年度以降の20年~30年の間、女性や高齢者の労働参加が進んで経済成長率がプラスとなった場合では給付抑制が46年~47年までで終ります。ケース1で経済成長率が0.9%上昇した場合でも所得代替率は51.9%に下がります。一方、成長率が横ばいにとどまる4~5のケースでは賃金が伸び悩み抑制期間は長くなります。53年~58年頃まで抑制され所得代替率も44.5%~46.5%まで下がります。ケース6の長期マイナス成長の場合では36%~38%になると見込まれています。

◆年金の制度改革
 日本経済のマイナス成長や労働参加者の増加が進まなければ年金の財政は厳しい状態となります。所得代替率を50%より下げないため政府は一定の年金水準を保てるよう対策案を出しています。
1.厚生年金の適用拡大のため、企業規模要件(従業員500人以上)の規模下げ
2.賃金要件(月収8.8万円)以上対象者の要件下げ
3.月収5.8万円以上の全雇用者に適用
4.基礎年金の保険料納付期間を40年から45年に延長
5.受給開始年齢75歳まで繰り下げて支給
6.65歳以上の在職老齢年金の廃止(この場合は年金原資は下がる)
7.上記の組み合わせやマクロ経済スライドフル発動

◆自助努力は必須に
 今回の財政検証で年金額を最も増やす効果があるのは受給開始年齢を上げること、75歳から受給開始すると所得代替率は99.1%だと言います。今65歳で年金をもらい始めても年金抑制の仕組みで徐々に所得代替率が下がります。その影響は若い世代ほど大きくなるので自助努力で老後に備えることは非常に重要になっています。

《コラム》多様化する国税の納付手続

最近では国税の納付手続の選択肢が増え、納税者の利便性が向上してきました。自分に合った方法を知っておきましょう。

◆窓口納付
 金融機関又は所轄の税務署の窓口で、現金に納付書を添えて国税を納付する手続です。

◆振替納税
 納税者自身名義の預貯金口座からの口座引落しにより、国税を納付する手続です。利用に当たっては、事前に税務署及び希望する預貯金口座の金融機関へ専用の依頼書を提出する必要があります。
 申告所得税及び復興特別所得税の確定申告分(第三期分)、消費税及び地方消費税の中間・確定申告分については、法定納期限よりやや遅れて引落しされますので、資金繰りに優しい納付方法です。

◆コンビニ納付(バーコード)
 税務署から送付又は交付されたコンビニ納付専用のバーコード付納付書を使用し、コンビニエンスストアへ納付を委託することにより国税を納付する手続です。

◆コンビニ納付(QRコード)
 自宅のパソコン等で作成したQRコードを使用し、コンビニエンスストアへ納付を委託することにより国税を納付する手続です。現在は「Loppi」又は「Famiポート」端末設置店舗でのみ利用可能です。

◆クレジットカード納付
 インターネット上でのクレジットカード支払の機能を利用して、国税を納付する手続です。ただし、納付税額に応じた決済手数料がかかりますので注意が必要です。

◆インターネットバンキング等
 インターネットバンキングやATM等により国税を電子納付する手続です。利用に当たっては、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行う必要があります。

◆ダイレクト納付
 e-Taxにより申告書等を提出した後、納税者自身名義の預貯金口座から、即時又は指定した期日に、口座引落しにより国税を電子納付する手続です。利用に当たっては、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行った上、専用の届出書を提出する必要があります。

【時事解説】世界は海洋プラスチックごみの汚染を止められるか その2

 プラスチック廃棄物が海に流れ、汚染が問題となっています。これを受けて、G20大阪サミットでは「2050年に新たな汚染ゼロ」という目標が掲げられました。世界で初めて、海洋プラごみの削減に関する数値目標が掲げられました。

 世界でプラごみへの対策が進んでいるのはEU(欧州連合)です。欧州委員会がストローをはじめとする使い捨てプラスチック製品を禁止するルールをEU加盟国に提案しています。これを受けて、フランスや英国などが法整備を進めました。

 米国でも活動が始まっています。マクドナルドがプラスチック製のストローを廃止して、紙製のもので代用すると決めました。日本のマクドナルドは検討中ですが、今後、実施が期待されています。ほか、スターバックスなどでも同様の動きがあります。

 日本国内では、ファミリーレストランのガストでドリンクバーにストローを置くのをやめました。お客様から要望があったときは、トウモロコシを原料としたバイオマスストローを提供します。このストローは、生分解性で、微生物によって分解される性質があります。ほかにも、竹ストローといって、竹の粉を生分解の樹脂に溶かし込んで押し出すストローも注目されています。別の企業では、マネキンをプラスチックに代えて、紙を利用して製造する動きもあります。

 ただ、プラスチック製品は価格が安く、軽量といったメリットがあります。全廃となると、生活するうえで不便が生じる恐れもあります。また、企業にとってはコスト上昇を招きます。ガストでのストロー廃止のように、コストアップや企業の負担増にならず、海洋汚染の軽減につながるものから行動に移し、進めていく必要があります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】世界は海洋プラスチックごみの汚染を止められるか その1

海洋プラスチックごみ(以下海洋プラごみ)による汚染問題が関心を集めていいます。プラスチックの廃棄物には、レジ袋やペットボトル、マネキン、建設資材など、様々な種類があります。海洋プラごみとは、プラスチック廃棄物の中で、海に流れ込んだものを指します。

 本来ならば、プラごみは決められた手順に従い適切に処理されるはずですが、中には使い捨てにされ、河川などを通じて海洋に流出しているものがあります。世界中で、プラスチックの廃棄物は年間約3億トンと推定されますが、その中の900万トンが海に流れ込んでいるといわれています。

 海洋プラごみは海洋生物や地球環境へ深刻な影響を及ぼすと懸念されています。中でも問題なのはマイクロプラスチック化することです。海洋プラごみは海に出ると、波や紫外線などにより小さく砕かれ、直径5ミリメートル以下の微粒子になります。これが動物プランクトンのエサとなり、さらに小魚がプラクトンを食べることになります。結果、食物連鎖により、最終的に、有害物質が人間の内臓に蓄積される恐れが指摘されています。研究では、メダカの肝臓が働かなくなる、がんができるといった報告があります。

 海洋プラごみは数年前から研究者の間で関心が寄せられていました。一般の注目が集まるきっかけとなったのは、6月に開催されたG20大阪サミットです。サミットでは、2050年までに海洋プラごみをゼロにすると目標が定められました。背景には、世界における海洋プラごみの排出量は、5割弱をG20各国が占めていることから、今後、目標の達成に向け、各国は行動計画を作り、進捗状況を報告することが決められました。これは条約ではないので、拘束力はありませんが、世界がプラスチックによる海洋汚染を減らし、海をきれいにしようと動き出したといえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)