【時事解説】現在の銀行の問題はB/SではなくP/L その2

今、銀行に問われているのは、B/Sではなく、損益計算書(P/L)の利益低下です。その一つの要因に日銀のマイナス金利政策があることは事実ですが、日銀が政策変更をすれば、すべてが解決するというような生易しいものではありません。その背景にはカネ余りと、その一方で止まらない資金需要減少に伴う金利低下による利ザヤ縮小という構造的問題が横たわっているからです。

 預貸金利ザヤで儲けるというのは銀行の変わることのない伝統的な本来業務です。つまり、P/Lの問題とは銀行のビジネスモデルの根本的変革を要求しているのです。銀行はこれまで基本とするビジネスモデルの変革など問われたことがなく、P/Lの問題は過去に経験のない、共通する処方箋のない問題だということができます。新しいビジネスモデルを提示できなければ、統合や人員削減といったリストラしか残された道はありません。

 B/Sの不良債権問題は過去の遺産の処理で、一過性の問題であるのに対し、P/Lの利ザヤ縮小は将来に向けて継続する問題です。それだけに解決は容易ではありません。
 さらに問題を難しくしているのは、B/Sの問題からも完全に解き放たれているわけではないということです。現在は、景気がいいので沈静化していますが、景気が悪化すれば不良債権問題は必ず表面化します。そのときP/Lの問題を解決できていないと大変です。

 銀行の経営者はそれまでに市場が納得できる処方箋を提示することを求められますが、残された時間はそう多くはないでしょう。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】現在の銀行の問題はB/SではなくP/L その1

銀行業界は苦しい状況にあります。しかし、考えてみれば、銀行の苦境は今に始まったことではありません。バブル崩壊に伴う不良債権の増大もかなりの衝撃でしたが、そうしたことを乗り越えて、現在に至っています。それでは、今回も従来と同様に問題を解決できるのでしょうか。

 ところが、今回はそうは簡単ではないと思います。というのは、今回の危機はこれまでとその本質が異なるからです。従来の銀行問題は主として不良債権でした。つまり、貸借対照表(B/S)の資産の劣化が問題でした。ところが、今、問われているのは損益計算書(P/L)の利ザヤだからです。

 銀行の主たる資産は貸付金です。貸付先が業況不振になると、貸付金の回収不能の可能性が高くなり、貸倒引当金の繰り入れや、最悪の場合、貸倒損失を計上しなければなりません。
 これまで銀行に生じた経営問題は主としてこのパターンでした。確かにこれは重大事ですが、この問題の解決法はそれほど難しくありません。なぜなら、B/Sに発生する不良債権を処理さえすればいいからです。不良債権を処理すれば、当然損失が発生します。ポイントは銀行にその損失処理を許容できる自己資本の厚さがあるかどうかという点にあります。損失処理を行い、自己資本が足りなくなれば、銀行の破綻につながりますし、あるいは、破綻させると社会的影響が大きすぎるということであれば、公的資金などの外部資本を注入し、自己資本を増強するという解決手法をとります。だからこそ、銀行にとっては自己資本比率が重要な指標として常に注目されていました。

 これはこれで大変ですが、過去の経験があり問題の所在と解決方法が明快であることが救いです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

米で進む「富裕税」構想

来年の米大統領選に向けた民主党有力候補者の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員が提唱する「富裕税」構想が注目を集めています。日本でも公平性の観点から金融所得への税率引き上げを求める声が上がっており、大統領選の動向次第では、日本版「富裕税」の議論が始まる可能性があります。

 ウォーレン氏は、5千万ドル(約54億円)超の資産を持つ超富裕層を対象に、株式や不動産など全ての保有資産に応じて課税する構想を掲げ、10年間で3兆ドルの税収増を見込みます。米国内で進む格差の拡大や「富裕層は適正な税負担をしていない」という不満を背景に、有権者らの支持を得ている状況です。

 一方、日本は欧米に比べ超富裕層が少ないこともあり、富裕税の議論は盛り上がっていません。しかし高齢化に伴う社会保障費の膨張により今後の税収増に向けた施策が必須で、所得の再分配や社会保障費の財源確保のために金融所得にかかる税率を引き上げる必要性を指摘する声は根強いのが実情です。

