《コラム》領収書から医療費通知書へ

◆医療費控除の要件
 医療費控除を所得税の確定申告で受けるには医療費の領収書の添付又は提示が必要で、特にその明細一覧表の作成は義務ではありませんでした。それが、平成29年の税制改正で、医療費領収書の添付又は提示が不要となり、その代わりに、医療費控除の明細書を作成し、添付することになりました。ただし、領収書の5年間の保存義務があります。

◆医療費控除の明細書
 医療費控除の明細書には、医療費年額、受診者名、医療機関名、その他参考事項の4項目を記載することとなっており、特に各項目別に分別記載することは要求されていません。ただし、国税庁の用意している「医療費控除の明細書」では、各項目を分別してそれぞれの年合計を書くという形式になっています。

◆医療費通知書がある場合
 医療保険機関から交付を受けた医療費通知書がある場合には、その医療費通知書を添付すると医療費控除の明細書の作成添付はしなくて済みます。医療費通知書には、①被保険者名、②受診年月、③受診者名、④診療機関名、⑤窓口負担額、⑥保険者名、が、受診の都度毎、書かれているので、領収書保存義務もありません。

◆実態は混合型
 ところが、医療費通知書の発行は、診療等の後、しばらく遅れるので、年の後半分については、確定申告期限に間に合わないことが多いようです。実態は、医療費通知書のみの添付で済ますことが出来ず、通知不足分については、医療費控除の明細書を作成することになります。また、保険適用外の医療費については、当然ながら、医療費控除の明細書への記載しか方法はありません。窓口実負担と記載負担額が異なることもあり、実負担が原則です。

◆未来のIT化と今年最後の添付方式
 でも、この改正からは、当局の領収書管理事務からの解放も含め、制度も、手続も、IT時代にふさわしい進化を進めようとしている意志を感じさせられるところです。
 医療費通知書の発行を早め、確定申告期限に間に合うようにする努力が続けられることと思われます。ただし、令和元年(2019年)分の確定申告での医療費控除は、経過措置として、領収書を添付し医療費合計の直接記載で済ませてもよい、ことになっています

(後編)2019年分の所得税確定申告:スマートフォンでの利用範囲が拡大へ!

(前編からのつづき)

 ただし、マイナンバーカード方式はパソコン使用者のみが利用できるもので、スマートフォンを利用してマイナンバーカード方式でe-Taxを行うには「マイナンバーカード対応のスマートフォン」が必要となります。
 なお、マイナンバーカード対応のスマートフォンを持っていなくても、「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたID・パスワードがあればe-Taxで送信できます。

 また2019年分から、所得税の確定申告書作成コーナーのスマートフォン専用画面を利用できる範囲が広がり、これまでは給与所得者(年末調整1ヵ所)だけでしたが、2019年分からは2ヵ所以上の給与所得がある人、年金収入や副業等の雑所得がある人、一時所得がある人なども対象になります。
 対応可能な所得控除も、これまで医療費控除と寄附金控除だけでしたが、すべての所得控除が対象になります。
 なお、スマートフォン専用画面が利用できるのは2019年分のみで、マイナンバー制度以外のサービスは2020年1月6日から開始予定ですので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年12月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)2019年分の所得税確定申告:スマートフォンでの利用範囲が拡大へ!

2019年分の確定申告の時期になりました。
 「国税庁ホームページ」の確定申告書等作成コーナーにおいて、画面の案内に従い、金額など正しく入力すれば、自動計算されますので所得税、消費税及び贈与税の申告書や青色申告決算書・収支内訳書等を作成できます。

 2019年分の確定申告書等作成コーナーでは、スマートフォンやMicrosoft Edgeからマイナンバーカードを利用したe-Tax送信の「マイナンバーカード方式」が2020年1月31日から開始予定です。
 マイナンバーカード方式とは、マイナンバーカードとICカードリーダライタを利用してe-Taxを行う方法です。

 e-Taxにログインする際に、マイナンバーカードを利用することで、e-Taxの利用者識別番号と暗証番号の入力やe-Tax利用の際の事前準備に必要でした電子証明書の登録も不要になります。
 ICカードリーダライタはマイナンバーカードの電子証明書の読込みに必要となるもので、家電量販店などで購入できます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年12月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》令和2年より適用 青色申告特別控除額の変更

◆青色申告特別控除額が変わります
 青色申告特別控除とは、不動産所得又は事業所得が発生する事業を営んでいる方で、正規の簿記の原則により記帳している、貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付している等、各種条件をクリアしている場合に受けられる所得控除です。65万円控除と10万円控除が存在します。
 令和2年より、従前の65万円控除が基礎控除の引き上げに伴い、55万円へと減少します。10万円控除の金額には変更がありません。

