紙申告に10万円のペナルティー

2018年度の税制改正大綱には、事業者の電子申告にかかる見直しが盛り込まれています。

 一つ目は、資本金1億円超の大企業に限り、2020年から法人税や消費税などの電子申告を義務付けるというもの。大企業は独自の経理システムを導入していることが多く、中小に比べても電子化が進んでいません。完全義務化によって、一気に税務申告の電子化を推し進めたい狙いがあります。

 二つ目は、自営業者や個人事業主が税務申告の際に電子申告を使えば、青色申告者に認められる「青色申告特別控除」の控除枠を紙申告の人と比べて10万円上乗せするというもの。大企業への義務化と同じ20年から導入します。

 ただし、税制改正では、青色申告特別控除の控除額を現行の65万円から55万円に一律10万円引き下げることとしています。前述のように電子申告をした人に限っては10万円を上乗せできるわけですが、実態としては電子申告の人は従来通りの65万円を控除でき、紙申告の人は現行より10万円控除枠が縮小するということになります。電子申告者へのボーナスというよりは、紙での申告を続ける人に対する10万円のペナルティーの意味合いが強い見直しと言えます。
<情報提供:エヌピー通信社>

大阪市の固定資産税規定に違法認定

大阪市が独自に定める固定資産税の計算ルールを巡り、大阪地裁は計算方法の一部を違法と認定し、取りすぎていた税額を返還するよう命じる判決を下しました。同じルールに沿って税額を計算された建物は市内に無数にあるとみられ、今後同様の返還請求が多く起こされることも予想されます。

 大阪市を訴えていたのは、市内に賃貸マンションを所有する納税者2人。それぞれ1999年からの16年分、94年からの21年分の固定資産税額が過大徴収に当たるとして、返還を求めていました。

 固定資産税の税額を計算する基礎となる評価額は、原則として国が規定した「固定資産評価基準」が用いられます。しかし同税が地方税であることから、実際の運用には自治体ごとのローカルルールが用いられることも珍しくなく、大阪市も1979年から、建物の基礎工事で使われるくいの長さや太さに応じた独自の補正率を採用していました。

 裁判長は、大阪市の独自の計算ルールについて「合理的な根拠がない」として、計算方法の一部を地方税法に反すると認定。原告の求めに応じて過徴収した税額の全額返還を命じた上で、一部については国家賠償法の時効である20年を超えるとして訴えを退けました。

 自治体が定めた固定資産税の規定を巡っては、札幌市でも、同じマンション内にある住宅部分と事務所部分で異なる算定方法を用いたローカルルールが適正かどうかを争う裁判が起こされています。一審では納税者の主張が認められましたが、控訴審では逆転し、市の計算方法は適法との判断が示されています。

 固定資産税は自治体が税額を算定して納付書を送付する「賦課課税方式」を採用していますが、近年になって過徴収が全国で発覚したことから、自身に課された税額を改めて確認する納税者が増えています。長年にわたって運用されてきた自治体の独自ルールに疑問を提起する動きは今後も増えそうです。
<情報提供:エヌピー通信社>

タワーマンションの固定資産税の計算方法を規定

 2017年度税制改正において、タワーマンションの固定資産税の計算方法が見直され、総務省令により、計算方法が規定されました。
 原則として、この計算方法は2018年1月1日時点で新たに課税対象となるタワーマンションから適用されます。
 ただし、改正法施行日前の2017年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含む既存のマンションには新たなルールは適用されませんので、該当されます方は、ご注意ください。

 税制改正大綱では、「高さが60メートル超の建築物(「超高層建築物」)のうち、複数の階に住戸が所在しているものについては、その居住用超高層建築物(いわゆるタワーマンション)全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いるその各区分占有者の専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差異による床面積当たりの取引価格の変化の傾向を反映するための補正率(「階層別占有床面積補正率」)により補正する」としていました。

