《コラム》進む!電子申告

◆平成30年分所得税等申告の件数
 国税庁は2019年5月30日に、所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況についてのまとめを発表しています。
 それによると、平成30年分の所得税及び復興特別所得税の申告をした人は2,222万人(対前年比+1.1%)、その中でe-Taxで申告書を提出した人(税理士による代理送信を含む)は542.5万人(+17.0%)となったそうです。特筆すべきは国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」を利用しe-Taxにより申告書を提出した人数が前年の61.5万人から124万人と約2倍に増加したことです。
 これは平成30年分の申告から「ID・パスワード方式」が始まり、マイナンバーカードとカードリーダーがなくてもe-Taxの送信が可能になった部分が大きいのでしょう。また、スマートフォン専用画面の提供も始めており、36.6万人がスマホやタブレットで申告書を作成・提出したとのことです。

◆大法人は今後電子申告が必須に
 令和2年4月1日以後に開始する事業年度からは、①内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人、②相互会社、投資法人及び特定目的会社に該当する法人は、法人税及び地方法人税・消費税及び地方消費税の申告については電子申告が義務となります。なお利用開始時には届出書を出す必要がありますので注意しましょう。

◆電子申告のメリット
 個人の申告では、夜間等でも申告データを送信できるので時間を問わない、紙を郵送する必要がないのでコストが安い、不備がなければ紙での申告より還付が少し早くなる、添付資料が省略できる場合がある等、電子申告にするメリットは十分にあります。
 また、法人の電子申告に際しても、各提出情報を効率的に保存できるように、イメージデータ(PDF)で送信された添付書類の紙原本の保存不要化、法人税申告書別表(明細記載を要する部分)のデータ形式をCSVでも受け付ける等、デジタル機器が普及した社会への適用が進んでいます。今後ますます、電子申告や周辺資料の送信環境は整備されるはずです。
 併せて会社の紙資料等の電子化も、検討してみてはいかがでしょうか。

(後編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!

(前編からのつづき)

 具体的には、建物(附属設備を含む)又は構築物および所得税法2条1項19号に規定する減価償却資産(機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品等)をいいます。
 一連の改正の背景には、会計検査院によりますと、小規模宅地等の特例を適用した者の中には相続後、短期間で宅地等を譲渡していた者が多数いたことが実態調査により明らかになったことを踏まえ、事業や居住の継続への配慮という政策目的に沿ったものとなっていないとの指摘がありました。

 具体的には、会計検査院は2017年11月、相続により取得した土地等の財産を相続税の申告期限の翌日以降3年を経過するまでに譲渡していた2,907人の適用状況を調査した結果、243人が小規模宅地等の特例を適用しており、そのうち相続人が相続税の申告期限から1年以内に譲渡していたものが約6割の163件あり、1ヵ月以内に譲渡していたものが22件ありました。
 相続税の特定事業用の小規模宅地等の特例の適用要件が、税制改正において、厳しく見直されておりますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

不動産の譲渡所得が9年連続増加

国税庁はこのほど、2018年に土地や建物を売った人の譲渡所得の合計金額が5兆円を超え、9年連続でプラスを記録したと発表しました。譲渡所得が伸び続ける背景には、近年続く地価の上昇傾向があり、土地の値段が上がるということは、相続税対策の重要性がますます高まっていることを意味します。

 昨年に確定申告書を提出した人のうち、土地や建物を売却して所得を得た人は35万3千人でした。その所得の合計金額は5兆328億円で前年から5.8%伸び、9年連続のプラスを記録しています。

 譲渡所得の伸びの背景にあるのは、近年の地価の上昇傾向です。国交省が3月に発表した最新の公示地価では、全国の地価は前年から1.2%上昇し、4年連続で上昇しました。住宅地ではリーマン・ショック以来、初の上昇に転じた前年からプラス幅を拡大し、地方圏では全用途でバブル期以来27年ぶりのプラスに転じるなど、これまでは都市部にとどまっていた地価の上昇傾向が、ついに全国に波及しつつあります。こうした全国的な地価の高騰が、そのまま土地・建物の譲渡所得の伸びにつながっていると言えます。