◆電子申告か電子帳簿保存で減税に!
 令和2年からの青色申告特別控除には、もう1段階上の青色申告特別控除が設けられます。55万円の控除を受ける条件をクリアして、その上で「e-Taxで決算書を提出する」又は「電子帳簿保存法に対応する会計ソフトを用いて記帳し、かつ電子帳簿保存法の承認申請書を税務署に提出している」のどちらかに当てはまれば、改正適用後でも青色申告特別控除として65万円の所得控除が受けられますので、基礎控除の10万円増加と併せてみると減税になります。

◆承認申請書の提出期限にご注意を
 e-Taxについては、すでにご存じの方も多いとは思いますが、インターネットを利用して電子的に申告書や青色申告決算書のデータを作成し、送信することです。
 電子帳簿保存とは、一定要件の下で、帳簿を電子データのままで保存できる制度です。この制度の適用を受けるには帳簿の備付けを開始する日の3か月前の日までに申請書を税務署に提出する必要があります。また、原則として課税期間の途中から適用することはできませんが、令和2年分に限っては、令和2年9月29日までに承認申請書を提出し、同年中に承認を受けて、12月31日までに、仕訳帳及び総勘定元帳の電磁的記録による備付け・保存を行えば、65万円の控除を受けることができます。
 提出か保存、どちらかを電子的に行えば10万円の所得控除の上乗せができますが、まだ導入されていない方は、今のうちからどちらかに対応できるように計画を立てておくと良いでしょう。

《コラム》源泉控除対象配偶者と同一生計配偶者

◆扶養控除等申告書を良く見てみると
 年末調整の時期に配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、会社が来年の源泉徴収をいくらにするのかを決めるための用紙です。
 この中に、「源泉控除対象配偶者」「同一生計配偶者」と、あまり聞きなれない単語が出てきます。1つずつ見てみましょう。

◆源泉控除対象配偶者とは
 源泉控除対象配偶者は、その名の通り「源泉控除されるべき配偶者」です。控除を受ける本人の令和2年中の所得の見積額が900万円以下であること、配偶者の令和2年中の所得の見積額が48万円以下で、配偶者控除が適用になるか、見積額が95万円以下で、配偶者特別控除額が最高額である人が対象です。
 この説明で、経理のご担当者様などは「あれっ?」と思ったかもしれません。令和元年までであれば配偶者控除の場合は所得の見積額は38万円以下、配偶者特別控除が最高額である人の所得の見積額は85万円というのがボーダーラインでしたが、令和2年からの税制では、基礎控除が基本的には10万円上がり、給与所得控除が基本的には10万円下がるため、配偶者控除等の判定に利用する「所得額」も10万円引き上げて考えるようになりました。

◆同一生計配偶者とは
 同一生計配偶者は、控除を受ける本人の所得は問わず、配偶者の令和2年の所得の見積額が48万円以下の人です。
 本人の所得が多く、配偶者控除が受けられない場合、「源泉控除対象配偶者」のカウントには入らないのですが、所得の少ない配偶者分の障害者控除は受けるため、この区分が必要となります。

◆忍び寄る令和2年の恐怖?
 先に触れたように、令和2年から基礎控除や給与所得控除・年金所得控除の改正が適用されます。所得が2,400万円を超えると基礎控除は減ってゆきますし、給与収入は850万円を超えると基礎控除の上昇を加味しても、令和元年の水準より下がります。また所得の種類や「子育て・介護」等の条件付けによって額面が変動するようになるため、来年の年末調整の用紙はもう1枚追加となるようです。ややこしいですね。

 

《コラム》令和2年より適用 給与所得控除と基礎控除の変更点

◆給与収入850万円までは変化無し
 令和2年より、給与所得控除と基礎控除が変更となります。内容としては基本的に、
①基礎控除は10万円引き上げる
②給与所得控除は10万円引き下げる
となっています。
 しかし、給与所得控除は改正により「給与収入が従来1,000万円だった限度額が850万円で上限」となりますので、給与収入が850万円以上の方には増税となります。
 なお、23歳未満の扶養親族がいる子育て世帯や、特別障害者を扶養している世帯に関しては、従来の給与所得控除より10万円下げるに留まるように「所得金額調整控除」を創設して、基礎控除の10万円上昇と併せて、給与収入が850万円を超える人でも、負担が増えないような措置が取られています。

◆所得が多い人にはさらに増税に
 基礎控除は、合計所得金額によって減少・消失するようになります。
 合計所得金額が2,400万円以下であれば、令和元年までの額より10万円アップの48万円、2,400万円超~2,450万円までは32万円、2,450万円超~2,500万円までは16万円、2,500万円超は0円となります。基礎控除の減少・消失に関しては子育て世帯や特別障害者を扶養している世帯であっても、所得金額調整控除は行われません。
 令和2年の給与所得控除の最大額は195万円ですから、給与のみの方の場合、収入が2,595万円以上であると、基礎控除の減少・消失の影響で増税となります。