 その階層別占有床面積補正率は、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値とします。
 具体的には、中間の階の固定資産税額は現在のルールと同じにして、1階上がるごとに約0.26%ずつ税額が増えるようにし、中間階より1階下がるごとに約0.26%ずつ税額が下がるようにします。
 算式で示しますと、「各住戸の固定資産税=一棟全体の固定資産税額×<各住戸の専用床面積×階層別占有床面積補正率{100+(10/39)×(居住の用に供する専有部分が所在する階-1)}/占有床面性(補正後)の合計>」となります。

 また、専有部分において、天井の高さや附帯設備の程度、仕上げ部分(外壁や屋上防水等)が他の部屋より充実している場合などは、別途その差異に応じた補正を行うことになります。
 なお、高層マンションの区分所有者全員による申し出があった場合には、その申し出た割合により固定資産税額を按分することもできます。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

平成30年度税制改正 消費課税・納税環境整備編

 消費税と納税環境整備に関する主な改正項目を概観してみます。

●消費税について
 消費税に関しては、個別企業の課税実務に大きな影響を及ぼす改正はありませんでした。改正は補完的なものです。
①消費税における長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等について延払基準により資産の譲渡等の対価の額を計算する選択制度は廃止されます。但し、経過措置が講じられています。
②簡易課税制度について、軽減税率が適用される食用の農林水産物を生産する事業者を第2種事業とし、そのみなし仕入率を80%(現行:70%)とする。
 適用は、平成31年10月1日を含む課税期間からです。
③輸入に係る消費税の脱税犯に係る罰金刑の上限について、脱税額の10倍が1,000万円を超える場合には、脱税額の10倍(現行:脱税額)に引き上げる。
適用は、法律の公布日から起算して10日を経過した日以後の違反行為からです。
④外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充です。具体的には、「一般物品」と「消耗品」の合計で下限額の要件(5,000円以上)等を満たす場合には、外国人旅行者向けの消費税の免税販売を認める。
 適用は、平成30年7月1日以後に行われる課税資産の譲渡等からです。

●納税環境整備について
 改正の中心は、申告手続の電子化促進のための環境整備です。
 大法人の法人税、地方法人税、消費税、法人住民税及び法人事業税の電子申告の義務化です。申告書は、確定申告書、中間申告書、修正申告書が対象で、消費税においては還付申告書も含みます。
 上記の大法人とは内国法人のうち事業年度開始日の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人及び特定目的会社をいいます。
 なお、消費税については、国及び地方公共団体も含みます。
 適用は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度からで、消費税に関しては、同日以後に開始する課税期間からです。
 なお、上記申告手続の電子化に伴って、法人税等の申告書における代表者及び経理責任者等の自署押印制度を廃止するなど幾つかの環境整備がなされています。

中小企業の賃上げ動向

 経済産業省より平成29年「企業の賃上げ動向等に関するフォローアップ調査」の結果が発表されました。この調査は大企業と中小企業とを分けて調査され、大企業は2,001社中364社が回答、中小企業・小規模事業者30,000社のうち8,310社が回答しました。

◆中小企業7割近くが積極的に賃上げを実施
 平成29年度に常用労働者の賃上げを実施した大企業は89.7%(前年度90.1%)、正社員の賃金を引き上げた中小企業・小規模事業者は66.1%(前年度59.0%)となりました。前年と比較すると中小企業が積極的に賃上げを行っている傾向がうかがえます。

◆賃上げをする理由・しない理由
 中小企業・小規模事業者が賃上げを実施した理由についてベスト5は次の通りです。
①人材の採用・従業員の引き留めの必要性(49.2%)
②業績の回復・向上(34.3%)
③他社の賃金動向(21.6%)
④最低賃金引き上げの為(11.4%)
⑤業績連動型賃金制度のルールに従った(9.1%)
 一方で賃金を引き上げていない理由としては「業績回復、向上が不十分」72.6%が最も多く、賃上げを実施していない企業は業績が低迷している事がうかがえます。
 賃上げ額は、正社員1人当たり平均賃金の引き上げを実施した企業での年額をみると100,000円以上が最も多く、従業員規模が小さい企業ほど引き上げ額は大きくなる傾向にあります。引き上げ率は1%~2%が最も多く、こちらも従業員規模が小さいほど引き上げ率が高くなっています。