 日本の所得税は給料などについて所得が多いほど税率が上がり、最高で45%ですが、株の配当や売却益など金融所得への税率は一律20%に抑えられています。富裕層ほど金融資産を多く保有する傾向にあるため、所得が1億円を超えると所得に占める税負担率が低くなる逆転現象が起きています。

<情報提供:エヌピー通信社>

【時事解説】住民票の旧姓併記は女性活躍を後押しするか その2

住民票やマイナンバーカードなどに旧姓を併記できる制度が開始されました。新制度のメリットは多岐に渡りますが、一例を挙げると、給与振り込みがあります。現在、銀行口座は結婚後、名義変更をしなければなりませんでした。旧姓を使用すると、職場での名前とは別の名義の口座に給与が振り込まれることになります。ところが、昨年、銀行口座にマイナンバーが適用されたので、マイナンバーカードに旧姓を併記すれば、旧姓のまま口座を使える可能性が出てきました。

 旧姓の併記はここ数年で広がりを見せています。2015年は法人登記の制度変更がありました。近年、女性を役員に登用する上場企業が増えています。ところが、制度変更以前は、会社の登記において、記載される役員の名前は戸籍名で表示しなければなりませんでした。これが問題となり、旧姓の併記が可能になりました。

 新制度により、女性は様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなり、女性活躍推進につながると期待されています。背景にあるのは、超高齢化が進む中、日本経済の発展には働き手を増やさなければならないことが挙げられます。が、子どもの数は減り、簡単には実現しそうもありません。そんな中、日本経済を支えるには、女性の活躍が必要となります。

 理想をいえば、旧姓と現名、どちらか好きな方を選べる社会になることです。こうした流れを受け、夫婦別姓の導入について議論が高まっています。ただ、現段階、最高裁の判決では、夫婦同姓は違憲とはいえないとされています。今後、さらに議論が進むことで、夫婦同姓を定めた現在の民法が改正される可能性もあります。結果、旧姓と現名、好きな名前を選べるようになります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】住民票の旧姓併記は女性活躍を後押しするか その1

住民票やマイナンバーカードなどに旧姓を併記できる制度が開始されました。近年、職場で旧姓を使用する女性が増えています。結婚などで新しい姓に変わると、関係者に姓の変更を伝える、ネームプレートや旧姓を使ったメールアドレスを変更する、といった手続きをしなければなりません。これらを煩わしいと感じる人も少なくありません。また、電話の取次ぎなど、慣れ親しんでいる旧姓のほうがスムーズ、といったことがあり、旧姓の使用を希望する人が多くいます。

 ところが、戸籍上の名前と仕事での名前が違うと、会社に公的書類を提出する際、「名前が違う」といった指摘を受け、トラブルになるケースも少なくありませんでした。今回の制度で、住民票などに旧姓を併記できるようになり、トラブル減少に期待が寄せられています。

 新制度により旧姓が記載できるようになったものは、「住民票の写し」「マイナンバーカード・通知カード」「署名用電子証明書」「印鑑登録証明書」などです。不動産登記のように、併記が認められないものもまだ残されています。
 住民票などに旧姓を併記するには申請が必要です。申請には、戸籍謄抄本やマイナンバーカード・通知カード、運転免許証などの本人確認書類といったものの提出、提示が必要になります。

 旧姓の併記は政府が進める女性活躍推進の一つで、この施策により、女性は様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなります。まだまだ、職場によっては、旧姓の使用を認めないところもありますが、使用できる職場は増加の傾向にあります。旧姓併記の制度は女性の社会進出の後押しとして期待されています。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】商店街の現状と課題 その2

では、商店街では課題解決に向けてどのような取組みが行われているのでしょうか。以下で、「平成30年度商店街実態調査報告書」の内容に基づいて商店街での課題解決に向けた取組みについてみていきましょう。

 商店街が抱える問題のうち、最も大きな問題である商店街の後継者問題への対策については、「対策は講じていない(91.2%)」、「研修を実施している(3.2%)、「外部から後継者を募集している(2.2%)」となっており、取組み状況は極めて低くなっています。