 地価の上昇はそのエリアの経済に好影響を与える一方で、不動産オーナーの相続対策という観点から見ると素直に喜べない面もあります。相続で受け継がれた土地が財産としての価額を計算される際には、公示地価や現場での取引相場などを基に算定されます。つまり地価の上昇は、そのまま相続税負担の増加となって表れるからです。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

仮想通貨の申告漏れ100億円

仮想通貨取引について、全国の国税当局が総出で税務調査を実施したところ、少なくとも50人と30社が総額約100億円分を申告していなかったことが明らかになりました。東京国税局が都内にある複数の仮想通過交換業者から顧客データを取り寄せて分析し、売却益が膨らんでいた個人と法人を抽出しました。このうち70億円以上は、親族や知人の名義による口座で取引したり、取引の記録を残していたにもかかわらず意図的に売却益を少なく見せかけたりしていて、重加算税の対象となる所得隠しに該当すると認定されました。特に高額なケースや悪質な事例は、検察当局に脱税容疑で告発することを検討しているそうです。

 また国税庁は、個人による2018年分の個人の確定申告で、仮想通貨(暗号資産)取引を含む「雑所得」の収入が1億円以上となった「億り人」が前年比で18%減の271人だったと発表しました。相場が下落基調だったことが響いたとみられます。一方、今年3月までの数年間で仮想通貨を巡って計約100億円の申告漏れが発生していたことも判明し、課税逃れが横行している実態が浮き彫りになりました。

 国税庁によると、18年分の所得税の確定申告を提出したのは2222万人で、所得額は計42兆1274億円でした。このうち公的年金以外の雑所得の収入が1億円以上あった465人を確認したところ、271人に仮想通貨取引による収入がありました。ただし仮想通貨の売却などで損益を確定し、確定申告を行った人だけであり、国税庁幹部は「申告していないケースが相当ある」とみています。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》ふるさと納税の見直し

◆2019年6月1日からの制度変更
 一部自治体のお礼の品は寄附に対しての割合が高すぎる、過度な競争が起きているとして、今年6月1日以降の寄附について、大臣が指定しない自治体に対しての寄附は、ふるさと納税における住民税の特別控除が適用されなくなります。

◆ふるさと納税適用外の自治体
 2019年6月1日以降、ふるさと納税の対象とならない団体は、東京都(申込書の提出が無かった)、静岡県小山町、大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の5団体です。6月から5団体への寄附については、一部Webサイト・報道等では「寄附金控除が適用されない」といった文言も見られますが、「ふるさと納税の特別控除の対象とはなりません」というのが正解です。
 実際には所得税の寄附金控除と住民税の寄附金税額控除(本則分)は適用されるため、適用外の自治体への寄附のすべてが控除されないというわけではありません。ただし、「2,000円でお礼の品がたくさんもらえる」のが売りの制度ですから、ふるさと納税から除外された自治体への寄附は「お得でなくなった」ので、「寄附が集まらなくなる」のは確実でしょう。

◆指定団体が2パターンある
 また、総務省のWebサイトでは今年6月1日から翌年9月30日までと、今年6月1日から今年9月30日までの自治体の2パターンの指定がされているのが確認できます。
 期間の短い自治体については2018年の調査で返礼割合実質3割超の返礼品を送付している・地場産品でないものを送付していると名指しされている団体が多いことから「対象期間が長いと適切でない」として4か月の指定とされているようです。指定が4か月の自治体は再度7月に総務省にふるさと納税の適用申出書を出すことになりますから、今後もふるさと納税の対象外となる自治体が出てくるかもしれません。
 「お礼の品やポータルサイト等の利用料を含め、ふるさと納税に係る経費は寄附金の5割以下とすること」というルールや、ヒアリングや追加資料提出依頼等がある旨の通達を鑑みるに、総務省はふるさと納税の運営基準の厳守を徹底しています。

