(後編)AIを活用した税務相談「チャットボット」の利用を呼びかけ!

(前編からのつづき)

 なお、国税庁は、チャットボットの利用にあたり、注意事項として、
①チャットボットは、AI(人工知能)を活用したシステムによる自動応答で、有人によるチャットではないので、質問の意図をAIが認識しない場合には、表現を変えて再度入力する必要があること
②個人情報は入力しないこと
③所得税の確定申告又は年末調整に関して相談が多い事項に対応しているので、全ての質問に対応しているわけではないこと
④2020年分には対応しているが、過去の年分には対応していないこと
⑤日本国内の居住者に適用される所得税を前提にしており、非居住者には対応していないこと
⑥回答は一般的な事項について説明していることから、質問の前提となる事実関係により取扱いが異なる場合があること
⑦回答は、専門用語を一般的な用語に置き換えて説明している場合があり、回答に不明な点がある場合には、タックスアンサー等で確認することなどを挙げておりますので、ご利用される方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和3年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)AIを活用した税務相談「チャットボット」の利用を呼びかけ!

国税庁では、所得税の確定申告や年末調整に関する疑問は、チャットボットである税務職員ふたばに気軽に相談するよう呼びかけております。

 チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、質問したいことをメニューから選択するか、自由に文字で入力すると、AI(人工知能)を活用して自動で回答します。
 医療費控除や住宅ローン控除など問い合わせが多い質問についても、入力すると自動回答されますので、該当されます方はご利用ください。

 所得税の確定申告に関する相談は、確定申告の手続きを始め、給与所得、年金の所得、配当所得、株式の譲渡所得、医療費控除、住宅ローン控除、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除(ふるさと納税)、雑損控除、寡婦・ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者(特別)控除、扶養控除、基礎控除、e-Taxや確定申告書等作成コーナーの操作、2020年分の税制改正に関することなど幅広く対応しております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和3年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

奨学金の代理返済で節税効果

学生時代に借りた奨学金を本人に代わって勤務先企業が返済できる新制度を、日本学生支援機構が4月にスタートさせます。代理返済をした企業にとっては、援助した金額を損金に算入して節税できるほか、同機構のウェブサイトで社名を公表することで社会貢献のPRにもつながります。

 多額の返済負担が社会人となってからの生活を圧迫するケースは珍しくありません。機構の調査によれば、奨学金を返済している社会人は現在450万人いて、そのうち5人に1人が返済を滞納したことがあるそうです。延滞した理由は「家計の収入が減った」が67.1%で最も多く、その後も延滞を継続してしまう理由は「本人の低所得」が64%と群を抜いていました。返したくても返す余裕がないという若者は多い状況です。

 奨学金の返済苦が社会問題化していることを受け給与に上乗せする形で返済を支援する企業も増えつつあります。しかしこのやり方では、会社側は支援分を給与として損金に算入できますが、支援を受けた本人は所得税の負担が増えてしまいます。

 今回、機構が打ち出した制度では、企業が機構に直接返済をできるようにするというものです。従来のやり方に比べて、本人の給与とならないため所得税が非課税となる点が特徴。また会社にとっては代理返済した分が損金となるため、法人税の節税になることに加え、制度に登録した企業は機構のホームページで公表されるため、社会貢献のPRになり、優秀な人材確保につながるなどのメリットがあります。そして何より、社員本人の返済不安を解消することで業務に与えるポジティブな影響が一番の恩恵かもしれません。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)持続化給付金の給付対象と申請期限に注意!

