《コラム》商店街の実態調査

◆3年に1度、景況等を調査
 2019年4月26日、中小企業庁は平成30年の商店街実態調査の結果を公表しました。この調査は3年に1度、全国の商店街に対し、景況や問題点、取組等について調査をするものです。それによると、1商店街あたりの店舗数は減少傾向(54.3店→50.7店)、空き店舗率は増加(13.17%→13.77%)、今後の見通しとしても空き店舗は増加すると答えた商店街が最多(53.7%)です。
 全国的には大規模商業施設や人手不足、ネットショッピングの普及に伴い徐々に活力を失いつつあるのが全国的な商店街の実情ですが、イベントや環境の整備等によって、「最近の景況は繁盛している」と答えた商店街もわずかに増加(5.3%→5.9%)しています。

◆商店街を活性化させる補助
 中小企業庁では、商店街を活性化させ魅力を創出するため、また、インバンウンドや観光等で地域外や日常の需要以外から新たなお客様を商店街に取り込むための環境整備・消費創出事業に対して、補助を行っています。環境整備については補助率2/3以内、消費創出事業では補助率2/3以内、専門家派遣事業は補助率10/10定額(上限:200万円)、3つの補助の合計で、上限は2億円、下限は200万円となっています。
 例えば外国からのお客様を取り込むための免税対応設備やゲストハウスの整備、店舗の多言語サインや、文化体験イベント、地域外からのお客様を取り込むための地元食材を活用したイベントや観光資源等と連携した取組、構造的な課題対応や取組を策定できる専門家の派遣に利用できます。

◆税制面でのサポートも
 先の調査で「商店街が抱える問題」としてもっとも多い後継者問題(64.5%)の一助になる税制面の制度もできました。今年から個人事業者の事業承継税制が創設され、10年間の時限措置ではありますが、事業用の宅地・建物・その他一定の減価償却資産について、適用対象部分の課税価格の100%に対応する相続税・贈与税額が納税猶予されます。ただしこちらは既存の小規模宅地等特例との選択適用となりますのでご注意ください。

 

《コラム》中小企業投資促進税制等の適用期限が延長されました

 平成31年度税制改正において、中小企業の積極的な設備投資を後押しし、「生産性革命」の実現を図る観点から、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制の適用期限が2年間延長されました。

◆中小企業投資促進税制
 本制度は、中小企業者又は農業協同組合等で青色申告書を提出するものが指定期間内に、新品の特定機械装置等を取得し又は製作して、これを国内にあるその中小企業者等の営む製造業、建設業等の指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、普通償却のほかに特別償却(取得価額の30%)ができるというものです。なお、中小企業者等のうち農業協同組合等を除く、資本金の額が3,000万円以下の中小企業者等にあっては特別償却に代えて税額控除(取得価額の7%)が選択控除できます。

◆商業・サービス業・農林水産業活性化税制
 本制度は、商業・サービス業を営む中小企業者等が指定期間内に経営改善指導等に基づき一定の建物付属設備又は器具備品を取得し又は製造もしくは建設して、これを国内にあるその中小企業者等の営む指定事業に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、普通償却のほかに特別償却(取得価額の30%)ができるというものです。
 なお、個人事業主及び資本金の額が3,000万円以下の中小企業者等にあっては特別償却に代えて税額控除(取得価額の7%)が選択適用できます。

◆中小企業経営強化税制
 本制度は、中小企業者等が指定期間内に一定の認定を受けた経営力向上計画に基づく設備投資をして、これを国内にあるその中小企業者等の営む指定事業の用に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、即時償却又は当該設備等の取得価額の10%(資本金等の額が3,000万円超1億円以下の中小企業者等は7%)相当額の税額控除ができるというものです。
 3つの制度をよく理解し経営課題や方針に応じて上手に活用していきたいものです。

【時事解説】追い込まれてする減損と余裕の減損 その2

否定的なニュアンスの場合は損益計算書の費用処理が、肯定的なニュアンスの場合は貸借対照表の資産価格の切り下げがクローズアップされているというわけです。その受け取り方の違いは、減損を実施する会社の体力差から生じます。肯定的ニュアンス会社の場合はある事業で減損損失が出ても、他の好調な事業の利益でカバーして、黒字を維持でき、自己資本のマイナスを生じさせないのに対し、否定的なニュアンスの場合の会社は、減損処理により、自己資本を使い果たし、限界まで追い込まれてしまいます。

 キャッシュアウトを伴わない、見積もりと判断に依存する減損のような会計処理には、実施時期と実施金額にある程度の幅が存在することは否めません。それを決めるのは経営者です(会計監査人はその合理性を検証します)。

