【時事解説】第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略 その2

では、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略において新たに追加された2つの横断的な目標とはどのような内容なのでしょうか。以下でその内容についてみていきましょう。

 まず、横断的な目標の1つ目として、「多様な人材の活躍を推進する」が掲げられました。
 上記の目標に向けては施策の柱が2つ設定されています。1つ目が「多様なひとびとの活躍による地方創生の推進」です。地方創生の取組みの継続・発展には、地域に関わる一人ひとりが地域の担い手として自ら積極的に参画する必要があることから、そのための施策を推進します。
 2つ目が「誰もが活躍する地域社会の推進」です。若者、高齢者、女性、障害者、外国人などといった多様な人材のそれぞれが居場所と役割を持ち活躍できるための施策を推進します。

 つぎに、横断的な目標の2つ目として、「新しい時代の流れを力にする」が掲げられました。
 上記の目標に向けては施策の柱が2つ設定されています。1つ目が「地域におけるSociety 5.0の推進」です。Society 5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を指します。こうした社会の実現に向けて人工知能などの未来技術の地方での活用を推進します。
 2つ目が「地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり」です。SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年を期限とする国際社会全体の17の開発目標を指します。SDGsの理念に沿ってまちづくりを進めることで、政策の全体最適化や地域課題解決の加速化が期待できます。
 このように最近の社会・経済情勢の変化を踏まえ、新たに横断的な目標が追加されたのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略 その1

2015年度を初年度とする5か年の地方創生に向けた目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が2014年12月に公表されてから5年が経過しました。
これを受けて第1期の5年間で進められてきた取組みの検証を行いつつ、2020年度を初年度する今後5か年の目標や施策の方向性等を取りまとめた、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略が2019年12月に公表されました。

 第2期総合戦略では、第1期総合戦略で掲げた4つの基本目標一部見直しが行われたことに加え、新たに2つの横断的な目標が追加されたことが特徴としてあげられます。
 4つの基本目標の変更点についてみると、基本目標1「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」において、「稼ぐ地域」という表現が追加されることで、地域の特色・強みを活かした産業振興や企業の競争力強化を図り、効果的に域外から稼ぐ経済構造の構築を目指す点があげられます。また、基本目標2「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」において、「地方とのつながりを築き」という表現が追加されることで、その地域や地域の人々に多様な形で関わる人々、すなわち「関係人口」を地域の力にしていくことを目指す点があげられます。
 さらに、基本目標4「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」において、「ひとが集う」という表現が追加されることで、人々の様々な希望をかなえる「まち」の魅力をつくることを目指している点があげられます。

 このように、第2期総合戦略では東京一極集中の是正に向けた取組みを強化するために基本目標の見直しが行われたのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》2020年4月以降時間外・休日労働の上限規制が中小企業にも適用

◆時間外労働・休日労働の従来の規制
 1日8時間、1週40時間(44時間の例外あり)を超える時間外労働は、いわゆる36(サブロク)協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで認められています。
 従来、時間外労働は月45時間、年間360時間(1年単位の変形労働時間制の場合、月42時間、年間320時間)が大臣告示による上限とされ、決算や急な納期変更などの特別の事情がある場合、月45時間超の時間外労働は年6回を限度に、36協定に特別条項を締結することで、実質上限なしで認められていました。

◆新たな時間外労働・休日労働の上限
 大企業には既に2019年4月から適用されていますが、中小企業も2020年4月から上限規制が適用されます。
 上限規制では、従来の月45時間、年間360時間に加え、特別な事情がある場合でも、以下の全てを下回ることが必要となります(月45時間超年6回までは同じ)。
①年間720時間(時間外のみ)
②1月100時間(時間外+休日労働)
③複数月平均80時間(時間外+休日労働)
(複数月とは、2~6か月のこと)
 上限を超えた場合は従来の行政指導ではなく、労働基準法32条、36条の6違反として、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則対象となります。

◆36協定の新様式とチェックボックス
 また、中小企業が2020年4月以降に届け出る場合、36協定の様式が変更となります。旧様式での届出は受理されないので、注意が必要です。
 新様式には、「上記で定める時間にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと□」とあります。□にチェックがない場合、労働基準監督署は受理せず、その場での補正も認めないようですので、出直しとなります。届出前に必ず確認しましょう。

