【時事解説】大学生の就職意識と地元企業の課題解決 その1

中小企業にとって大学生をはじめとする若者の人材確保が主要な経営課題となる中、大学生との接点をいかにしてもつかが重要なカギとなります。こうした中、大学の近くに立地する地元企業が自社の経営課題を大学生に解決してもらう実践型のインターンシップを導入することで大学生との接点をもつ取組みが注目されています。

 株式会社マイナビが2021年3月卒業見込みの大学3年生等に実施した「マイナビ2021年卒大学生就職意識調査」によると、2021年卒大学生における大手企業志向(「絶対に大手企業がよい」と「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」の合計)の割合は55.1%となっており、2001年卒以降21年の間で最も高い割合を示しています。

 一方で、同社が18歳~19歳の大学1、2年生を対象に2019年11月に実施した「マイナビ大学低学年のキャリア意識調査」によると、「社会人になるまでに積極的に受けてみたい(経験したい)もの」のうち、「興味のある職種・業界でのインターンシップ」と回答した割合が、59.7%と高い割合を占めています。また、同調査において「インターンシップに参加したことがある」と回答した大学低学年次生の割合は26.8%と約4人に1人が参加済みと回答するとともに、今後のインターンシップへの参加意向については、78.3%と約8割が「参加したい」と回答しています。

 以上のことから、大手企業志向が高まりを見せる環境下において、地元中小企業が大学生の接点をもつためには、就職を意識する大学3年次からではなく、大学低学年次の大学1~2年を対象に実践型のインターンシップを導入し、早期の段階から大学生との接点をもつことが求められるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》固定資産税・都市計画税の減免制度

◆固定資産税等の減免制度の創設
 固定資産税は事業用の家屋や設備に対して課税されています。この税金は、所有する家屋や設備の評価額に対して課税されるので、たとえ業績が悪化し赤字となっても課税されることとなり、家屋や設備を多く保有する事業では金額も大きくなってきます。そこで、新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が大幅に減少している中小企業者・小規模事業者の納税負担を軽減するために、固定資産税・都市計画税を減免する制度が創設されました。

◆適用対象者
 中小事業者(法人、個人)を対象とし、令和2年2月~10月の任意に継続する3月の期間の事業収入が
①前年同期比30%~50%未満減少の場合:1/2軽減
②前年同期比50%以上減少の場合:全額免除

◆軽減対象
①設備等の償却資産及び事業用家屋に対する固定資産税(通常、取得額または評価額の1.4%)
②事業用家屋に対する都市計画税(通常、評価額の0.3%)
※事業用であっても土地は軽減の対象となりません。

◆申請方法
 令和3年1月31日までに、『認定経営革新等支援機関等』の確認を受けて固定資産税を納付する市町村に必要書類とともに軽減を申請します。
 なお、市町村による申請受付開始は令和3年1月からを予定しています。今のうちに下記の件を準備してください。
・令和2年2月~10月と前年同期の事業収入を確認し証明できる会計帳簿等
・法人の場合は令和2年度の課税明細書、償却資産税の申告書控え、固定資産明細書、個人事業者の場合は、法人で用意する資料以外に、事業専用割合がわかる資料を用意してください。
 申請書式が公表されたら、各種誓約書等を作成する必要もありますので、ご注意ください。

 

《コラム》令和2年4月20閣議決定 新型コロナ緊急経済対策(税制措置)

◆新型コロナの緊急経済対策が閣議決定
 令和2年4月の閣議決定において、コロナショックが社会経済に与える影響が甚大であることから、緊急対策として税制措置が講じられることになりました。

1.納税猶予の特例(すべての国税)
 イベントの自粛要請や入国制限措置など、感染防止措置により多くの事業者の収入が急減している状況を踏まえ、すべての国税(印紙税を除く)につき1年間納税を猶予する特例が設けられました(適用:令和2年2月1日~令和3年1月31日納期到来分)。

2.欠損金の繰戻還付の特例(法人税)
 中小企業に認められている青色欠損金の繰戻し還付について、中堅企業(資本金1億円超10億円以下の法人)にも適用可能となりました(適用:令和2年2月1日~令和4年1月31日終了事業年度に生じた欠損金)。

3.中小企業設備投資税制(法人・所得税)
 中小企業設備投資税制の対象となる特定経営力向上設備等の範囲に、テレワーク等のための一定の設備投資が追加されました(適用:令和3年3月31日まで)。

