【時事解説】中小企業の防災・減災に向けた支援 その1

近年の自然災害の増加に伴い、中小企業においても防災・減災に向けて取り組むことが求められています。こうした状況を受け、中小企業庁編「中小企業白書2019年版」では中小企業における自然災害への備えについて取りまとめています。以下で、同白書において実施された「中小企業の災害対応に関する調査」にもとづき、被災による中小企業への影響についてみていきましょう。

 災害時における過去の被災によって受けた被害内容について回答割合が高い順にみると、「役員・従業員の出勤不可(44.5%)」、「販売先・顧客の被災による、売上の減少(39.1%)」となっており、自社の被災だけでなく販売先・顧客の被災を要因とした事業上の損害も多く発生していることがわかります。被災によって被った物的損失額についてみると、従業員の規模に関わらず100万円以上の損害を受けた企業の割合が7割を超え、1,000万円以上の損害を受けた企業の割合も3割を超えていることがわかります。

 中小企業の被災時における営業停止期間についてみると、従業員規模に関わらず、約半数が「営業は停止せず」と回答する一方で、4日以上営業を停止した企業の割合が3割を超えていることがわかります。
 被災による営業停止期間別に、被災3か月後における被災前と比較した取引先数の推移についてみると、営業停止期間が長いほど、取引先数が減少する傾向にあることがわかります。

 このように、自然災害が中小企業に与える影響として、大きな物的損害の発生に加えて、営業停止に陥る可能性もあり、営業停止が長引くにつれて取引先が減少することが懸念されることから、自然災害への事前対策がより一層重要になってくるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

米で進む「富裕税」構想

来年の米大統領選に向けた民主党有力候補者の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員が提唱する「富裕税」構想が注目を集めています。日本でも公平性の観点から金融所得への税率引き上げを求める声が上がっており、大統領選の動向次第では、日本版「富裕税」の議論が始まる可能性があります。

 ウォーレン氏は、5千万ドル(約54億円)超の資産を持つ超富裕層を対象に、株式や不動産など全ての保有資産に応じて課税する構想を掲げ、10年間で3兆ドルの税収増を見込みます。米国内で進む格差の拡大や「富裕層は適正な税負担をしていない」という不満を背景に、有権者らの支持を得ている状況です。

 一方、日本は欧米に比べ超富裕層が少ないこともあり、富裕税の議論は盛り上がっていません。しかし高齢化に伴う社会保障費の膨張により今後の税収増に向けた施策が必須で、所得の再分配や社会保障費の財源確保のために金融所得にかかる税率を引き上げる必要性を指摘する声は根強いのが実情です。

 日本の所得税は給料などについて所得が多いほど税率が上がり、最高で45%ですが、株の配当や売却益など金融所得への税率は一律20%に抑えられています。富裕層ほど金融資産を多く保有する傾向にあるため、所得が1億円を超えると所得に占める税負担率が低くなる逆転現象が起きています。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》令和2年より適用 給与所得控除と基礎控除の変更点

◆給与収入850万円までは変化無し
 令和2年より、給与所得控除と基礎控除が変更となります。内容としては基本的に、
①基礎控除は10万円引き上げる
②給与所得控除は10万円引き下げる
となっています。
 しかし、給与所得控除は改正により「給与収入が従来1,000万円だった限度額が850万円で上限」となりますので、給与収入が850万円以上の方には増税となります。
 なお、23歳未満の扶養親族がいる子育て世帯や、特別障害者を扶養している世帯に関しては、従来の給与所得控除より10万円下げるに留まるように「所得金額調整控除」を創設して、基礎控除の10万円上昇と併せて、給与収入が850万円を超える人でも、負担が増えないような措置が取られています。

◆所得が多い人にはさらに増税に
 基礎控除は、合計所得金額によって減少・消失するようになります。
 合計所得金額が2,400万円以下であれば、令和元年までの額より10万円アップの48万円、2,400万円超~2,450万円までは32万円、2,450万円超~2,500万円までは16万円、2,500万円超は0円となります。基礎控除の減少・消失に関しては子育て世帯や特別障害者を扶養している世帯であっても、所得金額調整控除は行われません。
 令和2年の給与所得控除の最大額は195万円ですから、給与のみの方の場合、収入が2,595万円以上であると、基礎控除の減少・消失の影響で増税となります。

◆公的年金等控除も同様の措置
 給与所得控除と同様、令和2年より公的年金等控除も基本10万円の引き下げですが、公的年金等収入1,000万円の控除額195.5万円が上限となります。また、公的年金以外の所得が1000万円超ある場合はさらに10万円の引き下げ、2,000万円超ある場合は20万円の引き下げが行われます。

