《コラム》申告書等閲覧サービスの改正

◆申告書等閲覧サービスとは
 申告書等閲覧サービスとは、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達(財務省設置法第19条)に資するため、行政サービスとして行われているものです。法令等により制度化されているものではありませんが、国税庁の事務運営指針により運営されています。
 具体的には、納税者等が申告書等を作成するに当たり必要があると認められる場合に、納税者等が税務署等に赴いて、過去に提出した申告書や届出書等の内容を確認することができる制度です。
 正確な納税申告をするためには、過去に提出した申告書の内容と齟齬がないようにする必要がありますし、過去に提出した届出書も正確に把握していなければなりません。何十年も前に提出した届出書が現在の申告内容に影響を及ぼすことも珍しくありません。このため、納税者においては、細心の注意を持って過去の申告書や届出書を管理しなければなりません。しかし、様々な事情によりそれができなくなることもあります。そんな時にはこの制度を活用することとなります。

◆改正前の取り扱い
 ごく一部の例外を除き、原則として、申告書等のコピーの交付、カメラ撮影及びスキャナーによる読み取りは、認められていませんでした。このため、税務署まで赴いて閲覧した上、必要な部分を手で書き写さなければなりませんでした。申告書等閲覧サービス自体は大変有り難いサービスなのですが、この点だけは納税者や税理士にとって、なんとも不便な制度でした。

◆改正後の取り扱い
 本年、この事務運営指針の改正が行われ、9月から取り扱いが変わりました。コピーの交付は相変わらず認められていませんが、写真撮影は認められるようになりました。ただし、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット又は携帯電話など、 その場で写真が確認できる機器に限られます。
 コピーの交付が認められないのは不満ではありますが、写真撮影が認められたのは大きな前進ですね。

(前編)金融庁:2020年度税制改正要望を公表!

 金融庁は、2020年度税制改正要望を公表しました。
 それによりますと、
①資産形成を支援する環境整備の観点から、NISAの恒久化・期限延長、NISAの利用促進と利便性向上(つみたてNISA奨励金の非課税措置、NISA口座の手続書類の電子化等)
②簡素で中立的な投資環境の整備の観点から、金融所得課税の一体化、上場株式等の相続税評価の見直し
③生命保険料控除制度の拡充や特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長等を求めております。

 NISA制度については、時限措置であるため、制度の持続性の確保を求める声が多く、NISA制度について恒久措置とすることを要望しております。
 とくに、つみたてNISAについては、開始時期にかかわらず、20年間のつみたて期間が確保されるよう、制度期限(2037年)を延長することを要望しております。
 つみたてNISAについては、一部の企業で従業員の資産形成をより一層支援すべく、その積立金に対して奨励金を支給している事例もありますが、この奨励金は、所得税・地方税の対象となるため、奨励策の効果が減殺されるとの指摘もあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年10月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》マンション管理組合と駐車場

◆マンション管理組合とは
 マンションとは区分所有居住用建物のことです。ですからマンション管理組合とは区分所有居住用建物を管理する組合のことです。一般的には法人格はありませんが、法人格を持たせることもできます。法人格を持たせた場合、公益法人に準じた扱いを受けます。法人格がない場合は、代表者の定めのある人格のない社団となります。専有部分に関しても管理をしますが、共有部分に関する管理が主たる業務です。

◆税務上の取り扱い
 法人格を有すれば法人として法人税の対象ですが、法人格のない社団でも法人とみなして法人税の対象となります。
 通常は管理費収入のみで収益事業はありませんので税金がかかることもありませんし、申告も不要です。

◆駐車場収入の取り扱い
 区分所有者や借家人がマンションの駐車場を有料で利用し、その駐車場料金を管理費や修繕積立金として管理組合が管理している場合は、共済的事業であるとして課税されませんが、問題は外部に貸している場合です。最近、都会では車を所有しない住民も多く、マンションの駐車場に空きができる場合もあり、管理費や修繕積立金に充てるため、外部の人に一般的な駐車場として貸し出しているケースが多々見受けられます。

◆税務当局の見解
 このような場合駐車場の収入は、管理組合の収入として法人税を課税するというのが税務当局の基本的な対応です。
 国税不服審判所や裁判で争われた事例もありますが、この税務当局の考えが支持されております。

◆素朴な疑問
 区分所有建物の共有部分の所有権は区分所有者の持ち分に応じて区分所有者のものです。管理組合は単に管理を委任されているだけで、共有部分を所有しているわけではありません。本来であれば持ち分に応じて区分所有者の収入となると思われます。
 もし管理組合の活動がなく直接管理会社が同様な行為を行った場合、はたして管理会社の収入ということになるのでしょうか?

