《コラム》東京オリンピック 税法の特例措置

◆いよいよやってくる東京五輪
 今年はオリンピックイヤーです。自国開催とあって日本は設備の改修やボランティア、民泊にビザ発給の簡易化等、様々な施策を講じています。税金に関しても「オリンピックだから特別ね」という特例措置がいくつか講じられています。

◆国際二重課税を防ぐための措置
 平成31年度税制改正では、非居住者であるオリンピック・パラリンピックの選手・スタッフ・審判・計測や集計を行う外国法人・外国メディア関係等に対して所得税や法人税等を課さないという特例を創設しています。
 これは、日本と租税条約を結んでいない大会参加国と結んでいる大会参加国との不均衡が生じることや、大会が開催される各国で所得を得ることになる大会関係者が居住地で課税されたいという希望に沿うための措置です。

◆インバウンドを獲得しやすくする措置
 東京オリンピックの旗振り役である東京都は、観光振興を図る施設に要する費用に充てられる法定外目的税の「宿泊税」を、2020年7月1日から9月30日の3か月間、都内の旅館・ホテルの全ての宿泊者について課税停止の措置を講じることになっています。
 1人1泊1万円以上1万5千円未満の宿泊料なら100円、1万5千円以上ならば200円かかる東京都の宿泊税が期間中はかからなくなります。この措置は「オリンピック・パラリンピック観光客の負担軽減のほか、ホテル・旅館の窓口対応等における事務負担の軽減」が狙いのようです。

◆報奨金非課税のオリ・パラ差是正
 今年の税制改正大綱には、オリンピックでメダリストになった選手に対する報奨金の非課税枠について300万円を500万円に引き上げ、なおかつ今まで非課税枠がなかったパラリンピックの選手への報奨金についても、オリンピックと同水準にすることが記載されています。
 開催決定から6年半、関係各所が奔走した東京オリンピックは、いよいよ本番が目前に迫っています。

【時事解説】通信5Gサービス開始と規格競争の行方 その2

2020年春から、日本でも次世代通信規格「5G」のサービスが開始されます。5Gにより、スマホやゲームだけでなく、家電や自動車までもがインターネットにつながり、より豊かな生活が実現すると言われています。ただ、課題があるのも事実です。最も懸念されることはプライバシーやセキュリティーに関することです。5Gは様々なものがインターネットに繋がり、利便性が高まる一方で、利用者の個人情報が外に流れるリスクがさらに高まります。

 また、5Gの開発競争で、日本企業は出遅れてしまいました。特許数をみても、米国や中国のほか、フィンランド、スウェーデンなどが多く保有しており、日本は数で劣ります。その中にあって、通信技術の先端分野では、次々世代にあたる6Gの開発が進んでいます。実用化は2030年ごろと見込まれています。5Gでは後じんを拝した日本ですが、6Gでは巻き返しを狙いたいところです。

 現在の開発状況は、NTTが6Gに関し、「IOWN(アイオン)」と呼ぶネットワーク構想を発表しました。世界標準になることを目指していますが、標準技術となるかどうかは、一社の力だけでは足りません。多くの有力企業と手を組む必要があります。そこで、NTTはソニーや米インテルと6Gの開発で連携すると発表しました。

 また、最近は、6Gに関する要素技術が少しずつ姿を見せ始めました。日本の活躍に期待ができるニュースとしては、昨年、NTTが理論的な通信容量の上限である「シャノン限界」を達成したことが挙げられます。通信規格は開発が進むごとに、超高速・大容量化が進みます。シャノン限界は理論的に超えられないとされています。シャノン限界を達成した日本は、他国と比べ一歩前を歩み始めたといえます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】通信5Gサービス開始と規格競争の行方 その1

 2020年春から、次世代通信規格「5G」のサービスが開始されます。すでに米国や韓国では始まっており、ようやく日本でも開始されます。通信規格は1980年前後に始まり、1Gから2G、3G…と進化を続けました。規格がグレードアップすることで、よりよい通信インフラが整備され、同時に自動車電話や携帯電話、そして着メロやiモードといった、便利で生活を豊かにするものが誕生しました。