◆給与と公的年金が両方ある場合の措置
 給与収入と、公的年金等収入の両方がある方の場合、合計20万円の控除額の減少とならないように、「所得金額調整控除」によって、10万円を給与所得の金額から控除するようになります。

 

《コラム》ふるさと納税 国対地方とクラウドファンディング

◆印象的な出来事が多かったふるさと納税
 個人の所得や控除によって決まる上限金額以内の寄附であれば、自己負担が2,000円で済むふるさと納税。そろそろ今年の締め切りである年末が近づき、どの自治体に寄附をしようか、と考えていらっしゃる方も多いでしょう。思えば今年はふるさと納税に関して、印象的な出来事が多かった年となりました。

◆国対地方は司法の場へ
 2019年6月からふるさと納税の新たな運用ルールがスタートし、対象外とされた泉佐野市が国の第三者機関に対して異議を申し立てました。協議の結果は国側である総務省の、対象外とする決定は「法律違反であるおそれがある」として是正を提言された結果とはなりましたが、その結果をもってしても、総務省は除外決定を覆さなかったことから、泉佐野市は裁判所に提訴しました。舞台はついに司法の場に移り、この争いはまだまだ続きそうです。
 そもそもこの対象外とされたのは「お礼の品が寄附額に対して過剰な割合で拠出されていたから」という理由ですが、泉佐野市については、寄附金のうち公共施設整備のための基金を積み立てていながら、その寄附金をお礼の品の費用などに充てていたことが発覚し、こちらも法律に抵触する疑いがあるようです。ルールが未完成だった印象の否めないふるさと納税ですが、今年新たなルールを作成したことにより、そのほころびが目に見えるようになった感があります。

◆目的税としての寄附の役目
 10月31日、沖縄のシンボルである那覇の首里城が火災により全焼、市がこれを再建するための寄附をクラウドファンディングで募ったところ、3日目にして寄附額が1億円を突破しました。
 この寄附に関しては、お礼の品はもらえないものの、税の控除はふるさと納税扱いとなります。首里城への寄附は本来自分の住んでいる自治体への税の一部を、納税者の意思によって目的税化できるという認知が進んでいる証左でしょう。
 功罪様々な事象が起きた今年のふるさと納税ですが、自治体間の不平等や取り決めに関する不透明さを排して、皆さんが安心して行えるものにして欲しいですね。

(後編)国税庁:2018年度の滞納整理の訴訟状況を公表!

(前編からのつづき)

 また、名義変更訴訟とは、国税債権者である国が国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものをいいます。
 悪質な滞納事例では、取引先への売掛金を、代表者の娘名義等の預金口座に振り込ませて隠ぺいしていたことから、滞納会社及びその代表者を滞納処分免脱税で告発した事例が挙がっております。

 建設業を営む滞納会社は、法人税等の滞納を発生させて以来、具体的な納付計画を提示することもなく滞納国税を累積させていたことから、徴収職員は、滞納会社が取引先に対して有する売掛債権を差し押さえました。
 その後も滞納会社の財産調査を継続したところ、滞納会社の代表者は、再び差押えが行われることを懸念し、他の取引先に売掛金の振込先を代表者の娘や関連会社名義の預金口座に変更することを依頼し、売掛金約2,000万円がその預金口座に振り込まれた事実を把握しました。
 これが滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納会社及びその代表者を国税徴収法違反(滞納処分免脱税)で告発しております。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2018年度の滞納整理の訴訟状況を公表!

国税庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟など国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでおります。
 2018年度租税滞納状況によりますと、原告訴訟に関しては、151件の訴訟を提起しました。

 訴訟の内訳は、「供託金取立等」13件、「差押債権取立」11件、「その他(債権届出など)」122件のほか、悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が5件ありました。
 また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、厳正に対処し、2018年度は過去最高の12件(29人員)を告発しました。
 なお、詐害行為取消訴訟とは、国が滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うものをいいます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)2018年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

(前編からのつづき)

 実刑判決で最も重いものとして、査察事件単独に係るものが懲役4年6ヵ月、他の犯罪と併合されたものが懲役7年でした。
 A社は、美容関連製品の輸出販売を行い、架空の国内仕入(課税取引)及び架空の輸出売上(免税取引)を計上する方法により、不正に多額の消費税の還付を受けており、同社の代表者Bは、消費税法及び地方税法違反の罪で、懲役4年6ヵ月の実刑判決を受けました。
 1件あたりの犯則税額は6,100万円でしたが、平均の懲役月数は14.3ヵ月、罰金額は1,400万円となりました。

 査察の対象選定は、脱税額1億円が目安とされ、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながるといわれております。
 そして査察で告発されますと、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決もありえますので、ご注意ください。
 なお、刑罰は10年以下の懲役に、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2018年度査察白書:査察の告発事案は100%有罪!

