(後編)2017事務年度における輸入品関税等の犯則事件の調査結果を公表!

(前編からのつづき)

 金地金の総重量は約4トンに相当し、課税価格の総額は約186億円にのぼり、金地金の密輸事件以外の主な処分事例として、タオル等の繊維製品や隠元豆等の豆類等の低価申告による関税等脱税事件がありました。

 金地金の密輸に係る処分した事件のうち、約96%(691件)が航空機旅客による密輸で、その隠匿手口は、これまで多く見られたサポーターを使って体に巻きつける手口等のほか、特殊な形態に加工して下着に隠匿したり、モバイルバッテリー内に隠匿したり、体内に隠匿するなど巧妙な隠匿手口が新たに見つかっております。

 財務省は、検査の強化、処罰の強化、情報収集・分析の充実の3つの対策を柱とした「ストップ金密輸」緊急対策の発表と取締りの強化を行っており、2018年度税制改正においては、金の密輸入の増加に対応するため、消費税法を改正し、輸入に係る消費税の脱税に係る罰金額(ペナルティ)の上限を、改正前は脱税額となっているものを、脱税額の10倍が1,000万円を超える場合には、脱税額の10倍に引き上げております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2017事務年度における輸入品関税等の犯則事件の調査結果を公表!

財務省は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)において、全国の税関が行った輸入品に対する関税及び内国消費税に係る犯則事件の調査結果を公表しました。
 それによりますと、同事務年度に犯則調査に着手した件数は1,456件(前年度1,052件、前年度比約1.4倍)で過去最高となりました。

 処分を行った件数も通告808件、告発33件の計841件(同549件、同約1.5倍)で過去最高となりました。
 処分した事件に係る脱税額は、総額で約17億2,450万円(前年度比約1.8倍)で、内訳は関税が1億1,180万円(同約1.9倍)、内国消費税が16億1,270万円(同約1.8倍)となりました。

 告発件数は33件(同約2.8倍)で、告発分に係る脱税額は、関税が1億309万円(同約2.4倍)、内国消費税が3憶6,250億円(同約2.5倍)の計4億6,560万円(同約2.4倍)となりました。
 処分した事件のうち、金地金の密輸事件が720件(前年度比約1.5倍)で、脱税額は総額で約15億円(同約1.7倍)となり、処分件数・脱税額いずれも過去最高となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!

 小規模宅地等の特例は、事業用、居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度ですが、2018年度税制改正においては、一定の要件に該当する「家なき子特例」とともに、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が制度の適用から除外されました。

 そして、2019年度税制改正においては、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等が除外され、すでに2019年4月1日以後に相続や遺贈により取得する宅地等の相続税から適用されております。

 ただし、その宅地に該当する場合であっても、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合の事業を行っていた被相続人等の事業の用に供されたものである場合には、特例の適用対象とされ、その特例が適用される事業用資産が明示されておりますので、ご確認ください。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》役員給与としての取り扱いを受ける経済的利益

税務上、役員給与(または賞与)には金銭で支給されるもののほかに、実質的に役員に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(経済的利益)も含まれます。経済的利益の給与認定を受けた場合には法人税、所得税等の課税関係が生じることとなりますので会計処理をする際には留意が必要です。

◆役員の個人的費用を会社が負担した場合
(1)役員だけの慰安旅行
 役員など特定の者のみを対象とした慰安旅行は、福利厚生目的の旅行でないことから福利厚生費にはなりません。また業務遂行上必要なものと認められないことから交際費にも含まれず、役員に与えた経済的利益として役員給与とされる場合があります。
(2)役員の健康診断費用
 役員のみを対象とした健康診断の費用は福利厚生費として処理することはできず、役員給与の取り扱いになります。
 福利厚生費として計上するには、①役員を含む全社員が診断の対象となっている(年齢による限定は可能)、②健診内容が健康管理上必要とされる範囲内のものである、③会社から直接費用が支払われる、といった要件を満たす必要があります。

◆役員の資産を時価より高く購入した場合
 社長が所有する土地を立地条件の良さや値上がりが見込まれる等の理由で時価よりも高い価額で購入した場合には、購入価額と時価との差額は社長への経済的利益の供与として賞与の取り扱いとなります。
 また、反対に、会社所有資産を時価より低い価額で社長に譲渡した場合にも、資産の時価と譲渡価額との差額は経済的利益として取り扱われます。
 そのほか、会社が役員に物品その他の資産を贈与した場合、役員に対する債務を放棄、または免除した場合、役員に対する金銭の低利貸付け、役員に対して交際費等の名目で支出した金銭でその使途が明らかでないものなども役員給与とされる経済的利益に該当します。
 後々否認されて税金を追徴されないためにも、会計処理の段階でしっかり把握することが重要です。

