中小企業における事業承継推進の課題として、事業承継時の経営者保証の解除があげられます。こうした状況を受けて、「経営者保証ガイドライン」の特則が2019年12月に策定・公表され、2020年4月より運用開始に至りました。 「経営者保証ガイドライン」は、経営者保証に関する中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして2013年12月に公表されました。具体的には①法人と経営者の関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握、情報開示等による経営の透明性確保といった要件を満たす中小企業が、会社経営を後継者に引き継ぐ際に、経営者保証不要で金融機関から融資を受けられる可能性があるとともに、既存の経営者保証を解除できる可能性があります。 「経営者保証ガイドライン」の特則は、同ガイドラインを補足するものとして、対象債権者や、主たる債務者及び保証人のそれぞれに対して事業承継の際に求め、期待される具体的な取り扱いを定めています。 また、主たる債務者及び保証人における対応としては、後継者の負担を軽減させるために事業承継に先立ちガイドラインの要件を充足するよう主体的に経営改善に取り組むことが求められています。 (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン) |
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カテゴリー: 会計
《コラム》浸水被害への備え-中小企業の防災対策と税制・助成金-
◆浸水リスクを認識し、被害を想定する
最近の豪雨災害による被災状況は目を覆うばかりです。令和2年7月豪雨は、特定非常災害の指定が閣議決定されました。
事業継続のため河川の氾濫などによる浸水被害リスクを認識し、これまでの常識にとらわれることなく備えることが求められています。自治体のHPでは、地域ごとにハザードマップを公開しており、洪水や高潮による自社の浸水リスクを視覚的に把握し、被害を想定することができます。過去の被災記録、被災土地の形状も有用な情報です。
◆事前に講じるリスク対策
浸水が発生する前の現実的な対策として、次のものが検討できます。
①保険の付保(水災保証)
②電源装置、サーバーの階上への移設
③データのクラウド保存
④防災・復旧のための設備投資(発電設備、止水板、排水ポンプなど)など
◆防災のための税制・助成金を活用する
自然災害に備える中小企業者を支援する公的な措置には、次のものがあります。
①中小企業防災・減災投資促進税制(中小企業庁)
中小企業経営強化法に基づく「事業継続力強化計画」の認定を受けて防災・減災設備を取得した中小企業者には、事業供用年度にて取得価額の20%の特別償却ができる措置が設けられています。
機械・装置(100万円以上)、器具・備品(30万円以上)、建物附属設備(60万円以上)。自家発電設備や排水ポンプ、止水板、防水シャッターなどの取得が対象です。
②BCP実践促進助成金(東京都中小企業振興公社)
東京都が、自然災害や感染症による不測の事態に備えてBCP(事業継続計画)を実践する都内に本社を置く中小企業者に対し助成金を交付する制度です。 BCPの実践に必要な設備・物品の購入・設置費用として上限1,500万円の助成金が交付されます。
◆BCPの実効性を高めるために
災害発生直前まで、気象庁の発表するリアルタイム情報やタイムラインを活用して被害を最小にとどめる措置を講じます。災害発生前の備えにより、社員の安全確保、設備・データの保全につなげましょう。
《コラム》令和2年秋 雇用保険の最新情報!
◆失業保険の給付制限緩和 ◆新型コロナによる退職の特例 ◆コロナ退職の失業給付日数延長特例 |
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《コラム》災害を受けた時の損失の取扱い
◆今年も多い豪雨災害 ◆災害関連の損失・費用はだいたい損金に ◆防災設備投資に助成もあります |
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《コラム》進む働き方改革 制度導入のポイントは
◆多様な働き方ができる時代に
時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができるテレワークや、総勤務時間を変えずにラッシュアワーを避けて通勤をする時差出勤、社員が自由に出勤・退勤時間を決められるフレックスタイム制の導入など、新しい働き方が広がってきました。
これらは、近年政府が推し進めてきた働き方改革の一環として、労働生産性の向上や長時間労働の是正を目標に、大手企業を中心に浸透してきていましたが、昨今の新型コロナウイルスの影響により、より多くの企業でこれまでの働き方を大幅に見直す事態となり、急速に導入が進んでいます。
◆利点も多いが、気になる部分も
例えば、会社に出社せずに自宅や外勤先、サテライトオフィス等からインターネットを通じて、会社のサーバーにあるファイルにアクセスしたり、仕事の電話に対応したりできるテレワーク。
