《コラム》換地と保留地

 登記簿に「換地」や「保留地」と記載される宅地は、土地区画整理事業の実施によって新しく整備された土地です。一般の土地と同様に用途地域の指定等に従って建物を建築できます。

◆換地処分で土地の利用価値は高くなる
 土地区画整理事業は地権者、地権者の作る組合や地方自治体などの公共団体が施行者となります。地権者は自身の土地を施行者に提供し、代わりに区画整理された新たな土地を取得します(この土地を換地と言います)。提供された土地の一部は、新たに道路や公園などの公共施設となり、また売却して事業資金に充当されます(この土地を保留地と言います)。換地処分後の土地の面積は、従前より小さくなります(これを減歩といいます)が、土地は整形され住環境が改善されますので土地の利用価値は事業を実施する前より高くなります。

◆換地と保留地の評価
 土地区画整理事業が施行される土地の評価は、造成工事の進行状況によって変わります。仮換地が指定される場合は、仮換地に接する道路の路線価等によって評価します。仮換地の造成工事が施工中で工事完了まで1年を超えることが見込まれるときは、仮換地の造成工事が完了したものとして評価した価額の95%相当額で評価します。
 ただし、仮換地に障害となる物があるなど特別の事情で使用収益を開始できる日が別に定められ使用収益を開始できないとき、仮換地の造成工事が行われていないときは、従前の宅地の価額で評価します。
 換地処分が完了すると、換地や保留地として登記簿に登記されます。換地も保留地も一般の土地と同様に路線価等により評価します。路線価には換地処分によって利用価値の高まった部分が反映されています。

◆用途地域や土地の境界を確認する
 土地区画整理事業が完了すると、登記簿の表題部には、その土地が換地処分された土地である旨と換地処分の日付が記載されます。
 土地区画整理事業の施行区域は、市区町村のWEBで公開されています。事業の詳細は市区町村の都市計画課で確認できます。用途地域の指定等による建築制限の内容を確認し、施行区域の換地図と公図、測量図をもとに、宅地の形状と隣地との境界標の位置を確認します。実際の宅地の形状や利用状況、境界標の位置については、現地を実査して確認しましょう。

《コラム》実務で使える就業規則とは

◆就業規則の問題点
 「就業規則を作ったのに実務で使えない」と感じたことはありませんか。例えば、就業規則に定めた解雇事由や懲戒事由に該当するとして行った解雇処分や懲戒処分について、労働者が不服として労働基準監督署に申告をし、又は、裁判になった場合、会社が不利になったり負けたりということが少なくありません。会社としては、「ただ就業規則の記載に沿った処分をしただけなのに」という感想を抱いてしまいます。
 この問題の原因が、就業規則の内容にあることは多いです。現状の日本の労働法制では、法律の表現には抽象的で画一的なものが多く、具体的な考え方や判断基準はこれまでの膨大な量の裁判例が蓄積されたものから成り立っているからです。つまり、就業規則の内容も、法律の文言に沿った表現での記載だけでは足りず、過去の裁判例を踏まえた具体的な内容にしなければ、実際の労務トラブルに対応できなくなってしまうのです。

◆主な原因は2つ
 抽象的な法律表現による就業規則と、裁判例を意識した内容の就業規則との違いは、次の2つの視点が意識されているかいないかに大きな違いがあります。この2点の意識が薄い就業規則に沿って、会社の行為が行われた場合には、会社に不利な結果になることがあります。
 ①解雇権濫用法理
 ②合理的限定解釈
 この2つをごく簡単に説明すると、法律上は会社の権利として認められる行為であっても、裁判所や労働基準監督署から「それはやり過ぎ」と一定の制限がかかることです。例えば「解雇事由」や「懲戒事由」は、原則として会社が自由に定めることができる権利ですが、実際の運用において、「労働者の起こした問題と比較して、その処分は重すぎる」として無効とされることがあります。これは会社が権利を濫用したとしての、解雇権濫用法理にあたります。また、会社が規定した就業規則の内容が広すぎる、例えば、「兼業・副業を全面的に禁止する」との規定について、裁判所が「業務に支障を来たさない範囲での兼業・副業まで禁止すべきでない」と判断することがありますが、これは、会社が定めた「全面禁止」を修正し、「合理的な範囲で解釈すべき」と合理的限定解釈がされたことによります。

