(前編)国税庁:2018年度の滞納整理の訴訟状況を公表!

国税庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟など国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでおります。
 2018年度租税滞納状況によりますと、原告訴訟に関しては、151件の訴訟を提起しました。

 訴訟の内訳は、「供託金取立等」13件、「差押債権取立」11件、「その他(債権届出など)」122件のほか、悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が5件ありました。
 また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、厳正に対処し、2018年度は過去最高の12件(29人員)を告発しました。
 なお、詐害行為取消訴訟とは、国が滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うものをいいます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

【時事解説】倒産耐久力は貸借対照表の対角線で判断する その2

そこで出てくるのが流動性を生み出した原因を明確にする自己資本比率(自己資本÷総資産)です。流動性を支える現金の発生原因が債権者に返済不要の自己資本であれば、その流動性には永続性があると判断できます。自己資本は会社外部からの資金流入である払込資本と、会社が事業を行うことにより生み出した利益の蓄積である内部留保からなります。内部留保の比率が高いほど、会社自身が生み出す現金創造力が高いということになり、安定性は高まります。

 つまり、倒産耐久力を判断するのは、貸借対照表の左上を中心に表示される現金及び現金類似資産と、右下に表示される純資産の内部留保になります。倒産耐久力という点では貸借対照表の左上から右下に流れる対角線が重要になるのです。資産のほとんどが現金及び現金類似資産で、その発生原因が内部留保という会社は倒産耐久力という点では申し分のない会社ということになります。

 そういう会社はつぶれにくい会社であることは間違いありませんが、だからといって、それが即、いい会社というわけではありません。というのは、会社が生んだ利益を現金で持っているということは、成長を生む資産に利益を再投資できていないことになるからです。成長性という点では明らかにマイナスです。

 また、そういう会社は現金が豊富ですから、投資をしようとするとき銀行借入に頼らなくてもいいということも銀行にとっては悩みの種です。貸したい先ほど借りたくないというジレンマに陥ります。こうした融通の利かない融資姿勢が銀行批判を招く一因となっているのですが、最近の状況を見ていると、銀行がそこから脱却することはそれほど簡単なことではなさそうです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】倒産耐久力は貸借対照表の対角線で判断する その1

銀行員は決算書を受け取ったときに、まずどこに着目するのでしょうか。銀行の融資担当者が最も恐れるのは融資先の貸倒であり、そのため、決算書を受け取ったときに、真っ先に着目するのは倒産しない会社かどうかを見極めることになります。いわば、「倒産に対する耐久力」にすぐ目が行きます。ですから、分析の中心は損益計算書より貸借対照表となり、さらにその中でも流動性と自己資本比率の二つに注目することになります。

 倒産とは、一般的に、契約した債務の支払いを期日通りに行えない状況(債務不履行)を言います。債務の支払いは原則的に現金で行いますから、現金及び現金に近い資産(主として流動資産にあります)が、短期に支払期日が来る債務(主として流動負債にあります)と比べてどのくらいあるかが重要になります。現金や市場性のある有価証券などの流動資産が、流動負債に比べて豊富にあれば(こうした状況を「流動性が高い」といいます)、債務不履行になる確率は低いと判断できます。

 ただ、流動性だけで倒産耐久力を判断することはできません。というのは、現金及び現金類似資産を生み出した原因が重要になるからです。たとえば、長期借入金や社債などの有利子負債により生み出した現金で流動性を高く保っていれば、その流動性は危険です。有利子負債には償還期日がありますし、場合によっては期日以前に債権者に返済しなければならない場合もでてくるからです。有利子負債の返済を迫られたら、流動性は一気に落ち込み、資金繰りに詰まります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》申告書等閲覧サービスの改正

