【時事解説】法整備で不正転売を撲滅できるか その2

6月に入場券不正転売禁止法が施行され、コンサートやスポーツのチケットに関して、インターネットでの高額転売が禁止となりました。違反した人には、判決に従い1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科されます。

 最近では、人気のチケットがネット上で高額で取引されています。買い占めが横行した一因には、インターネットでチケットの購入ができるようになったことが挙げられます。業者はコンピューターの自動プログラムを使い、チケット販売サイトに大量にアクセスして買い占めます。あるイベントでは、チケットの販売開始直後、アクセスの9割が自動プログラムだったこともあります。

 法整備のほかにも、転売対策は講じられています。東京オリンピックでは、チケットを購入するには、事前に個人情報を登録してIDを取得する仕組みを採用しました。大会の入場時には身分証の提示が求められ、登録情報と照合します。業者から購入したチケットは業者のIDが登録されているので、照合できず無効となります。

 ただ、転売対策の難しさは、転売そのものを禁止にすると、突然行けなくなった場合、他者に譲りにくいという問題が生じます。結果、スケジュールがはっきりしない人はチケットを買いづらくなり、チケットの売上に陰りがでる可能性もあります。

 そこで登場したのがイベントに行けなくなった購入者がチケットを再販できる公式サイト「チケトレ」です。チケットはすべて券面価格で取引されます。また、東京オリンピックについては、2020年春に公式のリセール(再販売)サイトが立ち上がる予定です。不要となったチケットはこのサイトにて定価で売ることができるようになります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】法整備で不正転売を撲滅できるか その1

6月に入場券不正転売禁止法が施行されました。これはインターネットでのダフ屋行為(売り出された時より高い価格で転売)を禁止したもので、違反した場合は1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科されるというものです。

 これまでも、路上など、公共の場でのダフ屋行為は、都道府県の迷惑防止条例で禁じられていましたが、インターネットは公共の場とは解釈されないので、規制がありませんでした。

 2020年には東京オリンピックが開催されることもあり、転売対策は喫緊の課題となっています。というのも、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、チケットの販売率が87%だったにもかかわらず、多くの競技会場で空席が目立ちました。これは、転売を目的とする業者がチケットを大量購入し高額で転売したためです。値が吊り上がったことで、一般の人は手を出しづらくなり、結局、チケットを売りつくすことができませんでした。その結果、売れ残りにより空席が生じました。

 オリンピックだけではありません。今秋、日本ではラグビーのワールドカップが開催されます。人気の対戦、ニュージーランド対南アフリカは、定価では4万円なのに、ある転売サイトにて約11万円で販売されたこともあります。このほかにも、人気のロックグループのコンサートや野球などのスポーツ観戦といった人気のチケットがネット上で高額で取引されています。

 転売は、観戦希望者が適正価格で観戦できないばかりか、空席が目立てば、イベントに対するイメージの悪化にもつながります。転売はイベントに参加する側だけでなく、開催者にとっても頭の痛い問題です。こうした背景から、入場券不正転売禁止法が生まれ、今後、不正な転売の撲滅が期待されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】柔軟な働き方の選択肢としての起業 その2

では、起業という選択肢をとる過程で、具体的にどのような柔軟な働き方に向けた取組みが行われているのでしょうか。そこで日本政策金融公庫総合研究所編『2019年版 新規開業白書』の事例として、育児・介護によって営業時間を短縮させた事例として紹介された、おむすび・お茶漬け米手(所在地:山口県)の事例についてみていきましょう。

「おむすび・お茶漬け米手」は、現代表者が祖母から3代にわたり受け継いできた味を復活させようと2012年に創業したおむすび店です。現代表者の祖母と母は、おむすび屋を営んでおり、現代表者も20歳の頃から20年近く店を手伝い、おむすびの握り加減やこめの炊き方を体得しました。しかし母が60歳のときに引退して店は閉店し、当時小学生の子供2人を育てていた現代表者も一旦専業主婦に戻りました。

しかし閉店から2年たってもおむすびを懐かしむ常連客の声が後を絶たなかったこともあり、おむすび屋の開業にこぎつけました。開業後は50年続いた味を復活させたことなどが話題となり、新規の顧客が増え、月曜以外は昼も夜も店を開ける日々が続きました。