《コラム》相続に備える道路調査

 相続する土地に建物を新築できるのか、自身で活用するにしても売却するにしても、事前に確認する必要があります。

◆2m以上の接道義務が鉄則
 最初に押さえておくことは、建物を建てるために、その敷地が建築基準法の道路で幅員4m以上のものに原則2m以上、接道する必要があることです。
 建築基準法の道路の主なものは、国道、県道、市道など、道路法の道路(42条1項1号道路)、分譲宅地を造成するとき、事業者等が築造し、市町村長などの指定を受けた位置指定道路(42条1項5号道路)、建築基準法施行時に建物があった幅員4m未満の2項道路(42条2項道路)などです。

◆役所で道路の種別を調査する
 前面道路の種別は市町村の建築指導課などで確認できます。また、道路の幅員や敷地との境界は、道路管理課などで確認できます。自治体によっては、WEBサイトに道路図を公開していますので、役所まで出向かず調べることもできます。
 建築基準法の道路の種別は、指定道路図などで確認し、道路の幅員や敷地との境界点については、認定道路図、道路区域線図、道路台帳平面図などで確認できます。

◆敷地と道路の境界標を確認する
 敷地と道路の境界には、自治体が道路図を作成する際、プレートやコンクリート製などの標識を設置しています。他に金属鋲の場合もあります。これらの標識は、図面だけでなく現地で目視して確認しましょう。
 2項道路の場合は、建物、門扉、擁壁等を道路の中心線から2m後退させねばならず、土地家屋調査士などに測量を依頼して境界を確定させる必要があります。その際、道路として提供する部分を分筆して登記する、さらに、自治体にセットバック部分を寄付することもあります。
 セットバックする際は、道路部分に越境している門扉、擁壁などを地権者の負担で取り壊すことが必要になります。また、自治体が主導して地権者との狭あい協議によって道路の拡幅を進めるときは、市町村から費用を助成してもらえます。

◆固定資産税は申請すれば非課税になる
 セットバックして公共の用に供する道路とした土地は、固定資産税が非課税になります。市町村が分筆登記された内容を把握し、非課税としてくれる場合もありますが、通常は地権者から自治体に、非課税としてもらえるよう申請を要します。

《コラム》社会保険適用拡大に向けて

◆パートタイマー等への適用拡大
 令和6年10月から、従業員数が50人以上の事業所についても、以下の4つの要件をすべて満たすパートタイマー等は、社会保険(ここでは、健康保険及び厚生年金保険を言います)に加入する必要があります。
・1週の所定労働時間が20時間以上であること
・所定内賃金が月額8.8万円以上であること
・学生でないこと
・2か月を超える雇用の見込みがあること
 今回は、適用拡大の対象となる事業所の範囲を中心に注意したいポイントを押さえたいと思います。

◆従業員50人超の意味
 ここでの「従業員」とは、厚生年金の被保険者が対象になります。なお、70歳以上で健康保険のみ加入している人は、対象に含みません。また、「50人超」の意味は、その事業所における、厚生年金保険の被保険者の総数が、12か月のうち6か月以上50人を超えることが見込まれることを指します。
 ここで注意しなければいけない点は、令和6年10月1日時点で50人超を判断するのではなく、過去12か月間で判断をすると言うことで、逆に言えば、令和6年10月1日時点で50人に満たなくても対象になり得ます。

