(前編)2019年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

2019年度査察白書によりますと、2019年度中に一審判決が言い渡された124件の100%に有罪判決が出され、うち5人に対し執行猶予がつかない実刑判決が言い渡されました。
 実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役10ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役9年でした。

 事例では、A社はプロセッサ開発・製造・販売等を行うもの会社ですが、架空の外注費を計上するなどの方法により所得を隠し、多額の法人税及び消費税を免れておりました。
 同社の元代表者Bは、詐欺罪との併合事件として、法人税法、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役5年の実刑判決を受けております。
 一審判決があった124件の1件当たり平均の犯則税額は4,700万円、懲役月数は15.5ヵ月、罰金額は1,200万円となりました。
 査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、また、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
 査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決の可能性も十分にあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年9月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》進む働き方改革 制度導入のポイントは

◆多様な働き方ができる時代に
 時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができるテレワークや、総勤務時間を変えずにラッシュアワーを避けて通勤をする時差出勤、社員が自由に出勤・退勤時間を決められるフレックスタイム制の導入など、新しい働き方が広がってきました。
 これらは、近年政府が推し進めてきた働き方改革の一環として、労働生産性の向上や長時間労働の是正を目標に、大手企業を中心に浸透してきていましたが、昨今の新型コロナウイルスの影響により、より多くの企業でこれまでの働き方を大幅に見直す事態となり、急速に導入が進んでいます。

◆利点も多いが、気になる部分も
 例えば、会社に出社せずに自宅や外勤先、サテライトオフィス等からインターネットを通じて、会社のサーバーにあるファイルにアクセスしたり、仕事の電話に対応したりできるテレワーク。
 営業で外回りの後、事務仕事をしに会社に戻る必要がなくなったり、育児や介護を担う労働者が在宅勤務をすることで通勤時間を有効に活用できたりするなど時間にゆとりを持たせた勤務を実現できます。
 その一方で、社員同士のコミュニケーション不足や、仕事と仕事以外のメリハリをつけにくい、長時間労働になりやすい、勤務時間管理や在席確認が難しい、情報漏洩のリスクが上がる等の、気になる部分もあります。
 時差出勤やフレックスタイム制においても、勤務開始や終了時刻を調整することで、私生活との両立がしやすくなるという利点があるのですが、一方で取引先や他部署との連携業務において時間の設定が難しいことや、急な会議や電話に応対できない等、社員が異なる時間に勤務することによるデメリットもあります。

◆企業側が注意すること
 大切なことは、制度に関する就業規則を整備し、適用する社員の範囲を明確に定め、勤務時間管理をしっかり行うことです。
 勤怠システムを活用するのも良いでしょう。過重労働や反対にルーズな勤務状況とならないよう、社員本人の時間管理意識も大切です。ワークライフバランスを意識した、働きやすい環境作りをしたいですね。

《コラム》レジ袋の有料化と医療費控除

◆令和2年7月1日からレジ袋の有料化義務
 2020年7月1日から、すべての小売業でレジ袋の有料化が義務化されました。医療機関を受診後に交付される、処方箋で薬を購入する際に、調剤薬局が薬を入れる袋も、対象となっています。

◆レジ袋は医療費控除の対象となるのか?
 調剤薬局では、薬代とレジ袋代が別々に会計されていますが、レジ袋代も医療費控除の対象となるのでしょうか?
(1)別々に会計されるということは、調剤薬とは別という認識であるから対象外
(2)調剤薬を入手するためのものであるから医療費控除の対象
(3)ケースバイケースで、対象となるものと対象外となるものに分かれる
(4)その他、のいずれでしょうか?