しかし親の介護や、孫の世話など仕事と家庭の両立の必要性に迫られたことから、家庭を優先させることとしました。日曜日を終日定休とし、客単価が高い夜の営業も週2日に減らしました。仕込みはベテランの従業員に任せ、親や孫の世話をしてから店に出るようになりました。開業当初より売上は減りましたが、店は代表者にとって常連客やスタッフとの会話によって息抜きできる大切な場になっています。

このように、家庭と仕事を両立させながら仕事をする選択肢として起業という手段が取られることもあるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】柔軟な働き方の選択肢としての起業 その1

わが国が人口減少社会を迎え、働き方改革を進める中、起業という選択肢をとる人も多様化してきています。

 日本政策金融公庫総合研究所が2018年7月に実施した「2018年度新規開業実態調査(同公庫国民生活事業が2017年4月から同年9月にかけて融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業8,332社を対象)」によると、現在の事業からの収入が、経営者本人の定期的な収入に占める割合は、「100%(ほかの収入はない)」と回答した割合が52.9%と過半数を占めたものの、5年前に実施した2013年度の調査では同割合が80.5%となっており大幅に低下していることがわかります。他方、「100%未満(ほかに収入がある)」と回答した割合は47.1%と5年前の19.5%から上昇しており、その中でも「25%未満」の割合は22.7%と5年前の5.3%から大幅に上昇しています。このように事業以外からも収入を得ながら開業する人の割合が増えていることがわかります。

 また、開業者の1週間当たりの労働時間の平均は51.1時間となっており、5年前の63.2時間から減少しています。内訳をみると「50時間以上」が55.7%と最も高い割合を占めるものの、5年前の73.6%から大幅に低下しています。一方で「40時間未満」と回答した割合は18.8%と、5年前の6.8%から大幅に上昇しています。これらの背景としては、既述のとおり事業以外からも収入を得る開業者が増えていることや、開業者の働き方がワークライフバランスを重視し、長時間労働を是正する方向に変化していることがあると考えられます。

 このように近年では柔軟な働き方の一環として起業という働き方が選択されていることがみてとれるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》定年延長の関連施策 選択定年制と退職金制度

日本を代表する自動車メーカーの1つH社は65歳定年延長に伴い選択定年制の導入、退職金制度の改定などに取り組んでいます。
 その背景は、65歳まで就労を希望する従業員がいる一方で、60歳で退職を希望する声もあり、60歳以降の就労意識は多様化していることにあります。その概要を紹介しましょう。

[選択定年制の導入]
 定年年齢を延長するに当たり、対象者が定年時期を60~65歳の間で自由に選択できる選択定年制を導入した。
 個々のニーズに合わせて定年時期を自身で決定できる制度。
・自身の健康面や家族の状況などは都度変化することを考慮し、一度決めた定年年齢につき、1年ごとに意向を確認、変更を受け付ける仕組み。具体的には、55歳時点で定年時期の意向を確認し、59歳時点で定年時期を決定。直近1年以内の定年を選択した場合は変更できないが、1年以上先の場合は年に一度、申告した定年時期を変更することができる。

[退職金制度の見直し]
・定年年齢の引き上げにより、退職金カーブの見直し。60歳を頂点としていた積み上げカーブを、65歳を頂点としたラインに引き直した。ただし、60~64歳の間に退職する場合も、選択定年制という意味合いから、65歳時点と同水準となるよう、差額分については一時金(選択定年一時金)で補填。年金化できる額としては差が生じるが、一時金ベースでは60歳~65歳は同水準。
 なお、今回の改定に当たり、確定拠出年金(DC)も導入。掛金は等級ごとに一定額、DC移行分は退職金全体の約1割相当。

[更なる主体性の発揮を促す]
 創業当時から能力・実力主義の考え方をベースとし、職種や学歴によらない一本の処遇体系を運用してきた。今回の改定では、従業員一人ひとりに能力発揮を促すためにも、その考え方をさらに推し進め、主に、等級の統合、給与設定ルールの見直し、自動昇格の廃止を行った。なお、評価制度には大きな見直しは加えていない。

 このように、定年延長は、広く関連人事制度の改定、施策の実施を伴い、それらがバランスよく、整合的に整備されてはじめて機能するもので、社員の意識改革が不可欠な重要な内部環境整備・強化の施策です。

(後編)国土交通省:次世代住宅ポイント制度の対象建材等の型番を公開!