◆適用拡大までのスケジュール
 日本年金機構(年金事務所)では、これまでに提出している「資格取得届」や「資格喪失届」などから、各事業所における厚生年金保険の被保険者数を把握しています。そこで、令和6年10月1日から、適用拡大の対象となりそうな事業所には、令和6年9月上旬以降、順次各種の通知書が送付される予定になっています。
 この通知書は、適用拡大の対象となる事業所だけでなく、対象になる可能性がある事業所にも送付されますので、送付がされた場合には必ず確認をするようにしてください。そして、令和6年10月1日以降に適用拡大の対象となる事業所は、自ら「特定適用事業所該当届」を提出することになります。仮に、届け出を行わなかった場合には、日本年金機構から適用拡大の対象になるとみなされて「特定適用事業所該当通知書」が送付されてきます。

【時事解説】増え続ける日本のデジタル赤字、稼ぐ力に転じられるか その2

 デジタル赤字という言葉を耳にする機会が増えました。デジタル関連のサービスは、GAFAMを代表とする米国の大手IT企業が高いシェアを獲得しているため、日本は赤字になりやすい傾向があります。
 ただ、デジタル赤字は日本国内で、デジタル活用やDXが進んでいる証拠といえます。企業においては、デジタル活用の流れを止めずに、今後はデジタルについていかに多くの価値を提供できるかが問われています。
 デジタル赤字を減らそうと、米国のGAFAMを真似て同じビジネスを展開しても、多くの利益は期待できません。日本企業がとるべき道は、既存の技術などを活用し、日本独自の価値を提供していくことが必要だといわれています。

 こうした流れを受けて、日本独自の技術を活用して、競争力を高めようとしている企業も数は少ないものの現れ始めました。AI事業の垂直統合戦略を進めている日本のあるスタートアップは、大手エネルギー会社と共同で、分子解析ソフトウエアを開発しました。AIが膨大な原子構造データを学習し、未知の物質の組成をシミュレーションするものです。エネルギー会社の素材開発の知見と、自社のAI技術を組み合わせて生まれた事業です。

 材料研究や最適な組成を設計するうえで役立つもので、自動車会社などで導入されています。ポイントは、「日本の強み」と「デジタル」の融合にあります。日本は、半導体製造装置や自動車などで高い競争力を維持しています。こうした、日本の得意分野にデジタルを組み合わせることで、競争力を高めることにつながります。ものづくりなど日本企業が持つ優れた知見とAIを組み合わせれば、日本全体の競争力が高まると予想されます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】増え続ける日本のデジタル赤字、稼ぐ力に転じられるか その1

 デジタル赤字という言葉を耳にする機会が増えました。デジタル赤字とは、その国のデジタル関連のサービスや商品について、輸入する額が輸出額を上回り、収支が赤字になることを指します。
 実際のデジタル赤字で対象となるサービスや商品は、パソコン用基本ソフト(OS)や動画のサブスクリプション、ウェブサイトの広告取引、コンサルティングサービス、著作権使用などがあります。

 デジタル関連のサービスは、GAFAMを代表とする米国の大手IT企業が高いシェアを誇っています。パソコン用基本ソフト(OS)に関する代表的な提供企業としては、マイクロソフトやアップルが挙げられ、それぞれWindowsとmacOSを提供しています。日本でも多くの人が利用しています。
 また、最近では、動画サブスクリプションサービスで映画などを楽しむ人が増えました。提供企業には、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオ、ディズニープラスなどがあります。そのほか、ウェブサイトの広告取引ではグーグル広告、コンサルティングサービスのマッキンゼー・アンド・カンパニーなどがあります。
 いずれもアメリカ合衆国に本社を構えており、グローバル市場において圧倒的な影響力を持っています。こうしたことから、日本のデジタル赤字は今後も増えていくと予想されます。
 既に、2023年の収支はマイナス5.5兆円の赤字、2014年はマイナス2.1兆円だったことから10年間で赤字額は2倍以上に拡大しています。円安の影響もありますが、デジタル赤字の額は、ドイツやスイスよりも大きくなっています。

