《コラム》お金が必要になった時の年金担保融資(令和4年まで)

◆年金担保融資とは?
 どうしてもお金が必要な事情があるときは、自分で持っていなければ家族や友人、消費者金融、銀行から借りるということになるかもしれません。しかしそれ以外にも年金受給中の方であれば「年金担保融資」が受けられます。その要件は?
①申し込み可能者……老齢年金、老齢基礎年金、障害年金、遺族年金を受給している方
②融資金額……10万円~200万円
③利率(金利)……2.8%
④資金使途……保健医療、介護福祉、住宅リフォーム、教育、冠婚葬祭、事業維持、債務等の一括整理、生活必需品購入
 銀行や消費者ローンだと金利は10%~18%の範囲が多いのですが、それに比べると年金担保融資は金利がかなり低いといえます。すでに他で借り入れていた債務整理に充てることも認められています。
 また、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金受給者の方も利用できます。

◆年金担保融資の利用条件
 年金担保融資は前提として「融資希望額」が借り入れ限度額です。
①受給している年金の0.8倍以内(1年分。年金から源泉徴収されている所得税額相当額を除く)
②1回あたりの返済額の15倍以内(元金相当は大体2年6か月以内で返済する)
 融資限度額は「必要な金額」を希望しなければなりません。また、その額が必要なことを証明する資料(「見積書」「請求書」等)を添付しなければなりません。使途自由で限度額内なら何度でも借り入れできる消費者金融や銀行とは違うところです。

◆定額返済額は1万円単位
 年金担保融資は年金を受ける権利を担保に借り入れる制度ですから、借り入れをした方に支給される年金から指定した額が引かれ自動的に返済されます。上限は1回あたり年金支給額の3分の1以下、下限は1万円です(ただし借り入れの決まりがあるので融資額によって1万円以上になることがあります)。また、連帯保証人は必要ですが、いないときは信用保証制度が使えます。
 シニア層になると消費者金融や銀行からの借り入れが難しくなりますが、年金担保融資なら60歳過ぎても借りられるので心強い制度ですね。

《コラム》スマート税務行政とチャットボット

◆スマート税務行政とは
 スマート(smart)とは、活発な、賢明な、という意味で、最近の標語の「超スマート社会」は、サイバー空間と現実社会が高度に融合した社会として、ロボット、人工知能、ビッグデータ、IoTなどを駆使する未来像のことです。
 国税庁は、スマート税務行政の実現に向けてとして、この1月から「チャットボット(chatbot)」の導入を始めました。チャットボットとは対話(chat)とロボット(bot)という2つの言葉を組み合わせたもので、対話を行うロボットのことです。

◆チャットボットに誘う入口
 国税庁のホームページに行くと、チャットボットに誘う入口が案内されています。現在のチャットボットは試験導入で、電話相談や訪問相談の代替措置として,税務当局側の人員不足や繁忙期における円滑な対応についての課題解決を図るため、土日、夜間等の日時にとらわれない相談チャネルとして、導入するものとされています。
 試験導入では、令和元年分の所得税の確定申告のうち、医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税などの各種控除を中心に、給与収入や年金収入がある方の「よくある質問」に対応しています。

◆税務相談を担当している「ふたば」
 「ふたば」という名前のついたチャットボットの画面では、次のように展開されて行きます。
①アイコンをクリックするとチャットウィンドウが開く。
②チャットウィンドウに質問を入力すると、AIが自動回答する。
③適切な回答ができないような質問をされた場合は、AIからチャット上にメニューボタンが複数表示されることによる逆質問で、質問内容を補完する。
 今後は、相談事例を蓄積して、回答範囲を拡大していく予定としていますが、ロボット自身も、自己学習を積み重ねていくでしょうから、ゆくゆくはベテランの電話相談員のような対応ができるようになるのだと期待されます。
 チャットボットの画面でも、利用者の意見により改善を進め、AI(人工知能)の学習を行うことで、回答の精度が向上していきます。最初は、うまく答えられない質問もあるかもしれませんが、温かい目で成長を見守ってください、とメッセージしています。

《コラム》経営の羅針盤

経営環境は、日々、目まぐるしく変化しています。荒波の中で経営判断を行い、かじ取りする経営者に必要なもの、それは自身の羅針盤をもつことではないでしょうか。

◆経営理念を鍛える
 初めて社会に出て仕事に就いた時、失敗して自身の至らなさを思い知らされたこと、反対に顧客のことを思い一生懸命に動いて感謝され、喜びと自信を深めたこと。上司や恩師の助言、部下のサポートなど、これまで様々な経験を蓄積して自身の経営理念を創りあげてきたのではないでしょうか。
 経営理念は、言語化して社内で共有することで現実の経営に反映させることができます。成功体験にだけ頼ると進路を見誤るかもしれません。先人の知恵や経験にも学び、経営理念を常に鍛えていくことが大切です。

