(前編)中小企業等向けの2018年度税制改正パンフレットを公表!

中小企業庁は、2018年度税制改正の概要や措置の内容、適用要件等について、中小企業・小規模事業者向けに分かりやすく解説したパンフレットを公表しました。
 同改正では、事業承継税制が抜本的に拡充されたほか、新規設備投資の固定資産税が3年間最大ゼロとなる特例が創設されるなど、中小企業の企業活動を幅広く支援する税制が措置されております。

 事業承継の際の贈与税・相続税の負担を軽減する事業承継税制は、今後10年間(2018年1月1日から2027年12月31日)に限り、拡充されました。
主な変更点として、
①対象株式数の上限を撤廃(2/3→3/3)し、猶予割合を100%に拡大することで、承継時の贈与税・相続税の現金負担をゼロにする
②親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象にする
③制度利用を躊躇する要因となっている雇用要件(事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持)を抜本的に見直すことにより、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予を継続可能にする

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年5月14日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》ICカード・オートチャージの変更と企業の資金繰り・経営分析

◆このちょっとした変更がじつは影響莫大!
 公共交通機関(電車・バス)等で使えるICカード(Suica・PASMO)にオートチャージ機能を付けると、現金入金の手間が省け、とても便利ですよね。ほんの少し前までは予め設定した最低残高を下回ると、次回の改札通過時に自動で一定額がチャージされていました。ところが、つい最近、改札を出る時にオートチャージされる設定となっていました。お気づきでしたか?
 「改札入場時」から「改札出場時」に変わっただけですが、この期間の短縮は資金回収にものすごく影響があります。たとえば、JR東日本のSuica、矢野経済研究所のレポートによると、この事業で2020年度までに一日当たりの最高者数800万件の達成を目指すとされています。この数字を前提とし、仮に1%の人が1回3千円を1日早くオートチャージした場合、2億4千万円が1日早く回収できる計算になります。資金繰りの要諦である「入りは早く、出は遅く」の入りの部分に莫大な貢献がある変更です。
 さらに、残額不足で改札で止まってしまう心配から控えていた駅ナカでの買い物をする人数も増え、資金繰り以外の売上増にも貢献することになります。

◆貴社の資金繰りの改善は?
 貴社の資金繰りを改善するためにはどんな工夫があるでしょうか? ICカードのようにシステムの変更で変えることは難しいでしょうが、どこかに何かがあるはずです。
 売掛金は何日で回収できていますか?買掛・未払金は何日で支払っていますか?相手先との関係もありますので、一概に入金期間を短縮したり、支払日を勝手に延期したりすることは難しいかもしれません。でも、もし貴社が同業他社と比較して現在不利な条件であれば、同業他社レベルまで改善する余地は残されているはずです。

◆経営分析の数字を活用しましょう!
 会計事務所から提供される月次試算表には、経営分析のデータが記載されているページもあると思います。運転資金の項目である「売上債権回転期間」、「たな卸資産回転期間」、「買入債務回転期間(支払基準)」などのデータを同業他社の平均と比較しましょう。平均よりも数値が悪ければ、どこかに改善の余地はあるはずです。
 経営分析数値の比較は、通常は自社の過去の数字と比較しその後同業他社と比較しますが、今回は他社比較が先となります。

 

《コラム》住民税決定通知書とふるさと納税

◆住民税決定通知書で確認すべき項目
 5月中旬から6月上旬にかけ、各自治体から、住民税の特別徴収義務者である雇用主宛に「住民税の税額決定・納税通知書」が届きます。給与所得者である各個人には、「納税義務者用」の明細が手渡されます。
 受け取った際には、毎月の控除額を確認するだけではなく、計算に間違いがないか確認することをお勧めします。会社が提出した給与支払報告書に間違いの原因があった場合もありますし、自治体での計算時のミスがあるかもしれないからです。
 確認すべき項目は、各人の事情で違いますが、前年中に転職した人であれば全部の給与収入が反映されているか、結婚や出産などで扶養家族に増減があった場合にはそれがきちんと反映されているか等々です。