(前編からのつづき)

①確定申告書・第一表における「収入金額等」欄(「総合譲渡」、「一時」を除く)のうち、「雑・その他(ク)」又は「給与(カ)」欄に含まれる「業務委託契約等に基づく事業活動からの収入」が、他の収入区分を含めた中で最も大きいこと
②確定申告書・第三表の「収入金額」欄(譲渡所得、退職所得の収入を除く)に、事業活動からの収入が含まれる「雑・その他(ク)」又は「給与(カ)」より大きい収入がないこと

 そして、中小法人や事業所得のある個人事業者等と同様に、売上の減少要件があり、2020年1月から12月までの任意のひと月(対象月)における業務委託契約等の収入(売上)が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2019年の月平均の同収入と比較して50%以上減少していることが要件になります。

 なお、会社等に雇用されている人(サラリーマン、パート・アルバイト・派遣・日雇い労働等を含む)や、被扶養者は給付対象になりませんが、2019年中に独立・開業した場合は対象になる可能性がありますので、該当されます方はあわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和2年12月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》保険料控除証明書を電子データで取得する方法

◆政府の旗振りで年末調整もオール電子化?
 平成30年度税制改正により、令和2年分の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等について、勤務先へ電子データにより提供できるよう手当されたことなどを受けて、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施されています。
 たしかに、電子化されれば、従業員は控除証明書等をデータで取得し、保険料控除等申告書もデータで作成して自動計算され間違いがなくなる、勤務先においてもデータをもとに年税額を自動計算し、データの紙保管も不要となる等、良いことずくめです。はたして、現状はどうでしょうか?

◆保険会社側の電子データ提供の状況(8社)
 11月末日の時点で、保険会社からの保険料控除証明書の電子提供は、8社から行われています。9月23日現在42社ある保険会社のうちの8社ですから、大手で提供があるとはいえ、まだまだカバーできていません。加入する保険会社が未対応ですと、後述する他の準備は万全でも、電子データでの資料準備はかなわないことになります。

◆従業員側の電子データ取得の環境準備
 保険会社から控除証明書を電子データで受け取るには、政府が運営するオンラインサービスであるマイナポータルを使わなければなりません。手順は下記の通りです。
(1)マイナンバーカードの取得
 マイナポータル利用のためには、マイナンバーカードの取得が必須です。顔写真を撮影し、交付申請をして、市区町村が交付通知書を発送するまで、概ね1か月程度かかっており、ここが一番のハードルかもしれません。特別定額給付金(10万円)申請等ですでにマイナンバーカードを取得済みの方は、すぐに(2)に着手できます。
(2)マイナポータルの利用
 他のサイトをマイナポータルと一体的に使えるようになる「もっとつながる」から、「e-私書箱(野村総合研究所)」とつながり、「つながる」サービスで、保険会社から保険料控除証明書の電子データを入手できるようになります。自身が加入している保険会社の対応が終わっていれば、いままでのはがき等の紙の証明書から電子データに移行できます(勤務先での電子対応が大前提)。
 少し前まで、国が、キャッシュレス化推進やマイナンバーカード取得とマイナポータル利用促進のキャンペーンを行っていましたので、環境が整っている方は意外と多いかもしれません。踏み出してみましょう。

 

《コラム》令和2年の年末調整 紙の場合の変更点

◆とても長い名前になってしまった用紙
 年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。各種「控除申告書」を経理担当者等に出すことになりますが、去年は「給与所得者の配偶者控除等申告書」という名前だった用紙が、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という、とても長い名前に変わりました。なお、「給与所得者の保険料控除証明書」に変更はありません。

◆基礎控除変更と所得金額調整控除新設
 基礎控除は令和2年から、所得によって減額が行われるようになりました。控除額は、所得金額(給与所得控除後の金額+給与所得以外の所得額)が、
2,400万円以下   48万円
2,400万円超2,450万円以下  32万円
2,450万円超2,500万円以下  16万円
2,500万円超 基礎控除は     0円
に変更となります。
 所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える給与所得者で、
①本人・同一生計配偶者・扶養親族いずれかが特別障害者
②年齢23歳未満の扶養親族が居る
①か②のどちらかの条件を満たしていれば(給与収入金額-850万円)×10%=控除額となります。
 なお、給与所得と年金所得の両方がある方は、確定申告で所得金額調整控除を受けられますが、年末調整は給与収入の税額の調整を行うものなので、この控除申告書では計算をしません。

