【時事解説】世界は海洋プラスチックごみの汚染を止められるか その2

 プラスチック廃棄物が海に流れ、汚染が問題となっています。これを受けて、G20大阪サミットでは「2050年に新たな汚染ゼロ」という目標が掲げられました。世界で初めて、海洋プラごみの削減に関する数値目標が掲げられました。

 世界でプラごみへの対策が進んでいるのはEU(欧州連合)です。欧州委員会がストローをはじめとする使い捨てプラスチック製品を禁止するルールをEU加盟国に提案しています。これを受けて、フランスや英国などが法整備を進めました。

 米国でも活動が始まっています。マクドナルドがプラスチック製のストローを廃止して、紙製のもので代用すると決めました。日本のマクドナルドは検討中ですが、今後、実施が期待されています。ほか、スターバックスなどでも同様の動きがあります。

 日本国内では、ファミリーレストランのガストでドリンクバーにストローを置くのをやめました。お客様から要望があったときは、トウモロコシを原料としたバイオマスストローを提供します。このストローは、生分解性で、微生物によって分解される性質があります。ほかにも、竹ストローといって、竹の粉を生分解の樹脂に溶かし込んで押し出すストローも注目されています。別の企業では、マネキンをプラスチックに代えて、紙を利用して製造する動きもあります。

 ただ、プラスチック製品は価格が安く、軽量といったメリットがあります。全廃となると、生活するうえで不便が生じる恐れもあります。また、企業にとってはコスト上昇を招きます。ガストでのストロー廃止のように、コストアップや企業の負担増にならず、海洋汚染の軽減につながるものから行動に移し、進めていく必要があります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】世界は海洋プラスチックごみの汚染を止められるか その1

海洋プラスチックごみ(以下海洋プラごみ)による汚染問題が関心を集めていいます。プラスチックの廃棄物には、レジ袋やペットボトル、マネキン、建設資材など、様々な種類があります。海洋プラごみとは、プラスチック廃棄物の中で、海に流れ込んだものを指します。

 本来ならば、プラごみは決められた手順に従い適切に処理されるはずですが、中には使い捨てにされ、河川などを通じて海洋に流出しているものがあります。世界中で、プラスチックの廃棄物は年間約3億トンと推定されますが、その中の900万トンが海に流れ込んでいるといわれています。

 海洋プラごみは海洋生物や地球環境へ深刻な影響を及ぼすと懸念されています。中でも問題なのはマイクロプラスチック化することです。海洋プラごみは海に出ると、波や紫外線などにより小さく砕かれ、直径5ミリメートル以下の微粒子になります。これが動物プランクトンのエサとなり、さらに小魚がプラクトンを食べることになります。結果、食物連鎖により、最終的に、有害物質が人間の内臓に蓄積される恐れが指摘されています。研究では、メダカの肝臓が働かなくなる、がんができるといった報告があります。

 海洋プラごみは数年前から研究者の間で関心が寄せられていました。一般の注目が集まるきっかけとなったのは、6月に開催されたG20大阪サミットです。サミットでは、2050年までに海洋プラごみをゼロにすると目標が定められました。背景には、世界における海洋プラごみの排出量は、5割弱をG20各国が占めていることから、今後、目標の達成に向け、各国は行動計画を作り、進捗状況を報告することが決められました。これは条約ではないので、拘束力はありませんが、世界がプラスチックによる海洋汚染を減らし、海をきれいにしようと動き出したといえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》住民票等への旧姓併記

◆11月から住民票等への旧姓併記が可能に
 旧姓で業務をしている方々には、少し嬉しいニュースかもしれません。住民票やマイナンバーカード等へ旧姓(旧氏)を併記できるようにするための「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」が平成31年4月17日に公布され、今年11月5日から施行されます。

◆登記はできていたけれど…
 女性の社会進出等に伴い、旧姓使用についてはこれまでも様々な場所で議論がされてきました。商業登記の場面では、一足早い平成27年から、商業登記簿に役員の旧姓(婚姻前の氏)を併記することができるようになっています。
 しかしながら、たとえ商業登記簿に旧姓が併記されていても、銀行口座の開設時などに求められる、運転免許証やマイナンバーカードをはじめとした「本人確認資料」には旧姓が記載されていません。金融庁では全国の主要銀行などに対し、旧姓での口座開設について協力要請を出しているようですが、本人確認資料に記載された新姓との整合性が取れないことなどを理由に、旧姓での口座開設を行ってくれるところはまだまだ少ないのが現状です。銀行口座以外にも、携帯電話の契約やクレジットカードの申し込み等、本人確認資料を提示しなければならない場面は多く、登記はできても結局新姓の使用を余儀なくされている方々は少なくありません。