 次世代の5Gはあらゆるものを一変させるといわれています。特徴は、「超高速・大容量」、「超低遅延」、「多数同時接続」といったことが挙げられます。多数同時接続とは、同時に多数の端末を使えるようになることを指します。結果、あらゆるモノがインターネットにつながる社会が実現します。これまで、インターネットには、PCやスマホ、テレビなどがつながっていましたが、今後は、洗濯機、冷蔵庫などの家電や自動車、さらには時計や洋服、テニスラケットといった身の回りのものまでが繋がるようになります。自動車がインターネットにつながると、一台ごとの位置情報が正確にわかるようになります。すると、渋滞をしている地域が明らかになり、ドライバーは比較的空いている道を選んで走行できるようになります。

 「超高速・大容量」「超低遅延」の特徴を活かしたものには、映像やゲームがあります。近年、YouTubeによるゲーム実況が人気を博していますが、将来は、視聴者はYouTubeで他者のプレーを観るだけでなく、リアルタイムで自由にゲームへ参加できるようになります。

 また、これまでの仮想現実(VR)は乗り物酔いに近い症状(VR酔い)が生じてしまい、今ひとつ普及しませんでした。が、5Gの超低遅延の技術により、VR酔いが解消され急速に広まる可能性も出てきました。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における自然災害への備え その2

では、中小企業の防災・減災に向けてどのような支援が行われているのでしょうか。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2019年版』においてハザードマップの情報を基に利用者・従業員の安全確保に注力する企業の事例として取り上げられた有限会社池ちゃん家・ドリームケア(所在地:静岡県焼津市、従業員数40人)の取り組みについてみていきましょう。

 同社は、2000年に設立された介護事業者です。同社では設立当初より地震災害を念頭に置いた防災体制を構築していましたが、東日本大震災での津波被害を見た結果、自社の防災体制に不安を感じ、事業継続計画(BCP)に関するセミナーに参加するに至りました。その後は、緊急時における他事業所への利用者の受入体制整備や、紙で行っていた施設利用者の健康情報管理の電子化などの事前対策に取り組みました。

 自社の地域のハザードマップを確認したところ、焼津市内の1事業所が津波浸水想定地区にあることがわかりました。そこで同社社長は、津波浸水想定地区でない高台へ一部の事業所を移転することを検討しました。移転費用の負担は大きなものでしたが、災害時における利用者や従業員の安全を確保し事業継続を図る上では必要不可欠と捉え、2012年6月に移転を行いました。

 また、施設利用者の多くが移動困難な方であることに配慮し、災害時には避難所に避難することなく施設で引き続きサービスを受けられるようにするため、災害発生時において必要な備品を調達することを目的とし、日常から地元の複数業者と取り引きを行っています。

 このようにセミナーへの参加やハザードマップの確認などを通じて自然災害への事前対策を講ずることが求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における自然災害への備え その1

中小企業が自然災害への備えを図るうえでは、自社が自然災害のリスクをどの程度抱えているかを知ることが重要になります。中小企業庁編『中小企業白書2019年版』では中小企業における自然災害に対する具体的な備えの取り組み状況などについて調査しています。

 同白書に基づき、自然災害への備えに具体的に取り組む中小企業の割合についてみると、「取り組んでいる」と回答した企業の割合は45.9%と半数以下にとどまっていることがわかります。
 自然災害に対する備えに取り組んでいる企業について、その理由を回答割合の高い順にみると、「自身の被災経験(33.3%)」、「国内での災害報道(29.1%)」、「行政機関からの勧め(14.7%)、「販売先からの勧め(13.6%)」となっており、行政機関や販売先など、周囲の関係者から勧められて取り組みを始めた企業も一定割合存在することがわかります。

 自然災害への備えに取り組んでいない企業について、その理由を回答割合の高い順にみると、「何から始めれば良いか分からない(31.8%)」、「人手不足(23.9%)」、「複雑と感じ、取り組むハードルが高い(19.9%)」となっており、中小企業では災害への備えについてのノウハウが不足しがちであることから、こうした企業に対して周囲の関係者が支援を行う必要性があることがわかります。また、自然災害への備えにおいて「何から始めれば良いか分からない」と回答した企業のうち、自社の地域のハザードマップを見たことがある割合は28.9%にとどまっています。ハザードマップは各地方自治体などで公開されていることから自然災害対策を考えるにあたり、まずはハザードマップを確認することから始めるのが良いといえるでしょう。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】“水をさす”会計から“棹さす”会計に その2