◆ふるさと納税は限度額以内だった?
 扶養家族数の間違いなどは、会社か自治体の手違いですから、修正してもらえばそれで終了です。一方で、確定した結果が自分の予想と違っていた場合に考え直さなければならない項目があります。ふるさと納税の寄附金控除額です。
 ワンストップ特例制度を使っている方は、すべての寄附金控除が住民税で行われますので、「住民税の税額決定・納税通知書」に記載されている「寄附金控除額+2千円」が自分の寄附総額と合致していればOKです。6自治体以上への寄附で自身が確定申告した方は、「確定申告書で控除された寄附金控除+住民税での寄附金控除額+2千円」が自分の寄附総額と合っていればOKです。

◆ふるさと納税寄附金限度額の検証方法
 上記のチェックで納め過ぎがなかったかどうかの確認はできますが、もっと寄附できたかどうかは次の方法で確認できます。「住民税の税額決定・納税通知書」の税額欄に「所得割額」という項目があります。市(区)民税と県(都)民税を合計します。
【控除限度額=所得割額×20%÷(90%-所得税限界税率※)/100%+2,000円】
※所得税限界税率とは、所得税計算の最高税率に復興特別所得税(2.1%)を上乗せした数字です。自分の所得税率は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除額の合計額」を差引いた額により所得税の税率等で確認できます。
(国税庁サイトhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)。

申告所得額がリーマン以降で最高額

 個人が申告した所得の合計額は41兆4千億円で、リーマン・ショック以降で最高額を記録したことが国税庁の発表で分かりました。特に著しい伸びを見せたのが土地や建物の譲渡所得で、全国の地価が上昇傾向にある状況を反映した結果となっています。

 2017年分の確定申告書の提出者は2197万7千人で前年の2169万人から1.3%増加しました。所得の合計額(41兆4千億円)の前年比は3.4%増。ピーク時(1991年)の59兆1千億円からは大きく下回りますが、リーマン・ショックが発生した2008年の39兆6千億円、発生直後の09年の35兆4千億円と比べると回復しました。

 特に上昇しているのが土地や建物の譲渡所得の合計額で、リーマン・ショック直後の2009年には前年の3兆2197億円から2兆2312億円へと急落しましたが、それ以降は毎年上昇を続けています。17年は4兆7557億円でリーマン・ショック発生前の数字を上回りました。09年からの8年間で申告所得額は2.2倍にもなっています。

 譲渡所得を申告した人数は同じ期間で39万5千人から51万4千人へと1.3倍の増加でした。譲渡所得者の1人当たりの所得が地価の上昇によって引き上げられていることがうかがえます。
<情報提供:エヌピー通信社>

岐阜市がふるさと納税の控除漏れ

岐阜市がふるさと納税の利用者1253人に対する税額控除の適用漏れがあったことを公表しました。ふるさと納税の控除ミスは東京都渋谷区でも発覚したばかりです。岐阜市だけでなく、同様の税優遇の適用ミスは全国で放置されている恐れがあります。面倒でも税優遇がしっかり適用されているか、一度は確認しておきたいところです。

 岐阜市は5月に、納税者12万7406人分の住民税税額決定通知書を市内2万1400事務所に発送したところ、納税者から「ふるさと納税をしたのに税額控除が適用されていない」との連絡があったとしています。改めて調査をすると、制度の適用漏れで1253人に対して過大な税額を通知していました。

 適用漏れの対象となったのは、確定申告が不要となる「ワンストップ特例」の利用者です。同制度では、寄付を受けた自治体から寄付者が住んでいる自治体に宛てて特例適用の通知書が送られ、住んでいる自治体は通知書に基づいて税優遇の適用を行います。岐阜市では、寄付先の自治体から送られてきた通知書をダンボール箱に入れて保管していましたが、4箱のうち1箱が別の場所で保管され、そのまま放置されて処理が行われませんでした。市は該当者に謝罪の文書を発送し、7月以降に相当額を控除することで調整を行うとしています。

 渋谷区のケースでは、担当者の引き継ぎ漏れがあり、電算処理の委託業者に誤ったデータを渡したことが原因でした。ただしその後、税額決定通知書を発送する段階になって、内部でミスに気付いています。一方、今回の岐阜市は、納税者が控除額を確認していなければミスが放置されたまま過徴収が行われていた可能性もあります。

