【時事解説】親子上場解消が相次ぐのはなぜか その1

最近の株式市場では、親子上場を解消する企業が増えています。親子上場とは親会社と子会社の両方が株式市場に上場しているケースを指します。たとえば、親会社の富士電機と子会社の富士通などが該当します。
 先日、東芝は東芝プラントシステムなどの親子上場を解消すると発表しました。ほかにも、製薬会社や飲料会社など、親子上場解消の発表が相次いでいます。

 背景にあるのは、従来からある、親子上場に対する批判です。親子上場のデメリットは、親会社と子会社で経営方針が相反する状態になったとき、顕著にあらわれます。親会社が経営の決定権を持つので、子会社は従わなければなりません。ただ、親会社の決定が子会社の企業価値の最大化につながるとは限らず、最悪、子会社の関係者や株主などが不利益を被ることになります。

 親子上場の弊害に注目が集まるきっかけは、アスクル(オフィス用品ネット通販大手)とヤフーの対立が一つとしてあります。ヤフーは会計上、アスクルを連結子会社としています。その中、ヤフーはアスクルが運営する、「LOHACO(ロハコ・消費者向けネット通販サイト)」の事業譲渡を申し入れました。これが発端となり両社の関係は悪化。さらに、ヤフーはアスクルの社外取締役3人を解任することを決定します。社外取締役は独立性があり、中立の立場から企業をチェックする役割を担います。ヤフーが下した解任は、自社にとって都合の悪い人間を排除したようにもみえます。結果、ヤフーに批判が集まりました。親子上場を問題とする声はまだまだ収まりません。そして、今後も親子上場の解消を進める企業が増えることが予想されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業の防災・減災に向けた支援 その2

では、中小企業の防災・減災に向けてどのような支援が行われているのでしょうか。以下で、2019年7月に創設された事業継続力強化計画認定制度についてみていきましょう。

 大規模な自然災害が全国各地で相次いで発生し、中小企業の事業継続にとって大きな脅威となる中、国は2019年1月に中小企業の災害対応力の強化に向けて「中小企業強靭化パッケージ」をとりまとめました。 同パッケージにおいて、公的認定制度の創設と認定事業者への支援が掲げられたことを受け、2019年7月に「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(中小企業強靱化法)」が施行され、同法において、防災・減災に取り組む中小企業がその取り組みを「事業継続力強化計画」としてとりまとめ、国が認定する制度が創設されました。

 事業継続力強化計画の記載項目としては、事業継続力強化に取り組む目的の明確化、ハザードマップ等を活用した自社拠点の自然災害リスク認識と被害想定の策定、発災時の初動対応手順の策定、ヒト・モノ・カネ・情報を災害から守るための具体的な対策、計画の推進体制(経営層のコミットメント)、訓練実施や計画の見直し等実効性を確保する取り組みなどがあげられます。

 認定を受けた企業に対する支援策としては、低利融資や信用保証枠の拡大等の金融支援、防災・減災設備に対する税制措置、補助金(ものづくり補助金等)の優先採択などがあげられます。
 また、認定を受けた企業は、認定に関するロゴマークの使用が可能となり、会社案内や名刺などで認定のPRが可能となります。

 このように中小企業の災害に対する事前対策を促進する取り組みが行われているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業の防災・減災に向けた支援 その1

近年の自然災害の増加に伴い、中小企業においても防災・減災に向けて取り組むことが求められています。こうした状況を受け、中小企業庁編「中小企業白書2019年版」では中小企業における自然災害への備えについて取りまとめています。以下で、同白書において実施された「中小企業の災害対応に関する調査」にもとづき、被災による中小企業への影響についてみていきましょう。

 災害時における過去の被災によって受けた被害内容について回答割合が高い順にみると、「役員・従業員の出勤不可(44.5%)」、「販売先・顧客の被災による、売上の減少(39.1%)」となっており、自社の被災だけでなく販売先・顧客の被災を要因とした事業上の損害も多く発生していることがわかります。被災によって被った物的損失額についてみると、従業員の規模に関わらず100万円以上の損害を受けた企業の割合が7割を超え、1,000万円以上の損害を受けた企業の割合も3割を超えていることがわかります。