しかし、金融のグローバル化は会計の国際化を推し進め、資産評価の時価主義化の流れを強めます。投資有価証券の時価評価、固定資産の減損会計、たな卸資産の低価法などが相次いで導入されました。その上に、税効果会計も加わります。税効果会計では業績が好調で将来収益が見込めれば、繰延税金資産を計上できますが、業績が悪化し赤字予想になれば、それまで積んだ繰延税金資産を取り崩さなければなりません。繰延税金資産を計上するときには損益計算書の利益ですが、取り崩すときには費用が発生します。

 景気が悪いときには当然本業の業績も悪い。その上に資産価格下落の影響を決算書に計上しなければなりません。逆に好景気のときには本業の業績好調に加えて、税効果会計などによる利益が加算される傾向にあります。景気や資産価格の動向が経営者の意思に関わりなく、ヴィヴィッドに決算書に反映されやすくなります。つまり、時代の流れに“掉さす”会計に変わりつつあるのです。

 これからの会計は時代の流れに大きく翻弄されるものになり、調子のいいときには利益が大きく出て、業績が悪化すると赤字が増幅されやすくなります。こうした会計になると、長期的視野に立った経営ができず、短期的な資産価額の変動に大きく経営が左右される、といった批判も出てきます。しかし、会計のこの流れは不可逆的だと考えざるを得ません。経営者はそうしたことも踏まえて経営することが求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】“水をさす”会計から“棹さす”会計に その1

表現は似ているのですが、その意味するところはまったく異なる言葉があります。その代表的なものに“水をさす”と“掉さす”があります。辞書を引くと“水をさす”は「うまく進行している事などに脇から邪魔をする」ことで、“掉さす”は「調子を合わせてうまく立ち回る」ことだとあります。つまり、「時代の流れに水をさす」と言えば、時代の流れを留める、あるいは逆行する、というような意味ですし、「時代の流れに掉さす」といえば、時代の流れに従う、あるいは一層早めるということになります。

 会計のこれまでの変遷を眺めてみると、“水をさす”会計から“掉さす”会計に変わってきており、 IFRS(国際会計基準)導入が広がっている状況を見ても、その傾向は一層強まっていくように思われます。
 以前の会計における資産評価は取得原価主義が基本でした。貸借対照表の資産に計上される金額は期末時点の資産の時価に関係なく、取得価額のまま変わりません。したがって、償却資産を除いた資産の損益は所有したままでは発生せず、売却したときにはじめて実現します。

 その結果、取得原価主義会計の下では、資産の取得価額と時価との差額である含み損益が発生します。含み損益は決算書に現れないので、経営者の手元に残されます。経営者は自分が好きな時に資産を売却して含み損益を実現し、決算書上に表現することができます。本業の業績が悪いときには含み益のある資産を売却して利益をかさ上げし、逆に、業績が良くて利益が多すぎるときには含み損のある資産の売却により利益を圧縮することも可能でした。つまり、決算書に表現される会社の経営成績を時代の潮流から遮断することが可能で、経営者の裁量である程度コントロールすることができたのです。いわば、時代の流れに“水をさす”会計といえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》正社員化コースだけじゃない!使いやすい健康診断制度コース

◆キャリアアップ助成金健康診断制度コースとは
 助成金の中で花形助成金といえば2019年度も継続だったキャリアアップ助成金正社員化コースです。しかしキャリアアップ助成金の中にもほかのコースがあることをご存知ですか? 今回はキャリアアップ助成金健康診断制度コースをご紹介します。
 健康診断制度コースは期間を定めて働いている労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施すると38万円(条件を満たすと48万円)の助成金が支給されます。

◆どんな人が対象になるか?
 雇用保険に加入する必要があるので期間の定めがある雇用契約を結んでいる人で、週20時間以上30時間未満勤務の従業員です。そのほかフルタイム勤務でも期間の定めのある雇用契約を結んでいて、雇い入れてから1年未満の勤務期間の人も対象です。1年以上雇用していると通常の定期健康診断を行う必要があるので助成金の対象外労働者になります。また事業主の3親等内の親族も対象外です。イメージとしては事業主関係者でないパートの方に新たに定期健康診断を行ってあげると受給できることになります。
 要件に対象者延べ4人に健康診断を行うとあるように、一度に4人健康診断する必要はありません。長丁場になりますが同じ人に4年かけて4回行ってもいいし、2人に2年かけて健康診断を実施しても受給できます。
 ただし、雇用してから5年以上雇用契約更新を繰り返している人を対象とはしないほうがいいでしょう。無期雇用転換ルールが適用される場合は対象外と申請時に言われる可能性があります。