◆医療費控除とは
 処方箋による調剤薬の購入は、「治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価」として所得税法で医療費控除の対象とされています。薬そのものは対象ですが、薬購入時のレジ袋も控除対象と言えるのでしょうか?
 医療費控除対象の区分基準として、医療を受けるに際して直接必要で医療機関等に支払うものは医療費とされています。また、タクシー代などの医療を受けるのに直接必要なもので第三者に支払う対価も、医療費に含めることができます。
 一方で、自己の都合による差額ベッド代や親族などに支払う付添料、さらに入院時の病院食以外の外食や出前は、自己都合による費用として対象外とされています。
 以上のことからすると、「医療品としての調剤薬の購入に際して調剤薬局に支払うレジ袋代」は、調剤薬を入手するために第三者である調剤薬局に直接支払う費用として医療費に含めてよいのではないかと考えられます。一方で、買い物袋(いわゆるエコバッグなど)を持参しないのは自己都合だから対象外とすべきという意見もあるかもしれません。しかしながら、買い物に際して、購入者側にまで買い物袋の持参義務が課されてはいない現状では、そこまで否定するには無理があるでしょう。
 よって、直接調剤薬のみを入れてもらうレジ袋は医療費控除対象、調剤薬以外の買い物もしていればどちらが主かで決める、調剤薬を入れるためのエコバッグの購入費用は対象外というように分かれるのではないかと考えられます。

 

【時事解説】コロナ禍で普及の兆し、スマートグラスとは その1

世の中には、ヒットが期待されたものの、普及に至らずくすぶっている商品が多くあります。ただ、このまま消えると思われていたものの中には、新型コロナウイルスの感染防止の影響で普及の兆しが見えたものもあります。その一つがスマートグラスと呼ばれるメガネ型端末です。これは、メガネの形をしたウェアラブル(身につける)ハイテク機器で、メガネと同様、頭部(眼の部分)に取り付けて使用します。

 一見、メガネに見えますが、身につけると、PCやスマホの画面と同じようにメガネのグラス部分に画像などが映し出されます。利用者は音声で操作し、ネットの閲覧のほか、アプリの起動やオンラインでの会議などができます。メガネ型なので、両手を自由に使いながら、離れた人と話ができる点が特徴です。

 スマートグラスが注目されるきっかけはコロナ禍にあります。昨今、感染拡大防止のため、テレワークが推奨されています。が、工場での作業はテレワークが難しいとされています。ところが、スマートグラスのオンライン会議の機能を利用すると、作業者は両手が自由に使えるので作業をしながら熟練工と会話ができます。熟練工は映像や手書き画像を作業者と共有しながら、音声通話機能を使って作業を支援できます。離れた場所で作業者の仕事を見ながら指示を出すこともできます。作業する当事者は現場で仕事をしなければなりませんが、熟練工など、指示を出す人はスマートグラスを利用することで、難しいとされていたテレワークが可能になります。自動車や製菓など、多くのメーカーがテレワークを導入したこともあり、スマートグラスの需要が高まる兆しが出ています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

《コラム》私道の調査-相続した土地の売却-

Tさんは一人暮らししていた被相続人(母)の土地・建物を相続しました。建物は木造で築50年、公道から奥まったところに建築されており、公道から玄関まで通路としている私道を、近隣の地権者と一緒に利用していましたが、不動産会社に土地の売却を相談したところ、思いがけず現状のままでは売却できないことがわかりました。

◆接道義務を満たさないと建築不可
 建物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に2m以上接道しなければ、新築や増築できず、そのままでは売却できる土地になりません。
 Tさんの敷地は私道部分が路地状敷地で、出口側で公道と2m接していませんでした。

 敷地が接道義務を満たしているかは、まず法務局で公図、地積測量図を見て、土地の形状、隣地や道路との境界を確認します。
 次に、敷地が接する道路について、市区町村の役所で指定道路図を閲覧し、建物を建築できる敷地に該当するか、該当させるための条件を担当者に照会します。
 私道が位置指定道路や、セットバックを要する2項道路に該当しているか、私道部分が路地状敷地である場合は、出口側で接する道路の指定状況を確認します。
 Tさんは、隣接する土地を地権者と一緒に売却して2mを確保することとしました。

◆越境により建築できない場合も
 土地の売却前に、隣地との境界について確定測量を行います。隣地からの越境は、隣地地権者の立ち会いのもと、境界確認と合わせて越境の状況を双方で確認します。
 Tさんは、確定測量の結果、隣地建物の外壁やドア、換気用フードなどが私道部分に越境しており、まだ2mの接道義務を満たせていないことがわかりました。

◆地権者間で権利調整が必要
 越境が確認された場合、建物が建築できる土地になるよう、隣地地権者と話し合い越境解消について合意が必要です。
 Tさんの場合、買主の不動産会社が役所に出向き、建築できるための条件を相談し、役所が示した要件に合わせて隣地地権者と越境解消の工事手順と負担について話し合い、土地を売却できるようになりました。

