【時事解説】統合政府論の危険性 その2

 しかし、政府と日銀は元々目指すものが異なります。政府は国民の生活水準向上のために、福祉、公共投資、教育、防衛など様々な歳出を行います。一方、日銀の最大の目的は国民が生活する上で欠かせない通貨価値の安定です。

 統合政府論が有効に成立するには、少なくとも政府と日銀が同じ方向を向いていなければなりません。政府と日銀の目指す方向性は状況により、近くなったり遠くなったりします。これまでは、政府と日銀の方向性は大体同じだったということができましたが、これからはそう簡単ではありません。

 デフレとは通貨価値が強すぎる経済状態ですから、デフレを克服するためには、ある程度通貨価値を弱める(通貨を増加させる)政策が必要となります。当然のことながら、政府はいつの世でも財政を拡張させたいですから、「デフレからの脱却」という局面においては、政府と日銀はある程度目的を一致させることができました。この段階なら、統合政府論も一定の説得力を持ちます。

 しかし、インフレが懸念される状況になると、事情が変わります。インフレが激しくなると通貨価値を毀損し、国民生活を混乱に陥れます。インフレが懸念される状況下でも、統合政府論に基づき、日銀が政府と一体となり、通貨を膨張させる方向に向かうのは危険です。日銀は通貨価値の安定を図るために、膨張する政府の財政を監視する役割を持つことが期待されるはずです。

 中央銀行の通称は「通貨の番人」です。この言葉は中央銀行(日銀)の本来の役割が通貨価値の安定であることを雄弁に物語っています。統合政府論の最大の欠陥は日銀にその本来の役割を忘却させる危険性があることにあります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】統合政府論の危険性 その1

 最近、「統合政府」という言葉を目にするようになりました。統合政府とは政府と中央銀行(日本では、日銀)を一体化したものを言い、国の財政状態は統合政府として考えるべきだと主張します。日本は国債を主体とする政府債務が膨大にあり、その財政状態は危機的だとする財政規律派に対する反論として、提示されている論理です。

 統合政府の考え方に立てば、日銀は政府の実質子会社であり、政府発行の国債を日銀が保有しているということは、子会社が親会社の債務を負っているに過ぎないことになります。そこで、政府と日銀を統合した連結財務諸表を作れば、親子会社の債権・債務が相殺されてしまいます。すると、日銀は国債の50%以上を所有しているのですから、政府債務は激減し、その結果日本の財政は危機的ではなくなり、逆に財政余力が生じ、今後とも国債発行は十分に可能だと、議論は財政拡大に発展していきます。

 統合政府論を是とすれば、日銀は通貨発行権を持つのですから、通貨発行により日銀はいくらでも国債を購入することができてしまいます。そして、統合政府の連結財務諸表を作れば、債権・債務が相殺され、政府債務がなくなってしまうというのです。このまるで魔法のような方法により、日本は財政破綻を心配することなく、これからも国債を増発できることになります。本当にそのように考えてもいいのでしょうか。

 会社法上の親子会社を連結財務諸表において一体で評価できるのは、親子会社が目指す目的が一致しているからです。その目的は一般的には、親会社の株主価値の最大化だとされます。連結を構成するグループ企業は親会社の株主価値最大化のために、親会社指揮の下、一体として事業運営を行っているのですから、連結で評価されて当然です。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》経営者保証ガイドライン~早期廃業と再チャレンジ~

◆「会社の破産」=「経営者の破産」?
 会社の経営が厳しく、廃業を考えているとしましょう。経営者の個人保証がある場合、会社が破産すると、経営者も破産するしかないのでしょうか。いいえ、違います。
 法人が破産しても、「経営者保証に関するガイドライン」を活用し、保証債務を整理することで、個人破産を回避し、再出発できる可能性があります。ガイドラインに基づき保証債務を整理した場合、経営者に一定の資産を残すことを認めています。

◆経営者保証に関するガイドライン適用要件
 ガイドラインに基づく保証債務整理を申し出る場合は、以下のような要件を充足している必要があります。
●法人(主債務者)が法的整理(破産、民事再生等)や私的整理及びこれに準じる手続(準則型私的整理手続)を開始申立て済みである。
●対象債権者に経済合理性が期待できる。
●法人及び保証人が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、財産状況等について適時適切に開示している。

◆早期決断のメリット
 廃業等を早期決断することによって、事業が毀損する前に債務整理をすることで、売掛債権回収の極大化が図られるほか、早期売却価格ではなく市場価格で不動産等を売却できます。また、金融機関に経済合理性が生まれ、インセンティブ資産を手元に残せる可能性があります。