 追い込まれてする減損処理はさらに会社を弱らせるのに対し、余裕のあるうちの減損処理は将来の展望を開くものと理解されます。否定的ニュアンスで報じられる会社の場合でも、財務体力に余裕のあるもっと早期に減損を行う機会はあったかと思います。しかし、経営陣が経営悪化の表面化を恐れズルズルと引き延ばすと、追い込まれて減損をせざるをえなくなります。資産の費用処理は、許容される範囲で、できるだけ早く余裕のあるうちにしておいたほうが経営に与える打撃は少なくてすみます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】追い込まれてする減損と余裕の減損 その1

みずほフィナンシャルグループが2019年3月期に6800億円の減損損失を行うと発表しました。期末に近づくと、「減損損失」の記事が目に付くようになります。減損損失は、否定的ニュアンスで報道される場合が多いように見受けられますが、肯定的ニュアンスで報じられる場合もあります。同じ減損でも、どうして評価が違うのでしょうか。そこで減損の二つの側面を検証してみましょう。

 減損会計とは、企業が収益向上のために資金を投下した資産の収益性が低下して、投資金額の回収が見込めなくなった場合、当該資産の帳簿価額を切り下げ、費用として計上する会計処理です。ここから、減損会計には二つの側面があることが分かります。一つは損益計算書に減損損失を費用として計上することであり、もう一つは貸借対照表の資産価格を切り下げることです。減損会計は過去の負の遺産の解消であることは間違いありませんが、そのどちらを重視するかで、会社に対する見方は変わります。

 損益計算書の減損損失は当然、当期純利益の悪化を招き、損失金額が大きくなれば純損失になり、自己資本を侵食し、さらに巨額になれば債務超過の懸念も生じます。したがって、損益計算書の費用処理は当然、マイナスイメージを醸成します。一方、貸借対照表の資産価格の切り下げに焦点を当てれば、将来収益に対するプラスイメージを生みます。というのは、建物、機械等の有形固定資産の切り下げは将来の減価償却費の減少となりますし、定期償却を行っているのれんであれば、のれん償却費の減少を招くからです(日本の会計基準ではのれんは定期償却を行いますが、米国会計基準あるいはIFRS(国際会計基準)では定期償却を行いません)。つまり、貸借対照表の資産価格の切り下げは将来利益の増加要因として働きます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(後編)2019年度税制改正:ストックオプション税制の適用対象者を拡大へ!

(前編からのつづき)

 その認定計画に従って活用する取締役・執行役・使用人以外の者(新事業分野開拓計画の実施期間の開始日から新株予約権の行使までの間、居住者であること等の要件を満たす者に限る)をストックオプション税制の適用対象に加えます。

 中小経営強化法に基づく事業計画認定制度は、計画内容が設立10年未満等の要件を満たしたファンドからの出資を受ける企業が、高度な知識・技能を有する社外の人材を活用し、新たな事業分野の開拓を行い、計画が認定されるとストックオプションの付与対象者に一定の要件を満たす外部協力者(例として、ベンチャー企業の成長に貢献する業務を担う弁護士、税理士など)が加えられます。

 なお、新たにストックオプション税制の適用対象となった外部協力者が、同制度の適用を受けて取得をした株式の譲渡等をするまでに国外転出をする場合には、その国外転出のときに、その株式に係る新株予約権の行使の日における株式の価額に相当する金額により株式の譲渡があったものとみなして、所得税が課税されますので、ご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2019年度税制改正:ストックオプション税制の適用対象者を拡大へ!

2019年度税制改正において、ストックオプション税制の適用対象者が拡大されます。

 ベンチャー企業が飛躍的な成長を実現するには、兼業・副業等の多様な働き方で活躍する国内外の高度かつ専門的な人材を機動的に確保することが重要であり、そのため、ストックオプション税制の付与対象者を、現行の取締役・執行役・使用人から、社外からでも企業に貢献する高度人材(外部協力者)にまで拡大し、ストックオプションを利用した柔軟なインセンティブ付与を実現することで、手許資金が貴重なベンチャー企業であっても、ストックオプションを活用することで、高度人材の円滑な獲得が可能になると期待されております。
 なお、外部協力者の相続人は、同制度の適用を受けることができないとされております。

 事業者(同法に規定する「新規中小企業者等」(仮称))は、外部協力者を活用して行う事業計画(「新事業分野開拓計画」(仮称))を作成し、主務大臣が認定します。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)国土交通省:2019年の地価公示を公表!

