ドサクサの中で出国税が創設

モリカケ問題を巡る財務省の公文書改ざんなど数々の〝首相案件〟で揉めに揉めている今国会のドサクサの中で、27年ぶりとなる新税「国際観光旅客税」が創設されました。政府は、「観光立国ニッポン」を加速し、さらなるインバウンド効果を狙うための財源にするというビジョンを掲げますが、法成立後も税収の使途はどうにもはっきりしません。

 「国際観光旅客税」は日本から出国する際に税金をかける「出国税」で、飛行機や船で外国に渡航する2歳以上の人に対し、1人当たり一律1千円を徴収します。日本への入国後24時間以内に出国する乗り継ぎ(トランジット)客は対象から外されます。

 当初は日本を訪れた外国人のみに課税する案も検討されていましたが、各国と締結している租税条約に「国籍による差別の禁止」が盛り込まれていることに配慮して、日本人にも同様に課税することとなりました。施行は2019年1月7日。

 出国税の使途の大きな柱は、①快適な旅行環境の整備、②日本の多様な魅力に関する情報発信強化、③地域固有の文化・自然などを活用した観光資源の整備による満足度向上――という3分野で、それぞれ誰が見ても反論する余地はないものですが、範囲があまりに広い状況です。業界からは「バブル期と同じように、土建業界に流れるだけではないか」(東京・大田区の旅館経営者)といった諦めの声も聞かれます。

今月の税務トピックス② 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(今月の税務トピックス①よりつづく)

3 純資産額の算定方法(新相令34①②)
 特定一般社団法人等の純資産額の算定は、①に掲げる金額から②に掲げる金額を控除した残額とされます。
① 被相続人の相続開始の時において特定一般社団法人等が有する財産(信託の受託者として有するもの及びその被相続人から遺贈により取得したものを除きます。)の価額(注1)の合計額(注1)財産の価額は、被相続人の相続開始の時における時価とされます。
② 次に掲げる金額(注2)の合計額
イ.特定一般社団法人等が有する債務であって被相続人の相続開始の際に現に存するもの(確実と認められるものに限るものとし、信託の受託者として有するものを除きます。)の金額
ロ.特定一般社団法人等に課される国税又は地方税であって被相続人の相続開始以前に納税義務が成立したもの(その相続の開始以前に納付すべき税額が確定したもの及びその被相続人の死亡につき課される相続税を除きます。)の額
ハ.被相続人の死亡により相続人その他の者がその被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した給与の額
ニ.被相続人の相続開始の時における特定一般社団法人等の基金の額
(注2)債務の金額は、その時の現況とされます。

Ⅲ 適用関係(平成30年度改正法附則43①⑤⑥)
 前述したⅠの改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用されます。
 ただし、平成30年3月31日以前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後のその一般社団法人等の理事の死亡に係る相続税について適用され、平成30年3月31日以前の期間は前述したⅡ1②の2分の1を超える期間に該当しないものとされます。

おわりに
 本特例により特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与等により取得した財産について既にその特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額が控除できることとされます(新相法66の2③,新相令34⑩)。

 

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

特定一般社団法人等に対する相続税の課税の創設

はじめに
 一般社団法人等は、登記だけで簡単に設立でき、持ち分が存在しないことから、一族が支配する一般社団法人等に財産を移転した後、理事の交代によって子及び孫に支配権を移転し、その財産の承継を行ったとしても相続税が課税されませんでした。
 平成30年度税制改正では、適正・公平な課税を実現し、税制に対する国民の信頼を確保する観点から、一般社団法人等に財産を移転することによる課税逃れを防止するために同族関係者が理事の過半を占める、いわゆる特定一般社団法人に対して相続税が課税(以下「本特例」といいます。)されることとなりました。
 そこで、本稿では、本特例の概要と実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 制度の概要(新相法66の2①,新相令34④)
 一般社団法人等(公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人又は特定目的会社その他一定のものを除きま。)の理事である者(一般社団法人等の理事でなくなった日から5年を経過していない者を含みます。)が死亡した場合において、その一般社団法人等が特定一般社団法人等に該当するときは、その特定一般社団法人等が、その死亡した者(以下「被相続人」といいます。)の相続開始の時におけるその特定一般社団法人等の純資産額をその時における同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額に相当する金額をその被相続人から遺贈により取得したものとみなして、その特定一般社団法人等に相続税が課税されます。

Ⅱ 用語の定義
1 特定一般社団法人等の定義(新相法66の2②三)
次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等とされます。
① 相続開始の直前における同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超えること。
② 相続開始前5年以内において、同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。

2 同族理事の定義(新相法66の2②二,新相令34③)
 一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他その被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)とされます。

(今月の税務トピックス②につづく)

(後編)財務省:2016年度租税特別措置の適用実態調査結果報告書を公表!