《コラム》年休付与の賢い方法 5日義務も怖くない!様々な年休消化の仕方

◆年次有給休暇の取得状況
 厚生労働省が2019年10月に発表した就労条件総合調査によると2018年の年次有給休暇取得率は52.4%と前年から1.3ポイント上昇しています。取得日数は平均9.4日で大企業ほど取得率が高くなっています。
 労働者側の自分の仕事が大変になったり職場に迷惑がかかったりするというためらいも、取得が進まない原因になっているようです。厚労省は2020年に取得率7割を目指すとしていますが目標には遠く、2019年4月からの働き方改革の一環で年5日の有給休暇取得義務付けがされました。

◆取得促進のための各制度
 年休は原則1労働日単位での取得ですが、各社で決まりを作っておけば良く、半日年休も60%以上の企業が利用していますし、計画年休も35%が導入しています。
 それぞれの特徴を見てみます。
・半日単位年休……労使間の合意により半日年休制度を設け、半日単位で与えることも可能です。年休を半日単位で付与するにあたって就業時間のどの時刻で前半と後半に分けるかは労使合意により決めます。
・時間単位年休……年次有給休暇は労使協定により年5日までは時間単位で付与することができます。従業員はプライベートな用事に充てることもでき小刻みに休みをとることで仕事が溜まってしまうということもないのでありがたいのですが、企業側は時間管理の手間がかかることもあるのでシステムなどとの連携が必要かもしれません。
・計画年休制度……労使協定に基づいて企業側で計画的取得ができるもので一斉に又は部署ごとに夏季、年末年始休暇などに合わせて設定もできます。各人の付与日数の5日を超える日数について計画的に取得してもらうことができます。
・働き方改革の年休時季指定……2019年4月から働き方改革の一環で休暇が10日以上付与されている従業員に年5日の有給休暇を時季指定しなくてはならなくなりました。本人が自分で取得した日や計画年休もこの5日に含まれるので、5日以上取得している方は対象ではありません。この時季指定を今まで本来休業日であった休暇に代えて5日の有給休暇に充てるのは法の趣旨に反するので労使でよく話し合って協定を交わし、就業規則に載せるのが良いでしょう。

《コラム》老人ホーム入居一時金の贈与

◆夫婦間での生活費のやり取りと税金
 贈与税の非課税規定において、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは非課税とする」と定められています。
 夫婦間での生活費のやり取りは、当たり前に税金など意識せずに行っております。

◆不動産や多額の資金の移動の原則と特例
 扶養義務を果たすためとはいえ、生活費はその都度負担が原則で、多額の金銭を子供名義の預金に一括で振り込むとかの現金の移動は、課税贈与行為と通達されています。生活用不動産の共有化も、非課税の範囲を超える贈与行為となります。
 とはいえ、世の中の変化に対応して税制も、居住用不動産又はその取得資金の配偶者間贈与、教育資金、結婚・子育て資金、住宅取得資金の直系尊属からの一括贈与、を可能にするような特例措置が講じられてきています。

◆老人ホーム入居金は不動産的で一括だが
 老齢化社会になり、老人ホームへ入居する際の入居金の一時払いを扶養義務者が負担する、という場合はどうでしょうか。
 終身居住権を確保するためなので、性格は不動産の取得性を帯び、月々償却費消されていく前払金的性格を有し、元本の提供に近いような性格を有するものの、通常の生活を維持するための生活保持義務の履行でもあり、贈与税課税は憚られそうです。
 老人ホーム入居資金提供扶養義務者の死亡時に、一時払い入居金の未償却部分が算定し得る、としてなされた相続税の更正処分は、審判所の裁決で課税否認とされている事例があります。

◆課税とされた事例もあるが
 ネットで検索しただけで、有料老人ホームへの入居一時金が数億円というものの存在も確認されます。
 老人ホーム入居一時金が1.3億円という事例では、3年内贈与に該当するとして、贈与課税されて、最高裁まで争っていますが、納税者敗訴となっています。
 生活維持費は各人各様なので、単純に金額水準だけで、可否判定はしにくいし、入居一時金支払時の贈与というのも担税力や課税実務の実態にそぐわないし、資金支払者死亡時の未償却金の認定も計算上の数字に過ぎず、小規模宅地特例や居住不動産贈与の配偶者非課税特例とのバランスも考慮されるべき、と思われます。

