ローン減税の控除期間3年延長

 2019年度の与党税制改正大綱が公表されました。消費増税に備えた経済政策の大きな目玉の一つが住宅ローン減税です。消費税率が引き上げられる2019年10月から20年末までの間に住宅を購入し、住み始めたマイホームについて、所得税や住民税の控除期間が現行の10年から3年間延長されます。

 現在の住宅ローン控除は、マイホームを購入した時に年末の借入残高の1%に相当する額を10年間、所得税などから控除される制度です。最大で1年あたり40万円、10年合計で400万円(長期優良住宅は500万円)が税額控除されます。

 今回の見直しでは、3年間の延長期間は建物価格の2%の金額が3年かけて還付されることとなり、4千万円の建物であれば、3年間の合計で80万円の控除が受けられることになります。ただし、①建物価格の2%を3等分した額と、②借入残高の1%の金額を比較して少ない方の額の減額となります。

 このほか増税に備えた対策としては、一定の条件を満たす購入者に一時金を渡す「すまい給付金」の拡充がすでに決定しています。現在は最大30万円を配っていますが、消費増税後は最大50万円に拡大されます。

<情報提供:エヌピー通信社>

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

仮想通貨に関する税務上の取扱い

はじめに
 近年、ビッグデータ、ソーシャルメディアなどのICTのサービス及びビジネスの進展等を背景にインターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨(例:ビットコイン、イーサリアム等)の取引が急増しているようです。
 こうした中、平成30年11月21日に「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)、以下単に「FAQ」といいます。」が国税庁から公表されました。
 そこで本稿では、公表されたFAQの概要と実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 所得税・法人税共通関係
1.仮想通貨を売却した場合
 保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その仮想通貨の売却価額から売却した仮想通貨の取得価額及び売買手数料等の経費の額の合計額を控除した金額とされます(問1)。
 なお、購入した仮想通貨の取得価額は、その支払対価に購入手数料等の付随費用を加算した金額とされます(問4)。
2.仮想通貨で商品を購入した場合
 保有する仮想通貨で商品を購入した場合には、保有する仮想通貨を譲渡したこととされ、その所得金額の計算は、前述した1と同様とされます(問2)。

Ⅱ 所得税関係
1.仮想通貨の所得区分
 仮想通貨取引により生じた損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得又は雑所得に区分されます(問7)。
2.仮想通貨の取得価額の計算方法
 仮想通貨の取得価額は、原則として「移動平均法」で計算することとされます。しかし、継続適用を要件に「総平均法」で計算することもできます(問11)。
3.仮想通貨の必要経費
 仮想通貨の経費の額は、その取引の記録に基づいて業務の遂行上直接必要であることが明らかに区分できるものとされます。例えば、インターネット及びスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の減価償却費が想定されます(問8)。
4.年間取引報告書の送付
 平成31年1月末までに国内の仮想通貨交換業者を通じた仮想通貨取引について、①年始数量、②年中購入数量及び金額、③年中売却数量及び金額、④移入数量、⑤移出数量、⑥年末数量、⑦損益合計、⑧支払手数料が記載された「年間取引報告書」が納税者(顧客)に対して送付予定とされています。
 なお、仮想通貨の売却・購入が外貨で行われていた場合の年間取引報告書の各項目の記載は、取引時の電信売買相場の仲値(TTM)で円に換算した金額とされます(問10)。

(今月の税務トピックス②につづく)

《コラム》平成31年税制改正大綱 個人所得課税(一般)編

◆31年税制改正「消費税対策」が重点に
 平成31年の税制改正大綱では、10月に実施予定の消費税率10%引上げに伴う、駆込み需要・反動減対策(車両・住宅)に重点が置かれ、単年度ベースで1,670憶円規模の減税措置がされると公表されました。
 個人所得課税(金融・証券税制以外のもの)については、次の項目が改正されます。