◆申告書等閲覧サービスとは
 申告書等閲覧サービスとは、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達(財務省設置法第19条)に資するため、行政サービスとして行われているものです。法令等により制度化されているものではありませんが、国税庁の事務運営指針により運営されています。
 具体的には、納税者等が申告書等を作成するに当たり必要があると認められる場合に、納税者等が税務署等に赴いて、過去に提出した申告書や届出書等の内容を確認することができる制度です。
 正確な納税申告をするためには、過去に提出した申告書の内容と齟齬がないようにする必要がありますし、過去に提出した届出書も正確に把握していなければなりません。何十年も前に提出した届出書が現在の申告内容に影響を及ぼすことも珍しくありません。このため、納税者においては、細心の注意を持って過去の申告書や届出書を管理しなければなりません。しかし、様々な事情によりそれができなくなることもあります。そんな時にはこの制度を活用することとなります。

◆改正前の取り扱い
 ごく一部の例外を除き、原則として、申告書等のコピーの交付、カメラ撮影及びスキャナーによる読み取りは、認められていませんでした。このため、税務署まで赴いて閲覧した上、必要な部分を手で書き写さなければなりませんでした。申告書等閲覧サービス自体は大変有り難いサービスなのですが、この点だけは納税者や税理士にとって、なんとも不便な制度でした。

◆改正後の取り扱い
 本年、この事務運営指針の改正が行われ、9月から取り扱いが変わりました。コピーの交付は相変わらず認められていませんが、写真撮影は認められるようになりました。ただし、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット又は携帯電話など、 その場で写真が確認できる機器に限られます。
 コピーの交付が認められないのは不満ではありますが、写真撮影が認められたのは大きな前進ですね。

《コラム》少し進化のコンビニ納付

◆コンビニ納付の制限
 税務当局から税金の納付書が送付されて来たら、その納付書を持参して、税務署窓口や金融機関で納税するのが普通ですが、送付されてきた納付書にバーコードが付いていると、コンビニでの納付ができます。
 コンビニ納付については、経験をした方が多いかと思われます。利用可能税目に制限はありませんが、納付書1枚につき30万円以下の制約があります。
 個人が手元にある納付書にバーコードを印刷することはできませんから、この納付方法には、送付されてきた納付書に限られるという前提があります。

◆コンビニ納付(QRコード)
 ところが、この前提を覆す新しい納付方法の制度が本2019年から始まっています。
 自らが作成するバーコード付き納付書でのコンビニ納付です。最初に作成するのがバーコードではなく、QRコードなので、これをコンビニ納付(QRコード)と言い、従来制度をコンビニ納付(バーコード)と言っています。
 国税庁サイトのコンビニ納付用QRコード作成専用画面にて納付書に記載する事項を入力すると、QRコードを作ることができます。それを印刷又はスマホやタブレット端末に保存し、コンビニに設置されているキオスク端末にそのQRコードを読み取らせるとバーコード付き納付用紙が出力されます。
 国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで、所得税、消費税、贈与税の申告書を作成する際に、QRコードの作成を選択することで、申告書に併せて、QRコードを印字した書面をPDFファイルで作成することもできます。

◆進化の応用と不便なところ
 コンビニ納付(QRコード)も結果的には、コンビニ納付(バーコード)の一形態なので、納付できる金額は従来と同様に納付書1枚当たり30万円以下です。ただし、自分で作成するので、納付書を2枚、3枚に分けて作成でき、巨額な差でなければ、金額制限は簡単にクリアーできます。
 コンビニ納付(QRコード)の利用は国税についての制度で、ほとんどの税目で使えます。なお、手数料は不要ですが、キオスク端末の設置されているコンビニでしか利用できず、払込金受領証は発行されますが、領収証書は発行されません。納税証明書の発行には、3週間程の余裕を見ておく必要がありそうです。

《コラム》デューデリ費用と買収合併

◆M&Aの費用として
 デューデリジェンスという言葉は随分と一般化してきました。M&Aの活発化に伴い、買収先の財務内容や法的リスクの調査を委託するのが通常となっています。この調査がデューデリジェンスです。買収案件によっては、この調査費用が多額になることもあります。