◆電子申請の方が楽?
 今年の年末調整は、国税庁が無料ソフトを提供している上に、会計ソフト会社等も、使いやすい年末調整・法定調書等の作成ソフトを販売しています。例えば国税庁のソフトでは、従業員入力を分かりやすくするために、最初に簡単な質問の「はい・いいえ」で入力項目の絞り込みを行う等して、とても長い名前の紙の控除申告書の入力が必要な部分のみを表示してくれます。

《コラム》扶養の「壁」を超えた時、目指す収入額と使える制度

◆「扶養内で働く」とは
 共働きの世帯では、夫・妻ともに正社員のフルタイマーで働いているケースもあれば、片方が会社員としてフルタイムの勤務をし、片方がパートやアルバイト等の短時間労働をしながら家事や育児、介護等を担っているケースもあります。
 ところで、会社員やアルバイト・パートの勤務経験がある方ならば、夫や妻の扶養控除を受けてパート等で働く際に「扶養内で働く」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
 これは、「扶養控除が受けられる範囲の中で働く」という意味で、収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が発生し家計全体の手取り額が減ることがあるため、その一定額以下の収入となるよう勤務時間や収入を調整して働くことを指しています。

◆税金の「壁」、社会保険の「壁」
 扶養控除には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあります。
 税金や保険料が発生する一定収入のラインを年収の「壁」と呼ぶことがあります。
 年収が103万円を超えると、税制上の扶養から外れて、超えた額に対する所得税を自分で納める義務が発生します。
 また、従業員が501人以上の会社で働く人は年収106万円、500人以下の会社では年収130万円以上になると、社会保険上の扶養から外れて、健康保険料や年金保険料を負担する必要が出てきます。
 ただし、社会保険の加入には条件があり、年収で被扶養者から外れても、労働時間が短い等の理由で自分の職場の厚生年金と健康保険に加入できない場合は、国民年金と国民健康保険に加入することになります。

◆「壁」を超えても損しない収入のラインは
 では、配偶者控除の「壁」を超えて勤務をするとしたら、具体的にはどのくらいの収入ならば税金や社会保険料を支払ってでも勤務をしたほうが、家計全体の収入が増加するのでしょうか。
 結果的には130万円の収入を超えて、自分で社会保険料や年金保険料を払い、所得税や住民税の負担もあると考えると、目安として180万円以上働かないと、家計の手取りは減ってしまいそうです。
 ただ、保険料の負担は大きくとも、会社の社会保険と厚生年金に加入できれば将来受け取る年金が増え、病気で休職した際に健康保険の傷病手当金の給付、会社を辞めても雇用保険の失業給付が受け取れるなど大きなメリットもあります。

《コラム》交際費の損金不算入制度

◆交際費課税の現状
 現在の交際費課税は以下のようになっています。
① 大前提として1人5,000円以下の飲食等については、交際費としなくてもよい。
② 資本金が1億円以下である法人は、交際費の50%を損金に算入するか、800万円までを損金に算入するかのどちらかを認める。
③ 資本金が1億円を超える法人は、交際費の50%を損金に算入することを認める。
④ 資本金が100億円を超える法人は交際費の損金算入は一切認めない。
 何をもって交際費とするかは諸説ありますが国税局は以下のように言っています。
「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」

◆企業は交際費をどれくらい使っているの
 国税局の最新(平成30年)の統計情報によれば、1億円以下の法人は、1社平均90万円弱です。それに対し1億円超の法人は1社平均1,000万円強です。全額否認される100億円超の法人は1社平均1億500万円です。全体の数字では圧倒的に数の多い1億円以下の法人が多いですが、1社当たりで見るとかなりの開きがあります。
 1億円以下の法人は800万円までの損金算入で十分かと思われますが、1億円超の企業は交際費の損金算入が認められれば、もっと交際費は増えると思われます。