営業で外回りの後、事務仕事をしに会社に戻る必要がなくなったり、育児や介護を担う労働者が在宅勤務をすることで通勤時間を有効に活用できたりするなど時間にゆとりを持たせた勤務を実現できます。
その一方で、社員同士のコミュニケーション不足や、仕事と仕事以外のメリハリをつけにくい、長時間労働になりやすい、勤務時間管理や在席確認が難しい、情報漏洩のリスクが上がる等の、気になる部分もあります。
時差出勤やフレックスタイム制においても、勤務開始や終了時刻を調整することで、私生活との両立がしやすくなるという利点があるのですが、一方で取引先や他部署との連携業務において時間の設定が難しいことや、急な会議や電話に応対できない等、社員が異なる時間に勤務することによるデメリットもあります。
◆企業側が注意すること
大切なことは、制度に関する就業規則を整備し、適用する社員の範囲を明確に定め、勤務時間管理をしっかり行うことです。
勤怠システムを活用するのも良いでしょう。過重労働や反対にルーズな勤務状況とならないよう、社員本人の時間管理意識も大切です。ワークライフバランスを意識した、働きやすい環境作りをしたいですね。
【時事解説】地方銀行のビジネスモデルは自分で描く その2
まず、第一に顧客のニーズに合わせ、自社の持っているサービスを提供するのは企業として当然のことだろう、ということです。その当然のことがこれまで地方銀行はできていなかったということなのでしょうか。つまり、地方銀行は顧客のニーズを考えずに、自分の都合を優先して、担保や保証に過度に依存して融資を行っていたのでしょうか。もし、そうだとすれば、企業としての根幹が崩れているのですから、そんな銀行は金融庁の指導を受けたところで、経営層をはじめとした幹部を抜本的に変えない限り、再生は不可能でしょう。
多分、そうではないのだと私は思います。地方銀行も当然、顧客のニーズを把握しその上で、顧客企業の発展のために貸し出しを行っていたのだと思います(その際、必要に応じて担保や保証を取るのは金融機関として当然のことです)。そうした貸し出しを行ってもなお地域が衰退していることが問題なのです。
次に、金融庁は地域の活性化のカギは依然としてカネにあると思っているように見えるところにあります。もしカネの付け方が問題であるなら、地域衰退の主因は地銀にあり、地銀が正しく行動すれば、地域も活性化するということになります。そうだとすれば、問題の所在も解決法も極めて簡単です。しかし、私は地方の衰退の主因がカネにあるとは思いません。カネではない、地銀の枠を超える人口減少やグローバル化などの様々な要因が作用して現在の状況を作り出しているから、解決が難しくなっているのだと思います。
地方銀行再生のビジネスモデルはお上が決めるのではなく、それぞれの地域の実情に沿い、自分の頭で考えるしかないのです。それができなければ、コスト削減のための再編しか残された道はなくなります。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
【時事解説】地方銀行のビジネスモデルは自分で描く その1
最近、銀行経営が行き詰まっているという話題が雑誌や新聞でよく取り上げられます。その主因は成長鈍化やカネ余りで銀行の主たる収益源である貸出金の利ザヤが縮小していることにあり、日銀のマイナス金利政策もそれに追い打ちをかけています。
そんな中でも、都市銀行は集約化が進み、資本力や人材も豊富で、海外展開をしていることもあり、何とか苦境を切り抜けられるのではないかと見られています(それも確かではありませんが)。問題は地方銀行です。日本全体の人口減少が進む中で、東京の一極集中は加速していますから、地方の人口減少は一層深刻です。地方銀行はその成り立ち上、地元の企業や個人への貸し出しをビジネスの主力とせざるを得ず、それに代わる収益機会を持たないだけに、状況は誰が考えても深刻です。
そこで監督官庁である金融庁は地方銀行に対して色々な指導をしています。たとえば、地域の企業がどのような金融サービスを求めているか、企業側のニーズを把握し、企業のニーズと地銀の意識のズレを分析し、企業活性化に役立つ金融サービスを行う、といったことのようです。これまで担保や保証に過度に依存し、柔軟な融資を行ってこなかった地方銀行が地元企業にその企業のニーズに合った融資等の金融サービスを行うことで、地盤である地域が活性化すれば、地方銀行も再生するというシナリオです。このように聞くと、もっともなように聞こえますが、この手の金融庁のニュースを聞くたびに私は違和感を覚えます。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
【時事解説】コロナ禍で普及の兆し、スマートグラスとは その2
コロナ禍で、新たに普及の兆しが見え始めた商品があります。一例を挙げると、スマートグラスと呼ばれるメガネ型端末がそうです。コロナ禍により工場のテレワーク用のニーズが増えました。また、海外では、警備員が入場者の体温を測定するといった利用もされています。
