【時事解説】自社の中核を磨く その1

最近、同業者間での業務提携の発表が相次いでいます。先日は三菱UFJ銀行と三井住友銀行がATMで相互提携を行うと発表しました。金融だけでなく、食品業界をはじめとして物流分野を中心に、同業者間の提携が拡大しています。昨日までライバルとして容赦のない競争をしていた企業が、これまでの因縁を乗り越え、明日からはパートナーとして一転提携する時代に入りました。

 マーケットが拡大しているときには、人を増やし、技術開発や販促費にカネを注ぎこみ、拡大するマーケットから自社の取り分(売上)をできるだけ多く獲得することが当然の企業戦略でした。徹底的に前向きに競争することにより、お互いが強くなれる時代だといえます。

 しかし、そうした良き時代は過ぎ去り、我が国は人口減少時代に突入しました。それに加え、政府・日銀の懸命な努力にもかかわらず、将来不安からデフレマインドは止まらず、消費者の財布のひもはゆるみません。消費者が少なくなることに加え、その消費者はネットを駆使しながら、できるだけ安く買おうとします。国内マーケットの縮小は必至であり、国内を主戦場とする企業は何らかの対策が迫られます。

 マーケットの縮小が不可避で、売上は現状維持が精一杯だとすれば、利益確保のためには、経費削減しかありません。当然、単体企業でできることから始めますが、それだけでは限界があり、次に企業の枠を超えた経費削減のステージに入っていきます。複数企業の共同による経費削減の究極の形は合併等の企業統合になりますが、合併はすべてが一社に集約される会社組織の全面的変革であり、そこまで持って行くのは容易ではないし、会社の数を減らすことが必ずしも正解となるわけではありません。そこで、現在の企業形態を維持したまま、特定部門に絞った複数企業の共同化が有力な戦略として浮上するわけです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》中途採用者の定着率

◆採用後の定着率は?
 人手不足の続く中、求人募集しても「良い人からの応募がない」「そもそも応募が全然来ない」という企業も多いようです。
 一方でたとえ良い人材を採用できたとしても離職率が高いとなかなか人手不足の問題は解決しません。中途採用者を採用できても定着してもらうまでには一定の時間や労力がかかります。定着率は気になるところですがそれを高めて行くにはどのような対策があるでしょうか。
 エン・ジャパンの調査による直近3年間で中途入社(正社員)がいる企業を対象にした「中途入社者の定着」についてのアンケート調査(回答693社)では、約4割が「中途入社者の定着率が低い」と回答しているそうです。業種別にみると「流通・小売関連」51%、企業規模では「1000名以上」(48%)が最も高い割合です。また、中途入社者が退職に繋がりやすい期間を聞くと37%が「1か月未満~6か月」と答えているそうです。3社に1社は入社者が早期の退職者になっていることが分かります。

◆定着率向上のための取り組み
 同調査で企業が中途入社者の定着率の向上のために行っていることを聞くと「定期で行う上司との面談」(53%)、「歓迎会での交流」(50%)との回答が多くなっています。
 実際の取組による定着率に寄与した度合いが良かったものとしては「定期で行う人事との面談」、「定期で行う上司との面談」が挙がっています。また、実際に行っている企業は1割程度ですが「メンター制度によるフォロー」が挙がっています。
 一方で「中途入社者コミュニティへの参加」「社内見学」はむしろマイナスの影響があるとしています。

◆効果のある取組を取り入れる
 人手不足の中、採用後の検討もなしに採用しても離職率という観点からはリスクがあります。また、会社側が良かれと思って取り組んでいた定着率向上のための取組も実際に効果がないことや、むしろマイナスに働いている例もあります。給与や休みの増加だけでは不十分な時もあります。
 中小企業は上司や経営者との距離が近いので、例えば社員からの意見に耳を傾け、会社の改革を積極的に取り入れる等、ボトムアップ型で効果のある取組を検討しながら進めることが大事でしょう。

 

《コラム》マイ・タイムラインと中小企業防災・減災投資促進税制

◆マイ・タイムラインって何?
 最近、地方自治体等が積極的にオススメしているのが住民の自主的な「マイ・タイムライン」の策定です。
 マイ・タイムラインとは、風水害・土砂災害等の際の避難を促すためのもので、(1)ハザードマップを見て、自分の住んでいる場所で想定される災害を把握する、(2)防災気象情報をどこから・どんな方法で入手すればいいのか把握する、(3)避難に関する情報や気象に関する情報の度合いによって、どんな行動を取るのか書き込む、といった作成工程になります。
 最近では会社で災害が発生した場合の行動について、手順書等を作っている企業も多いでしょう。要はその個人版です。共働きの家庭や、学校等への外出などで家族がばらばらの時にも「ウチはこういう状態ならばこんな行動を取ろう」と、一度作成しておけば慌てずに行動できるはずですから、是非一度マイ・タイムラインの策定を行ってみてください。