ふるさと納税、4市町を排除

総務省は5月14日、ふるさと納税の新制度について、静岡県小山町と大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町を対象から外すと発表しました。地場産品ではない返礼品を展開し続けた自治体を排除することで、過剰気味だった返礼品競争に歯止めをかける狙いがあります。しかし地方の自主性を損ねることを懸念する声が上がる一方、返礼品の上限額を「寄付の3割まで」と明確化したことで、新たな競争に発展する可能性も出ています。

 新制度には4市町と参加を辞退した東京都を除く1783自治体が参加します。総務省は各自治体に寄せられた昨年11月~今年3月の寄付の状況を精査し、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限定しながら、約50億円と最も多く寄付を集めた北海道根室市をモデルケースに設定。アマゾンのギフト券や旅行券などを返礼品にしてこれを上回る額を集めた4市町の手法を問題視し、強制排除に踏み切りました。

 さらに、この4市町ほどではないものの不適切な返礼品を展開していた北海道森町や福岡県行橋市、大阪府熊取町など43市町村は今年9月までの4カ月だけ制度の対象に加えることにしました。小池百合子東京都知事は14日の記者会見で「4市町は罰のような意味合いを感じ取っているのではないか。縛り過ぎると『自ら治める』ではなくなる」と指摘しています。

 2008年にスタートしたふるさと納税は、そもそも寄付への返礼品を想定していませんでした。返礼品を巡る自治体間の競争が税収争奪戦の様相を呈し、総務省は頭を痛めてきたのです。一方、返礼品を用意しなかったり寄付に対する還元率が低かったりする自治体もあり、総務省幹部は「3割というボーダーラインを引いたことで、その枠の中でより競争が激化する恐れがある。自らまいた種とはいえ警戒が必要だ」と語りました。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》ついに法規制 2019年のふるさと納税改正

◆税制改正で過剰競争を抑制できるか
 ふるさと納税は通常の寄附金控除とは異なり、住民税を大きく引いてくれる特別な控除があるため、個人の所得や控除によって限度額はあるものの、通常は負担が2,000円で済むようになっており、自治体が「寄附のお礼の品」を用意することによって、お得な制度となっています。
 自治体はこぞって返礼率の高いお礼の品を用意し、総務省は過剰な競争を避けるべく、お礼の品についての指針を出すなどしたものの、一向に競争は治まらず、ついに今年の税制改正大綱で、法的に制限をかけることになりました。
 税制改正大綱によると、制限の内容は、①寄附金の募集を適正に実施する都道府県等②返礼品の返礼割合を3割以下とする③返礼品を地場産品にする、等です。総務大臣は、これらの基準に適合する自治体をふるさと納税の対象として指定するようになります。
 なお、この内容は2019年6月1日以後に支出される寄附に適用されます。

◆泉佐野市の乱?
 以前から出していた「お礼の品の返礼割合を3割以下にしてください」等の総務省の通知を無視していた自治体の中でも、泉佐野市は強固な姿勢でメディアを騒がせています。改正前の2月・3月に、お礼の品に加えて寄附額の最大20%のアマゾンギフト券を寄附者に贈るキャンペーンを展開しつつ、法制化についてのプロセスを「地方分権の理念に反しているのではないか」とメディア等を通じて批判しています。

◆総務省も強固な姿勢
 これに対して総務省も「過去の取組もさかのぼって自治体を評価し、6月以降のふるさと納税の指定を判断する」という奥の手を検討しているそうです。
 総務省としては、通知に従って3割以下の返礼割合とした自治体が割を食うような事態は避けたい、という気持ちもあるのでしょう。

 いずれにせよ、ふるさと納税制度の本来の目的であった「離れた故郷に自分の税金が払えるように」といった感情的な部分を思うと、こういった現状は少し寂しく感じてしまいますね。

経産省、軽減税率対応の周知に必死

10月に予定される消費増税と同時にスタートする軽減税率制度について、経済産業省は2月上旬、レジメーカーやシステムベンダーに対して制度の周知や対応を呼び掛けるよう協力を依頼しました。軽減税率の導入まで残り7カ月を切りましたが、これまで増税延期を繰り返してきたこともあって事業者の腰は重い状況です。