(前編からのつづき)

 この主な内訳は、2015年度から適用要件を緩和した「所得拡大促進税制」が3,184億円(2015年度比410億円増)、「研究開発税制」が5,926億円(同232億円減)、「生産性向上設備投資促進税制(一部)」が971億円(同210億円減)です。

 「特別償却」(28措置)は、適用件数が6.8万件(2015年度比0.5万件減)、適用額が1兆7,869億円(同5,750億円減)で、主な内訳は、「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」は5,971億円(同2,324億円増)、「生産性向上設備投資促進税制(一部)」が8,937億円(同3,989億円減)です。
 また、「準備金等」(15措置)は、適用件数が1.3万件(2015年度比0.1万件減)、適用額が8,212億円(同1,216億円減)となりました。

 適用数の実績が想定外に少ない租税特別措置等は、必要性や将来見込みの検証を徹底するため、税制改正プロセスにおいて、総務省による政策評価の点検結果や、財務省の適用実態調査の結果を活用し、租税特別措置の必要性や政策効果を検証しております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年4月16日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)財務省:2016年度租税特別措置の適用実態調査結果報告書を公表!

 財務省は、2016年度租税特別措置の適用実態調査結果報告書を公表しました。
 それによりますと、2016年度(2016年4月〜2017年3月)に終了した事業年度又は連結事業年度において、法人税関係の租税特別措置82項目(2015年度は83項目)について、適用件数が延べ183.3万件(同174.3万件)となりました。

 租税特別措置の種類ごとにみてみますと、中小企業への軽減税率(資本金1億円以下の中小企業には年800万円以下の所得に特例で15%(本則の軽減税率は19%)の税率)を適用する「法人税率の特例」(2措置)は、適用件数が88.9万件(2015年度比4.5万件増)、適用額が3兆4,412億円(同2,140億円増)と増えており、これは景気回復によって法人税を支払う黒字企業が増加したためとみられております。
 また、「税額控除」(18措置)は、適用件数が16.2万件(2015年度比0.8万件増)、適用額が1兆481億円(同82億円減)となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年4月16日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)中小企業庁:軽減税率対策補助金の期限を2019年9月末まで延長へ!

中小企業庁は、軽減税率対策補助金の補助事業の完了期限を2019年9月30日まで延長すると公表しましたので、該当されます方はご確認ください。

 軽減税率対策補助金(中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金)とは、消費税軽減税率(複数税率)制度の導入に伴う対応が必要となる中小企業・小規模事業者が、複数税率対応レジの導入や受発注システムの改修などを行うにあたり、その経費の一部を補助する制度です。
 消費税の軽減税率制度は、2019年10月1日から実施される予定ですが、これを受けて、中小企業庁では、中小企業・小規模事業者に、軽減税率実施への対応を円滑に進めてもらうために、軽減税率対策補助金制度を2016年3月29日からスタートしました。
 しかし、中小企業者等の対応が遅れていることから、補助事業の完了期限が軽減税率導入の前日まで延長することにしました。
 複数税率対応として、「複数税率対応レジの導入等支援」(A型)と「受発注システムの改修等支援」(B-1型、B-2型)の2つの申請類型があります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年4月9日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

【時事解説】利益に対応した経営責任 その2

 しかし、株主の見方は違います。経営者は株主から財産を預かって株主財産を増加させることを委託されています。外部環境はどうであれ、その中で最高のパフォーマンスを示すのが経営のプロのはずです。株価の下落が予想されるなら、事業と関係ない株式はあらかじめ売っておくべきですし、それでもなお所有し続けるなら、株価下落による評価損を補って余りある事業上の利益がもたらされなければなりません。経営手腕には単に事業遂行能力だけではなく、外部環境変化への対応能力も含まれているはずだと考えるのです。