◆月別賃金引き上げ方法等
 引き上げの方法は定期昇給時に上げた企業が約半数と最も多く、賃金表を含む賃金規定を採っている企業は61.0%でした。
 人員計画については人手不足を感じている企業は66.4%であり、正社員の非管理職74.5%、管理職29.1%が不足していると答えています。
 採用方法はハローワークが最も多く78.7%です。次いで従業員や知人の紹介、36.9%、求人サイト32.9%と続いています。

「国際観光旅客税」19年1月開始

 政府・与党が2018年度税制改正に向けて検討していた日本からの出国時に1人1回1千円を徴収する新税「出国税」は、「国際観光旅客税」と名称を変更してスタートすることで決着しました。自民党内からの提言などを受けて一時は「観光促進税」とすることで検討していましたが、関係者によると、内閣法制局から「名称には課税対象を示す必要がある」と指摘されて「旅客」を入れるように変更したとのことです。導入は2019年1月7日から。

 国際観光旅客税は、日本人、外国人を問わず日本を出国する旅行者らから、航空券などの代金に上乗せして徴収します。海外から到着して24時間以内に出国する乗り継ぎ客や、2歳未満の子どもは対象から除外。政府・与党は当初、19年4月の導入を検討していましたが、中国からの観光客が増える旧正月(2月)前や、日本の年末年始の休暇が終わった後の時期を考慮し、1月初旬に前倒ししました。

 16年の出国数約4100万人(日本人約1700万人、訪日客約2400万人)で計算すると約410億円の財源規模となり、その税収分は観光関連の政策に使います。出入国手続きの円滑化や海外での誘致宣伝強化、地域観光資源の整備などを想定していますが、これまで無駄遣いが指摘されてきた特定財源とはせず、一般会計に入れて配分します。

 ただ一般会計だと、観光以外の政策に多く使われる可能性があります。そのため、政府は通常国会に観光関連の法案を提出し、財源の多くが観光関連の政策に振り向けられるようにする方針です。
<情報提供:エヌピー通信社>

良いインフレと悪いインフレ

 インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」の2種類があります。良いインフレとは経済全体が活性化して、需要が増大することにより、品物が不足気味になり、物価が上昇するという経路をたどるインフレです。これをデマンドプル型インフレと呼びます。一方、悪いインフレとは製品を作る際の費用が増加して、生産費用の増大を賄うために物価が上昇するインフレです。これをコストプッシュ型インフレと呼びます。
 デマンドプル型は需要側が物価を引っ張り上げるのに対し、コストプッシュ型は供給側が物価を押し上げる形になります。デマンドプル型は賃金も上がり、経済が好循環の時に生じるインフレですが、コストプッシュ型だと物価だけが上がり、国民生活は苦しくなります。日銀が目指しているインフレは言うまでもなくデマンドプル型です。
 そこで、物価を司る日銀の金融政策について、限界があるとする「反リフレ派」と、限界はないとする「リフレ派」の対立があります。
 反リフレ派は日銀の金融政策はもっぱら金利政策なのだから、ゼロ金利になった段階で、金融緩和の有効性は大きく減退すると主張します。一方、リフレ派は、物価は極めて貨幣的現象なのだから、物価の騰落は貨幣を統括する日銀次第でどうにでもなる。ゼロ金利になっても、貨幣供給量を増やし、日銀のインフレに対する強い決意を示すことにより、人々の期待インフレ率を高めることができ、期待インフレ率が高まれば、消費意欲の拡大を促し、実際にインフレを起こすことができる、と考えます。