(前編からのつづき)

 すでにポイント発行申請は始まっており、商品交換申込は本年10月1日から予定されております。
 対象は、2019年10月以降に引渡しを受ける住宅で、注文住宅(持家)・リフォームの場合は2019年4月~2020年3月までに請負契約・着工をすることが必要ですが、税率引上げ後の反動減を抑制する観点から、2018年12月21日~2019年3月に請負契約を締結したものであっても、着工が2019年10月~2020年3月となるものは特例として対象となります。

 分譲住宅の場合は、2018年12月21日~2020年3月までに請負契約・着工し、かつ売買契約を締結したものか、2018年12月20日までに完成済みの新築住宅であって、2018年12月21日~2019年12月20日までに売買契約を締結したもののいずれかが要件となっております。
 なお、発行ポイント数は、住宅の新築(貸家を除く)の場合は1戸当たり上限35万ポイント、住宅のリフォーム(同)の場合は同上限30万ポイントとなっておりますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年7月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)国土交通省:次世代住宅ポイント制度の対象建材等の型番を公開!

国土交通省では、次世代住宅ポイント制度の発行対象となる建材・設備の具体的な型番をホームページ上で公開しており、開口部の断熱改修、外壁、屋根・天井又は床の断熱改修、エコ住宅設備、バリアフリー改修設備、家事負担軽減設備に分かれ、開口部の断熱改修の場合は、さらにガラス、内窓、外窓、ドアに分けたうえで各メーカーの製品名・型番等が並んでおります。

 次世代住宅ポイント制度とは、2019年10月の消費税率10%への引上げを踏まえ、住宅取得支援策として、省エネ・耐震・バリアフリー、家事負担軽減に対応した一定性能の住宅の新築やリフォームをした場合に様々な商品等と交換できるポイントを発行します。

 なお、エコ住宅設備(リフォームが対象)では、太陽熱利用システム、高断熱浴槽、高効率給湯機、節水型トイレなどが、バリアフリー改修設備(同)では、ホームエレベーター、衝撃緩和畳が、家事負担軽減設備(新築・リフォームが対象)では、ビルトイン食器洗機、掃除しやすいトイレ、浴室乾燥機、掃除しやすいレンジフードなどが制度の対象となります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年7月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》パワハラ防止措置の義務と対策

◆パワハラ防止措置を企業に義務付け
 令和元年5月に職場におけるパワハラ防止措置を義務付ける「労働施策総合推進法」が成立しました。パワハラに関してはこれまで定義や防止措置を定めた法律はありませんでしたが、パワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上かつ必要な範囲を超えたもの」と定義しました。事業主は労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備や雇用管理上の措置を講じることを義務付けています。

◆従前の防止措置の見直しや改善の機会
 この法律の条文ではパワハラの定義、事業主のパワハラ防止措置義務、事業主による不利益取り扱いの禁止、講ずべき措置を指針で定め、事業主は防止のための研修の実施やその他の配慮等をするよう規定されています。しかし何がパワハラか、何の措置をするのかは明確ではありません。具体的には指針で示されるとされています。
 企業はパワハラにおいて「相談者の訴えがパワハラに該当するのか否か」「パワハラと業務上の指導との線引きはどこか」というのがわかりにくいものです。今後示される指針においてもパワハラの線引きは難しいのではないかと思われます。パワハラに該当するか、どこまでが業務上の指導なのかは各企業の業種、風土、状況、目的、必然性、立場等背景が様々だからです。各企業によって、うちにとってこれはパワハラに当たるのか、このような行為は好ましくないのではないかを考えることで、企業と従業員が納得できる認識を持てるようにすることが理想ではないかと思います。

◆事業主は安全配慮義務を負う
 パワハラは職場環境を悪化させ従業員の心身の健康を損なう危険を有するものです。
 パワハラは上司から部下に対するものばかりではなく、対等な従業員間でのいじめや嫌がらせ等深刻な事態になりそうな時は安全配慮義務から指導も必要でしょう。また指導義務の直接の対象ではないものの顧客や取引先におけるカスタマーハラスメントも耳にします。一方で自社社員が加害者にならないとも限りません。このように事業主は相談体制や研修を通じ多面的にハラスメントに対する防止措置を果たすことが必要とされてくるでしょう。

《コラム》消費税増税対策 プレミアム付商品券とは?