◆コロナで飲食店は大打撃
 ご存知のように、コロナ騒ぎで飲食業界は大きく売上げを落とし大打撃を被っております。特に接待を伴う飲食店の打撃は大きなものがあります。
 景気が良くなるとはお金が実体経済でたくさん循環することです。
 本来交際費の損金不算入制度は、政策的な制度です。景気の動向を見て数年に一度は限度額や制度そのものを変更してきました。Go To Eatも結構ですが、この際交際費の損金不算入制度の見直しをしてもよいのではないかと思われます

《コラム》より拡充されるiDeCoとiDeCo+

iDeCo(イデコ)とiDeCo+(イデコプラス)の制度がより拡充されています。

◆iDeCo(イデコ)とは
 iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です。iDeCoは加入者が自分で申し込み、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで掛金を運用します。
 iDeCoでは、掛金を払い込むと所得控除の対象となり、運用期間中の運用益は非課税とされ、そして給付を受け取るときには退職金又は公的年金として扱われ、税制上の優遇措置が講じられています。

◆iDeCo+(イデコプラス)とは
 iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)とは、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金)を実施していない中小企業(従業員300人以下に限る)の事業主が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、iDeCoに加入している従業員が拠出する加入者掛金に追加して、掛金を拠出できる制度です。
 事業主が拠出した掛金は、全額が損金に算入され、こちらも税制上の優遇措置が講じられています。実際に導入するには労使で合意し、イデコの実施主体である国民年金基金連合会に届け出る必要があります。

◆改正点
①iDeCoの改正
 これまでiDeCoでは60歳未満の国民年金被保険者が加入可能でしたが、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、2022年5月からは国民年金被保険者であれば加入可能となりまました。これにより60歳以上のiDeCoについては、国民年金の第2号被保険者又は国民年金の任意加入被保険者であれば加入可能となります。また、これまで海外居住者はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。
②iDeCo+の改正
 2020年10月から、従業員要件が100人以下から300人以下に拡大されました。これにより加入可能者が一気に4割増え、2253万人に増えるそうです。

《コラム》 解明待ちの「土地の上に存する権利」

◆小規模宅地特例と配偶者敷地利用権
 相続税に於ける小規模宅地特例は、「土地又は土地の上に存する権利」について適用されるとしているので、配偶者居住権に基づく敷地利用権が「土地の上に存する権利」に該当しなかったら、小規模居住用宅地特例の対象にはなりません。

◆昨年、令和元年度政令改正
 昨年は、租税特別措置法では配偶者居住権について特別な改正をしていません。それにも拘わらず、配偶者居住権に基づく敷地利用権は小規模居住用宅地に当然に該当すると考えられたらしく、その計算規定が政令に、新規挿入されています。
 法改正なしでの政令規定新設の理由が財務省「税制改正の解説」で確認できます。すなわち、配偶者居住権は、借家権類似の建物についての権利であるが、配偶者居住権に付随するその目的となっている建物の敷地を利用する権利(敷地利用権)については、当然に「土地の上に存する権利」に該当すると理解されるから、ということのようでした。

◆今年の、令和2年度税制改正の解説
 ところが、同じ、財務省「税制改正の解説」の今年度版(9月11日公開)には、対価を伴う配偶者居住権の消滅には譲渡と同じ効果がある、所得としては総合課税の譲渡所得と考えられる、配偶者敷地利用権は「土地の上に存する権利」には該当しない、と書かれています。
 配偶者敷地利用権は、土地に関係する権利ではあるが、鉱業権・温泉利用権・借家権の仲間であり、「土地の上に存する権利」と言われる借地権の仲間ではない、ということです。
 昨年と今年で明らかに相違しており、この相違に問題が無い、との解説は今のところ出ていません。

◆土地の上に存する権利と相続税・所得税
 昨年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は相続税の改正の項目に関するものでした。今年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は所得税の改正の項目に関するものでした。
 相続税では、配偶者敷地利用権は土地の上に存する権利に該当するとされ、所得税では扱いが異なり、土地の上に存する権利には該当しない、とされたことについて、誰しもが疑問としているところなので、解明が待たれるところです。