◆旧姓を併記するには
 住民票に旧姓を併記するためには、請求手続が必要です。旧姓が記載された戸籍謄本等を用意し、住所地の市区町村に対して請求を行います。住民票に旧姓が併記されると、マイナンバーカードや公的個人認証サービスの署名用電子証明書にも旧姓が併記されることになります。旧姓が各種証明に利用できるようになるため、たとえば旧姓で契約した保険や携帯電話、銀行口座等を旧姓のまま引き続き使うことも期待できます。
 今回の政令施行により、旧姓の利用機会が一気に拡大するかもしれませんね。

《コラム》戸籍法改正と相続手続きの円滑化

◆戸籍法の一部改正が成立、公布へ
 令和元年5月24日に戸籍法の一部を改正する法律が成立し、同月31日に公布されました。国民の利便性向上と行政の運営効率化を目的とした今回の改正では、どのようなことが可能になるのでしょうか。

◆戸籍法と戸籍事務の電子化
 私たちの親族的身分関係を証明する「戸籍」、この戸籍の作成や手続き等について定めた法律が「戸籍法」です。平成6年の改正によりコンピュータを使用して戸籍事務を取り扱うこととなり、現在では全国1896市区町村のうち1893市区町村でこのコンピュータ・システムが導入されていますが、各市区町村のシステムがネットワーク化されていないため、私たちが戸籍を請求するためには本籍地の市区町村役場で手続きしなければなりません。
 たとえば相続手続きで、自分と両親や叔父叔母等親族との身分関係を説明する場合、その親族の各本籍地へ戸籍を請求することになります。本籍地と住所地は別の概念であるため、住所地から遠く離れた場所であることもしばしば。遠隔地であれば郵送で請求することになりますが、郵便の往復期間もあり1通請求するのに数週間を要することもあります。相続手続きの際には、何人もの戸籍を請求しなければなりませんので、とても時間がかかります。

◆本籍地以外でも戸籍の取得が可能に
 こうした課題を受け、今回の改正では法務省が一括する戸籍データの管理システムを活用することで、本籍地以外の市区町村役場での戸籍請求が可能になります。また、電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)の発行も可能になる予定です。
 このシステムの具体的な運用開始時期については、公布の日から5年と想定されています。今回の改正により、これまで煩雑で時間のかかっていた戸籍収集の手間が大幅に削減され、相続手続き全体の円滑化にも期待が持てそうです。

《コラム》ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の申請方法変更

◆補助金の趣旨
 この補助金は中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善を行うために必要な設備投資等を支援するものです。認定支援機関の全面バックアップを得た事業を行う中小企業・小規模企業が対象です。機械装置費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費などが補助の対象になりますが、事務所の家賃や電話代など、一般的な諸経費は補助の対象になりません。
 平成30年度補正の二次公募が2019年8月19日(月)に開始されました。公募締切は2019年9月20日(金)15時となっています。

◆補助額・補助率
・一般型:補助額 100万円~1,000万円
補助率1/2以内 ※
・小規模型:補助額 100万円~500万円
補助率1/2以内(小規模事業者は2/3以内)
※通常の補助率は1/2以内となりますが、「先端設備等導入計画」の認定を受けると補助率が2/3までアップします。また、生産性向上に資する専門家を活用する場合には、補助の上限額が30万円上がります。

◆従来の申請との違い
 広範囲の適用業種で認知を広げているこの「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」ですが、今回の二次公募は「紙での申請を受け付けない」という違いがあります。
 これまで可能だった郵送による申請書の提出は受け付けず、中小企業庁のポータルサイトである「ミラサポ」の中に設けられた「ものづくり補助金電子申請システム」からの申請のみ受け付けることとなりました。紙での申請に比べて、サイトでの入力のため、数字の整合や入力漏れのチェックが容易・提出書類が少ない、オンタイムで提出できるため申請に余裕ができる等のメリットがあると広報しています。

◆時流は電子オンリー?
 今回の措置はIT導入補助金等、中小企業のIT化についての補助金も出している手前、申請も電子にて行ってもらい、IT化を一層促進したいという意図があるように見えます。税だけでなく、公官庁のこうした手続きについても「電子オンリー」が主流になってゆくのかもしれません。