◆アンテナを張る
 経営判断が常に正しくできる保証はありません。自身の経営姿勢を映し出し、振り返ることのできる合わせ鏡を持つことも大切です。自分の右腕となる参謀を幹部として配置することも必要でしょう。また外から経営リスクに気付く仕組みを作ることも大切です。社外取締役、社外監査役を活用するなど、人生経験を積み、異なる環境で経営に従事してきた人を自社の経営アドバイザーとして招き入れ、自社が直面する事象を把握し、客観的に評価できるアンテナとしての人材をもつことも有用となります。

◆経営監査を活用する
 大手電機メーカーが、経営トップ主導のもと不適切な会計処理を続けていたところ、海外の大型投資のリスクを把握できず、経営危機に直面したことは、記憶に新しいと思います。実態の報告が尊重されない社風のもとでは、現場から悪い情報が経営者に伝わりにくくなるのではないでしょうか。
 このようなとき、経営監査を活用することもできます。社内の内部統制機能を点検し、リスクに気付き、改善につなげる手法です。経営判断に終始問われるのは、他人の言葉に冷静に耳を傾け、自身の中に落とし込む勇気を持つこと。いつも自身の羅針盤に照らし、感情でなく理性で判断できるよう謙虚な姿勢を持ちたいものです。

《コラム》新型コロナウイルス感染症 中小事業者への支援策

◆中小企業・小規模事業者対策として
 新型コロナウイルスは中華人民共和国での感染が拡大し、中国国内の生産活動の停滞や機械部品等の輸入による製造業者へのサプライチェーンに悪影響を及ぼしています。日本国内でもイベントの自粛など、経済活動に悪影響を及ぼすことが予想されます。それにより中小事業者の事業継続にも懸念が生じています。

◆関係事業者団体への要請
 過去の自然災害によるサプライチェーン毀損時には、下請事業者から、コストが大幅に増加する発注にもかかわらず親事業者は十分に話し合うことなく、一方的に通常発注と同一の単価に据え置く「買いたたき」などの行為があったとの相談が寄せられました。そこで経済産業省は経営基盤の弱い下請の中小企業に対する影響を考慮して、
 ①通常支払われる対価より低い対価による下請代金の設定や適正なコスト負担を伴わない単納期発注や部品の調達業務の委託などを押し付けないようにする。
 ②今回の新型コロナウイルス感染症により影響を受けた下請事業者が、事業活動を維持再開できるように取引関係を継続するように配慮することを関係事業者団体に要請しています。

◆セーフティネット貸付の要件緩和
 日本政策金融公庫等政府系金融機関や信用保証協会に対して、セーフティネット保証により、資金繰り支援を実施しています。特に、公庫等においては、特別相談窓口を開設し、資金繰りに不安がある場合は売上高の減少の程度に関わらず、セーフティネット貸付の対象とするように要件を緩和しています。信用保証協会に対しても、特に重大な影響が生じている業種について通常とは別枠での借入債務の80%を保証する5号の実施とともに、自治体の要請があった場合にはこちらも別枠で借入債務の100%を保証する4号を実施します。さらに、一時的な業況悪化等の支障をきたしている旅館業者に対し、経営を安定させるために必要な資金繰りの支援を実施するために、緊急貸付・保証枠として5000億円を確保しました。
 この先もどのような情勢になるか予測できません。取引先との関係や資金繰りに不安があれば、早めに支援機関の窓口に相談して下さい。

《コラム》令和2年1月20日より開始!法人設立ワンストップサービス

令和2年1月20日から、マイナポータルにおいて法人設立ワンストップサービスが開始されています。

◆マイナポータルとは
 マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスです。平成29年11月から本格運用が開始されており、徐々にサービスが拡充されてきています。
 マイナポータルでは、行政機関等から配信されるお知らせの受信、ネットバンキング(ペイジー)やクレジットカードでの公金決済、行政機関等が保有する自分の個人情報の検索や確認、子育てや介護をはじめとする行政手続などがワンストップでできます。

◆法人設立ワンストップサービス
 本年1月20日からマイナポータル上で開始された法人設立ワンストップサービスは、法人設立登記後に関する手続をオンラインでまとめて行うことができるサービスです。現在利用できる手続は、①国税に関するもの(税務署に提出するもの)、②地方税に関するもの(都道府県・市町村に提出するもの)、③健康保険・厚生年金に関するもの(年金事務所に提出するもの)、④労働保険に関するもの(労働基準監督署に提出するもの)、⑤雇用保険に関するもの(ハローワークに提出するもの)です。定款認証や法人設立登記申請の手続は、令和3年2月からサービス開始予定となっています。