ただ、発売当初、スマートグラスは多くの問題を抱えていました。2013年、グーグルはスマートグラスを発売し注目を集めました。ところが、値段が1500ドル(当時1ドル100円で換算=15万円)と高価だったため普及には至りませんでした。加え、かさばって重たいといった使い勝手に関する問題も普及が進まなかった要因になりました。
そして、最も大きな問題となったのがプライバシーの侵害です。スマートグラスにはカメラの撮影機能があります。たとえば、レストランに入店し他の客の顔を相手に気づかれないように撮影することもできます。加え、顔認識機能のアプリを利用すれば、相手のプロフィールを検索することも可能です。「だれかに撮影されているかもしれない」と思ったら安心して食事もできません。米国のレストランではスマートグラスを着用した人が入店を断られる事例が発生しました。そして、2015年、グーグルはスマートグラスの販売を中止しました。
コロナ禍で再び注目を集めるスマートグラス。今回は、工場での作業など、ビジネスユースが中心なので、プライバシーに関する事項は問題になりにくいと考えられます。また、価格は現在約6万2000円まで下がっています。加え、新規光学素子の開発により、小型化や軽量化が実現できるようになりました。今後、普及が加速するかどうか、注目したいところです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
【時事解説】第三者承継支援総合パッケージについて その2
では、第三者承継支援総合パッケージはどのような内容となっているのでしょうか。そこで同パッケージの概要についてみていきましょう。
第三者承継支援総合パッケージでは1年間で6万者、10年間で60万者の第三者承継の実現を目指しています。同パッケージは、①経営者の売却を促すためのルール整備や官民連携の取組、②マッチング時のボトルネック除去や登録事業者数の抜本増加、③マッチング後の各種コスト軽減の三つの柱から成り立っています。
一つ目の柱である経営者の売却を促すためのルール整備や官民連携の取組においては、「事業引継ぎガイドライン」を改訂し経営者が適正な仲介業者・手数料水準を見極めるための指針を整備することで第三者承継を経営者の身近な選択肢とすることや、事業引継ぎ支援センターの無料相談体制を抜本強化し、経営者が気軽に相談できる第三者承継の駆け込み寺とすることなどが主な施策として掲げられています。
二つ目の柱であるマッチング時のボトルネック除去や登録事業者数の抜本増加においては、「経営者保証ガイドライン」の特則策定により個人保証の二重取りを原則禁止とすることや、「事業引継ぎ支援データベース」を民間事業者にも開放し、スマホのアプリを活用したマッチングなど簡便なしくみを提供することなどが主な施策として掲げられています。
三つ目の柱であるマッチング後の各種コスト軽減については、新社長就任に向けた後継者の教育支援や、事業の選択と集中を促す補助金の創設をはじめ、予算・税・金融支援を充実させることが掲げられています。
以上の取組を通して、親族外の第三者による承継を後押しすることが期待されているのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
【時事解説】第三者承継支援総合パッケージについて その1
経済産業省は、後継者不在の中小企業に対して、第三者による事業承継を総合的に支援するため、2019年12月に「第三者承継支援総合パッケージ」を策定しました。
これは、後継者未定の中小企業について、これまでの対策では不十分な点があったため、黒字廃業の可能性のある中小企業の技術・雇用等の経営資源を次世代の意欲ある経営者に承継・集約することを目的に取りまとめられたものです。
とくに親族外の第三者による承継を推進するうえで、中小企業のM&Aの件数が、潜在的な後継者不在の中小企業の数と比較して不十分となっており、その背景として以下の3点があげられます。
一つ目の課題として、マッチング前の段階において、中小M&A市場の売り手と買い手の割合が1対9程度となっているなど売り案件が圧倒的に少数である点があげられます。経営者にとって第三者承継が身近でなく、他者へ「売る」ことへの抵抗感が根強いことや、仲介手数料や仲介業者などのM&Aに関する情報が不十分なため、売りを躊躇することが要因として考えられます。
二つ目の課題として、マッチング時の段階において、事業引継ぎ支援センターの成約率が約8%にとどまっているなどマッチングの成立が困難な点があげられます。個人保証の存在により承継を拒否したり、従業員も含め適切な相手が見つからなかったりすることが要因として考えられます。
三つ目の課題として、マッチング後の段階において、承継後の経営統合が困難な点があげられます。承継後の経営統合や事業戦略の再構築にコストを要することを懸念して、承継を躊躇することが要因としてあげられます。
これらの課題に対処するため、第三者承継支援総合パッケージでは政策の抜本強化が図られているのです。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)