◆住宅ローン控除の拡充(国税・減税)
 過去の消費増税時に住宅の駆込み需要とその後の販売減を経験していることから、住宅ローン控除が拡充されました。31年10月から32年末に入居する住宅(消費税10%適用)については、控除期間が現行の10年から13年に延長されます。11年目からは計算方法が変わることに注意しましょう。
 1~10年目:住宅ローン年末残高×1%(最大40万円)
 11~13年目:次のいずれか少ない金額
 ①住宅ローン年末残高×1%
 ②取得価額(最大4000万円)×2%÷3

◆空き家の譲渡の特別控除(国税・減税)
 適用期限が4年延長され、老人ホーム等に入所したことにより空き家になって場合においても、一定の要件を満たすものについては、適用の対象となりました。また、所有者不明土地を収用した場合の5,000万円特別控除制度が創設されました。

◆ひとり親(未婚)の非課税(住民税・減税)
 自公で議論となっていたのが、婚姻歴のないシングルマザー等の「寡婦(夫)控除」の取扱い。結論は翌年に持ち越しとなりましたが、次の要件を満たす「ひとり親」の住民税が非課税とされました(未婚男性の「ひとり親」にも適用されます)。
・児童扶養手当の支給を受けていること
・前年の合計所得金額が135万円以下
 なお、所得税の負担が残るため、給付金17,500円(非課税)が年収365万円までの10万人弱を対象に支給される見通しです。

◆その他の改正(ふるさと納税の適正化など)
 その他には、①ふるさと納税の高額返戻品禁止(返戻割合3割以下の地場産品に限定)、②仮装通貨の取得価額の計算方法の明確化(移動平均法又は総平均法)、③申告書の源泉徴収票、特定口座年間取引報告書等の添付不要化・記載事項の見直し、④森林環境税(仮)の創設、⑤公的年金等の源泉徴収見直し等が措置されています。

《コラム》平成31年度税制改正大綱 個人所得課税(金融・証券)編

◆金融庁要望の「NISA恒久化」は持越し
 平成31年度の税制改正大綱では、消費増税への対応に比重がかけられたため、金融・証券税制の分野については、脇に置かれた感があります。金融庁が要望していた「NISA制度の恒久化」「金融所得課税の一体化」などは実現に至りませんでした。
 それでも、①NISAの利便性向上(海外赴任時の継続利用・利用開始年齢の引下げ他)、②投資信託等の内外の二重課税の調整措置、③レポ取引に係る利子の非課税措置の延長、④マイナンバーに関する所要の措置などが改正される予定です。

◆NISA口座保有者が出国した場合の特例
 NISA(一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISA)は、国内居住者の少額投資を非課税とする制度としてスタートしたため、居住者が海外転勤等により一時的に出国する場合には、NISA口座で保有している金融商品は一般口座(課税口座)に払い出されていました。また、帰国後においても、一般口座に一旦払い出された金融商品をNISA口座に戻すことはできませんでした。
 そこで、次の手続きを行った出国者については、国内居住者とみなしてNISA口座を最長5年間にわたり、継続利用できることとしました。
(一時的な出国による場合の特例)
◎継続適用届出書の提出:出国日の前日までに取扱金融機関に転任の命令その他やむを得ない事由により出国する旨等を記載した継続届出書を提出
◎帰国届出書の提出:取扱金融機関に帰国した年月日、非課税口座に再び上場株式等を受け入れる旨を記載した帰国届出書を提出
 なお、出国から帰国までNISA口座の保有はできますが、この間(最大5年間)、新規買い付けはできません。また、その出国につき「所得税の国外転出時課税」を受ける場合には、適用を受けることはできません。

◆NISA利用開始年齢の引下げ・利便向上施策
 民法の成年年齢が引き下げられることに伴い、NISAの口座開設が可能な年齢も20歳から18歳に引き下げられることになりました。平成35年1月1日以後の口座開設より適用されます(経過措置あり)。
 大綱には、その他にもロールオーバー移管依頼書の手続きの簡素化、一般NISAとつみたてNISAの切り替え手続きの簡素化など利便向上の施策が盛り込まれています。

(後編)国税庁:2019年1月からQRコード利用のコンビニ納付を開始!