(前編からのつづき)

 交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調で、住宅地は2年連続の上昇となりました。
 商業地については、外国人観光客をはじめとする国内外からの訪問客の増加、インフラ整備や再開発事業等の進展による利便性・繁華性の向上等を背景に、主要都市の中心部などでは、店舗、ホテル等の進出意欲が活発となっております。
 このような商業地としての収益性の高まりに加え、金融緩和による良好な資金調達環境も重なり、法人投資家等による不動産取得意欲が強いこともあってか、商業地の地価は総じて堅調に推移し、4年連続の上昇となりました。

 今年も7月には、国税庁から相続税や贈与税を計算するときの土地の評価額である路線価が公表されますが、地価公示価格は、売買実例価額や不動産鑑定士等による鑑定評価額等とともに、路線価を算定する際の基となることから、地価公示価格の上昇が7月に公表される2019年分の路線価に影響を及ぼすことがすでに予想されており、今後の動向には注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国土交通省:2019年の地価公示を公表!

国土交通省は、2019年1月1日時点の地価公示を公表しました。
 それによりますと、商業・工業・住宅の全用途(全国)で1.2%のプラス(前年0.7%上昇)と4年連続で上昇し、上昇幅も3年連続で拡大しました。
 また、住宅地は0.6%(同0.3%)、商業地は2.8%(同1.9%)上昇しました。

 三大都市圏以外の地方圏でも住宅地が1992年以来、27年ぶりに上昇に転じており、地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で上昇が継続し、全国的に地価の回復傾向が広がっていることが明らかになりました。
 国土交通省では、地価上昇の背景として、交通利便性等に優れた地域を中心に住宅需要が堅調であることや、オフィス市場の活況、外国人観光客増加による店舗・ホテル需要の高まりなどを要因として挙げております。
 住宅地については、雇用・所得環境の改善が続くなか、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

ふるさと納税、4市町を排除

総務省は5月14日、ふるさと納税の新制度について、静岡県小山町と大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町を対象から外すと発表しました。地場産品ではない返礼品を展開し続けた自治体を排除することで、過剰気味だった返礼品競争に歯止めをかける狙いがあります。しかし地方の自主性を損ねることを懸念する声が上がる一方、返礼品の上限額を「寄付の3割まで」と明確化したことで、新たな競争に発展する可能性も出ています。

 新制度には4市町と参加を辞退した東京都を除く1783自治体が参加します。総務省は各自治体に寄せられた昨年11月~今年3月の寄付の状況を精査し、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限定しながら、約50億円と最も多く寄付を集めた北海道根室市をモデルケースに設定。アマゾンのギフト券や旅行券などを返礼品にしてこれを上回る額を集めた4市町の手法を問題視し、強制排除に踏み切りました。

 さらに、この4市町ほどではないものの不適切な返礼品を展開していた北海道森町や福岡県行橋市、大阪府熊取町など43市町村は今年9月までの4カ月だけ制度の対象に加えることにしました。小池百合子東京都知事は14日の記者会見で「4市町は罰のような意味合いを感じ取っているのではないか。縛り過ぎると『自ら治める』ではなくなる」と指摘しています。

 2008年にスタートしたふるさと納税は、そもそも寄付への返礼品を想定していませんでした。返礼品を巡る自治体間の競争が税収争奪戦の様相を呈し、総務省は頭を痛めてきたのです。一方、返礼品を用意しなかったり寄付に対する還元率が低かったりする自治体もあり、総務省幹部は「3割というボーダーラインを引いたことで、その枠の中でより競争が激化する恐れがある。自らまいた種とはいえ警戒が必要だ」と語りました。

<情報提供:エヌピー通信社>

医療費控除にマイナンカード

自分や家族の医療費が一定額を超えた時に税負担を軽くする医療費控除について、政府はすべての申請手続きを自動化することにしました。マイナンバーカードを活用した新しいシステムで、1年間支払った医療費を自動で計算し、税務署に通知するそうです。社会の生産性を向上させ、経済成長につなげる狙い。2021年分の確定申告から新しい仕組みが始まる見通しです。

 日本の医療費控除は、1年間の家族の医療費から保険で補てんされた額を引いた分が10万円を超える納税者に適用されます。申告者は年間約750万人に上りますが、領収書を残して計算しても基準に達しないことがあったり、医療機関の名前や支払った医療費、保険による補てん額などを自ら記入する必要があったりするため、インターネット経由で申告が可能になった今でも利用できていないケースが多いとされます。

 政府は17年の税制改正で、個人が健康保険組合から1年分の医療費を記した「医療費通知」をネット上で取得し税務署に提出できるようにしました。しかし加入する健保組合のシステム対応が必要なため、新しい仕組みは広まっていないのが実情です。政府は21年3月からマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする方針ですが、同時に医療費の控除についても、政府と国税庁、保険診療のデータを管理する社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会のシステムをつなぎ、申告に必要な作業をすべて自動化します。

 マイナンバーカードの交付実績は19年4月時点で1666万枚と、人口の1割強にとどまっています。政府高官は「社会がマイナンバー制度そのものを過剰に怖がっているきらいがある。さらなる理解と普及に努めたい」と意気込みます。マイナンバーカードを活用した医療費控除の仕組みも、普及に向けた一手と言えそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>