《コラム》海外進出する外国企業等の租税回避防止のための見直し

◆国際的スタンダードに合わせる税制改正
 従来、日本は伝統的に、事業所得について、『PE=恒久的施設(=事務所などの固定的な場所や代理人)なければ課税なし』との原則を採用してきました。これは、事業の準備的活動等を課税の対象から除外することで、国際的経済活動に対する租税の阻害効果を出来るだけ排除することを目的とするもので、国際租税法の一般原則でした。
 OECDは、一部の多国籍企業による各国の税制の違いや抜け穴を利用した課税逃れに対し、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げ、問題解決を図ってきました。そして、2017年モデル租税条約改正でPE範囲の国際的スタンダードを定めました。
 日本も、平成30年(2018年)の税制改正で、この国際的なスタンダードに合わせることとし、併せて、PEに関する租税条約と国内法の規定の適用関係も明確化されることとされました。

◆適用は平成31年1月から
 恒久的施設関連規定の見直しで、主な改正事項は次の通りです。平成31年分以後の所得税及び平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税に適用されています。
(1)いままでは、保管・展示・引渡しなどの特定活動のみを行う場所が除かれていました。しかしながら、こうした除外規定に該当するような事業分割を行ない、租税回避がなされることもありました。そのため、特定活動のみを行う場所も、その活動が、外国法人等の事業の遂行にあたり、準備的・補助的な性格のものでない場合はPEに該当することと改正されました。
(2)以前は、契約締結代理人等が代理人PEとされていましたが、代理人の役割を限定することによるPE認定回避に対応するよう改正されました。

◆在外子会社有の場合も要注意!
 平成30年税制改正で直接影響を受けるのは、日本に進出している外国企業等です。
 しかしながら、2017年のOECDモデル租税条約改正で、世界各国に同じような動きが出ることとなりました。日本を本店とする会社にも影響があります。
 在外子会社等で海外進出している場合は、現地国でどのような改正が行われ、実際に自社グループにどんな影響があるのかを、いま一度確認しておく必要があります。
 現地の専門家と密にコンタクトしていますか?

 

【時事解説】現在の決算書と将来の経営計画 その2

減損会計とは企業が保有する固定資産の収益性が低下して、その資産への投資金額の回収が見込めなくなった時に、下落部分を固定資産の帳簿価格から落とす会計処理です。

 減損会計では、土地、建物やM&Aを行ったときに発生した超過収益力として、のれん等の固定資産が将来どれだけキャッシュフローを稼げるかを予想しなければなりません。その算定されたキャッシュフローが固定資産の帳簿価格から大きく下回ると、減損損失を計上しなければなりません。
 税効果会計における将来利益予想でも、減損会計における将来キャッシュフロー予想でも、ベースには経営計画が存在します。
 過去の実績をベースに将来計画を作成し、将来計画が過去の実績に影響しないのであれば話は簡単ですが、税効果会計も減損会計も、将来計画が過去の実績表示である決算書に影響を与えるという二重構造になっていることに注意しなければなりません(当然、過去のキャッシュフロー実績には影響を与えませんが、会計計算としての決算書表示に影響を及ぼすことになります)。つまり、甘めの経営計画の作成は、将来だけではなく、現在の決算書も嵩上げできることになります。

 そうした構造の下では、特に業況が悪くなると、楽観的な経営計画を作成したいという誘因が強く働きます。しかし、それを行うと、将来本来の実力が露呈した時、その時点の業績不振に加え、繰延税金資産の取り崩しや固定資産の減損等の過去のツケを一気に払わなければならなくなり、将来の決算書が著しく傷つくことになります。
 どんなに事態が悪化しても、経営計画は希望的観測ではなく、キャッシュフロー獲得能力をベースに精緻に作ることが会社を守ることにつながります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】現在の決算書と将来の経営計画 その1

経営計画は将来のために作成することはいうまでもありませんが、会計(現在の決算書)にも重大な影響を与えるようになってきていることに注意しなければなりません。なぜなら、将来の収益力としての見込みが、決算書の数値を決定するとした会計項目が増えてきたからです。その代表が税効果会計と減損会計です。

 税効果会計とは会計計算と税務計算の差異を調整する会計手法です。たとえば、売掛金に対して、税務上は損金要件を満たしていないにも関わらず、会社が実質的に回収不能だと判断して、税務上損金と認められる以上の貸倒引当金を決算書で繰り入れたとします。すると、会計上の利益は小さくなりますが、税金は多く支払わなければなりません。したがって、会計上の利益と支払う税金がアンバランスになってしまいます。ただ、将来この売掛金が税務上でも回収不能と認められ、損金と認定されたときには、その分税金は減少しますから、当期に多く支払った税金は将来の前払いと考えることができます。ですから、その分は繰延税金資産という前払勘定に計上して、会計と税務のアンバランスを調整しようというのが税効果会計です。