4.寄附金控除の特例(所得税)
 政府の自粛要請を踏まえて中止された文化芸術・スポーツイベントの入場料について、観客が払戻しを放棄した場合には、その放棄した金額が寄附金控除(所得控除・税額控除)の対象とされました(適用:令和2年2月1日~令和3年1月31日に国内で開催する予定で中止されたイベント)。

5.住宅ローン控除要件弾力化(所得税)
 新型コロナの影響により、住宅建設が遅延した場合に、その住宅に令和2年末までに入居できなかったときでも、一定のケースには、控除期間が13年に延長された住宅ローン控除が適用されることとなりました。

6.課税事業者選択届出書の特例(消費税)
 新型コロナの影響により、事業者の一定期間(1か月以上)の売上げが著しく減少した場合、課税期間開始後における課税選択の申請を認めることとしました(2年間の継続適用ルールに関係なく、翌課税期間の取り止めも可能となりました)。

《コラム》選択肢の増えている年金

◆公的年金の制度は拡充されていて
 日本の年金制度は、20歳以上の全国民が加入する国民年金(基礎年金)に加え、民間のサラリーマン等が加入する厚生年金保険、そして民間企業が実施する厚生年金基金や確定給付企業年金等の企業年金から構成されています。また、自営業者等向けとして、任意で加入できる国民年金基金があります。これらの年金制度は確定給付年金制度と呼ばれ、国や企業が将来の年金の支払い額を約束しているのが特徴です。

◆給付額に保証のない公的年金
 これに加えて、確定拠出年金制度が2001年10月から導入されています。加入者自身が資産を運用するものとし、将来支給される年金額がそれぞれの運用成績次第で変わる年金制度です。確定拠出年金には、個人拠出型と企業拠出型の2種類があります。個人の拠出額は所得税の小規模企業共済等掛金控除の対象となり、企業の拠出額は法定福利費という企業経費になり、運用益は課税留保されます。

◆運用能力のある人などいない
 2016年9月、個人拠出型に「iDeCo(イデコ)」という愛称が公的に決定されています。
 iDeCoを始める際は、金融機関に申し込むことになります。指定できる運用商品は金融機関によって異なりますが、元本確保型と投資信託型に大きく分かれます。
 元本確保型は定期預金や保険商品などで、所定の利息が上乗せされますが、口座管理手数料が年2000円程度かかるので、実質は元本割れになります。投資信託型は、投資の専門家が株や債券などに運用し、運用結果が投資額に応じて分配されるタイプの商品です。運用結果によっては、元本割れの可能性があります。

◆加入可能期間延長と再チェック
 なお、iDeCoと国民年金基金は併用可能で、掛け金の上限は両方合わせて年81万6000円です。確定給付で年金の終身受取りの選択肢のある国民年金基金への加入可能性は是非チェックすべきところです。
 2020年の年金改革法で、常用雇用者数5人以上でも被用者保険の強制適用事業所から除外されていた税理士事務所等の士業事務所が、除外されないことになります。同じく、企業年金・個人年金制度等の見直しをする確定拠出年金法の改正もあり、適用可能者の範囲や加入可能期間の拡大がなされ、税制も併せて改正されています。

《コラム》交際費課税の特例の微改正

◆交際費特例はマイナーチェンジ
 令和2年度税制改正で、交際費の課税の特例については若干ながら手が加えられました。交際費についての特例は平成26年に現行の形である、
①支出する交際費等の額のうち接待飲食費(1人当たり5,000円を超える分)の額の50%相当額は損金算入
②資本金又は出資金の額が1億円以下の中小企業は支出する交際費の額のうち年800万円までは損金算入
※中小企業はどちらかを選択適用
となりましたが、これに加えて「①について、資本金の額等が100億円を超える法人を除外する」とした上で、令和2年3月31日までだった適用期限を2年延長しました。中小企業には関係の無い話ですが……。

◆5,000円以下の飲食の取扱いは継続注意
 従来通り、接待飲食費については1人当たり5,000円以下の飲食であれば税務上交際費に含めず、全額が損金にできます。ただし、法人の役員・従業員・親族に対する接待等のために支出するものは、5,000円以下であっても交際費に該当します。
 また、年月日・参加者・人数・金額と場所等について帳簿書類に記載が必要ですのでご注意ください。このあたりは反面調査も含めて厳しくなっております。

