(後編)株式の取得費がわからない場合は?

(前編からのつづき)

 例えば、ある銘柄の株式等を500万円で譲渡した場合に取得費が不明なときは、売却代金の5%相当額である25万円を取得費とすることができます。
 これは、実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます。

 また、国税当局が認めた実際の取得費を確認する下記の合理的な方法もあります。
①証券会社などの金融商品取引業者等から送られてくる取引報告書等
②取引した金融商品取引業者等の顧客勘定元帳(10年間保存義務あり)
③記帳や預金通帳などでの本人の手控え
④上記がなければ、名義書換日を調べて取得時期を把握し、その時期の相場を基に取得価額を算定するなどがあります。
 なお、相続(限定承認に係るものを除く)、遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く)又は贈与により取得した場合は、被相続人、遺贈者又は贈与者の取得費を引き継ぎます。

 さらに、相続で取得した上場株式を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合は、相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算することができる「取得費加算の特例」がありますので、該当されます方は、あわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月18日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)株式の取得費がわからない場合は?

個人投資家のうち、相続などで取得した株式を売ったというケースがあります。
 年末調整で所得税の納税が完了している給与所得者であっても、給与所得等以外の所得が、「一般口座」や「源泉徴収なしの特定口座」の譲渡益を含めて20万円以上の場合等は確定申告が必要ですので、該当されます方はご注意ください。

 株式を売却した場合の所得金額は、譲渡価額-(取得費+委託手数料等)で計算しますが、所有期間が長いほど実際の取得費がわからないケースは多く、取得費(取得価額)がいくらになるのか疑問に思うところです。
 取得費は、株式等を取得したときに支払った払込代金や購入代金ですが、購入手数料(購入手数料に係る消費税も含まれる)のほか、購入時の名義書換料などその株式等を取得するために要した費用も含まれます。
 譲渡した株式等が相続したものであるとか、購入した時期が古いなどのため取得費がわからない場合には、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売却代金の5%相当額とすることも認められます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月18日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

確定申告でマイナンカード不要に

 2月18日から始まる2018年分の確定申告シーズンに向け、国税庁はサイト上に特集ページを開設しました。スマートフォン・タブレット用の申告書作成コーナーが新しくなったほか、今年から導入される「ID・パスワード方式」によってマイナンバーカードを取得せずに申告書を自宅から送信できるようになっています。

 一般納税者が申告書を送信する際は、これまで送信者のマイナンバーカードと、それを読み込むICカードリーダライタが必要でしたが、新たな方式では、税務署で職員による対面の本人確認を行っておけば、カードやリーダライタを必要とせず電子申告を行うことが可能となります。

 同方式について国税庁は「マイナンバーカードおよびICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応」としていますが、国民の間に根強いマイナンバー不要論に拍車がかかるおそれもありそうです。

 なお、会計事務所が顧問先の申告書を代理送信する際にはID・パスワード方式は利用できず、従来どおり日税連が発行する電子証明書が必要となります。

<情報提供:エヌピー通信社>

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

仮想通貨に関する税務上の取扱い

はじめに
 近年、ビッグデータ、ソーシャルメディアなどのICTのサービス及びビジネスの進展等を背景にインターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨(例:ビットコイン、イーサリアム等)の取引が急増しているようです。
 こうした中、平成30年11月21日に「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)、以下単に「FAQ」といいます。」が国税庁から公表されました。
 そこで本稿では、公表されたFAQの概要と実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 所得税・法人税共通関係
1.仮想通貨を売却した場合
 保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その仮想通貨の売却価額から売却した仮想通貨の取得価額及び売買手数料等の経費の額の合計額を控除した金額とされます(問1)。
 なお、購入した仮想通貨の取得価額は、その支払対価に購入手数料等の付随費用を加算した金額とされます(問4)。
2.仮想通貨で商品を購入した場合
 保有する仮想通貨で商品を購入した場合には、保有する仮想通貨を譲渡したこととされ、その所得金額の計算は、前述した1と同様とされます(問2)。