◆有価証券購入付随費用になる場合
 税務上、購入した有価証券の取得価額は、その購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)と法定されています。企業買収に係るデューデリジェンス費用が有価証券の購入付随費用に該当するかどうかの判断が問題になります。国税不服審判所裁決事例に、これに係る判断がいくつか存在します。
 他社を買収するに当たって支出した財務調査費用につき、どの有価証券を購入するか特定されていない時点において、いずれの有価証券を購入すべきであるか決定するために行う調査等に係る支出は、この有価証券の購入のために要した費用には当たらないものの、特定の有価証券を購入する意図の下で有価証券の購入に関連して支出される費用は、有価証券の購入のために要した費用として当該有価証券の取得価額に当たる、との裁決になっています。

◆買収意思決定取り止めの場合
 企業買収を目的として実施したデューデリジェンスが買収の意思決定前に行われたものか否かにより取扱いが異なるということです。もちろん、買収の意思決定後のデューデリジェンス費用でも、実施した結果、最終的に、買収を取りやめた場合には、当然一時の損金に算入することにはなります。

◆合併目的の場合のデューデリ
 なお、M&Aでも、有価証券の取得が目的ではなく、企業の合併を目的とする場合があります。合併を目的として実施したデューデリジェンス費用は、一時の損金として処理することになります。これは、合併が適格合併に該当するか否かで異なる取扱いとなるものではありません。
 理由は、合併が、被合併法人の権利義務を合併法人に包括的に承継させるものであることや、デューデリジェンス費用が、合併により移転を受ける個々の減価償却資産や棚卸資産を合併後の事業の用に供するために直接要した費用に該当するとは考えられないからです。

《コラム》金融検査マニュアルの廃止

金融検査マニュアルとは、銀行など金融機関の経営を監督するための指針です。バブル崩壊後の不良債権処理に効果を発揮しました。債権先を「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に分類し、分類に応じた引当金を求めるものでした。再生局面の中小企業は事業再生計画の策定において、自社がどの債務者区分に分類されているかを把握する必要があることから、馴染みになった会社もあるかと思います。

◆廃止は事業性評価融資の促進
 金融庁が2019年12月を目標に従来の検査マニュアルの廃止を明らかにしました。今は廃止後の検査・監督について意見を求めている最中ですが、中小企業に対してどう影響を与えるのでしょうか。貸し倒れ費用を柔軟に計上するよう促すことも求められています。また、2014年の日本再興戦略改訂に、具体策の一つとして「地域金融機関等による事業性を評価する融資の促進等」が盛り込まれています。つまり、国としては、事業性を評価した融資が行われるように促進する方針がすでに出ています。

◆評価に活用される指標
 中小企業の事業を評価する際に活用されるツールとしてローカルベンチマーク(通称:ロカベン)があります。これは企業の経営診断を行うことを目的に、企業の経営者や金融機関、支援機関等が企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための道具で、事業性評価の入口になると期待されるものです。
 具体的には、財務情報として①売上高増加率、②営業利益率、③労働生産性、④EBITDA有利子負債倍率、⑤営業運転資本回転期間、⑥自己資本比率の数値に着目します。非財務情報としては①経営者、②関係者、③事業、④内部管理体制について着目することによって企業の経営状態の変化に早めに気づき、早期の対話や支援につなげていくものです。

◆金融機関の対応変化に注意
 マイナス金利政策が続く中、統廃合等金融機関を取り巻く環境が大きく変化しています。金融検査マニュアルの廃止をきっかけにして、お付き合いのある金融機関の対応が大きく変化するかもしれません。

(前編)地方税共通納税システムが、10月1日より稼働へ!