 デジタル赤字の規模は日本経済にとっても、無視できない大きさになりつつあること、なによりデジタル赤字が膨らむということは、日本のデジタル競争力の弱さを象徴している点を問題視する声もあります。今後も増えるデジタル赤字にどう対処するか、今、日本は問われています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】2024年版中小企業白書・小規模企業白書の概要 その2

 では、2024年版小規模企業白書ではどのような内容が記載されているのでしょうか。ここでは2024年版小規模企業白書の構成に沿ってその概要をみていきましょう。

 第1部では2023年度の小規模事業者の動向について各種統計データ等に基づきまとめています。
 第2部では、「経営課題に立ち向かう小規模事業者」というタイトルで分析を行っています。

 第1章は、「小規模事業者の経営課題と対応」というテーマで、小規模事業者の売上確保に向けた取組、資金繰り改善に向けた取組、人材確保に向けた取組について分析を行っています。その中で、小規模事業者は販路開拓や人手不足、資金繰り等の経営課題を重視する傾向にあり、これらの課題に対応しながら、売上を確保し事業を持続的に発展させていくことが重要である点を指摘しています。
 第2章は、「小規模事業者に対する今後の期待」というテーマで、小規模事業者の地域貢献と新たな担い手の創出という切り口から分析を行っています。その中で、創業にチャレンジしやすい環境の中で起業・創業により新しい事業者が生まれ、新たな担い手が参入することが重要であること、新たな担い手の参入は労働生産性の向上につながる可能性があることなどを指摘しています。
 第3章は、「中小企業・小規模事業者を支える支援機関」というテーマで、支援機関の現状と課題や、支援体制の強化に向けた取組について分析を行っています。

 このように、小規模事業者が中小企業と比べ厳しい経営環境にある中で、支援機関を適宜活用しつつ、コストを把握した適正な価格の設定や、顧客ターゲットの明確化に取組むことで売上高の増加につなげていくことなどが指摘されているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】2024年版中小企業白書・小規模企業白書の概要 その1

 中小企業庁では、2024年版中小企業白書・小規模企業白書を取りまとめ2024年5月10日に閣議決定し公表しました。

 2024年版中小企業白書・小規模企業白書の特色としては、 中小企業・小規模事業者の現状や直面する課題に加えて、今後の展望として中小企業が環境変化を乗り越え、経営資源を確保して生産性の向上に繋げていくための取組や、成長につながり得る投資行動とそのための資金調達、小規模事業者が売上を確保し今後も事業を持続的に発展させていくために必要となる取組、支援機関の役割と体制の強化などについて分析を行っている点にあります。

 2024年版中小企業白書の構成に沿ってその概要は以下の通りです。
 第1部では2023年度の中小企業の動向についてまとめています。
 第2部では、「環境変化に対応する中小企業」というタイトルで各章において3つのテーマ別の分析を行っています。
 第1章は、「人への投資と省力化」というテーマで、人材の確保や多様な人材の活用、省力化投資について分析を行っています。
 第2章は、「中小企業を支える資金調達」というテーマで、中小企業と間接金融や、中小企業とエクイティ・ファイナンスについて分析を行っています。
 第3章は、「中小企業の成長」というテーマで、中小企業の成長投資への意欲や、中小企業の成長に向けた取組などについて分析を行っており、企業の成長には、人への投資、設備投資、M&A、研究開発投資といった投資行動が有効である点を指摘しています。
 第4章は、「中小企業・小規模事業者を支える支援機関」というテーマで、支援機関の現状と課題や、支援体制の強化に向けた取組について分析を行っています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》マイホーム買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

◆買換え時に売却損が出た時の特例
 通常、不動産の譲渡所得については、他の不動産の譲渡所得以外の所得と損益通算ができませんが、マイホーム(旧居)を売却して、新たにマイホーム(新居)を購入した場合に、旧居の譲渡損失が生じた時は、一定の要件を満たしていればその譲渡損失を給与所得や事業所得などの他の所得から控除することができます。
 また、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除することができます。
 この特例の名称は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。