◆インセンティブ資産とは
 現時点で清算することにより、将来に清算した場合よりも、回収見込み額が増加する額がインセンティブ資産の上限となります。
①一定期間の生計費に相当する額の資産
②華美でない自宅
③その他の資産(個別事情を考慮して判断)

◆どこに相談すればいいの?
 まずは、取引金融機関や中小企業活性化協議会、REVIC(地域経済活性化支援機構)、支援専門家(弁護士、税理士等)等へご相談ください。早めの相談がガイドラインに基づく保証債務整理や、廃業だけでなく、事業再生や事業承継など、取り得る選択肢を広げることが期待されます。

《コラム》外国人労働者数が初の200万人超え

◆増えている外国人労働者
 厚労省は令和5年10月末時点の外国人雇用についての届け出状況のとりまとめを公表しました。
 国内で働く外国人は昨年10月末時点で前年と比べ12.4%増えて2,048,675人に上り、平成25年から11年連続で過去最多を更新しました。外国人労働者の増加率はコロナ禍前の水準まで達しています。また、比較可能な平成20年以降、200万人を超えるのは初めてです。

◆国籍別の状況
 国籍別ではベトナムが最も多く51万8,364人と全体の25.3%を占めています。次いで中国397,918人(同19.4%)フィリピン226,846人(同11.1%)の順です。対前年比で増加率が高かったのはインドネシア121,507人(前年比56.0%増)、ミャンマー71,188人(同49.9%増)、ネパール145,587人(同23.2%)でした。

◆在留資格別の状況
 労働者数が多い資格は、身分に基づく在留資格615,934人(全体の30.1%)、専門的・技術的分野の在留資格595,904人(全体の29.1%)、技能実習412,501人(同20.1%)。
 対前年比でみると、増加率が大きい資格は専門的・技術的分野の在留資格が前年比24.2%増、技能実習が同20.2%増、資格外活動が同6.5%増。

◆外国人を雇用する事業所の状況
 外国人を雇用する事業所は318,775所、前年比で19,985所増加、過去最高を更新、増加率6.7% (前年比1.9ポイント増加)です。事業所数が多いのは1位東京79,707所(全体の25.0%)、2位大阪25,450所(同8.0%)、3位愛知25,225所(同7.9%)。
 外国人を雇用する事業所数は「30人未満」規模の事業所が最も多く、事業所数全体の61.9%、外国人労働者数の全体の36.1%となっています。
 外国人労働者数の産業別では「製造業」が最も多く、全体の27.0%、外国人を雇用する事業所数は「卸売業、小売業」が最も多く、全体の18.7%となっています。

《コラム》定額減税が開始されます

 令和6年6月から始まる定額減税について、国税庁「定額減税特設サイト」では、制度紹介、Q&A、様式集が公開されています。合計所得金額1,805万円以下の居住者は、令和6年分所得税額から本人3万円、同一生計配偶者と扶養親族1人につき3万円が控除され、令和6年分個人住民税所得割額から本人1万円、同一生計配偶者と扶養親族1人につき1万円が控除されます。

◆給与に係る定額減税
 給与支払者は、令和6年6月1日現在の在職者(基準日在職者)から扶養控除等申告書の提出を受けた場合(甲欄適用者)、6月1日以後、最初に支払う給与・賞与等の源泉徴収税額から月次減税額を順次控除します(月次減税事務)。年の中途で同一生計配偶者や扶養親族の異動などが生じた場合は、年末調整にて精算します(年調減税事務)。減税額は各人別控除事績簿を備えて管理し、源泉徴収票の摘要欄には、定額減税控除済額を記載します。扶養控除等申告書に記載していない合計所得金額900万円超の基準日在職者の同一生計配偶者や16歳未満の扶養親族には、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」等の提出を受けます。

◆公的年金等に係る定額減税
 公的年金等の支払いを受ける者は、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出することにより、6月1日以後、最初に支払う年金の源泉徴収税額から定額減税額を順次控除します。年の中途で同一生計配偶者や扶養親族の異動などが生じた場合は、年末調整にて精算します。

◆事業所得・不動産所得・退職所得の場合
 事業所得・不動産所得のある納税者は、予定納税額から定額減税の本人分が控除されます。さらに、予定納税額の減額申請の手続により、同一生計配偶者分、扶養親族分の減税額相当額を控除できます。予定納税のない納税者は、確定申告にて定額減税額の控除を受けます。退職所得のある納税者は、源泉徴収時に定額減税額の控除は行われず、確定申告にて控除を受けます。

◆住民税額からの控除方法
 住民税所得割額からの控除は、給与所得で特別徴収の場合、令和6年7月分から令和7年5月分の11か月で均等額を控除。普通徴収の場合、第1期分(令和6年6月分)から順次控除。公的年金等は、令和6年10月分の特別徴収税額から順次控除。控除しきれない額は、調整給付金で支給されます。