地方税共通納税システムが、2019年10月1日より稼働され、これにより複数の自治体への納税が一度の手続きで済むようになります。
 また、全ての都道府県、市区町村へ自宅や職場のパソコンから電子納税ができます。

 現在の納税手続きの多くは、地方公共団体が 送付した納付書に基づいて、金融機関等の窓口を通じて行われ、手続きが煩雑、納税者、地方公共団体それぞれに事務負担が大きいとされていました。
 また、既存の電子納税は一部の団体のみが対応しており、それぞれに電子納税する必要がありました。
 それに対して、地方税共通納税システムは、
①全地方公共団体へ電子納付が可能
②電子申告と合わせて申告から納税まで一連の手順で行える
③複数の地方公共団体への一括納付により、納付事務の負担が軽減される
④ダイレクト納付が可能
⑤地方公共団体が指定する金融機関以外からも納付が可能などの特徴があります。

 地方税共通納税システムで取り扱う税目は、稼働当初においては現行のeLTAX電子納税の取扱税目を対象とし、将来的には、賦課税目等の追加も検討するとしております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年8月5日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

【時事解説】銀行員と決算書 その2

この事件の報道を聞いて私が驚くのは、決算書の正確性をなにより大切にすべき銀行員が、決算書の数値は自分が望むように操作できると思っているという決算書に対する認識の甘さです。
 この不正に関わっていた個々の職員がどのような心の葛藤があったのかは分かりません。周りがやっているからということで何の迷いもなく決算書の改竄に手を染めたのか、あるいは上司に言われ、不本意ながら本当にやむを得ず、断腸の思いで不正に加担してしまったのか。もし前者だとしたら、銀行員の決算書に対する意識の低さに唖然としますし、彼らに対して改めて会計の倫理教育の徹底が必要となります。もし後者だとしたら、個人の正義感をも押し殺してしまう、組織と個人のあり方を問い直さなければなりません。

 現在、AI(人工知能)が取って代わることのできる職務は何かということが雑誌などで盛んに特集されています。銀行の融資業務もAIで代替できる業務の一つとして取り上げられていますが、銀行のメイン業務である融資がAIに代わることの抵抗感は銀行及び銀行員の間では根強いはずです。融資がAIには代替できない理由の一つは、AIでは機械的な冷たい融資判断となるが、人間であれば、決算書の数値の行間を読んだ、柔軟な融資判断ができるという点にあります。しかし、柔軟な融資判断に、粉飾による不正な融資までも含まれてしまうとすれば、AIに冷徹に融資判断してもらった方がいいと言われても反論はできないでしょう。

 今回の不正事件は銀行員のレーゾンデートル(存在意義)を揺るがす重大事件であるとの認識を銀行員は持たなければならないと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

《コラム》仮払金は早めに精算を!

仮払金とは、現金や預金などによる実際の支払いを一時的に処理するために用いられる勘定科目です。未確定のものを一時的に計上するための仮払金が長期間精算されない場合、給与や貸付金として認定される可能性があることから処理については留意が必要です。

◆渡切交際費の給与認定
 交際費として一定額の金銭を役員や従業員に支給し精算を行わない渡切交際費の仮払金は、その支給を受けた役員や従業員の給与等に該当することとなり、源泉徴収の対象となります。また、受け取り側である役員や従業員にとっては、給与所得として所得税や住民税の課税対象となるため、税負担が増えることとなります。
 支給対象者が役員の場合、渡切交際費が毎月定額であればその金額も定期同額給与の一部として取り扱われ、損金算入が可能ですが、不定期に渡切交際費を出す場合には、臨時的な役員報酬として、事前確定届出給与の届出を提出していない限り、損金不算入となりますので注意しましょう。

◆貸付金と判断される場合
 長期間にわたり精算していない役員などへの仮払金は、実質的に貸付金と判定され、受取利息相当額(認定利息)を計上するよう税務署から求められることがあります。
 利息相当額の計算は、会社に金融機関等からの借入金がある場合には実際の借入金の利率とし、その他の場合には利子税の割合の特例に規定する特例基準割合による利率によって評価することとされています。

◆金融機関からの融資にも影響が
 社長などへの仮払金で常態化、長期化しているものがある場合、税務上問題となるだけではなく、金融機関から融資を受ける際にマイナスとなる可能性もあります。
 社長や役員、その親族への仮払金は、会社のお金を個人で使う公私混同とみなされたり、経費計上せずに資産計上することによる赤字隠しの手口と疑われたりして、評価を下げる要因となります。
 仮払金は、税務面・信用面を考慮して早い時期に適正な勘定科目で処理することが求められます。