◆この改正で110億円増収見込み
 財務省発行の令和2年税制改正パンフレットによると、この特例の変更で初年度は110億円の増収(国税関係のみ)を見込んでいます。東証1部の企業だけみても、資本金が100億円を超えている企業は800社超あります。確かにこの企業の分が不算入となれば、それなりの規模にはなりそうではあります。
 ただ、800万円の定額損金算入規定延長は改正に当たり、必要性として「中小企業の交際費支出は飲食業や小売業等の需要喚起に資するものである」とされています。現状コロナウイルスで打撃を受けている飲食業に関しては、自粛が明けた後でもこの改正を受け、大企業の接待が減ることが想像できます。景気回復を目指すのであれば、このあたりに手を入れてもいいのではないでしょうか。

《コラム》「納税の猶予」と「納税猶予」

◆似て非なるもの
 災害・盗難等で損失を受けた時に、国税を一時に納付することができない時は、手続きをすることによって、納税を猶予してもらえます。これが「納税の猶予」です。一方「納税猶予」は政策的に、一定の条件を満たす場合は、条件を満たさなくなるまで納税を猶予するという納税の繰延べです。最終的には免除する場合もあります。一般的には農地相続の納税猶予や、事業承継税制の納税猶予がよく知られております。
 両方とも「払うべき税金を待ってもらう」のに変わりはないのですが、「納税の猶予」は資金に困窮している場合で、差し迫っているのにたいして、「納税猶予」は資金的な問題とは全く関係ありません。

◆コロナウイルス関係でも「納税の猶予」
 納税の猶予の手続きを行うと、延滞税の一部が免除(納税の猶予制度の場合は全部が免除されるケースも)され、原則1年間の猶予が認められ、財産の差し押さえ等が行われなくなります。
 今般の新型コロナウイルス感染症において、国税庁は納税の猶予制度の利用方法や特例も解説しています。それによると、通常納税の猶予制度には担保の提供が必要となりますが、新型コロナウイルス感染症の影響によって、納税の猶予制度を利用する場合については「財産状況などから担保の提供ができることが明らかである場合を除き、担保は不要」としています。
 納税の猶予の申請に関しては、納期限の前からでも相談は可能ですから、税務署の担当者や税理士と申請内容や延滞税額や納付計画について話し合っておくことをお勧めします。

◆生き残りをかけて策を講じましょう
 国税庁の対応だけでなく、経済産業省の資金繰り対策や各種補助金の拡大、厚生労働省の雇用に関する助成金の拡大等、すでに国はある程度救済策を講じています。分かりやすい解説等もインターネットにはずいぶんと出ていますから、利用できる制度が無いか、一度調べてみるのがいいでしょう。

《コラム》成年後見制度と障害者控除

◆成年後見制度とは
 不動産・預貯金などの財産管理や、介護などのサービスや施設への入所に関する契約の締結、相続が発生した場合に遺産分割協議などをする必要があっても、認知症や知的障害などの理由で判断能力が不十分になると、これらを自分ですることが難しくなってきます。また、判断能力が不十分になってしまうと、自分に不利益な契約であってもよく理解ができずに契約を締結してしまい、悪徳商法の被害にあう危険もあります。
 成年後見制度は、このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。従来の禁治産・準禁治産制度に代わり、平成12年4月からスタートしています。

◆税理士会も支援しています
 税理士は、普段より、事業を営む方の税や経営に関することや個人の方々の資産管理に関することをお手伝いしています。 その豊富な経験を活かし、成年後見制度においても支援の必要な方々の貴重な財産の保全と適切な管理をお手伝いしています。
 全国各地の税理士会は成年後見支援センターを開設し、成年後見制度に関するご質問に対して無料で相談を受け付けています。
 また、日本税理士会連合会は、成年後見制度のパンフレットを作成し、各地の税理士会は、家庭裁判所へ成年後見人等の候補者となる税理士の名簿を提出するなどして、この制度を支援しています。

◆成年被後見人は特別障害者に該当
 家庭裁判所が鑑定人による医学上の専門的知識を用いた鑑定結果に基づき、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判をした場合には、所得税法上も、成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当し、障害者控除の対象となる特別障害者に該当します。居住者又は控除対象配偶者若しくは扶養親族が特別障害者である場合には、40万円の障害者控除が可能となります。(「成年被後見人の特別障害者控除の適用について」平成24年8月31日/照会者:一般社団法人 静岡県社会福祉士会/回答者:名古屋国税局審理課長)

《コラム》持続化補助金活用のススメ(小規模事業者向けの補助金です)