【時事解説】実体経済から乖離する株価 その2

次に、財務諸表上の利益と税金の乖離の問題があります。海外子会社の業績は連結財務諸表にストレートに反映すると同時に、税額算定のベースとなる親会社単体の財務諸表にも影響を与えます。それは海外子会社からの配当金という形で営業外収益に計上され、親会社の単体の利益を底上げします。どういう形であれ、利益が上がれば、税収が増えそうですが、そうとも言い切れません。
 というのも、海外子会社からの配当金は、条件はありますが、原則として税務上益金不算入となるからです。その結果、海外子会社からの配当に利益を依存する親会社の法人税額は伸びないことになります。

 このような事情で、企業業績が好調で株価が高ければ、我々の生活はストレートに豊かになるとは言い切れない経済構造になっているといえます。最近は人口減少により国内需要の低迷は不可避ですから、グローバル企業の海外依存は強まるに違いありません。したがって、株価と実体経済の乖離傾向も強くなると思われます。

 これまで、株価は実体経済を反映する鏡だと言われてきました。依然として、そうした側面があることは否定しませんが、昔に比べればその要素は薄くなっていることを考慮して、冷めた眼で株価を見ることが必要だと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】実体経済から乖離する株価 その1

長い間、株価は実体経済の好不調を測る分かりやすいバロメーターとされてきました。そのため、時の政府は株価対策に力を入れてきました。

 株価が高いということは、企業業績がよく、そこに働く人々の賃金は上昇し、企業が納める法人税や個人が納付する所得税等の税収も増え、その結果としてGDP(国内総生産)も増大する、というのがこれまでの一般的感覚でした。しかし、最近はやや様相を異にしてきているように見えます。

 この株価と実体経済の乖離原因には様々な要因が考えられます。よく言われるのは、日銀や年金資産などが株式を購入することによる需給要因からの分析ですが、ここでは会計、税務的側面からの株価と実体経済の乖離原因を考えてみたいと思います。乖離原因は主として海外子会社から生じます。

 株価は常識的には会社の業績を反映すると考えられます。単純に考えれば、財務諸表の数値が良ければ株価は上がり、悪ければ下がるという構造になります。ただ、ここで注意しなければならないのは、株価は親会社単体財務諸表ではなく、連結財務諸表を見ているということです。

 グローバルに事業を展開する大企業の業績は国内だけでなく、海外事業の業績も含まれます。連結財務諸表は親会社業績を基幹に海外子会社の業績が加わります。国内事業があまり振るわず、親会社単体財務諸表は悪くても、海外業績が好調なら、連結財務諸表は良くなります。近年我が国は人口減少時代に突入し、国内需要は頭打ちで、業績伸長ドライブを海外に依存する会社が増えてきました。こうした会社は連結業績が好調で、株価が上昇しても、国内業績は不振ですから、国内従業員の賃金も納付する税金も増えないという結果になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》多様化する国税の納付手続

最近では国税の納付手続の選択肢が増え、納税者の利便性が向上してきました。自分に合った方法を知っておきましょう。

◆窓口納付
 金融機関又は所轄の税務署の窓口で、現金に納付書を添えて国税を納付する手続です。

◆振替納税
 納税者自身名義の預貯金口座からの口座引落しにより、国税を納付する手続です。利用に当たっては、事前に税務署及び希望する預貯金口座の金融機関へ専用の依頼書を提出する必要があります。
 申告所得税及び復興特別所得税の確定申告分(第三期分)、消費税及び地方消費税の中間・確定申告分については、法定納期限よりやや遅れて引落しされますので、資金繰りに優しい納付方法です。

◆コンビニ納付(バーコード)
 税務署から送付又は交付されたコンビニ納付専用のバーコード付納付書を使用し、コンビニエンスストアへ納付を委託することにより国税を納付する手続です。

◆コンビニ納付(QRコード)
 自宅のパソコン等で作成したQRコードを使用し、コンビニエンスストアへ納付を委託することにより国税を納付する手続です。現在は「Loppi」又は「Famiポート」端末設置店舗でのみ利用可能です。

◆クレジットカード納付
 インターネット上でのクレジットカード支払の機能を利用して、国税を納付する手続です。ただし、納付税額に応じた決済手数料がかかりますので注意が必要です。

◆インターネットバンキング等
 インターネットバンキングやATM等により国税を電子納付する手続です。利用に当たっては、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行う必要があります。

◆ダイレクト納付
 e-Taxにより申告書等を提出した後、納税者自身名義の預貯金口座から、即時又は指定した期日に、口座引落しにより国税を電子納付する手続です。利用に当たっては、事前に税務署へe-Taxの利用開始手続を行った上、専用の届出書を提出する必要があります。

【時事解説】小規模企業振興基本計画の改正 その2

では、2019年6月に小規模企業振興基本計画(第Ⅱ期)では、どのような目標や重点施策が掲げられているのでしょうか。
 「第Ⅱ期計画」では、2014年10月に策定された「第Ⅰ期計画」と同じく、①需要を見据えた経営の促進、②新陳代謝の促進、③地域経済の活性化に資する事業活動の推進、④地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備、といった4つの目標が設定されています。