 中小企業の被災時における営業停止期間についてみると、従業員規模に関わらず、約半数が「営業は停止せず」と回答する一方で、4日以上営業を停止した企業の割合が3割を超えていることがわかります。
 被災による営業停止期間別に、被災3か月後における被災前と比較した取引先数の推移についてみると、営業停止期間が長いほど、取引先数が減少する傾向にあることがわかります。

 このように、自然災害が中小企業に与える影響として、大きな物的損害の発生に加えて、営業停止に陥る可能性もあり、営業停止が長引くにつれて取引先が減少することが懸念されることから、自然災害への事前対策がより一層重要になってくるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》令和2年度税制改正大綱 個人所得課税(一般)編

◆個人課税は「人生100年時代」を意識
 令和2年度の税制改正大綱が公表されました。個人課税は、人口減少・少子高齢化が進む中での「人生100年時代」に相応しい税制づくりを意識したものとなっています。

◆低未利用地等を譲渡した場合の特別控除
 高齢化の進展に伴い、所有者自身が利用する意向のない土地の増加が予想されることから、特別控除制度が創設されました。
 個人が都市計画区域内にある低未利用土地等を譲渡した場合において、一定の要件を満たすときは、長期譲渡所得金額から100万円を控除することができます(建物譲渡部分については適用されません)。

◆配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱い
 令和2年4月より施行される民法の「配偶者居住権」「配偶者敷地利用権」について、取得費の取扱いが明記されました。
・配偶者居住権等の消滅時(対価受領)
 居住建物等の取得費×配偶者居住権等割合-減価の額(居住権の設定日~消滅日)
・配偶者居住権等の消滅前
 居住建物等の取得費-配偶者居住権等の取得費

◆未婚のひとり親に対する税制上の措置
 昨年の改正で持ち越しとなっていた「未婚のひとり親」の寡婦(夫)控除は、令和2年分より控除できることとなりました。
 適用要件は死別・離別の場合と同様です。寡婦に寡夫と同じ所得制限(500万円)が設けられます。

◆国外中古建物の不動産所得の損益通算特例
 富裕層を中心に広まっていた国外不動産を利用した租税回避の防止策として、個人が国外中古建物を有する場合には、不動産所得の計算上、その損失額のうち国外中古建物の償却費相当額(簡便法適用)は、生じなかったものとみなすこととなりました。

◆住宅ローン控除の適用要件の見直し
 新規住宅に居住した3年目に従前住宅等を譲渡した場合に、一定の措置法特例の適用を受けているときは、住宅ローン控除の適用はできないこととなりました。

◆その他の改正項目
 国外居住扶養親族の扶養控除、医療費控除の添付書類の見直し等が図られています。

【時事解説】現在の銀行の問題はB/SではなくP/L その2

今、銀行に問われているのは、B/Sではなく、損益計算書(P/L)の利益低下です。その一つの要因に日銀のマイナス金利政策があることは事実ですが、日銀が政策変更をすれば、すべてが解決するというような生易しいものではありません。その背景にはカネ余りと、その一方で止まらない資金需要減少に伴う金利低下による利ザヤ縮小という構造的問題が横たわっているからです。

 預貸金利ザヤで儲けるというのは銀行の変わることのない伝統的な本来業務です。つまり、P/Lの問題とは銀行のビジネスモデルの根本的変革を要求しているのです。銀行はこれまで基本とするビジネスモデルの変革など問われたことがなく、P/Lの問題は過去に経験のない、共通する処方箋のない問題だということができます。新しいビジネスモデルを提示できなければ、統合や人員削減といったリストラしか残された道はありません。

 B/Sの不良債権問題は過去の遺産の処理で、一過性の問題であるのに対し、P/Lの利ザヤ縮小は将来に向けて継続する問題です。それだけに解決は容易ではありません。
 さらに問題を難しくしているのは、B/Sの問題からも完全に解き放たれているわけではないということです。現在は、景気がいいので沈静化していますが、景気が悪化すれば不良債権問題は必ず表面化します。そのときP/Lの問題を解決できていないと大変です。