 

【時事解説】第三者承継支援総合パッケージについて その1

経済産業省は、後継者不在の中小企業に対して、第三者による事業承継を総合的に支援するため、2019年12月に「第三者承継支援総合パッケージ」を策定しました。
 これは、後継者未定の中小企業について、これまでの対策では不十分な点があったため、黒字廃業の可能性のある中小企業の技術・雇用等の経営資源を次世代の意欲ある経営者に承継・集約することを目的に取りまとめられたものです。
 とくに親族外の第三者による承継を推進するうえで、中小企業のM&Aの件数が、潜在的な後継者不在の中小企業の数と比較して不十分となっており、その背景として以下の3点があげられます。

 一つ目の課題として、マッチング前の段階において、中小M&A市場の売り手と買い手の割合が1対9程度となっているなど売り案件が圧倒的に少数である点があげられます。経営者にとって第三者承継が身近でなく、他者へ「売る」ことへの抵抗感が根強いことや、仲介手数料や仲介業者などのM&Aに関する情報が不十分なため、売りを躊躇することが要因として考えられます。

 二つ目の課題として、マッチング時の段階において、事業引継ぎ支援センターの成約率が約8%にとどまっているなどマッチングの成立が困難な点があげられます。個人保証の存在により承継を拒否したり、従業員も含め適切な相手が見つからなかったりすることが要因として考えられます。

 三つ目の課題として、マッチング後の段階において、承継後の経営統合が困難な点があげられます。承継後の経営統合や事業戦略の再構築にコストを要することを懸念して、承継を躊躇することが要因としてあげられます。

 これらの課題に対処するため、第三者承継支援総合パッケージでは政策の抜本強化が図られているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》キャッシュレス消費者還元事業からマイナポイント事業へ

昨年10月から行われていたキャッシュレス消費者還元事業は、本年6月に終了しましたが、本年9月からは、マイナポイント事業によるマイナポイントの付与が始まります。

◆マイナポイント事業とは
 マイナポイント事業は、マイナポイントの活用により、消費の活性化、マイナンバーカードの普及促進、官民キャッシュレス決済基盤の構築を目的として行う国の事業です。国家予算2,500億円が投じられているそうです。期間は本年9月から来年3月までの7か月間です。
 本年9月以降に行われるICカード(電子マネー)・QRコード決済・クレジットカードなどのキャッシュレス決済サービスがこの制度の対象となります。マイナポイントは決済サービスの利用(チャージまたは購入)額に応じて付与されます。プレミアム率はチャージ額または購入額の25%で、上限は5,000円分となります。

◆マイナポイント取得の事前準備
 マイナポイントを取得するためには、以下の事前準備が必要となります。
①マイナンバーカードの取得
 まず、マイナンバーカードを保有していることが前提となります。
②マイナポイントの予約
 マイナンバーカードが入手できたら、次にマイナポイントの予約手続を行うと、マイキーIDが発行されます。自身のスマートフォン、パソコンで手続するには専用のアプリ・ソフトのダウンロードが必要です。パソコンやスマホがない方は、全国各地に設置してある約9万箇所の支援端末で手続ができます。
③マイナポイントの申込み
 続いて申込み手続を行い、利用しようとするキャッシュレス決済のIDやセキュリティーコードを入力します。この手続も専用アプリや支援端末で行います。

◆加盟店側の手続は不要
 キャッシュレス消費者還元事業では加盟店側(小売店、販売店等)に登録手続が必要でしたが、マイナポイント事業では加盟店に登録手続等は不要です。

 

(前編)定年退職者への海外慰安旅行の供与は原則、非課税!