《コラム》賃金請求権(退職手当除く)の消滅時効は当面3年に

◆民法(債権法)の改正
 労働基準法第115条は、賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、退職手当の請求権は5年間の消滅時効を定めています。
 2020年4月1日に施行される改正民法(第166条第1項)では、一般債権の消滅時効は次のいずれかとなります。
①債権者が権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき。
②権利を行使できる時(客観的起算点)から10年間行使しないとき。
 従来、「使用人等の給与」等に設定されていた短期消滅時効が民法では廃止されますので、労働基準法の賃金請求権の消滅時効の取扱いがどうなるか注目されていました。

◆労働基準法の賃金請求権は当面3年に
 厚生労働省は、通常国会に労働基準法改正案を提出し、賃金請求権の消滅時効は、客観的起算点から5年を原則とするものの、労働基準法第109条の記録保存期間に合わせて当分の間3年とし、5年後に必要に応じて見直すことになりそうです。
 なお、退職手当の請求権の5年間、年次有給休暇取得の2年間の消滅時効に変更はありません。

◆未払賃金の遡及も最大3年に
 労働基準監督官の臨検で未払賃金に関して是正勧告された場合、最大2年分の遡及払いを指導されていましたが、今回の改正で、さらに1年分多く遡及される可能性があります。
 つまり、臨検で未払賃金の是正勧告を受けた場合や未払賃金に関する裁判で会社敗訴となった場合のリスクが1.5倍となるということです。
 従来の2年遡及でも、企業にはかなりの痛手となっていましたので、遡及が最大3年となれば、会社の存続自体が危ぶまれるケースが増えてくるかもしれません。

 

【時事解説】女性の昇進を阻む「壊れたはしご」とは その2

 女性の昇進が男性に比べ劣ることは世界共通の解決しなければならない課題です。先日、米国コンサルタント会社の調査で、女性の役員比率が低い原因は「壊れたはしご」にあることがわかりました。壊れたはしごとは、女性が上る昇進の階段(はしご)は最初から壊れており、一段目から差がついてしまう、というものです。

 従来、男女差の原因は「ガラスの天井」にあると考えられていました。これは、女性の昇進には、ガラスのように透明で目に見えないが、確実に天井があり、女性が天井の先へ行くことを阻んでいるというものです。

 「壊れたはしご」が提唱され、男女差は天井(役員就任)にぶつかって発生するのではなく、第一段階であるグループ長や係長などの段階で生じていることがわかりました。結果として、上に行けば行くほど、女性の比率が低くなってしまうのです。
 そんな中、世界には、女性役員の割合を増やした国もあります。それは英国です。数年前まで、企業の女性役員は10%程度でしたが、現在では30%を超えました。なぜ、英国は増やせたのでしょうか。

 有効だった施策の一つに、「メンター制度」があります。経営層の男性が幹部候補の女性に仕事上で助言するという制度です。特徴は、異なる勤務先の男性と女性を組み合わせる点にあります。別の組織に所属しているため利害が対立しないので、互いに本音で話ができます。女性はメンターからの適切な助言により、役員にふさわしい人に成長できます。日本でも、単に数字合わせで女性を登用するのではなく、女性役員がしっかりと根付く方法を模索する必要があるといえます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】女性の昇進を阻む「壊れたはしご」とは その1

安倍内閣は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げ、女性の活躍を推進してきました。2015年には、指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%にする、「2030」という目標数値が設定されました。たしかに、女性課長の比率をみると、1989年は2.0%でしたが、2018年には7.3%と増加傾向にあります。また、女性が役員に就任というニュースを耳にすることも増えました。とはいえ、「2030」の目標値、30%は程遠いのが現状です。

 欧米では、女性管理職の割合は30~40%といわれています。日本は欧米諸国と比べると、数値が低いといえます。とはいえ、本来、人口の約半分は女性ですから女性管理職の割合は50%程度が妥当といえます。欧米諸国は日本と比べ進んではいますが、女性管理職30%という数値は決して多いとはいえないのです。