2018年度版査察白書によりますと、2018年度中に一審判決が言い渡された122件の100%に有罪判決が出され、そのうち7人に対して執行猶予がつかない実刑判決が言い渡されました。
 また、すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は182件で、このうち検察庁に告発した件数は66.5%(告発率)にあたる121件となりました。

 査察(いわゆるマルサ)とは、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査をいい、調査にあたる国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられます。
 この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としております。
 刑罰とは懲役や罰金をいいますが、これまで実刑判決はなく、執行猶予と罰金刑で済んでいましたが、懲りない面々に対し、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》税法における行政上の制裁

過少申告や無申告があった場合には、延滞税の他に各種加算税が課されます。加算税は義務違反に対する行政上の制裁として課される行政罰の一種です。加算税には下記のものがあります。

◆過少申告加算税
 期限内申告が行われた後に修正申告又は増額更正がなされた場合に課されます。原則として増差税額の10%(期限内申告税額相当額又は50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%)の金額です。
 ただし、正当な理由がある場合や調査通知「前」に更正がされることを予知しないで修正申告をした場合は課されません。
 調査通知「後」であっても更正がされることを予知しないで修正申告をした場合は5%(期限内申告税額相当額又は50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%)となります。

◆無申告加算税
 期限内申告が行われず期限後申告又は決定がなされた場合等に課されます。
 原則として増差税額の15%(50万円を超える部分は20%)の金額です。過去5年内に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合には更に10%加算されます。
 ただし、正当な理由がある場合等は課されません。調査通知「前」に決定又は更正を予知しないで期限後申告等をした場合は5%となり、調査通知「後」に決定等を予知しないで期限後申告等をした場合は10%(50万円を超える部分は15%)となります。

◆不納付加算税
 源泉徴収等による国税が法定納期限までに完納されなかった場合に課されます。
 原則として完納されなかった額の10%です。正当な理由がある場合等は課されません。納税の告知を予知しないで納付をした場合は5%となります。

◆重加算税
 上記加算税が課される場合において、国税の計算の基礎となる事実を「隠蔽又は仮装」したところに基づき納税申告書を提出したときに、上記加算税に代えて課されます。過少申告・不納付加算税に代える場合は35%、無申告加算税に代える場合は40%です。過去5年内に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合には更に10%加算されます。

《コラム》義援金の控除と見舞金の損金算入

◆義援金はふるさと納税扱い
 今年も災害が多い年となってしまいました。被害に遭われた方へ、心よりお見舞い申し上げます。
 被災地へ寄附された方も多くいらっしゃると思いますが、寄附した全額が地方公共団体へ拠出するものについては、個人の所得や控除によって決まる上限金額以内の寄附であれば2,000円の負担で済む「ふるさと納税」扱いとなります。

◆寄附先でワンストップの可否が決まる
 個人が地方公共団体の災害対策本部や役所等に直接寄附をした場合、確定申告を用いない、寄附先が5自治体以内である場合に利用できる「ワンストップ特例制度」が利用可能です。
 日本赤十字社等が専用口座を設けて、義援金を募集して、最終的に全額が地方公共団体に拠出されるものも、ふるさと納税扱いとはなるものの、ワンストップ特例制度は利用できないので、控除を受けたい場合は、確定申告をする必要があります。
 なお、ふるさと納税扱いになる寄附に関しては、法人の場合は「国等に対する寄附金及び指定寄附金」という扱いになるため、全額損金算入となります。

◆被災した取引先に対する見舞金は?
 取引先が被災し、お見舞いのお金を出した場合は、被災前の取引関係の維持・回復を目的とするため、取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間において支出する際には、交際費等には該当せず、損金の額に算入する、となっています。
 また、見舞金だけではなく、自社の製品等の無償交換や補填、売掛金等債権の全部又は一部の免除をしたことによる損失も、交際費等には該当しません。リース等の契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様の措置となります。
 寄附等を受けた取引先では、受領した災害見舞金及び事業用資産の価額に相当する金額を益金の額に算入することに留意してください。