 経産省は、軽減税率の対象となる飲食料品などを扱う業種だけでなく全事業者で対応が求められることを踏まえ、準備を呼び掛けています。レジメーカーやシステムベンダーに向けた協力依頼書では、今年10月に増税が決定したことを踏まえ、営業活動やメンテナンスなどで顧客(事業者)を訪問する際など「あらゆる機会を通じた周知」を訴えるとともに、「中小企業・小規模事業者が軽減税率対応に取り組む気づきの機会を増やす」ことを重ねて訴えています。

 経産省の危機感の背景にあるのは、事業者に軽減税率制度への対応の必要性が認識されていない現状です。そのため同省は、仕入れや小売する商品が軽減税率対象であるかにかかわらず幅広く対応が必須だと強調するリーフレットを作成し、周知に努めたい考えです。リーフレットによれば、まず売る商品に軽減税率対象が含まれていれば、売り先が消費税の仕入税額控除をするため新制度に対応した請求書や領収書の発行が必要となります。また仕入れに軽減税率対象商品が含まれていれば、新制度に対応した請求書や領収書の保存と区分経理した帳簿が必要になるとしています。

<情報提供:エヌピー通信社>

被災建物の解体、自治体負担でも非課税

災害で被害を受けた家などを解体する際、その費用を自治体が負担しても所有者には所得税が課されないとする見解を、広島国税局が出しました。納税者からの質問に文書回答したもの。

 質問は、昨年7月に甚大な被害をもたらした西日本豪雨で被災した建物について、自治体が公費で解体撤去を行った時に、本来自分がやるべき解体撤去を自治体に肩代わりしてもらった所有者に経済的利益は発生しないのかという内容でした。

 広島国税局は、「非常災害時にあっても、損壊家屋の撤去などは原則として所有者が実施すべき」として、自治体が公費で解体撤去を行えば「所有者に撤去等に要する費用に相当する額の経済的利益が生ずる」との解釈を提示。その上で、所得税法や通達では、災害による損害に対する社会通念上相当の見舞金は所得税が課されないと規定されていることを踏まえ、二次災害の原因になり得る建物を自治体が撤去することは社会通念上相当と認められ、それによって所有者が受ける経済的利益に所得税は課されないとの見解を示しました。これは所有者が自治体に撤去を事前要請して実施してもらう場合でも、すでに自費撤去をした建物について後から費用を請求する場合でも共通するとのことです。

 ただし注意点として、自費で建物を撤去して後から費用を請求するケースでは、受けた損害の一部を所得から差し引く「雑損控除」を使う際、返ってきた金額分を差し引く必要があります。

<情報提供:エヌピー通信社>

ふるさと納税の返礼品にギフト券

2019年度税制改正大綱で、過度な返礼品への規制案が盛り込まれた「ふるさと納税」の周辺が再び騒がしくなっています。大阪府泉佐野市は返礼品に加えて寄付額の最大20%分をネット通販大手「アマゾン」のギフト券にして提供するキャンペーンを始めたと発表しました。ギフト券は10%分と20%分の2種類で、総額100億円分に達したら終了するとしています。市の特設サイトから3月末までの申し込みが対象です。

 寄付金集めの競争激化を抑えようと、政府は返礼品を「調達費が寄付額の3割以下の地場産品」に限るよう定め、6月以降は違反自治体への寄付は制度から除外する予定です。これに対し、泉佐野市は返礼品の調達額を寄付額の4割程度に設定し、17年度には全国首位の約135億円の寄付を集めていることから反発していました。

 中央政界からも規制緩和を求める動きが出始めました。公明党の山口那津男代表は記者会見で「市町村の狭い地域の産品を強要するのは少し固すぎる。ふるさと創生に資する、納税者の意思にも反しないあり方は柔軟であってもいい」と、「地場産品」の定義を市町村から県内などに広げるよう求めました。呼応する声は自民党内でもあるといいます。統一地方選や参院選をにらみ、市町村や利用者に配慮を示そうという動きとみられます。

 ただ、様々な思惑が交錯する中で、各々の「ふるさと」を応援するという制度本来の趣旨が顧みられることはほとんどありません。

<情報提供:エヌピー通信社>