 しかし、どんな場合にも繰延税金資産の計上が認められるわけではありません。将来、売掛金が税務上損金と認められ、税額減少効果が発揮される時に、税額減少に見合う税金を納めるだけの利益(税務上の所得)があることが必要になります。将来利益が予想できなければ、繰延税金資産は計上できません。また、当初は将来利益があるからということで、繰延税金資産を計上していたものが、将来利益が出なくなると予想が変わったときには、計上済みの繰延税金資産の取り崩しが迫られます。
(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

(後編)国税庁:2017年度のクレジットカード納付状況を公表!

(前編からのつづき)

 政府は、2019年10月1日の消費増税に伴い、需要平準化対策として、消費税率引上げ後の9ヵ月間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元等の支援をすることから、キャッシュレス化の主要な手段であるクレジットカード納付がさらに進むとみております。
 国税庁は、「窓口での現金納付は、納税者にとって手間がかかるほか、税務署窓口の収受については、現金管理等の行政コストも生じる。経済社会のキャッシュレス化が進展するなか、今後とも納付手段の利便性向上を図りながら、国税の納付のキャッシュレス化を推進する必要がある」との考えを示しております。

 クレジットカード納付は全ての税目で利用可能、利用可能時間が24時間などメリットはあるものの、クレジットカード納付は、決済手数料がかかり、納付税額が最初の1万円までは76円(消費税別)で、以後1万円を超えるごとに76円(同)を加算した金額となります。
 また、領収証書は発行されませんので、領収証書が必要な場合は、最寄りの金融機関や税務署の窓口で納付する必要があります。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)国税庁:2017年度のクレジットカード納付状況を公表!

 国税庁は、税務行政のICT化および国税の納付のキャッシュレス化を進めており、納税については、納税者のニーズを踏まえ、口座振替、電子納税、クレジットカード納付、コンビニ納付といった様々な納付手段を整備しております。
 すでに2017年1月から、クレジットカード納付はスタートしておりますが、国税審議会の資料によりますと、初年度である2017年度の件数は16万件で、全体に占める割合は0.4%となりました。

 2017年度における納付手段別の納付件数をみてみますと、金融機関窓口(3,157万件)や税務署窓口(153万件)での「窓口での現金等による納付」が3,310万件で最多となり、全体の74.5%を占めました。
 以下、「口座振替」が610万件(構成比13.7%)、「電子納税」が330万件(同7.4%)、「コンビニエンスストア納付」が174万件(同3.9%)、「クレジットカード納付」が16万件(同0.4%)となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月3日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》仮払金は早めに精算を!

仮払金とは、現金や預金などによる実際の支払いを一時的に処理するために用いられる勘定科目です。未確定のものを一時的に計上するための仮払金が長期間精算されない場合、給与や貸付金として認定される可能性があることから処理については留意が必要です。

◆渡切交際費の給与認定
 交際費として一定額の金銭を役員や従業員に支給し精算を行わない渡切交際費の仮払金は、その支給を受けた役員や従業員の給与等に該当することとなり、源泉徴収の対象となります。また、受け取り側である役員や従業員にとっては、給与所得として所得税や住民税の課税対象となるため、税負担が増えることとなります。
 支給対象者が役員の場合、渡切交際費が毎月定額であればその金額も定期同額給与の一部として取り扱われ、損金算入が可能ですが、不定期に渡切交際費を出す場合には、臨時的な役員報酬として、事前確定届出給与の届出を提出していない限り、損金不算入となりますので注意しましょう。

◆貸付金と判断される場合
 長期間にわたり精算していない役員などへの仮払金は、実質的に貸付金と判定され、受取利息相当額(認定利息)を計上するよう税務署から求められることがあります。
 利息相当額の計算は、会社に金融機関等からの借入金がある場合には実際の借入金の利率とし、その他の場合には利子税の割合の特例に規定する特例基準割合による利率によって評価することとされています。

◆金融機関からの融資にも影響が
 社長などへの仮払金で常態化、長期化しているものがある場合、税務上問題となるだけではなく、金融機関から融資を受ける際にマイナスとなる可能性もあります。
 社長や役員、その親族への仮払金は、会社のお金を個人で使う公私混同とみなされたり、経費計上せずに資産計上することによる赤字隠しの手口と疑われたりして、評価を下げる要因となります。
 仮払金は、税務面・信用面を考慮して早い時期に適正な勘定科目で処理することが求められます。