 続けて発覚した2つの控除漏れでは、どちらも対象は「ワンストップ特例」の適用者のみでしたが、住民税から控除されるのは確定申告をする人も同様であり、経営者などの高所得者でも過徴収に遭う恐れは十分にあるところです。
<情報提供:エヌピー通信社>

国税庁HP新着情報

6月18日朝時点での新着情報は、以下の通りです。
国税庁ホームページ掲載日:平成30年6月15日

≪税の情報・手続・用紙≫
●「国税庁所定分析法と異なる測定方法で合理的かつ正確であると認められる方法」に係る国税庁ホームページの変更について
●酒税課税状況表(平成29年度3月分)について
●平成30年度(第68回)税理士試験試験場について

今月の税務トピックス② 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(今月の税務トピックス①よりつづく)

Ⅲ 適用関係(平成30年度改正規附則3)
 前述したⅡの改正は、平成30年4月1日以後に提出する申告書(これらの申告に係る期限後申告書を含みます。)について適用され、同日前にこれらの規定により提出した申告書については、なお従前の例によります。

おわりに
 平成29年5月29日から全国の登記所(法務局)において作成できることとなった法定相続情報証明制度の法定相続情報一覧図では、相続人に関する情報として被相続人との続柄を記載する必要があります。平成30年4月1日から、この続柄について相続人が被相続人の子又は配偶者である場合、原則として戸籍に記載される続柄(例えば、子であれば「長男」、「長女」、「養子」など)が記載できることとされます。そこで、被相続人との続柄について、戸籍に記載される続柄を記載することによって、相続税の申告書の添付書類に法定相続情報一覧図の写しが利用できることとされます。
 なお、申出人の選択により、続柄について子であれば「子」、配偶者であれば「配偶者」と記載することもできます。この場合には、相続税の申告書の添付書類に法定相続情報一覧図の写しが利用できませんので留意して下さい。

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

相続税の申告書の添付書類の拡充

はじめに
 平成30年度税制改正では、納税義務者の相続税の申告書の添付書類における行政手続きコストに配慮する観点から、戸籍謄本を複写したものが添付可能とされるとともに、法定相続情報証明制度が活用できることとなりました。
 そこで、本稿では、拡充された相続税の申告書の添付書類の制度の概要と実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 改正前制度の概要(相規16③)
 相続税の申告書に添付すべき書類の範囲は、①相続の開始の日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの、②被相続人に係る相続時精算課税適用者がある場合には、相続の開始の日以後に作成されたその被相続人の戸籍の附票の写しとされます。

Ⅱ 添付書類の拡充(新相規16③一)
 相続税の申告書の添付書類として提出すべき書類の範囲に、①戸籍謄本を複写したもの、②法定相続情報一覧図の写し(複写したものを含み、図形式で記載されたもののうち実子又は養子の別が記載されたもの(被相続人に養子がある場合には養子の戸籍謄本又は抄本が必要とされます)に限ります。)が追加されます。
≪図表:相続税の申告書の添付書類の拡充≫

(注)酒類等の製造業又は販売業を相続しようとする者が提出する相続申告書には、戸籍抄本を添付する必要があります。

(今月の税務トピックス②につづく)

(後編)日本生活協同組合連合会:家庭負担の消費税調査結果を公表!

(前編からのつづき)

 これにより、年収400万円未満世帯の年収に占める消費税負担の割合5.72%は、1,000万円以上世帯の消費税負担の割合2.80%の2.04倍となり、2016年の1.95倍よりもその差が開いてしまい、低所得世帯ほど消費税負担率が高いという逆進性は改善されていないとしております。

 そもそも400万円未満世帯と1,000万円以上世帯の負担率の差が広がったのは、2014年4月の消費税率8%への引上げからだとしております。
 そして、2019年10月には消費税率が現在の8%から10%に引き上げられる予定になっております。

 酒類・外食を除く飲食料品や週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)に対する税率を8%に据え置く軽減税率の導入も予定されておりますが、所得階層による負担率の格差がさらに広がり、低所得世帯の消費税負担がより一層増し、逆進性が悪化することが懸念されるとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年5月9日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。