 魅力ある店舗を形成するための個店の改善策・活性化策について、「一部でも行った」と回答のあった取組みについてみると、「店舗改装・店内レイアウトの変更(37.7%)」、「販売促進(POP・ディスプレイ・チラシ等)の強化(33.1%)」の順に回答割合が高くなっています。

 空き店舗の発生に対する商店街の取組み状況についてみると、「特に関与していない」と回答した割合が57.0%を占めています。一方で、空き店舗の発生に対する取組みを行っている商店街では、「家主に対して賃貸の要請を行う(14.2%)」「業種・業態を考慮したうえで積極的に店舗を誘致する(14.2%)」などの回答割合が高くなっています。次に、商店街の地域(各種団体等)との連携状況をみると、全体の72.8%の商店街が地域の各種団体との連携を行っていると回答しています。具体的な連携先については、「商工会・商工会議所(65.5%)」、「自治会・町内会・婦人会(63.1%)」、「市町村等の行政機関(45.5%)」の順に回答割合が高くなっています。

 このように、商店街の後継者問題の解決や、地域住民のニーズに対応した商店街の取組み推進に向けては地域の各団体等との連携促進がカギとなるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】商店街の現状と課題 その1

 近年商店街を取り巻く環境は厳しさを増しています。中小企業庁は商店街の実態を調査すべく1970年(昭和45)年から「商店街実態調査」を実施しており、2019年3月に13回目の調査結果として「平成30年度商店街実態調査報告書」が公表されました。同報告書によると、1商店街あたりの空き店舗の平均店舗数は2018年度現在で5.3店、平均空き店舗率(全商店街の空き店舗数の合計/全商店街の全店舗数の合計)は13.8%となり、高い水準で推移しています。

 空き店舗が埋まらない理由を貸し手側の都合によるものと、借り手側の都合によるものとに分けてみると、貸し手側の都合によるものについては、「店舗の老朽化(40.0%)」、「所有者に貸す意思がない(39.2%)」の順に回答割合が高くなっています。借り手側の都合によるものについては、「家賃の折り合いがつかない(36.1%)」、「商店街に活気・魅力がない(35.9%)」の順に回答割合が高くなっています。

 商店街の最近の景況について聞いたところ、「繁栄している(2.6%)」、「繁栄の兆しがある(3.3%)」となる一方で、「衰退している(37.5%)」、「衰退の恐れがある(30.2%)」、となっており、衰退傾向が、繁栄傾向を大きく上回っています。

 現況の商店街が抱える問題について聞いたところ、「経営者の高齢化による後継者問題(64.5%)」、「店舗等の老朽化(38.6%)」、「集客力が高い・話題性のある店舗・業種が少ない又は無い(36.9%)」、「商圏人口の減少(35.5%)」の順に回答割合が高くなっています。

 このように商店街は空き店舗増加、後継者不足、店舗の老朽化など様々な問題を抱えているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》補助金・助成金を賢く使って会社の力に!

◆補助金と助成金の基本的な違い
 企業が受ける補助金や助成金は企業運営にとって、資金調達手段として欠かせないものですが、補助金と助成金は違いがあります。

①給付金の出どころの違い
 補助金と助成金はお金の出どころが違います。補助金は経済産業省・中小企業庁が実施する国庫からの給付金ですが、助成金はそれ以外の省庁や自治体等が実施する給付金で、よく耳にするのは厚労省の雇用関連の助成金でしょう。間違えて補助金と呼ばれる助成金もあるようです。

②事業投資と人材投資の違い
 補助金は基本的に事業への投資ですから経済産業省に対する事業計画・収支計画書を出します。投資を受けた後5年間は倒産なく、事業が成長できる事業内容と収支計画がそろっている必要があります。補助金は企業に対する金銭的救済措置ではなく、投資家(経済産業省)向けの計画ですから儲かっていれば審査で加点されますが、赤字であれば減点されます。一般的には直近2期が黒字で債務超過でないことが条件とされています。給付が最高1千万円ぐらいで助成金より高額なのが大きな違いです。
 助成金は厚労省であれば雇用環境・雇用条件の改善や社員教育等人材への投資が目的で、「労働者」に対して何か施策を行う、というのが特徴です。金額は数十万円といったものが多いようです。