 最近、米国コンサルタント会社の調査で、女性の役員比率が低い原因は「壊れたはしご」にあることがわかりました。入社後、昇進の階段を上るとき、女性の階段(はしご)は壊れているので、最初の一段から足を踏み外し、なかなか上へ登れない、というものです。企業に入社すると、おおむね数年内にグループ長や主任、係長といった地位に就くのが一般的です。この最初のステップである「グループ長」になる時点ですでに男女で差がつきます。さらに、課長、部長と上に行くに従い差が大きくなるというわけです。結果、役員の割合は、女性が少なくなるのは当然のことになります。

 シリコンバレーでの調査では、6割以上もの女性が女性であるためゴルフなどの社交行事から外された経験があり、8割もの女性が「攻撃的すぎる」と批判されたことがあるといいます。女性であることで、昇進に不利な状況は世界共通の事項のようです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるBCP策定 その2

では、中小企業のBCP策定において具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2019年版』においてBCP策定を社内の人材育成としても活用し、組織力向上につなげている企業の事例として取り上げられた天草池田電機株式会社(所在地:熊本県上天草市、従業員数212人)の取り組みについてみていきましょう。

 同社は、産業用機械等の部品生産を主な業務として2002年に設立した企業です。同社が立地する熊本県では、2014年11月に、県と損害保険会社、商工会議所連合会などの商工4団体が「熊本県事業継続計画策定支援に関する協定」を締結し、BCP策定支援セミナーの開催や事業者の個別支援などを実施していました。そのような中、熊本県からBCP策定について声が掛かり、東日本大震災以降、事業継続への危機意識を高めていた同社は、BCP策定に取り組むこととしました。

 同社ではBCP策定を人材育成にもつなげるため、若手、中堅、管理職のバランスを考慮して選抜した約30名からなるチームを編成しました。県の協定に基づいて損害保険会社から招聘されたコンサルタントの指導を受けつつ、約8か月を経て2016年にBCPが完成しました。ボトムアップでBCPを策定したことから、BCPへの理解は従業員に素早く浸透しました。その結果BCP策定直後に発生した2016年の熊本地震では、各従業員が確認作業などを的確に行うことができ早期の業務再開につながりました。また、防災に限らず、幅広い業務で従業員から自発的な改善提案が行われるようになるなどの効果が出るとともに、社会や地域からの評価も高まっています。
 このようにBCPの策定によって組織力向上などの効果も期待できるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】中小企業におけるBCP策定 その1

中小企業が自然災害への備えを図るうえでカギとなるのが事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定です。中小企業庁編『中小企業白書2019年版』では中小企業におけるBCP策定の現状と課題について調査しています。

 同白書に基づき、BCPの策定状況についてみると、BCPを策定している割合は全体の16.9%となっています。また、従業員規模が小さくなるほど策定割合が低くなり、「名称を知らず、策定もしていない」と回答した企業の割合が高くなっています。

 BCPを策定している企業のきっかけとなったことについて回答割合の高い順にみると、「販売先からの勧め(23.1%)」、「行政機関からの勧め(17.8%)」、「自身の被災経験(17.8%)」となっており、BCPの策定を進めるには、販売先や行政機関などといった周囲からの働きかけが効果的であることがわかります。次に、BCPを策定した企業が感じている平時のメリットについてみると、「重要業務とは何か見直す機会になった」と回答した企業の割合が59.2%と最も高くなっており、BCPの策定を契機に自社の事業を見直し生産性向上につなげるような策を講じていることが見て取れます。一方で「効果は感じていない」と回答した企業の割合は13.6%にとどまっており、大半の企業がBCP策定により何らかの平時のメリットを感じていることがわかります。一方で、BCPを策定していない企業の理由について回答割合の高い順にみると、「人手不足(29.1%)」、「複雑で、取り組むハードルが高い(27.2%)」、「策定の重要性や効果が不明(21.1%)」となっています。

 このように、人手不足や取り組むハードルの高さを理由として、中小企業においてBCPの策定は現状では難しい取り組みと考えられているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)