 包括利益とは経営を巡るすべての外部環境変化も包含した上で、経営者の経営能力を評価する利益だといえます。
 資産の評価損益も含めて経営者の経営責任を問われるとなると、資産の収益性の検証が重要になります。いつか役に立つだろうとか、将来値上がりするだろうから何となく継続保有する、といった漠然とした理由での所有が許されなくなります。所有している資産が現在の収益獲得にどのように貢献しているのかということを常にチェックし、資産所有の妥当性を検証しなければなりません。

 日本人は古くから失敗の検証が苦手で、失敗を招いた人間に対する責任追及が甘くなりがちな民族なのではないかと私は思っています。自分の責任を追及されたくないのは言うまでもないことですが、自分を引き上げてくれた先輩の責任を問うこともはばかる風潮も根深く存在します。しかし、所有資産に内在する赤字も含めた損益が重要視されるようになれば、従来のような微温的態度に終始できなくなり、赤字の原因を生じさせた経営者責任を厳しく追及される局面が増えてくるのかもしれません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】利益に対応した経営責任 その1

IFRS(国際会計基準)や米国会計基準の影響を受け、平成23年から日本でも上場企業に対して「包括利益」が導入されました。
 包括利益は経営者の経営責任概念について、従来の利益とは大きく異なっていることに注意しなければなりません。最終的には「経営者が負うべき経営責任とは何か」という経営哲学の問題に帰着します。

 包括利益は損益計算書の当期純利益を受けて計算され、事業成績の最終結果である当期純利益に投資有価証券の時価や為替換算調整勘定の変動金額等を加えて計算されます。
 現在の会計基準では、投資有価証券の評価損益や為替換算調整勘定の変動金額は損益計算書には表示されず、貸借対照表上で直接処理されています。この会計処理のポイントは評価損益が損益計算書を通りませんから(減損の場合を除く)、当期純利益が変動しないところにあります。ところが、包括利益はこれらの資産価格の変動による損益を含めたものを「利益」として提示します。

 経営者の成績は期間中にどれだけ利益を上げたかで評価されます。その意味で、損益計算書の最終利益が重要です。投資有価証券の評価損益や為替換算調整勘定の変動金額を損益計算書に含めない会計基準の背景には、経営者は本業での実績で評価してほしいという考え方があります。経営者からすれば、「株価や為替相場は経営者が関与できない外部変数で、経営者の能力とは関係ない。経営者の評価は本業への貢献度に絞って評価されるべきだ。株価下落や為替相場変動による赤字計上を理由に経営者に責任を取れと言うのは理不尽だろう。」と主張するのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(前編)国税庁:2016事務年度の富裕層に対する調査事績を公表!

 国税庁は、2016事務年度(2017年6月までの1年間)の富裕層(有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な者など)に対する調査事績を公表しました。
 それによりますと、2016事務年度に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は7,612件(前事務年度7,445件)行われ、実地調査の結果、申告漏れ所得金額の総額は1,406億円(前事務年度1,465億円)となりました。
 追徴税額は、総額146億円(同150億円)で、1件あたり192万円(同202万円)となりました。

 2016事務年度は実地調査全体(特別・一般)が4万9,012件行われておりますので、全体の約16%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査全体の申告漏れ所得金額4,499億円の約31%が無申告者に係るものとなりました。
 1件あたりの申告漏れ所得金額は1,847万円で、前事務年度の1,968万円から6.1%減少したものの、実地調査全体の1件あたり申告漏れ所得金額918万円の約2倍増となり、調査件数も前事務年度に比べて2.2%増加しました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年4月9日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2016年分の国外財産調書の提出状況を公表!

国税庁は、2016年分の国外財産調書の提出状況を公表しました。
 それによりますと、国外財産調書制度の創立から4年目にあたる2016年分(2016年12月31日における国外財産の保有状況)の国外財産調書の提出件数は、2017年6月末までに提出されたもので、前年比2.4%増の9,102件、その総財産額は同4.3%増の3兆3,015億円となりました。

 また、局別の提出件数をみてみますと、「東京局」5,922件(構成比65.1%)、「大阪局」1,260件(同13.8%)、「名古屋局」660件(同7.3%)となりました。
 財産の種類別総額では、「有価証券」が51.8%を占めて1兆7,093億円で最多、「預貯金」6,015億円(構成比18.2%)、「建物」3,474億円(同10.5%)、「貸付金」1,708億円(同5.2%)、「土地」1,238億円(同3.7%)、「それ以外の財産」3,487億円(同10.6%)となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年4月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。