◆こんな時でも使えます
 すでにパートの方に健康診断を行っている場合でも、この助成金は使えます。法定外の健康診断を行うことを就業規則に定めることが要件になるので、条文を入れていなければ使うことができるのです。
 人を集めるのが大変な昨今ですがパートタイムの方にも健康診断をすることで病気を予防し、継続して働いてもらえるようになるとよいでしょう。

《コラム》人材確保と流出防止のため仕事と介護の両立支援を

◆あなたの会社にサンドイッチ世代は何人?
 サンドイッチ世代とは、子育てと親の世話を同時に行っている世代のことです。40代、50代という企業の中核を担う世代でありながら、育児と介護の負担によって仕事と両立できず離職してしまう……そんなリスクをもった世代ともいえます。近年では女性だけではなく男性の介護離職の割合が高まっており、この離職防止のための両立支援を重要視する企業が増えています。

◆育児と介護の支援は同じ??
 仕事との両立支援として、育児と介護は同様に重要な観点ですが、その内容は大きく異なります。例えば、育児は準備期間があり子供が成長すれば一定の区切りがつきますが、介護はある日突然で、どのぐらいの期間続くのか見通しがつかない場合がほとんどでしょう。一方で、介護は育児よりも日々の時間的な制約が緩やかともいわれています。介護の現状は多様であり、育児と同じ施策のラインナップでは十分とはいえず、従業員の状況を把握したうえでの施策の検討が必要です。
 では、どのような支援策があるのでしょうか。

◆中小企業に特化した助成金の活用
 従業員には、93日間の介護休業があります。この休業期間は、介護のためだけではなく、働きながら介護できる体制作りのための期間でもあり、必要なタイミングで取得できるよう3回まで分割が可能です。介護休暇制度や介護休業中に受けられる介護休業給付金(休業開始前賃金の67%相当)もあります。
 企業に対しては、「介護離職防止支援助成金」の制度があり、今年度は中小企業に特化し、支給上限を拡大する改正が行われました。具体的には、「介護支援プラン」を策定したうえで、例えば、従業員が介護休業を取得する、あるいは新たに介護のための制度(フレックスタイム制度や労働時間短縮制度など)を導入、活用するなどの要件を満たすと、36万円(1年度5人以内)までの助成金が受けられます。
(制度詳細は⇒https://www.mhlw.go.jp/content/000527589.pdf)

《コラム》2020年度の採用活動に向けて

◆新卒の採用活動は3月スタート
 文部科学省の『2019年度の採用活動に関する調査(速報版)』によると、中小企業の採用の広報活動開始時期は3月が最も多く、選考開始についても3月が最多、次に4月、6月と分散しているという結果が出ました。6月以降に選考を開始しているのは、大企業も含めて企業全体のおよそ3割、つまり7割の企業は5月以前に選考を開始し、その数は昨年よりも増加しています。経団連の指針廃止にともない、スケジュールについては政府主導となっていますが、今年も3月スタートに向けて準備を進めている企業が多いのではないでしょうか。

◆採用活動準備のポイント
 準備段階では、これまでの採用における課題を振り返り、採用したい人数や予算などを確認して採用計画を策定、そして求める人材像を明確化したうえで、面接官との認識の共有や面接トレーニングなども必要に応じて行っていきます。
 広報活動としては、民間の求人サイトや自社HPからの採用告知、SNSを使った募集などがありますが、打ち手を増やすために、ハローワークも活用していきましょう。

◆ハローワークのサービスが変わります
 2020年1月6日からハローワークのシステムが刷新されます。変更点は大きく2つ、これまで課題であった利便性が向上し、詳細な情報の提供が可能となります。
 具体的には、企業側からの情報を掲載する「求人者マイページ」を開設できるようになります。これによって、ハローワークに赴くことなく社内のパソコンから随時情報の掲載や変更ができ、また求人者とやり取りできるメッセージ機能もあります。そして、事業所や働いている様子など画像情報の公開や、企業側からのメッセージをPR情報として掲載できるようになります。
 より効果的に採用活動を進めるためには、企業の魅力を伝える採用コミュニケーションが重要です。丁寧に情報を伝えることで、就職後に「聞いていたのと違った」と感じて離職してしまうことの防止にもなります。自社の魅力を見つめなおして伝えることが、人材獲得の第一歩です。