Ⅱ 所得税関係
1.仮想通貨の所得区分
 仮想通貨取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得又は雑所得に区分されます(問7)。
2.仮想通貨の取得価額の計算方法
 仮想通貨の取得価額は、原則として「移動平均法」で計算することとされます。しかし、継続適用を要件に「総平均法」で計算することもできます(問11)。
3.仮想通貨の必要経費
 仮想通貨の経費の額は、その取引の記録に基づいて業務の遂行上直接必要であることが明らかに区分できるものとされます。例えば、インターネット及びスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の減価償却費が想定されます(問8)。
4.年間取引報告書の送付
 平成31年1月末までに国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨取引について、①年始数量、②年中購入数量及び金額、③年中売却数量及び金額、④移入数量、⑤移出数量、⑥年末数量、⑦損益合計、⑧支払手数料が記載された「年間取引報告書」が納税者(顧客)に対して送付予定とされています。
 なお、仮想通貨の売却・購入が外貨で行われていた場合の年間取引報告書の各項目の記載は、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額とされます(問10)。

(今月の税務トピックス②につづく)

(後編)社会保険診療報酬課税の特例とは?

(前編からのつづき)

 例えば、心電図の機械や内視鏡などの医療器具が壊れて除却した場合など、通常は資産損失として計上できるものなども、この特例を選択した場合は、これらの資産損失・減価償却費、専従者給与、材料・消耗品等仕入、貸倒損失などの一切が社会保険診療報酬課税の特例経費に含まれることになりますので、追加での費用計上は認められていません。
 そこで、上記のケースでは、実額計算をして有利か不利かの判定を行い、実額計算のほうが有利であれば、この特例課税は適用しないで計算することができます。

 したがいまして、いつでもこの判定ができるように、概算経費率の計算だけでなく、実額計算も常にしておくことが大切ですので、帳簿、領収書、請求書なども常に保存・管理・記録しておくことが必要です。
 ただし、概算経費を適用する場合であっても、社会保険診療報酬以外の収入に対応する必要経費は実額によりますので、ご注意ください。
 なお同様に、医療法人も社会保険診療報酬課税の特例を適用できます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)少額減価償却資産の会計処理と固定資産税の関係に注意!

(前編からのつづき)

 固定資産税は、通常の減価償却ではもちろん課税客体になりますが、一時に損金算入された10万円未満の資産や3年均等償却を選択した10万円以上20万円未満の資産には、固定資産税は課税されません。
 しかし、中小企業者等のみに適用される30万円未満の資産の即時償却を選択した場合は、10万円未満の資産を除いて固定資産税が課税されます。
 したがいまして、少額減価償却資産の会計処理には、固定資産税も考慮に入れた判断が必要になりますので、該当されます方はご注意ください。

 ちなみに固定資産税における償却資産とは、耐用年数1年以上かつ取得価額が10万円以上のものをいい、例えば、エアコン、事務机、看板、冷蔵庫、パソコンなど減価償却している資産をいいます。
 さらに、固定資産税は、減価償却資産について、未償却残高が合計で150万円以上の場合にのみ課税され、合計150万円未満の場合には課税されませんので、あわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)少額減価償却資産の会計処理と固定資産税の関係に注意!

税法上、使用可能期間が1年未満又は取得価額10万円未満の減価償却資産については、少額減価償却資産として取得・事業供用時に一時に損金算入することが認められております。
 また、取得価額が20万円未満の減価償却資産については、通常の減価償却のほかに、3年で均等償却(1/3の年償却)する一括償却資産の損金算入を選択することができます。

 10万円未満の資産の損金算入と3年均等償却は、すべての事業者が対象となりますが、青色申告書を提出する中小企業者等は、さらに、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、その取得価額の全額(その事業年度の取得価額の合計額が300万円に達するまでを限度)を損金算入(即時償却)できる少額減価償却資産の特例があります。
 その事業年度の課税所得の程度により、どれを選択するのかが判断材料になりそうですが、それ以外に注意したいのは地方税の固定資産税との関係です。
 なぜなら少額減価償却資産が固定資産税の課税客体(償却資産)となるかどうかは、選択した会計処理によって異なるからです。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》不動産管理会社に支払う不動産管理料の適正額