 銀行の経営者はそれまでに市場が納得できる処方箋を提示することを求められますが、残された時間はそう多くはないでしょう。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】現在の銀行の問題はB/SではなくP/L その1

銀行業界は苦しい状況にあります。しかし、考えてみれば、銀行の苦境は今に始まったことではありません。バブル崩壊に伴う不良債権の増大もかなりの衝撃でしたが、そうしたことを乗り越えて、現在に至っています。それでは、今回も従来と同様に問題を解決できるのでしょうか。

 ところが、今回はそうは簡単ではないと思います。というのは、今回の危機はこれまでとその本質が異なるからです。従来の銀行問題は主として不良債権でした。つまり、貸借対照表(B/S)の資産の劣化が問題でした。ところが、今、問われているのは損益計算書(P/L)の利ザヤだからです。

 銀行の主たる資産は貸付金です。貸付先が業況不振になると、貸付金の回収不能の可能性が高くなり、貸倒引当金の繰り入れや、最悪の場合、貸倒損失を計上しなければなりません。
 これまで銀行に生じた経営問題は主としてこのパターンでした。確かにこれは重大事ですが、この問題の解決法はそれほど難しくありません。なぜなら、B/Sに発生する不良債権を処理さえすればいいからです。不良債権を処理すれば、当然損失が発生します。ポイントは銀行にその損失処理を許容できる自己資本の厚さがあるかどうかという点にあります。損失処理を行い、自己資本が足りなくなれば、銀行の破綻につながりますし、あるいは、破綻させると社会的影響が大きすぎるということであれば、公的資金などの外部資本を注入し、自己資本を増強するという解決手法をとります。だからこそ、銀行にとっては自己資本比率が重要な指標として常に注目されていました。

 これはこれで大変ですが、過去の経験があり問題の所在と解決方法が明快であることが救いです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

《コラム》領収書から医療費通知書へ

◆医療費控除の要件
 医療費控除を所得税の確定申告で受けるには医療費の領収書の添付又は提示が必要で、特にその明細一覧表の作成は義務ではありませんでした。それが、平成29年の税制改正で、医療費領収書の添付又は提示が不要となり、その代わりに、医療費控除の明細書を作成し、添付することになりました。ただし、領収書の5年間の保存義務があります。

◆医療費控除の明細書
 医療費控除の明細書には、医療費年額、受診者名、医療機関名、その他参考事項の4項目を記載することとなっており、特に各項目別に分別記載することは要求されていません。ただし、国税庁の用意している「医療費控除の明細書」では、各項目を分別してそれぞれの年合計を書くという形式になっています。

◆医療費通知書がある場合
 医療保険機関から交付を受けた医療費通知書がある場合には、その医療費通知書を添付すると医療費控除の明細書の作成添付はしなくて済みます。医療費通知書には、①被保険者名、②受診年月、③受診者名、④診療機関名、⑤窓口負担額、⑥保険者名、が、受診の都度毎、書かれているので、領収書保存義務もありません。

◆実態は混合型
 ところが、医療費通知書の発行は、診療等の後、しばらく遅れるので、年の後半分については、確定申告期限に間に合わないことが多いようです。実態は、医療費通知書のみの添付で済ますことが出来ず、通知不足分については、医療費控除の明細書を作成することになります。また、保険適用外の医療費については、当然ながら、医療費控除の明細書への記載しか方法はありません。窓口実負担と記載負担額が異なることもあり、実負担が原則です。

◆未来のIT化と今年最後の添付方式
 でも、この改正からは、当局の領収書管理事務からの解放も含め、制度も、手続も、IT時代にふさわしい進化を進めようとしている意志を感じさせられるところです。
 医療費通知書の発行を早め、確定申告期限に間に合うようにする努力が続けられることと思われます。ただし、令和元年(2019年)分の確定申告での医療費控除は、経過措置として、領収書を添付し医療費合計の直接記載で済ませてもよい、ことになっています