◆中小企業にも災害への事前対策を
 平成31年度税制改正において、中小企業が行う災害への事前対策を強化するために、防災・減災設備を取得した場合に、20%の特別償却を認める新しい制度ができました。
 機械装置(100万円以上)、器具・備品(30万円以上)、建物附属設備(60万円以上)の中で、災害への事前対策を強化するために取得する防災・減災設備が対象となります。
 例えば、災害への備えとして設置する自家発電機や排水ポンプ、データバックアップシステムや衛星電話、貯水タンクや排煙設備等が対象になります。

◆計画の認定が必要となります
 特別償却を受けるためには、経済産業大臣に、事業継続力強化計画を申請し、認定を受けることが必要になります。
 なお、この制度を利用できるのは青色申告書を提出する中小企業等ですが、前3事業年度の平均所得金額が15億円を超える事業年度である場合は、適用除外事業者となり、制度が利用できませんのでご注意ください。

【時事解説】波平さん理論は日本を救えるか? その2

「波平さん理論」が注目を集めています。長寿漫画「サザエさん」の登場人物、磯野波平さんは新聞連載が始まった1946年以降、変わらずの54歳。当時と比べて、現在の日本人はずっと若く、平均寿命も延びています。波平さん理論とは、年金や健康保険などの社会保障制度は波平さんをモデルに設計されているので、現代社会にそぐわなくなっているというものです。

 波平さん理論は社会保障制度に関する課題を浮き彫りにします。ただ、それだけでなく、対象を自社に当てはめると、ビジネスモデルの老朽化といった、身近な問題点をも知ることができます。

 金融業界に目を向けてみましょう。銀行のシステムは、波平さんの世代を前提に作られています。たとえば、波平さん世代は、就職後は結婚、子ども(子育て・進学)、住宅購入とイベントがあります。なかでも、住宅購入では資金が必要になり、銀行はローンなどの商品を用意しています。ところが、最近では、未婚者が増え、住宅は賃貸派の人が多くなりました。従来の想定では網羅しきれない層が生まれ、銀行は顧客ニーズを細分化して、多様な金融サービスが必要になりました。

 このほかにも、波平さん理論を当てはめることで、自身の課題が浮き彫りとなる分野があります。小売業は消費が拡大することを前提に、店舗を展開してきました。かつて、週末は、家族で百貨店に足を運び、買い物や食事を楽しむ姿がありました。ところが、現代では、買い物はネット通販で済ませ、実店舗に足を運ぶ機会は減っています。また、人口の減少により、消費の拡大も進まなくなりました。ほかの分野でも、同様に、波平さん理論を当てはめることで、今、何をすべきか課題が明らかになります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】波平さん理論は日本を救えるか? その1

「波平さん理論」が話題を呼んでいます。先日、要人の発言を機に、新聞やネットなどで議論されるようになりました。波平さんとはご存じ人気長寿アニメ「サザエさん」の登場人物で、主人公サザエさんの父、磯野波平さんです。

 波平さん理論とは、今の日本人は波平さんと比べるとずっと若い。加えて、日本の社会保障制度は「サザエさん」が誕生したころに作られているため現代社会にそぐわなくなっているというものです。波平さんの年齢は54歳。現代社会で、50歳代といえば、サッカー選手の三浦知良氏が52歳、ロックグループB’zの稲葉浩志氏は54歳、ほか福山雅治氏(50)など、波平さんと比べると著しく若いです。

 サザエさんの連載が始まったのは1946年。当時、男性の平均寿命は60歳程度、会社の定年は50歳代半ばでした。「サザエさん」の設定において、波平さんは定年が近く、定年後は10年もたたないうちに平均寿命に達するのです。

 当時の人生60年時代から、今では人生100年時代になり、男性の平均寿命は81歳と波平さんの頃とは20年も差があります。何らかの対応が必要なのは明らかです。では、どのような解決法があるでしょうか。キーとなるのは「生物学年齢」です。