 一方で、重点施策の数は「第Ⅰ期計画」の10から12に増加しました。「第Ⅱ期計画」においてどのような重点施策が設定されているかを上記の4つの目標ごとに見てみると、以下のようになります。
 「需要を見据えた経営の促進」に係る重点施策としては、①ビジネスプラン等に基づく経営の促進、②需要開拓に向けた支援、③新事業展開や高付加価値化の支援、があげられます。
 「新陳代謝の促進」に係る重点施策としては、④多様な小規模事業者(フリーランスなど)の支援、が新規項目として設定されました。その他、⑤起業・創業支援、⑥事業承継・円滑な廃業、⑦人材の確保・育成、があげられます。
 「地域経済の活性化に資する事業活動の推進」に係る重点施策としては、⑧地域経済に波及効果のある事業の推進、⑨地域のコミュニティを支える事業の推進、があげられます。
 「地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備」に係る重点施策としては、⑩国・地方公共団体・支援機関の連携強化とエコシステムの構築、⑪手続きの簡素化・施策情報の提供に加え、⑫事業継続リスクへの対応能力の強化、が新規項目として設定されました。

 このように多様な事業者の出現や、大規模災害の頻発などといった小規模企業を取り巻く環境の変化を受けて重点施策の拡充が図られているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】小規模企業振興基本計画の改正 その1

小規模企業振興基本計画は、小規模企業振興基本法に基づき、小規模事業者の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため政府が策定するものであり、2014年10月に策定されました。小規模企業振興基本計画は情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに変更するものとされており、今回、初の変更が行われ小規模企業振興基本計画(第Ⅱ期)が2019年6月に公表されました。

 「第Ⅱ期計画」では、「第1章第1節 現状認識」において、「第Ⅰ期計画」策定以降の小規模企業を取り巻く環境の変化として4点をあげています。第一に、働き方改革による副業の進展など多様な事業者のさらなる出現です。第二に、高齢の経営者の後継者不足による事業承継問題の本格化です。第三に、人口が急激に減少している点です。第四に、東日本大震災からの復興以降も大規模災害が頻発している点です。

 また「第1章第2節 基本的な考え方」において、地域経済活性化のためには、地域を牽引する企業の創出、産地産業の活性化・ブランド化、サプライチェーンの維持、地域の公共的サービス・コミュニティ維持などの視点が重要となり、「数」ではなく、小規模事業者が地域経済や産業に与える質的な影響を踏まえた「機能」を育成・維持していくことが、今後は求められていくことから、小規模事業者の「持続的発展」に加え、地域の「持続的発展」も重要要素に加えることで、地域にとって必要な小規模事業者の支援に重点化する方向へと深化させていくことを目指すとしています。

 このような状況下で、都道府県・市町村・産業界といったステークホルダーとの関係を強化し支援体制を構築することが求められるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

設備投資計画はお早めに

生産性向上特別措置法に基づく中小企業の設備投資減税の特例が、順調に適用件数を伸ばしています。設備にかかる償却資産税を3年間で最大全額免除するというもので、法人税の優遇とは異なり、赤字企業でも恩恵をフルに受けられるうれしい制度です。ただし手続きの際には各所に証明書や認定を申請する必要があり、今年中に設備投資を行って来年から税優遇を受けようと思うなら、そろそろ準備に取り掛からなければならない時期となっています。

 中小企業庁によると、特例を利用した設備が、今年6月末までに10万の大台を突破したと発表しました。その取得金額は約8917億円で、それらにかかる償却資産税が3年間無税になったということです。

 同制度で減免される償却資産税の割合は、最低でも2分の1、最大で全額と自治体に裁量が与えられています。どこまで軽減されるかは自治体によって異なりますが、中小企業庁が実施したアンケートによれば約95%の自治体がゼロ税率を採用すると答えていて、ほぼ全ての自治体でゼロ税率になると考えていいでしょう。

 一つ注意したいのは、同特例は期限付きの特例であり、その期限は2020年末ということです。つまり税優遇を受けられるチャンスは、もう今年と来年の2回しか残されていません。そして特例の適用を受ける手続きには相応の時間がかかるため、今年の設備投資について優遇を受けたいなら、今から動き出しておきたいところです。まだ時間があると思ってのんびり構えていては、年の瀬になって慌てることになりかねません。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)経済産業省:自動車税の見直し等を解説した特設サイトを開設!

(前編からのつづき)

 2019年9月末までは、登録車3%、軽自動車2%の自動車取得税が課されていますが、10月以降は環境性能割が導入され、登録車0~3%、軽自動車0~2%となります。
 2019年10月1日~2020年9月30日までの1年間は、環境性能割の税率から1%分軽減され、新車と中古車ともに対象となります。

 例えば、登録車で「2020年度燃費基準+10%達成車」は、9月末までは2.25%(原則3%を25%軽減)の自動車取得税が課されておりますが、10月1日から2021年3月末までは環境性能割として1%の税率となり、さらに2020年9月末までは1%分軽減されて0%となります。
 エコカー減税は、自動車取得税が10月1日に廃止され、環境性能割が導入されますが、自動車重量税は2019年5月1日~2021年4月30日まで適用されます。
 そして、グリーン化特例は、自動車税・軽自動車税ともに2019年4月1日~2021年3月31日まで適用されますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年9月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。