《コラム》技能実習制度と特定技能制度

◆新しい在留資格 特定技能制度
 外国人が日本で働く際には、働くことが許可されている証明をする在留資格が必要になります。在留資格とは「外国人が合法的に日本に滞在(就労)するために必要な資格」のことです。それぞれ定められた活動や配偶者の地位によって在留が認められており、日本への滞在期間や活動内容は異なります。
 2019年4月から入管法の改正で新たに拡大したのが特定技能在留資格です。
 今まではいわゆる単純業務に従事が可能であったのは「技能実習」であるか日本人の配偶者等でした。「技能実習」は技能の習得が目的であり最長5年間日本で働く許可が出され、職場で技能を学ぶことができます。しかし実習期間を終えると母国へ帰らなければなりません。
 現実問題として、日本は人手不足であり実際のニーズには答えにくくなっていました。そこで外国人受け入れ政策の見直しで拡大路線になったのです。

◆人手不足が見られる14業種に限定
 そのような背景から特定技能の制度が新設されたのですが、この在留資格は一定以上の技能実習経験があるか定められた日本語能力やビジネススキルの確認試験があります。特定技能1号とは対象の14分野に属する知識や経験を要する技能を持っている方です。日本語能力やビジネススキルで試験合格するか技能実習生3年以上で無受験移行も可能です。最長5年までで家族の帯同はできません。技能実習制度で5年実習を行うと特定技能1号を取得できますので最長10年日本滞在が可能になります。
 さらに技能試験を受験し、特定技能2号になることもできます。この資格は経験を積み特定技能1号より高いスキルの保持・専門性・技能を有するものです。熟練技能保持者であり家族の帯同もでき在留期限の更新も可能になります。しかし特定技能2号は予定される2業種に限られており現在はまだ受け入れをしていません。

◆法整備ができてきたが受け入れ体制は
 今後も外国人雇用拡大は続くでしょう。新制度ができたとはいえ企業や社会の受け入れ体制はまだ整ってはいないと思えます。外国人を雇用する際には①就労ビザや在留資格の確認、②労働条件の労使の相互理解、③生活上等、日本の制度の理解や支援等に留意をしてください。

【時事解説】銀行員と決算書 その1

スルガ銀行における書類の改竄による不正融資事件が大きな社会問題になっています。銀行員の書類改竄といえば、少し前には商工中金による決算書の改竄事件が話題になりました。私は決算書の正確性を何よりも重んじるべき銀行員が決算書の改竄に手を染めたことに驚くと同時に、これはこれからの銀行融資に思ったより打撃を与えるのではないかという思いを持ちました。そこで、本稿では商工中金事件を題材に銀行員と決算書の関係を考えます。

 銀行員が企業融資の可否を判断する最も重要な資料は決算書となります。ですから、銀行員にとって決算書は重要であり、決算書の不正は許せないものであるはずです。上場企業の決算書は会計監査人の監査を得て、一応の正確性の外的担保はなされていますが、非上場企業の決算書にはそうした外的担保がないため、銀行員は経営者に適正な決算書の提出を強く求めます。にもかかわらず、その銀行員が決算書の不正に手を染めていたのでは、経営者に適正な決算書を作成してくれとはいえなくなります。

 これまでの銀行における粉飾とは、そのままではとても融資ができないような内容の悪い会社の決算書の数値を良い方向に改竄し、不正に融資を引き出すというものでした。今回は逆に売上高や利益を悪い方向に操作して、公的な資金を引き出しています。通常の粉飾とは逆方向だから、許されるという性質のものではありません。どちらも決算書の数値を自分の都合のいいように恣意的に操作して不正に資金を獲得していることには変わらないのですから。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》同一労働同一賃金に向けた賃金制度

◆賃金制度や評価基準が必要な時代になる
 2020年から大企業、2021年からは中小企業に、働き方改革の一つ、同一労働同一賃金制度が適用予定です。同一労働同一賃金を行うには賃金制度と社員の賃金額を決定するための評価基準を定めなければならないでしょう。