 年齢には実年齢と生物学年齢の二つの概念があります。生物学年齢とは、身体の成熟度をもとに割り出された年齢です。識者によると、生物学年齢でいうと、1946年における54歳は2016年では74歳に相当するといいます。波平さん理論をもとにした制度改革の一つは、会社員の定年退職年齢を実年齢ではなく、生物学年齢に応じて設定すればよいというものがあります。平均寿命が延びた分、人生における働く期間を増やすという選択肢を設けることが解決につながります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】島根県における女性活躍 その2

では、島根県では具体的にどのような女性活躍支援の取組みが行われているのでしょうか。

 島根県では、「しまね女性の活躍応援企業」登録制度に基づく企業の登録を行っています。
 これは、女性活躍推進法(2016年4月施行)において女性活躍に係る事業主行動計画の策定義務が規定されたことを受け、女性活躍推進法に基づく行動計画策定企業等を「応援企業」として登録するものです。登録企業のメリットとして、①登録企業を県ホームページや企業説明会等でPR、②登録企業対象の補助金制度(中小企業・団体等のみ)、③登録企業対象の表彰制度、④県庁舎の清掃業務・各種警備業務委託の入札参加資格審査での加点、⑤県の調達における受注機会の増大のための取組の実施などがあり、2019年5月末現在で208企業・団体が登録されています。2017年度には、島根県内の大学、高等専門学校、高校と連携し、学生が「しまね女性の活躍応援企業」の登録企業を取材し政策したPR動画をインターネットで公開するなど、学生と企業が交流する機会を創出しつつ女性活躍に取組む企業の魅力向上に貢献する取組みを行いました。

 また、女性活躍を推進するための体制として2016年10月に、しまね働く女性きらめき応援会議という協議会を設立しています。
 この協議会は経済団体、農林水産団体、女性団体、高等教育機関、学識経験者、行政からなる計35団体で構成され、女性活躍推進に向けた連携体制の構築と情報共有、課題の分析と目標設定、事業の実施などが行われています。

 このように島根県では、行政、支援機関、高等教育機関などが一体となって企業の女性活躍推進を支援する取組みが行われているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】島根県における女性活躍 その1

中小企業が人手不足の問題を抱える中、人口減少がとくに深刻な地方圏において女性の積極的な労働参加による活躍が求められています。
 総務省統計局「平成29年度就業構造基本調査」によると、島根県における15歳~64歳(生産年齢人口)の女性の有業率は74.5%と全国2位、育児をしている女性の有業率は81.2%と全国1位となっています。

 島根県が2017年3月に実施した調査によると、島根県における女性労働参加率の高さの要因として、第一に仕事と家庭の両立を支援する環境が整っている点があげられます。島根県では三世代世帯率が高く、親の協力を得られている家庭が相対的に多くなっています。また、育児中男性の労働時間の短さ、長時間労働者の少なさ、夫の家事・育児分担率の高さなどといった夫の協力も得られやすいという特徴があります。さらに待機児童の少なさなどといった育児施設の充実も要因としてあげられます。第二に、女性の就業に対する意識の高さがあげられます。島根県では「男は仕事、女は家庭」といった固定的性別役割分担意識を否定する意識が強い点があげられます。また、女性の起業者が多い、女性の正規雇用者比率が高い、女性の就労継続意識が高いなどといった女性の働く意欲の高さも要因として挙げられます。第三に、男女ともに相対的に賃金が低い、男性の低所得層の割合が相対的に高く、夫に扶養されている女性が相対的に少ないなどといった経済的な理由により、働いている女性も存在する点があげられます。

 このように、島根県における女性の労働参加率の高さには、仕事と家庭の両立支援、女性の就業意識の高さ、経済的な理由などが背景としてあるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》労働基準監督署の調査で慌てないために用意しておくものとは

◆今後の法令改正の予定の背景
 一億総活躍社会の実現に向けて「働き方改革」が進んでいます。今後の改正は長時間労働の削減のための上限規制、非正規雇用の待遇改善の同一労働・同一賃金へと進んでいきます。

◆労基署の調査の種類
 改革に合わせた労基署の監督内容をまとめてみました。
臨検監督:監督官の主要な業務で事業所に立ち入り、関係労働者の労働条件や安全衛生等について調査するもの。原則予告なし。
・法違反が認められた場合は是正勧告
・要改善事項が認められた時は改善指導
・危険性が高い機械設備はその場で使用停止命令等が行われます。
 臨検監督には計画的に任意に選定して行われる定期監督、労働者の申告による申告監督、労災発生時に行う災害時監督、悪質・是正が不適切な時の再監督があります。