【時事解説】コミットメントラインの会計的メリット その2

コミットメントラインは資金繰りの安定に役立ちます。ただ、会計的には、実際の融資がなくても、融資枠に対して手数料が発生しますから、損益計算書の当期純利益は減ることが予想されます。一方、貸借対照表の資産・負債を圧縮することができます。そのメリットとデメリットをよく考えることが必要です。

 資産を圧縮できれば、総資産を分母とする各種経営指標が向上します。たとえば、自己資本比率(自己資本÷総資産)を引き上げることができるほか、当期純利益との兼ね合いにもよりますが、ROA(総資産利益率、当期純利益÷総資産)の引き上げもできるかもしれません。

 最近の上場企業は資産効率の改善に熱心ですから、コミットメントライン契約による資産・負債の圧縮メリットを強く感じることが予想されます。
 ところが、非上場企業ではそれほど経営指標にはこだわる必要はありませんから、当期純利益の下落のデメリットを強く感じるかもしれません。非上場企業に対するコミットメントラインの訴求ポイントは経営指標の改善より、万一のための資金繰りの安定という点にあると思います。

 企業にとって、コミットメントラインの最大のメリットは言うまでもなく資金繰りの安定にあります。ただ、それだけでなく、その会計的影響も考慮の上、コミットメントライン締結の判断をする必要があります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】コミットメントラインの会計的メリット その1

銀行には「コミットメントライン」という商品があります。コミットメントラインとは企業が銀行と結ぶ融資契約枠のことです。コミットメントライン契約を結ぶと、あらかじめ契約した融資期間と融資金額の範囲内で、企業から要請があると、銀行は融資をしなければなりません。コミットメントラインの特色は、銀行は実際の融資がなくても、融資契約枠そのものに対して、手数料を取るところにあります。無論、融資を行えば、その融資金額に対して利息を取ります。考えようによっては、企業は融資枠と融資金額の両方にコストが発生しますから、単純な融資に比べて割高になるように思われます。なのに、どうしてコミットメントライン契約が利用されるのか、会計的に考えてみましょう。

 企業にとって、資金繰りは重要です。当座の資金繰りに詰まり、支払資金が不足したために、約束した期日に約束した債務が支払えなくなってしまうと、他にいくら資産があっても、倒産という事態もあり得ます。資金を遊ばせておくのは無駄ですから、できるだけ有効に使いたいとは思うのですが、万一のことを考えたら、資金繰りをギリギリにしておくのは危険です。したがって、資金繰り担当者は余裕を持った資金繰りを心がけるのが常です。

 たとえば、借入金で運転資金を調達する企業は、借入金を実際に必要とする資金より多めに借り入れて預金に預け入れておきます。その結果、必要以上に資産と負債は膨らんでしまいます。そこでコミットメントラインの出番になります。もし、コミットメントライン契約を結んでおけば、必要なときにはすぐ資金を借り入れることが可能になりますので、ギリギリまで借入金を絞り、資産と負債を圧縮することができるからです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

(後編)国税庁:2018年度の滞納整理の訴訟状況を公表!

(前編からのつづき)

 また、名義変更訴訟とは、国税債権者である国が国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものをいいます。
 悪質な滞納事例では、取引先への売掛金を、代表者の娘名義等の預金口座に振り込ませて隠ぺいしていたことから、滞納会社及びその代表者を滞納処分免脱税で告発した事例が挙がっております。

 建設業を営む滞納会社は、法人税等の滞納を発生させて以来、具体的な納付計画を提示することもなく滞納国税を累積させていたことから、徴収職員は、滞納会社が取引先に対して有する売掛債権を差し押さえました。
 その後も滞納会社の財産調査を継続したところ、滞納会社の代表者は、再び差押えが行われることを懸念し、他の取引先に売掛金の振込先を代表者の娘や関連会社名義の預金口座に変更することを依頼し、売掛金約2,000万円がその預金口座に振り込まれた事実を把握しました。
 これが滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納会社及びその代表者を国税徴収法違反(滞納処分免脱税)で告発しております。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。