◆小規模事業者対策として
 小規模事業者には自社の商品を宣伝しブランド力を高めるといった共通の課題があります。しかし自社努力だけではなかなか解決できません。そんな事業者に最適な補助金で、地域の商工会議所や商工会の助言を受けながら計画を策定します。その計画に沿った販路開拓や業務効率に取り組めば費用の2/3が補助されます。補助上限は50万円です。

◆応募の要件
 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)は常時使用する従業員の数5人以下で、サービス業のうち宿泊業・娯楽業と製造業その他の業種は常時使用する従業員の数20人以下がそれぞれ要件となります。また、持続的な経営に向けた経営計画を策定していることが応募の前提となります。
 事業計画期間において「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすことが加点要件になっています。
 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者については、補助上限額が100万円に引き上がります。

◆どんな取り組みが対象になるの?
 販路開拓の取り組みとして、飲食店が売り上げを伸ばすためにインバウンド向けの英語表記のメニューやのぼりの作成が考えられます。また、宿泊業者が外国人向けのwebサイト作成にも活用できます。業務効率の取り組みとして、POSレジの導入や経理会計ソフトを購入することにより、販売管理業務や決算業務の効率化することも可能です。ただし、公序良俗に反するおそれや、公的な支援を行うことが適当でないと認められるものは対象外となります。

 応募の手続きは従来の郵送方式のほかに、政府が開発した統一的な補助金申請システム(名称:Jグランツ)による電子申請の利用が可能です。令和2年度は6/5、10/2、2/5がそれぞれ締め切り日となっています。そのため、自社の必要な時に必要なタイミングで申請をすることが可能です。用途は幅広くありますので、該当事業者は活用の検討をお勧めします

【時事解説】内部留保の使い方 その2

その点、配当は損益計算書を通さずにキャッシュ流出額がそのまま内部留保の減少になりますから、内部留保の使い道としては最も有効です。また、本来の株式会社理論からいっても理にかなっています。つまり、会社で使い道のなくなったキャッシュは株主に返還すべきだというのが株式会社の本筋だからです。

 ただ、この理論にも問題があります。この考え方は、会社は株主のものという思想が背景にあるからです。会社が純粋に株主のものであるなら、余剰資金は全額株主に分配して、稼げなくなった会社は解散するというのはおかしな話ではありません。しかし、会社は株主のものと単純に割り切るわけにもいきません。会社は従業員のものでもあります。今勤めている会社がなくなってもすぐに他の会社に移動できるような雇用の流動化が進んでいる国ならまだしも、我が国はそういう国柄ではありません。会社の業績が多少悪くなってもある程度持ちこたえ、次の展開を考えてくれる会社でなければ、従業員は安心して働けません。そう考えると、内部留保があるからといって、安易に配当として株主に分配してしまうのも素直にうなずけません。

 高度成長時代には、成長機会がふんだんにあり、賃金や設備投資が旺盛で、企業の悩みは資金調達でした。現在の成熟経済における資金の使い道に困るということはそれに比べれば贅沢な悩みかもしれませんが、なかなか解決の難しい問題でもあります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】内部留保の使い方 その1

企業の潤沢な内部留保が注目を集めています。そこで内部留保の使い方を考えてみましょう。

 内部留保は財務諸表上の用語ではないため、統一的な概念規定はありません。本稿では比較的狭くとらえ、企業が課税後積み立てた利益剰余金として論を進めます。利益剰余金ですから、貸借対照表の純資産の一部になります。純資産は貸方ですから、借方に内部留保に対応する資産があるはずです。その資産が何であるかは一義的に特定できませんが、内部留保の大きい会社はキャッシュも潤沢なことが多いので、「内部留保=キャッシュ」という発想につながります。その結果、「内部留保を使う(減らす)」ということは「キャッシュを使うことにより内部留保を減らす」ということになるわけです。

 「豊富な内部留保がある企業はもっとキャッシュを使うべきだ」というとき、キャッシュの使い道としてよく出てくるのは、従業員に対する賃金の引上げ、設備投資、株主に対する配当の3つです。賃金、設備投資、配当いずれもキャッシュを使うことには変わりがありませんが、内部留保を減少させる道筋は異なります。

 賃金と設備投資は損益計算書の当期純利益を通して、内部留保に影響を与えます。賃金はキャッシュ流出額の全額がその期の損益計算書の費用となりますが、設備投資は減価償却費という形で徐々にしか費用化できませんから、その期の損益に与える影響は軽微になります。また、賃金も設備投資も内部留保を減らすためには、損益計算書の最終損益を赤字にしなければなりませんから、経営者としては容易に決断できる話ではありません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)