◆公的年金等控除も同様の措置
 給与所得控除と同様、令和2年より公的年金等控除も基本10万円の引き下げですが、公的年金等収入1,000万円の控除額195.5万円が上限となります。また、公的年金以外の所得が1000万円超ある場合はさらに10万円の引き下げ、2,000万円超ある場合は20万円の引き下げが行われます。

◆給与と公的年金が両方ある場合の措置
 給与収入と、公的年金等収入の両方がある方の場合、合計20万円の控除額の減少とならないように、「所得金額調整控除」によって、10万円を給与所得の金額から控除するようになります。

 

(後編)還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出が可能!

(前編からのつづき)

 これらの所得について源泉徴収された所得税は、源泉分離課税になっていますので、確定申告によって還付を受けることはできません。
 また、源泉分離課税制度は源泉徴収だけで課税関係が終了しますので、他の所得と合算して確定申告する必要がありません。

 すでに還付申告をしている人が、その申告した年分について、還付を受けるべき税金を少なく申告してしまった場合には、還付申告ではなく、更正の請求という手続きにより納めすぎの所得税の還付を受けることができます。
 この更正の請求をできる期間は、原則として還付申告書を提出した日から5年以内とされており、提出先は、納税地を所轄する税務署長です。

 なお、所得税の額から控除しきれなかった住宅借入金等特別控除額がある場合、翌年度分の個人住民税額からその控除しきれなかった金額を控除できる場合があり、適用を受けるためには、年末調整によりこの制度の適用を受けている場合を除き、原則として翌年3月15日の確定申告期限までに住宅借入金等特別控除を受けるための確定申告書を住所地等の所轄税務署に提出する必要がありますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出が可能!

確定申告の義務がない人でも、源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税が還付されます。
 この申告を還付申告といいます。
 そして、還付申告ができるのは、その年の翌年の1月1日から5年間ですので、該当されます方はご確認ください。

 還付申告の例として、給与所得者のケースでは、
①年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納めすぎとなっているとき
②一定の要件のマイホーム取得などをして、住宅ローンがあるとき
③マイホームに特定の改修工事をしたとき
④多額の医療費を支出したとき
⑤特定の寄附をしたとき
⑥災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
⑦特定支出控除の適用を受けるときなどに還付申告をすることができます。

 ただし、還付を受けることができない所得もあります。
 例えば、預貯金の利子や特定の金融類似商品の収益、一定の割引債の償還差益や一時払養老保険の差益などが該当します。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)国税庁:台風第19号による被害者に申告・納税等の特例を公表!

(前編からのつづき)

(4)災害により被害を受けた事業者が、その被害を受けたことにより、災害等の生じた日の属する課税期間等について、簡易課税制度の適用を受けることが必要となった場合、又は適用を受けることの必要がなくなった場合には、所轄税務署に申請、承認を受けることにより、災害等の生じた日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けること、又は適用をやめることができます。
 例えば、災害によって事務処理能力が低下したため、一般課税から簡易課税への変更が必要になった場合や、棚卸資産その他業務用の資産に相当な損害を受け、緊急な設備投資を行うため、簡易課税から一般課税への変更が必要になった場合などに適用されます。

 上記のように、災害により被害を受けた場合に受けられる手続き等は数多くありますので、国税庁では、被害状況が落ち着いたら、まずは最寄りの税務署へ相談するよう呼びかけております。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:台風第19号による被害者に申告・納税等の特例を公表!

 国税庁は、「台風第19号により被害を受けられた皆様方へ」と題して、災害による被害を受けた際の申告・納税等に関する手続等を同庁ホームページ上に公表しております。

 それによりますと、災害により被害を受けた場合には、以下の申告・納税等に係る手続等を説明しております。
(1)災害による交通途絶等により期限までに申告・納税等をできないときは、所轄税務署に申請、承認を受けることにより、その理由の止んだ日から2ヵ月以内の範囲で期限延長されます。
 例えば、毎月10日が納付期限の源泉所得税及び復興特別所得税の納付について、災害により被害を受けたために期限までの納付ができない場合には、期限の延長を受ける手続きがあり、この手続きは期限が経過した後でも行うことができます。
(2)災害により財産に相当な損失を受けた場合は、所轄税務署に申請、承認を受けることで、納税猶予を受けられます。
(3)災害によって住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で所得税法に定める雑損控除か、災害減免法に定める税金の軽減免除のどちらか有利な方法を選ぶことにより、所得税の全部又は一部を軽減できます。
 また、給与等、公的年金等、報酬等から徴収される(又は徴収された)源泉所得税の徴収猶予や還付を受けられます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年11月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。