 日銀の異次元の金融緩和で株価は上がり、経済マインドを好転させる効果はあったのですが、これまでのところ、目標であるデマンドプル型のインフレには至っていません。
 日銀はコストプッシュ型でも、とにかくインフレになればいいと考えているのではないかと思います。ただ、現在の状況では、コストプッシュ型であるにしろ、マイルドなインフレを起こすことは容易ではなさそうです。もしできたとして、それだけで終わっては意味がありません。コストプッシュ型インフレでは、生活費が上昇し、庶民の生活は苦しくなるだけだからです。コストプッシュ型がデマンドプル型のインフレに転化できるかが次の課題になります。最初はコストプッシュ型であっても、それが全般的な賃金上昇に結びつき、国民の心理をインフレマインドに転換させ、好循環のデマンドプル型に発展させられるのかが問われます。今までの状況を見れば、消費マインドは落ち着き、世界的にも物価は低落傾向にあり、その可能性は高くないだろうと、思います。
 日銀はコストプッシュ型インフレを起こすこと、そしてさらに、コストプッシュ型インフレをデマンドプル型インフレに転化することの二つの大きな山を越えなければなりません。それは二つとも簡単ではありません。
 インフレマインドの醸成には通貨当局の気合が重要だと言ってきた日銀が、インフレ目標の旗を下すことは簡単にはできないでしょうが、日銀がインフレを制御できるかどうかという点について、難しい局面に差し掛かっていることは事実です。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

平成30年1月の税務

1/10
●前年12月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

1/31
●支払調書の提出
●源泉徴収票の交付
●固定資産税の償却資産に関する申告
●前年11月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●5月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の2月、5月、8月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の10月、11月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(9月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●給与支払報告書の提出

○給与所得者の扶養控除等申告書の提出
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第4期分)

同姓同名の別人に固定資産税

 土地や建物の所有者に課される固定資産税を、三重県桑名市が同姓同名の別人に誤って13年間課税していたことが明らかになりました。本来の課税対象だった市民が気付き、発覚したとのことです。

 市によると、2004年4月に市民の女性が、固定資産税の納付方法を口座振替に変更した際、市が誤って本人だけでなく同姓同名の女性の固定資産税についても一緒に引き落とすよう設定してしまったそうです。その後、自分の固定資産税が引き落とされていないことに気付いた女性が金融機関に相談し、ミスが判明しました。約13年間で6万1800円が誤って引き落とされていたといいます。

 市は女性に謝罪の上で全額を返金し、同姓同名の女性にも謝罪した上で改めて本来の税額を請求するということです。

 固定資産税は、自治体側が実際の不動産などの状況を基に税額を計算し、納税者に納付すべき金額を伝えてくる賦課課税方式を採用しています。役所が間違えないことを前提としていますが、近年になり多くの自治体で過徴収が発覚。過去数十年にわたり数百万円を過徴収している例もあり、全国的な問題となっています。
<情報提供:エヌピー通信社>

軽減税率補助金の期間延長

 中小企業庁は消費税の複数税率対応の補助金制度について、当初予定されていた締め切りを8カ月延長することを明らかにしました。補助金は8%と10%の2種類の消費税率に対応するため新たなレジやシステムを導入する企業をサポートするもので、最大200万円を受け取ることができます。新たな締め切りは、軽減税率が導入される予定の2019年10月1日の前日である同年9月30日。この日までに新たなレジやシステムの導入を終え、その後、事後申請書を提出することが必要です。補助金の申請受付そのものの新たな締め切りは、後日別途発表するそうです。

 同補助金は、軽減税率の導入に伴い1台のレジで複数の税率への対応が必要となる事業所があることから、新制度に対応した新たなレジシステムの導入に対して補助金を交付するもの。補助される金額は導入にかかったコストの3分の2で、レジ1台当たり20万円が上限となっています。ただし導入するのが1台のみで費用が3万円未満であれば4分の3、タブレットなどの汎用端末であれば2分の1。また新たに商品マスタの設定や機器設置運搬などに費用がかかる時には、さらに1台あたり20万円を上乗せします。どれだけ導入しても、1事業者当たり200万円が上限となります。

 同補助金は当初増税が予定されていた17年4月に向けて16年4月に申請受付を開始しましたが、同年6月の増税延期を受け、現在に至るまで受付を継続しています。
<情報提供:エヌピー通信社>