◆どのような賃金制度があるか
 賃金制度は様々ありますが主なものを見ていきましょう。
・年功給:年齢に従って賃金を決めます。社員との信頼関係を強くでき長期人材育成に向きます。しかし、高齢化による人件費増加や貢献度では上昇が変わらずぬるま湯体質になりがちです。
・職能給:社員の能力に従って賃金を決めます。柔軟な人事、人材活用、能力開発に向いています。ただし年功的運用になりやすく、不適切な評価をすると社員の不信感につながります。
・職務給:仕事に対して賃金が決まります。仕事と給与の関係が明確です。不要な業務の削減や職務意識の強い専門家育成に効果的です。一方で仕事に人を配置するため異動が難しく人事は硬直化します。企業への帰属意識も高くなりにくく、担当の仕事以外の設備導入や業務効率化などには非協力的になる傾向です。
・役割給:業績、役割、貢献度に応じた賃金にしやすく、年収感覚もマッチしやすいためチャレンジ意欲の高揚につながります。他方で基準作成の難しさや目標の抑制傾向が見られます。
・歩合給:売上等の成果に応じて賃金が変動します。賃金の算定基準が明確でわかりやすく、成果に応じた賃金のためやる気につながります。しかし売ればいいとお客様軽視になりがちで、不安定な賃金は販売が伸びないと意欲低下を招きます。
・行動給:行動や姿勢によって賃金が変動します。経営理念や方針、戦略と連動させやすく望ましい組織風土を醸成させます。社員の行動の質も高めやすいのですが行動基準の更新をしていく必要や重要な行動の抽出、言語化は難しい傾向です。また行動の基準が決まるため基準に合わせた行動しかしなくなる行動の標準化問題があります。

◆組み合わせて使いましょう
 それぞれの賃金制度には長所短所があります。一つの制度ではカバーできないので数種類を組み合わせるとよいでしょう。

(前編)非常用食料品等は、長期間保存でも購入時に損金算入が可能!

地震や異常気象による集中豪雨や洪水、大型台風などの緊急時に備えて、非常用食料品や防災用品を備蓄している企業も増えているようです。

 非常用食料品の中には、フリーズドライ食品のような長期間保存のきくものもあり、酸素を100%近く除去して缶詰にしたものは、賞味期間(品質保証期間)は25年間ですが、80年間程度は保存がきき、何事もなければ次に買い換えるのは数十年後になるといわれております。
 ある会社では、地震などの災害時における非常用食料品(長期備蓄用)としてフリーズドライ食品1万人分2,400万円を購入し、備蓄しましたが、税務上の取扱いは長期間保存がきくものですと、どうなるのか疑問に思うところです。

 この点、非常用食料品は、備蓄時に事業供用があったものとして、そのときの損金の額(消耗品費)に算入できるとしております。
 また、その品質保証期間が2~3年と短いものは、その期間内に取り替えることになりますが、その取替えに要する費用も、その配備時に損金算入することができます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年8月5日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》同一労働同一賃金の動向

◆雇用対策法から労働施策総合推進法へ変更 
 4月から働き方改革法が実施され、年次有給休暇や時間外労働時間の上限規制の問題の次にやってくるのが同一労働同一賃金です。正規か非正規かという雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し不合理な待遇差の解消を目指そうとするものです。昨年6月、最高裁で同一労働同一賃金を争点とした2つの重要裁判の判決がありました。
1.ハマキョウレックス事件
・正規社員と非正規社員の間の手当の不支給等の差別訴訟
・手当や賞与等それぞれの趣旨目的に基づく不合理性の検証が求められた
2.長澤運輸事件
・定年再雇用者の賃金減額の差別訴訟
・定年後の雇用に一定の年収減は容認。ただし自由に年収を下げられる訳ではない

◆時流は差異縮小の方向へ
 今年になってからも重要な判決が次々と高裁で出され、5年超の勤続者に対する差異が問題とされるケースが目立っています。
 一方「パート・有期法」においても短時間労働者や、有期雇用者から待遇差に対する説明を求められた時には事業主は説明をしなくてはなりません。その待遇の性質・目的を分析し、待遇相違の説明が出来ること、つまり同一労働同一賃金の本命は人事制度整備の必要性であることが示されたと言えるでしょう。

◆これから企業としての対策は
 では対応はどのように進めるのがよいでしょうか?
・現状で不合理性があるか否かの判断 
①業務内容、責任の度合い、人事評価制度、職責上の責任
②人材活用の仕組みの違い、配置転換など
③労組、従業員との交渉
・福利厚生や諸手当等不合理か差異の検証
・基本給、賞与、退職金、扶養手当は最高裁の判断待ち
・賞与については正規に出しているならゼロは認められない可能性あり
・賞与、退職金共に業績連動、評価反映、ポイント制等一律でない支給方法の検討
・5年を超える長期勤続の非正規従業員についての待遇差は要注意
 このようなことを考慮しておけば不合理とはされにくいでしょう。今から準備しておきましょう。