《コラム》消費税の課税制度の切り替え

◆本則・簡易・2割特例
 中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、売上に係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる簡易課税制度が設けられています。みなし仕入れ率は事業区分によって異なり、消費税の納付税額を売上に係る消費税額の10~60%とすることができます。
 また、令和5年10月から開始されたインボイス制度に合わせて、免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方を対象に、消費税の納付税額を売上に係る消費税額の2割とすることができる制度が新設されました。
 本則・簡易の切り替えルールについて改正はありませんが、まとめておさらいをしておきましょう。

◆2割特例は手続き優遇
 2割特例の適用は①令和5年10月以降に免税事業者からインボイス発行事業者になり②基準期間(前々年もしくは前々年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者であれば、資本金1,000万円以上の新設法人や調整対象固定資産又は高額特定資産の取得により免税事業者とならない事業者等、特殊な状況でなければ受けられます。2割特例を受けるために、事前に届け出の必要はなく、消費税の申告時に2割特例を受ける旨を付記することで適用となります。
 本来は簡易課税制度の適用を受けるためには、課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があるのですが、2割特例利用者が簡易課税制度の適用を受けるには、その課税期間の末日までに届け出を提出すれば、簡易課税制度の適用を受けることが可能です。

◆簡易から本則は原則2年縛り
 簡易課税から本則課税への切り替えは、原則2年たたないと変更できません。簡易課税を選んだ場合、2年間は簡易課税が適用されます。ただし、基準期間の課税売上高が5,000万円超の場合は、強制的に本則課税が適用されます。その翌年の基準期間の売上高が5,000万円以下になった場合は、1年で簡易課税に戻ることになります。
 本則から簡易の切り替え、または任意で簡易から本則への切り替えを行う場合、課税期間の初日の前日までに届け出を提出する必要があります。

【時事解説】アフターコロナで対応が迫られるゾンビ企業の問題とは その2

 新型コロナウイルス禍以降急増している、「ゾンビ企業」が問題となっています。また、近年、日本は日銀の金融政策のおかげで低金利が続いてきました。結果、少ない利益でも利払いを賄えてきた「隠れゾンビ企業」も存在します。

 ゾンビ企業が問題視される理由はいくつかあります。一例を挙げると人材についてです。ゾンビ企業の中には人材を多く抱えているところもあるため、成長産業に人が集まりにくい、採用難に拍車をかけているといった批判があります。ほかにも、自社の補助金採択率が下がる、資金が集まりにくくなるといった声もあります。

 ただ、今後はゾンビ企業が経営難に陥る可能性が高くなると予想されます。現在、日銀の政策、大規模緩和は大きな転換点を迎えています。3月、マイナス金利政策の解除を決定し、マイナス0.1%としていた政策金利を0〜0.1%程度に引き上げると報じられました。こうした政策変更が、ゾンビ企業の財務悪化を顕在化させると指摘する人もいます。

 さらに、物価高や人手不足などに伴うコスト増で、ますます収益が悪化し業績不振に拍車がかかる企業も増えるでしょう。

 ただ、ゾンビ企業が淘汰されればよいと、単純な話でもありません。倒産により、ゾンビ企業で働く従業員の雇用の問題が浮上します。これらの人材の受け皿を探さなければならないという新たな課題が生じます。

 ゾンビ企業の問題を解決するには、単にゾンビ企業を排除するのではなく、収益性の高い経営といった経営改革が求められます。コロナ禍が明けた今、企業はどのように進むか、ゾンビ企業の問題を通して、企業は問われているともいえます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】アフターコロナで対応が迫られるゾンビ企業の問題とは その1

 新型コロナウイルス禍以降急増している、「ゾンビ企業」が社会問題となっています。ゾンビ企業とは、本業で借入金の支払利息分をまかなえず、政府の資金繰り支援策や金融機関によるリスケ(借入金の返済条件変更)などで延命している企業を指します。つまりは、健全な経営状態ではないものの、倒産や廃業を免れている企業をいいます。

 民間の調査会社によると、新型コロナウイルス禍以降、ゾンビ企業は急増し、2022年度は前年度より3割増え、25万1,000社に上ったといいます。ゾンビ企業が増加したのはコロナ禍で政府が緊急対応として資金支援を打ち出したことが要因の一つといわれています。

 具体的には、2020年、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)が始まり、多くの融資が実行されました。この支援策により、中小企業の中には資金繰りが支えられたところもありましたが、一方で、審査が甘くなったことで、本来融資を受けられない企業が生き延びました。