◆繰越控除「のみ」受けられないケースも
 「買換え」の特例ですから、新居を取得・もしくは取得予定でなければ適用できません。他にも、旧居は5年以上所有していること、住まなくなって取り壊した場合は3年経過する日の属する12月31日までに新居を取得、新居を取得した年の年末に償還期間10年以上の住宅ローン控除がある、過去2年間他のマイホームに係る特例を受けていないこと等の要件があります。
 また、この特例には「繰越控除のみ受けられない」条件が設けられており、
①「繰越控除適用年」の12月31日において、新居について償還期間10年以上の住宅ローンが無い
②合計所得金額が3,000万円を超える年(その年のみ適用できない)
③旧居の敷地面積が500㎡を超える場合は、超えた部分については繰越控除不可
 以上の場合は繰越控除が認められません。

◆住宅ローン控除と併用可能だが
 マイホーム買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除は、新居の住宅ローン控除が要件に含まれていますから当然併用が可能です。ただし、繰越控除が翌年に残るということは、その年の所得額は0円ということですから、その年の住宅ローン控除で引かれる税額は0円になります。繰り越す譲渡損失が所得金額と比べてとても大きいと、最大4年間は住宅ローン控除の恩恵が受けられず、住宅ローン控除期間を後ろ倒しにはしてくれませんから、適用期間は減ってしまうことになります。

《コラム》夫婦間の役務提供についての課税

◆親族間の役務提供は原則、経費不算入
 夫はITエンジニア、夫と同一生計の妻はWEBデザイナーです。それぞれ独立した個人事業者として事業を行い、確定申告しています。このような中で夫が妻の受注した顧客向けECサイトの構築業務をサポートした場合、妻が夫に支払う役務提供の報酬は、妻の事業所得の必要経費に算入されません。また、夫は収受した報酬も自身の事業所得の収入金額に算入されず、サポートに要した夫の経費は、妻の必要経費となります。この取扱いは、夫婦など同一生計親族間で所得を分散させる租税回避を防止するために設けられた制度です。

◆弁護士夫婦事件で問われたもの
 独立した親族間の役務提供を所得金額に反映させることの是非が争われたのが、いわゆる「弁護士夫婦事件」です。
 裁判では、それぞれ独立して弁護士業を営む夫婦間において、妻弁護士が夫弁護士に提供した役務に対する報酬は、所得税法に規定するとおり、夫の事業所得の必要経費とならず、妻の事業所得の収入金額にならないと判示されました。
 また、親族からの役務提供を所得金額に反映させない取扱いと、親族以外の他人からの役務提供を所得金額に反映させる取扱いとの不整合が憲法14条違反となるかについても、裁判所は、これらの区別は合理的であり、憲法違反ではないとしました。

◆青色事業専従者給与等は必要経費算入
 一方、夫の事業に妻や子供などの親族が青色事業専従者等として従事する場合は、帳簿記帳と一定規模の就業、相当な対価などの要件をもとに、夫が親族に支払う給与は夫の事業の必要経費となり、支払を受けた親族の収入金額となります。これも親族間の役務提供ですが、透明性を担保に例外として所得金額への反映を認めています。

◆個人単位課税への転換が契機に
 親族間の役務提供の経費不算入も、青色専従者給与制度も、戦後、世帯単位課税から個人単位課税に移行する中で、補完措置として設定されました。しかし、現代は副業をはじめ多様な働き方が求められ、夫婦共働きや夫婦間での協業も普通に行われます。独立した事業を適正な対価で営む親族間の取引を所得計算から除外することは、時代の流れに整合しなくなっている面もあります。青色事業専従者として雇用し、法人成りして給与を支払うことでも経費算入は可能ですが、違和感はぬぐえません。