◆ご留意いただきたい点
 今まで紙の書類で作成して提出していたものがオンラインで提出することができるようになり、利便性は格段に向上しました。 
 だからといって、専門家に相談する必要がなくなったということではありません。
 例えば、消費税の届出の場合、どのような届出をすべきかは、具体的な事業計画の数字や資産の購入予定を基にシミュレーションを行う必要があります。
 このような事前検討をしていない状況では、最善の判断を行うことはできませんし、判断を誤り、後で思わぬ消費税の負担が生じてしまうこともあります。
 各手続には、司法書士・税理士・社会保険労務士といった専門家のアドバイスが必要であることは、今までと変わりません。

《コラム》私学にも手厚い支援 高校授業料補助の制度改正

◆実質無償の高校授業料
 国や地方自治体は、すべての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図っています。
 国の高等学校等就学支援金制度もその1つですが、今年4月から私立高校等に通う生徒への支援上限や、補助される金額を決める基準値の変更が行われています。

◆私立学校に通う生徒への支援額引き上げ
 私立高校に通う場合の国からの支給上限額が引き上げられました。世帯年収がおおよそ590万円未満の場合、従来の支援金の最大額は29万7,000円でしたが、最大39万6,000円となり、また住民税の所得割額に応じた3段階の支援金額の差もなくなりました。地方自治体の授業料補助を組み合わせると、所得制限にかからない場合、授業料は実質ゼロになる仕組みです。

◆国の支援金の支給基準の改定
 今までは両親2人分の「都道府県民税所得割額と市町村民税所得割額の合算」で、支給の有無や支給額の大小が決まっていましたが、今年7月分からは、両親2人分の「市町村民税の課税標準額×6%から市町村民税の調整控除の額を引いたもの」が判定の基準となります。
 簡単に言うと、従来は住宅ローン控除の住民税分の控除や、ふるさと納税等の住民税分の控除をした後の、税額を基準としていましたが、改正により住民税の課税所得額が基準となりますので、意図的に税額を減らすふるさと納税等の行為は意味がなくなります。

◆地域や状況により負担の増減はさまざま
 国による支援の改正の他に、都道府県によって私立高校の授業料の補助にも改正が予定されている所や、地域によって世帯の課税所得や所得割額がいくらまでなら所得制限にかからずに無償化の範囲になるか、または自己負担になる授業料がいくらになるのかが異なります。実質的な支援額がどのくらいになるのかを知りたい場合は、国と都道府県両方の支援金の基準を調べる必要があります。
 例えば東京都の場合、今年から無償化になる世帯年収をおおよそ910万円未満とする方針で、子供を3人以上育てる世帯については、世帯年収に関係なく授業料の支援を行う等の方策を立てています。

 

【時事解説】現場からの働き方改革 その2

企業不祥事が発生すると、我々は安易にその原因を経営層の現場管理の怠慢に求めがちです。確かにそうした側面も否定できません。しかし、上記の我が国における仕事への熱意の低さを見ると、違う面からの検討が必要なのではないかとも思えます。つまり、管理を徹底しすぎることにより、現場の主体性が喪失し、現場における問題解決能力が低下する懸念です。

 経営層がコンプライアンスを重視し、現場に監視カメラをつけたり、日常の行動を細かく管理したり、ミスをなくすために仕事のマニュアル化を徹底すれば、仕事が形式化し、現場従業員の主体性は失われ、やらされ感は増していきます。それが現場従業員のやる気を失わせ、不祥事につながるという考え方もできるのです。

 企業により実態は異なり、取り組み方は変わってきて当然でしょう。ただ、不祥事が起きたときに、ただひたすらステレオタイプに現場に対する締め付けを強化しようとすると、現場の疲弊感は強まります。

 今、「働き方改革」が叫ばれていますが、それは依然として生産性上昇を目指す上から目線からの改革です。しかし、今我が国で本当に必要なのは現場の主体性を重視した、仕事の熱意を高める、下からの「働き方改革」なのかもしれません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】現場からの働き方改革 その1

自然科学では原因と結果が一直線につながり、悪い結果の原因は当然に特定されます。しかし、社会科学は多様な原因が絡み合いながら、結果が導き出されますから、原因を短絡的に一つに特定するのは危険です。企業不祥事の対応にもそんな複線的な思考が必要ではないかと感じています。

 企業の不祥事が続くと、現場の規律が緩んでいること及び経営者が現場の実態を十分把握できていないことが原因とされます。それは、当然のように、コンプライアンスの遵守や現場管理の徹底へとつながります。これは経営上層部、いわば上からの発想です。