 当時、企業支援は不可欠なものでしたが、コロナ禍が明けた今、資金は経済成長が期待できる分野、たとえばAIや量子、グリーンなどへ戦略投資すべきという声もあがっています。ただ、日本はバブル崩壊後、リーマンショックや東日本大震災などの大きな経済ショックの影響で、経営者の中には積極投資による成長よりも、人件費や固定費を削減し、生き残りを優先する人が増えました。

 つまりは、今、ゾンビ企業が問題だからと排除しても、リスクをとって積極投資する経営者が少なければ、結果的に成長は望めません。ゾンビ企業の問題は、コロナ禍が明けた今、持続可能な経済成長を促進するにはどうしたらよいか、転換点を提示しているともいえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》「固定残業代」近年の裁判傾向

◆固定残業代のインパクトは甚大
 固定残業代制度を導入している企業は多く、それが労働基準法に照らして適法かどうかによって、経営に与える影響は甚大なものになります。仮に、自社の固定残業代制度が有効と認められない場合には、①残業代を1時間分も支払っていないことになる②これまで支払っていた固定残業代部分も残業代計算の基礎賃金に組み込まれる③裁判に至れば裁判費用や場合によっては付加金の支払いを命じられることがある、といったリスクが生じ、文字通りの三重苦に追い込まれる可能性があります。
 そのため、固定残業代の支払が有効となるための要件、判断要素を検討することは極めて重要であり、特に裁判で有効とされた事例または無効とされた事例の検討は大いに参考になります。

◆近年の裁判傾向から見た注意点
 近年の裁判傾向から、固定残業代制度の有効性について注意しなければならないのは大きく2点です。第一に、固定残業代制度を設計する際、その制度導入の目的に正当性、合理性が必要です(「コストダウン」などの目的では無効になる可能性が高いでしょう)。また、従業員への十分な説明を行うなどにより、その導入手続きの妥当性を確保することによって、制度内容及び計算方法に合理性が認められ、裁判上も有効と認められやすくなります。第二には、固定残業代の金額の定め方について、通常の労働時間として支払われるべき金額が多く含まれている、つまり、通常の労働時間の賃金を構成する基本給を、固定残業代に振り分けただけと判断され得る場合には、有効とは認められない可能性が大きくなります。
 そのため、固定残業代制度を設計するときには、自社における、平均的な残業時間などの数値や、法令遵守を意識した残業時間の目標数値などに基づく、合理的な金額設定が必要になると解されます。

◆導入にはメリットデメリットを考慮
 繰り返しになりますが、自社における固定残業代制度について、有効性が認められない場合、経営に与えるインパクトは甚大なものになります。固定残業代制度の導入に関しては、メリットとデメリット両面を考慮して、残業代の支払は、固定残業代がよいか、労働基準法通りの計算がよいか検討が必要です。

《コラム》税制の変遷と近時の改正動向 暗号資産(仮想通貨)

◆仮想通貨は「モノ」
 仮想通貨の課税関係については,参議院議員による質問主意書に対する2014年3月7日の政府答弁書で、初の公式見解が示されました。その文書では、仮想通貨は通貨でなく「モノ」と認定されました。
 「モノ」なので、銀行券や硬貨、また消費税法上非課税取引となる商品券やプリペイドカードなどの物品切手等支払手段でもないことになり、消費税の課税対象になることとされました。

◆「モノ」から「カネ」に
 2017年4月施行の資金決済法で、仮想通貨も紙幣等と同じ支払手段として法的に位置付けられることになり、それに対応して2017年税制改正大綱で仮装通貨の消費税非課税化が示され、政令において通貨と同じ扱いの非課税と規定され、2017年7月施行となりました。ただしこの時点では、法人税法上、期末時点での時価評価はしないものとされていました。

◆暗号資産化と時価法
 2018年3月、企業会計基準委員会が「資金決済法における仮想通貨の会計処理等」を公表し、「活発な市場」が存在する仮想通貨の貸借対照表価額は、市場価格に基づく価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する、としました。
 これを承けて、2019年の税制改正で、法人税における活発な市場が存在する仮想通貨の評価方法について、時価法を導入する措置が講ぜられました。なお同時期に、仮想通貨の呼称が暗号資産に改められました。

◆時価法適用制限への逆流
 2022年11月、企業会計基準委員会が「暗号資産発行者の自己割当暗号資産の会計上の取扱い」を公表し、対価受領のない自己割当暗号資産は第三者との取引が生じるまでは会計上時価評価しない、としました。
 これを承けて、2023年の税制改正で、期末時価評価の対象となる暗号資産の範囲から、自己が発行した暗号資産が除外されました。2024年の税制改正では、譲渡についての制限のある暗号資産については期末時価評価の強制から除くこととされます。
 前年からの改正は、期末の時価評価での担税力の伴わない含み益課税を嫌って、スタートアップソフトウェア開発企業が日本から流出する傾向にある、ことへの対処と言われています。