③補助金の採択率・補助率とは
 助成金は予算がある限り条件がそろえばほぼ100%支給されますが、補助金の採択率は平均35%くらいといわれています。東京都の企業からの申請書のレベルが高いので地方の企業が不利にならないよう東京都は採択率が地方より低くなる措置が講じられています。地震、津波、大雨の被災地の都道府県は特例で採択率が高くなります。補助金の補助率は対象経費の1/2、2/3となっています。対象経費は公募要領で定められています(消費税は除く)。

④採択方法の違い
 補助金は申請後審査、採点をし、点数の高い方から採択され、助成金は申請後の審査の後受付順で採択されます。補助金でもIT導入補助金や軽減税率対策補助金は先着順です。補助金は採択後対象経費を支払い、実施報告提出後清算払いされます

《コラム》年間5日以上の有給休暇取得義務化

◆有給休暇を年間5日以上取得させる義務
 「働き方改革」の一環として、労働基準法が改正され、2019年4月以降、年次有給休暇が年間10日以上付与される労働者に対して、年間5日以上取得させることが企業に義務付けられました。
 注意すべき点は、①企業の規模にかかわらず全企業が対象、②管理監督者も含まれる、③週の所定労働日数が少ないパートタイム労働者も勤続年数によっては対象となる、④違反に罰則が適用される、などです。

◆有給休暇の積極的な取得に向けて
 有給休暇は、労働者が時季(時期ではない)を指定して、使用者が時季変更権を行使しない限り、取得が認められます。
 本来、労働者の時季指定が出発点ですが、年間5日以上取得させるよう使用者に義務付けられましたので、使用者から労働者に積極的な取得を促すことが求められます。
 具体的には、取得希望日の事前聴取や、取得奨励日の設定、労使協定による計画的付与などが考えられます。
 ただし、これまで特別休日としていた日を有給休暇取得日に変更した場合、休日数減少で不利益変更として認められないこともありえますので、注意が必要です。

◆早めの取得状況確認と「有給休暇管理簿」
 2019年4月以降に付与された年次有給休暇が対象ですので、早い人は2020年3月末で施行後1年を経過することになります。労働基準法では、事業主に有給休暇を取得させる義務は課せられていますが、労働者に取得する義務はありません。従って、労働者が取得を拒んだとしても、事業主には取得を促す努力が必要となります。
 2020年4月以降の労働基準監督署の対応が注目されますが、「有給休暇管理簿」の作成・保存も企業に義務付けられており、臨検等では取得状況もチェックされます。
 勤怠管理や給与計算のソフトに有給休暇管理機能がついているものもありますが、厚生労働省HPからエクセルファイルのダウンロードが可能ですので、参考にされてはいかがでしょうか?

社長の出身校、日大が断トツ

社長の輩出数が最も多い大学は日本大学とする調査結果を東京商工リサーチが発表しました。調査開始以来9年連続でトップ。日大出身の社長は2万1581人で、2位の慶應義塾大の1万650人を大きく引き離しています。

 2位以下は早稲田大、明治大、中央大、法政大と続きます。関東以外では7位に近畿大、9位に同志社大がトップ10に入りました。
 9位までは昨年調査と同じ顔ぶれですが、10位は昨年の関西大学に代わり、東京大学が食い込みました。国公立大学がランクインしたのは東京大学が初めてだとのことです。

 都道府県別に見ると、日大出身社長が最も多いのは20都県に上りました。東日本21都道県の8割でトップとなっています。一方、西日本では地元大学の出身者が多く、日大が最多となったのは3県にとどまりました。

 社長の人数で見ると1位の日大ですが、増収や増益の達成率では上位にランクインしていません。増収達成率では東大、一橋大、大阪大、増益達成率では筑波大、一橋大、東京都市大がそれぞれトップ3となりました。

<情報提供:エヌピー通信社>