(前編からのつづき)

 確定申告書等作成コーナーからの作成・出力方法とは、確定申告書等作成コーナーにおいて、所得税、消費税、贈与税の申告書を作成する際に、QRコードの作成を選択することで、申告書にあわせて、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。
 また、国税庁ホームページからの作成・出力とは、国税庁ホームページのコンビニ納付用QRコード作成専用画面において、納付に必要な情報(住所、氏名、納付税目、納付金額等)を入力することで、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。

 なお、作成したQRコードをスマートフォンやタブレット端末に保存し、スマートフォンやタブレット端末の画面に表示してキオスク端末に読み取らせることもできます。
 現行は、QRコードを利用したコンビニ納付手続きの利用可能なコンビニ自体がまだまだ少ないことから、国税庁では端末を設置する店舗を増やすよう働きかけていくとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

NISA6年目の選択肢

少額投資非課税制度(NISA)のスタートから5年を経過し、制度開始年に開設されたNISA口座が今年12月末で非課税期間を終了します。非課税期間が終わったNISAは、課税口座に移管されるか、新たに2019年度から始まる5年間の非課税口座に持ち越す「ロールオーバー」を行うかを選ぶことが可能です。売却するか持ち越すか、どちらが得かを見極めての選択が求められています。

 NISAは投資して得た利益の全てが非課税となることが特徴です。利益が1万円に達しようが1億円を超えようが一切税金はかかりませんが、年間の投資上限額が120万円、非課税期間が5年間のため、なかなかまとまった利益が生まれづらいのも事実です。

 そこで、非課税期間終了時に「ロールオーバー」を選ぶことで、5年間の非課税期間が終わった時点でのNISA口座に残った残高をそのまま翌年から5年間、非課税で投資を続けることが可能です。しかも元手となる投資資金は17年度税制改正で上限が撤廃され、現在は青天井となっています。

 例えばNISAが開始した14年に当時の年間上限額である100万円で投資をスタートした人が、非課税期間の最終年である今年までに、その額を5倍の500万円まで増やしたとします。ロールオーバーを選べば、改めて19年度スタートのNISA口座に500万円が入り、そこから5年間で5倍の2500万円まで増えたとしても、全額が非課税となります。どこまで増やせるかは腕次第とはいえ、投資期間が単純に倍になるわけです。注意点としては、ロールオーバーの枠に上限はないものの、その年の投資上限枠をつぶしてしまう点があります。つまり120万円以上をロールオーバーすると、その年はもうNISA口座への入金ができなくなります。

<情報提供:エヌピー通信社>

今月の税務トピックス② 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(今月の税務トピックス①よりつづく)

3 合計所得金額(所法2①三十ロ等)
 次の①から⑦までに掲げる金額の合計額とされます。
① 純損失又は雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除及び特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除を適用しないで計算した総所得金額
② 上場株式等に係る配当所得等について、申告分離課税の適用を受けることとした場合のその配当所得等の金額(上場株式に係る譲渡損失の損益通算の適用がある場合には、その適用後の金額及び上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
③ 土地・建物等の譲渡所得の金額(長期譲渡所得の金額(特別控除前)と短期譲渡所得の金額(特別控除前))
④ 一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除又は特定中小会社が発行した株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
⑤ 先物取引に係る雑所得等の金額(先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用がある場合には、その適用前の金額)
⑥ 退職所得金額
⑦ 山林所得金額

Ⅳ 適用関係(平成29年度改正法附則6)
 上記Ⅰ及びⅡの改正は、平成30年分以後の所得税から適用されます。

おわりに
 平成30年分以後の年末調整から配偶者控除又は配偶者特別控除は、居住者から提出された「給与所得者の配偶者控除等申告書」に基づいて行うこととされます。年末調整後、その年の12月31日までの間に配偶者の合計所得金額に異動が生じた場合には、翌年1月の「給与所得者の源泉徴収票」を交付する時までに年末調整の再調整を行うことができます。また、年末調整の再調整によらず従業員が確定申告によって対応することも可能となります。
 特に有価証券を保有している配偶者においては、①上場株式等の配当等で申告不要を選択したもの、②非上場株式等の配当等で年10万円未満のものは配偶者の合計所得金額の算定上カウントしませんので留意して下さい。