賃貸物件を所有する個人が不動産管理会社を設立して、不動産の管理をその管理会社に委託し、管理料を支払うことで所得を分散させるという一般的な節税手法があります。
 支払った管理料の分を必要経費とし個人の所得税を抑えることができるというものですが、不動産管理料が不当に高額である場合、適正額を超えた部分についてはその経費性を否認されることとなるため、留意が必要です。

◆管理料の相場と決定方法
 同族経営の不動産管理会社に支払う管理料は、事業運営方式にもよりますが5%~15%が相場です。過去の裁判例を参考にして手数料率を決定するという方法もありますが、表面的な数字ではなく、不動産管理会社が実際に行う管理業務の内容、その業務の周辺相場、同様の業務を他業者に委託した場合にいくらまでなら支払うかが管理料決定の基準となります。

◆同族会社の行為計算否認規定
 不動産管理料がその管理業務の実態と照らし合わせて「不当に高額である」として否認される場合にその根拠となるのが、所得税法第157条「同族会社等の行為又は計算の否認等」の規定です。当該規定は、課税の公平を図る趣旨から、所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合に適用されます。同族会社であるがゆえに第三者取引には通常見受けられないような料金設定がなされた場合、その不相当に高額な部分が必要経費として認められないこととなります。

◆適正額と業務上の留意点
 管理料については、個々の物件の規模、地域性、管理業務の具体的な内容を総合的に勘案し、業務内容に則して決定することが必要です。また、修繕費や共益部分の費用をどちらで負担するのかを事前に決定したり、さらには業務日誌を作成する、メールやFAXといった日々の業務のやり取りを保管するなど業務実態を明確にしておくことも重要です。

 

出国税が1月7日スタート

日本を出国する人に一律1千円を負担する新税「国際観光旅客税」が、1月7日にスタートします。恒久的に徴収する国税の新設は、1992年に導入された「地価税」以来27年ぶりのことです。

 課税対象となるのは、日本人か外国人かにかかわらず、飛行機や船で外国に渡航する、2歳以上の全ての人。例外的に、日本への入国後24時間以内に出国する乗り継ぎ(トランジット)客は課税されず、また外交官や公用機で出国する政治家、飛行機や船の乗務員なども対象外となっています。

 当初は2019年4月のスタートを予定していましたが、2月の「春節」のシーズンに訪れる大量の中国人を当て込んで、同年1月に前倒しされました。税収は、旅行に関するインフラの整備、海外への情報発信強化、観光資源の充実などに利用されます。

 なお、同税が導入される1月7日の前日までに発券した航空券については、実際のフライトがそれ以降であっても税を課されません。ただし回数券などで7日以降に出国日が決まるケースや、いったん発券をして7日以降に出国日を変更するケースなどは課税対象となります。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)国税庁:2019年1月からQRコード利用のコンビニ納付を開始!

(前編からのつづき)

 確定申告書等作成コーナーからの作成・出力方法とは、確定申告書等作成コーナーにおいて、所得税、消費税、贈与税の申告書を作成する際に、QRコードの作成を選択することで、申告書にあわせて、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。
 また、国税庁ホームページからの作成・出力とは、国税庁ホームページのコンビニ納付用QRコード作成専用画面において、納付に必要な情報(住所、氏名、納付税目、納付金額等)を入力することで、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。

 なお、作成したQRコードをスマートフォンやタブレット端末に保存し、スマートフォンやタブレット端末の画面に表示してキオスク端末に読み取らせることもできます。
 現行は、QRコードを利用したコンビニ納付手続きの利用可能なコンビニ自体がまだまだ少ないことから、国税庁では端末を設置する店舗を増やすよう働きかけていくとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。