◆バラマキと揶揄されても再登場
 今年10月1日から、2020年3月31日までの半年間の有効期間で、国主導のプレミアム付商品券が使用可能となります。発行は各地方自治体となっており、使える場所はその地方自治体のエリア内の小売店となります。このプレミアム付商品券は、過去を遡れば「地域振興券」として1999年4月から9月に流通したものがありました。景気浮揚策として採用されましたが、「あからさまなバラマキである」と、政権与党を批判する論調が非常に多く、未だその印象は払拭できていませんが、消費税改正に併せて「消費税増税に対しての低所得者や子育て世代への影響緩和」を目的として、再度登場の機会を得たようです。商品券に付与されるプレミアム分は政府が支出する税金ですから、商品券を使った人は実質的な減税となる、といった具合です。

◆今回の適用者とお得感
 今回、プレミアム付商品券が購入可能な対象者は
①住民税(均等割)非課税世帯
②2019年9月30日の時点で0歳~3歳半の子供が居る世帯
となります。2019年度住民税非課税の方には申請書が郵送され、必要事項を記入して返送すれば、審査の後購入引換券が届くのでそれを利用します。子育て世帯には直接購入引換券が届くようです。
 購入に関しては、5,000円分が4,000円で買える上で、最大2万5,000円分まで購入可能(子育て世帯は子供1人につき2万5,000円まで)なので、5,000円分がお得なプレミアム部分となります。なお、1枚あたりの額面は500円、おつりが出ないので気を付けましょう。

◆消費税増税への対策は十分ですか?
 国はプレミアム付商品券・食料品への軽減税率・キャッシュレス決済へのポイント補助・住宅ローン周辺の改正等、消費税増税に対しての買い控え等、景気の冷え込み対策を数多く準備しています。この10月からの景気の動向にも注視しつつ、自分がどういう施策に該当するのか、どのような手続きを取ればいいか等、今のうちに確認をしておきましょう。

【時事解説】自社の中核を磨く その2

同業種におけるライバル企業は似たような商品を作り、同じようなルートで商品を販売しているのですから、重なり合う部分が多く、その重複する分を共同でやれば経費削減効果が大きいのは自明です。

 しかし、共通する部分は何でも一緒にやればいいというわけではありません。共同していい分野と、してはいけない分野があります。それを決めるのは自社の中核業務と周辺業務の見極めです。自社の中核、つまり自社のアピールポイントをどこにおくかを明確にしておかなければなりません。食品業界で自社のアピールポイントが味であり、味では他社に負けないと考えるなら、物流で提携することは合理的です。しかし、自社の強みは迅速な配達であるとするなら、物流で妥協することはできません。アマゾンなどはこうした側面もあり、物流にも相応なこだわりがあるように見えます。

 とにかく、中核部門では譲らず、それ以外の周辺業務は他社との提携の対象とし、経費の圧縮を図るべき部門となります。しかし、自社のコアとなる価値が不確定なまま提携すると、大手や商品力の強い企業にのみ込まれてしまう危険性があります。

 需要の減退に直面する業界では、経営統合の前に、同業他社との提携は有力な選択肢だと思われます。それは何も全国ブランドの大企業だけの話ではありません。地域で観光や地場産業などで同種企業が併存し、全体の業績が低迷している地域は珍しくありません。需要が伸びている時には、ライバルとして切磋琢磨してきた企業同士でも、需要が減退すれば、提携も考えていかなければなりません。

 そうしたときのためにも、中核業務と周辺業務を峻別し、他社に負けない中核的企業価値を育成しておく必要があります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)