 一方、かつて日本経済新聞の社説には、次のような記事が載っていました。
『米調査会社ギャラップが昨年公表した、仕事への熱意(エンゲージメント)についての国際比較によると、日本で「仕事に熱意をもって積極的に取り組んでいる」従業員の比率は全体の6%。調査した139カ国のなかで132位と、最下位級にとどまった。』

 日本企業の従業員は自ら仕事に主体的に取り組むのではなく、上からの命令でやらされていると感じている従業員が国際的にも高いというのです。日本企業は現場の「改善」や「創意工夫」の提案が多いと思っていいただけにやや意外ですし、日本人が仕事を後ろ向きに捉えていることを残念に感じました。これは現場からの視点です。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》産業医の活用を考える

◆社員の健康を守るドクターはいますか?
 2020年4月からは、いよいよ中小企業にも残業時間の上限規制が適用されますが、長時間労働対策が思うように進まない、そういう企業もまだまだあるのではないでしょうか。
 この対策とあわせて実施しなければならないのが、「長時間労働者の医師との面談」です。この面談については、もともと労働安全衛生法で定められていましたが、2019年4月に対象範囲が広がりました。時間外労働・休日労働が月80時間超の労働者が申し出た場合に実施することが義務となり、これは小規模事業場(従業員50人未満の事業場)にも適用されています。
 平成30年の労働安全衛生調査では、面談への取組みはこれからの企業がおよそ半数というのが実態ですが、これを機会に、改めて産業医の活用を考えてみませんか。

◆産業医の役割とは
 産業医の役割としては、長時間労働者への面接指導のほか、健康診断の実施や作業環境の維持管理などがあります。また、「健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置」というのも労働安全衛生法で定められているのです。例えば、健康診断の後に生活習慣改善について社内セミナーを実施したり、季節にあわせてインフルエンザ対策や熱射病についての講話をお願いしてみてもよいかもしれません。もっと社員が気軽に相談できるように、小規模のランチョンセミナーの形式にするのもよいですね。こういった施策は、産業医の先生ご自身に、会社に対する理解を深めてもらう機会にもなります。
 また、メンタルダウンで休職していた社員が復帰する際に、職場の社員が留意しなければならないことを講義してもらったりすることも、安心・安全な職場環境作りに貢献するでしょう。従業員が働きやすい環境づくりのためにも、心強いパートナーを探してみてください。
 とは言っても、誰に頼んだらよいものか……と悩まれる場合には、地域産業保健センターへ相談してみましょう。

《コラム》礼儀正しさが企業に良い効果をもたらす その差は2倍!

◆人を叱るときどんな叱り方をしていますか
 2019年末「人を叱るときは人前で」という記事が話題を呼びました。時代の流れや環境の変化とともにそれぞれに対応したやり方があるのでどれが正解のやり方と断言はできませんが、礼儀正しく接する、ほめることが企業のパフォーマンスを上げる研究結果をご紹介します。

◆叱るときも礼儀が大事との結果があります
 2007年の米フロリダの研究で、被験者らが自分たちに敬意が払われていないと感じると、彼らのパフォーマンスは低下するというものです。2つのグループに分け片方のグループをけなした後、単語のつづりを入れ替えるパズルをさせると、けなされたグループの成績はけなされなかったグループより33%低下します。また、片方のグループを叱責したのちブレーンストーミングをさせる実験では叱責されたチームはされなかったチームより58%もアイディアの出が悪くなりました。
 これだけではありません。けなされたり、叱責されているところを目撃するだけでもパズルの成績は25%悪化し、ブレーンストーミングでも45%成績が悪くなりました。これが実際の企業内で起こったら生産性が下がり大変なことです。逆に「礼儀正しく」接するとよい効果が生まれます。部下に礼儀正しく接したリーダーは2倍もリーダーとして認められる確率が高くなります、また礼儀正しいと評価される人物はそうでないと評価される人物より13%パフォーマンスが高いとの結果が出ています。礼儀正しさが心理的安心感につながりこれだけの差が出るとされています。

◆外国人は捉え方が違う場合もあるので注意
 外国の方も多く働くようになっている現代、日本人では人前で叱責したり無礼な態度に対し我慢で終わらせることも、外国の方では考え方が違うので注意が必要です。アジア、中東では「人前で怒るとその人の尊厳を侮辱することになる」と人前で叱責することはご法度とされているようです。
 日本人でもパワハラといわれてしまうことがあります。仕事をしているとカッと来ることもありますが、指導を行うとしても礼儀を忘れないで対応することが重要です。