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し

はじめに
 年末近くになると配偶者が就業時間を調整することによって、居住者本人に配偶者控除が適用される103万円以内にパート収入を抑える傾向があり、人手不足のため営業時間の短縮を行う企業も出るなど社会問題となっていました。
 そこで、平成29年度税制改正では、配偶者控除・配偶者特別控除が見直されました。改正された控除額は、最低賃金の全国平均時給1,000円、1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144万円)を上回る金額となるように、所得控除額38万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限が85万円(給与所得のみの場合、給与収入150万円)を基準とされています。
 本稿では、改正された配偶者控除・配偶者特別控除の概要及びその実務上の留意点について解説することとします。

Ⅰ 配偶者控除(所法83①)
 居住者が控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する場合には、その居住者の所得金額の合計額から38万円(配偶者が老人控除対象配偶者の場合には48万円)を限度として、居住者の合計所得金額に応じた金額が控除できます。
Ⅱ 配偶者特別控除(所法83の2①②)
 居住者が生計を一にする配偶者(「青色事業専従者(所法57①)」として給与の支払を受けるもの及び「白色事業専従者(所法57③)」を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるものに限ります。)で控除対象配偶者に該当しないもの(合計所得金額が1,000万円以下であるその居住者の配偶者に限ります。)を有する場合には、その居住者の所得金額の合計額から38万円を限度として、居住者の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じた金額が控除できます。
 ただし、配偶者特別控除は、居住者の合計所得金額が1,000万円以下である場合及び生計を一にする配偶者がこの控除の適用を受けていない場合に限り適用できます。
Ⅲ 用語の意義
1 控除対象配偶者(所法2①三十三の二)
 同一生計配偶者のうち、合計所得金額が1,000万円以下である居住者の配偶者とされます。
2 同一生計配偶者(所法2①三十三)
 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(「青色事業専従者(所法57①)」として給与の支払を受けるもの及び「白色事業専従者(所法57③)」を除きます。)のうち、合計所得金額が38万円以下である者とされます。

(今月の税務トピックス②につづく)

(前編)国税庁:税務行政の将来像に関する最近の取組状況を公表!

国税庁は、「税務行政の将来像」に関する最近の取組状況を公表しました。
 それによりますと、将来像は情報システムの高度化、外部機関の協力を前提として、現時点で考えられる税務行政の将来のイメージを示したもので、具体的に実現した取組みを紹介するほか、これまでの検討の中で、施策のイメージが具体化したものを紹介しております。

 将来像は、「納税者の利便性の向上(スムーズ・スピーディ)」と「課税・徴収の効率化・高度化(インテリジェント)」を柱として、その実現に向けてAI技術などのICTを活用しながら段階的に取り組むとしております。
 「納税者の利便性の向上」については、個人向け、法人向けの申告手続きのデジタル化の推進や納付手続きのデジタル化の推進などの最近の取組みが紹介されております。
 例えば、個人向けでは利用者の多い一般的な給与所得者の医療費控除又はふるさと納税等による還付申告を対象に、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」にスマートフォン・タブレット専用画面を提供するため、システムを開発(2019年1月導入予定)するとしております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年11月16日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)国税庁:2019年1月からスマホ申告が可能に!

(前編からのつづき)

 e-Taxで申告する場合の送信方式は、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の選択ができるようになります。
 マイナンバーカード方式とは、ICカードリーダライタでマイナンバーのデータを読み取ることで本人確認する方法で、e-TaxのID(利用者識別番号)やパスワード(暗証番号)等の入力が不要になります。

 マイナンバーカードもICカードリーダライタも持っていない場合には、ID・パスワード方式を選択します。
 ID・パスワード方式では、事前に取得したIDとパスワードを入力することでスマホ申告ができます。
 しかし、IDとパスワードは、税務署において、職員と対面による本人確認を行った上で発行するため、運転免許証等の本人確認書類を持参して事前に税務署に出向く必要がありますので、該当されます方はご注意ください。
 なお、この方式はマイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応であり、将来的に、国税庁ではマイナンバーカード方式に統一していきたい考えのようです。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。