社内慰安旅行の費用は、一定要件を満たしていれば、企業が負担しても、従業員の経済的利益として給与課税されることはありませんが、企業のなかには定年退職者に対し、退職金のほかに海外慰安旅行をプレゼントして永年の会社に対する貢献に報いるところもあるようです。

 税務当局では、この定年退職者に対する海外慰安旅行の課税関係について、定年退職者に対する海外慰安旅行の提供については、それが永年勤続者表彰制度と同様の内容に基づくものであり、社会通念上相当と認められるものについては非課税として取り扱われ、それを上回るものについては退職所得として課税するとしております。

 永年勤続者に対する旅行や観劇の招待、記念品などは、対象者の勤続年数がおおむね10年以上などの一定要件を満たせば非課税となります。

 永年勤続者表彰制度に基づき永年勤続者を旅行に招待した場合のその永年勤続者が受ける経済的利益については、その永年勤続者の地位や勤続期間などに照らし、社会通念上相当と認められれば課税されません。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年7月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》居住用特例重複適用

◆会計検査院が実態報告
 会計検査院の検査報告によると、新居を購入し住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に売却して居住用資産譲渡の3000万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成28年、29年の2年間で37人いたとしています。措置法特典の重複適用の指摘です。そして、この37人の重複減税額の合計が5011万円であった、としています。

◆立法作業の疎漏の指摘か
 会計検査院は、法の想定外の事態として、重複適用になってしまっている、と把握しています。これが本当に、元々法の予定していなかった措置法特典の重複適用なのか、そうでないかは不明です。
 例えば、居住用財産譲渡の3000万円控除と10%軽減税率は、共に措置法規定ですが、重複適用排除はされてないので、重複適用排除の原理があるわけではありません。
 会計検査院の言うようにあるべきでない重複適用なのだとしたら、それは、立法作業における法律の規定が疎漏だったということになります。

◆疎漏の内容は期間のズレ
 法律の規定が疎漏だったとした場合のその内容は、居住用財産の譲渡所得からの3000万円特別控除の規定の適用が、居住の用に供さなくなってから3年を経過する日の年末までの間に譲渡した場合に適用されることになっているのに対し、住宅ローン控除の適用の規定は、新居に入居した年、その前年又は前々年、また、翌年又は翌々年中に、旧居につき居住用財産の特例の適用を受けていないこと、となっていて、両者の期間にズレがあることです。
 3000万円特別控除の規定は居住終了から足かけ4年、住宅ローン控除の適用の規定は新居に異動してから足かけ3年、と異なっていたことです。

◆今年の税制改正で対応
 会計検査院の指摘を受けて、この期間のズレ問題は、今年の税制改正の一項目になり、住宅ローン控除の規定の中にある「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」という文言に改正され、この疎漏だったかもしれない点は消滅しました。
 なお、同じ条文に、親の居住用財産を相続した後に空き家譲渡した時の3000万円特別控除がありますが、これは特に制限されていません。

《コラム》「損益分岐分析」は簡単

◆損益分岐分析とは
 日商簿記検定の工業簿記・原価計算の出題範囲にも含まれていますが、比較的簡単な財務分析の手法に、損益分岐点を計算して営業計画や予算の策定に生かす「損益分岐分析」という手法があります。損益分岐点とは利益がゼロになる時の売上高を指し、この時の売上高を損益分岐点売上高といいます。この売上高を基準にするとより実情に即した営業計画や予算を策定することができます。

◆ポイントは変動費・固定費の分解
 この手法では、まず一定期間の損益計算書の費用項目を売上高に対して比例的に変動するか、定額であるかによって変動費と固定費に区分します。例えば商品仕入は変動費ですが、地代家賃や人件費や減価償却費は固定費です。区分した変動費と固定費を合計し、売上高から変動費を差し引いた利益(限界利益=粗利益といいます)でその期間の固定費を賄うには売上高はどれだけ必要かを計算します。粗利益で固定費をトントンで賄うことができる時すなわち粗利益=固定費の時の売上高を損益分岐点売上高と言います。

◆計算してみましょう
 売上×粗利益率(粗利益)=固定費となります。この算式で売上を求めると、売上=固定費÷粗利益率となります。これが損益分岐点売上です。
 更に損益分岐点売上を超えた売上の粗利益を計算すると以下となります。
(売上-損益分岐点売上)×粗利益率=(売上-固定費÷粗利益率)×粗利益率=売上×粗利益率-固定費=粗利益-固定費=利益

 損益分岐点売上が分れば、超えた売上の粗利益が利益であるとすぐに見当が付きます。また逆も同じで、損益分岐点に足りない売上の粗利益が赤字です。