◆日頃から備えておきたい各書類
 調査の順番が回ってきたときもあわてないように、日頃からしっかりとした管理体制が求められます。
 会社の組織図、労働者名簿、賃金台帳、就業規則(諸規程含む)、従業員別の時間外労働・休日出勤の実績資料、勤怠ログ等勤務実績がわかる資料、36協定書、変形労働時間制等の定めをしている場合の労使協定、変形労働時間制のシフト表、年次有給休暇管理簿、労働条件通知書の控え等について
(1)作成・届け出義務
(2)未記載項目がないか
(3)労働時間管理は適正か
(4)割増賃金が正しく支払われているか
をチェックされます。
 また、健康診断の実施結果と50人以上事業所の場合は健康診断結果報告書、ストレスチェック実施報告書、安全委員会・衛生委員会の議事録等について安全衛生体制が適正になされているかをチェックされます。

◆指導の多いもの
 指導が多いものとして、すべての労働者について客観的な方法での時間把握、みなし労働時間制の不適切運用、36協定を作成せず又は届け出ていない、36協定の労働者代表の不適切選出、名ばかり管理監督者、労働条件通知書を交付していない、未払い残業代等があります。日頃から必要書類を準備しておきましょう。

 

《コラム》勤怠システムのさまざまな種類

◆働き方改革で求められる勤怠管理
 2019年4月より管理職も含めた、「労働時間の客観的な把握」を企業に義務付けられたことや、年次有給休暇の5日取得義務化が始まり勤怠管理システムにも注目が集まっています。勤怠管理システムといっても何種類かに分類されます。今回は企業規模や価格等についてみていきます。

◆勤怠システムの種類
 大きく分けて3種類に分類されます。
・オンプレミス型・・・サーバー、ソフトウェアを自社で購入して構築するタイプ。自社で環境を用意するため高価格です。目安として500万円から、年間保守費用も15%といわれています。最大の優位性は自社独自のカスタマイズを行うことができる点です。他の自社システムとの完全な連携をとることができます。社員数が多い場合等、マスターを多数のシステムで持っているとそれぞれのシステム管理が必要になってしまいますが、一元管理できていればその心配はなくなります。社員数は1,000名以上が目安になります。
・クラウド型・・・サーバーやソフトウェアの用意が不要でインターネット上で提供されているサービスを使います。最大のメリットは運用費用が平均300円/人と抑えられる点です。クラウド型の中にも勤怠の設定を自社でやるものとメーカーに設定してもらうものと2種類に分かれ初期費用が変わってきます。自社設定は初期費用がかかりませんが難しい設定を行う必要があります。メーカー設定型では初期費用80万円ほどと高くなりますが、勤怠システムの設定をメーカーに依頼できるため、運用開始ができないという心配がなくなります。両者の機能面の差はなくなっています。目安社員数は数十名から500名です。
・タイムレコーダー無料サービス・・・タイムカードをExcel等に出力できる機能がついているものです。簡易的に勤務時間が集計できるだけの機能です。早急に勤務時間の把握をしなければならないとき等で、これから新たに導入する必要性は低いでしょう。

◆勤怠システムで業務を分散
 勤怠システムはうまく使えば業務量をシステムに請け負わせ分散することができますが、適切に導入できないと業務が増える原因になります。会社のプロジェクトとして進める必要があります。

 

被後見人の欠格条項廃止

認知症などで判断能力に不安がある人が利用する「成年後見制度」を巡り、後見を受けても会社役員などを辞めなくて済むようにする新法が、今国会で成立しました。同制度では後見する側とされる側の双方に様々な制約が課されることから、資産管理に不安があっても利用に踏み切れないという状況がありましたが、今後は認知症対策を踏まえた資産プランに新たな可能性が開けることになります。

 成年後見制度とは、認知症などで判断能力に不安がある人の財産を、家族や専門家が本人に代わって管理する制度。大きく分けて、本人の判断能力によって、代理となる人の権限が最も大きい「後見」、重要な法律行為をサポートする「保佐」、本人だけでは難しいと判断した行為にのみ関わる「補助」に分かれます。

 3タイプのうち意思能力を欠く「後見」と意思能力が著しく不十分である「保佐」を受けている人は、これまで業務に支障を生じるとの理由からか多くの法律で「欠格条項」の対象とされてきました。公務員になれず、弁護士や税理士といった士業資格も取れずさらには建設業法や派遣業法の許認可など様々な場面で、成年後見の被後見人と被保佐人は資格に欠ける人間として規定されてきました。会社経営者も例外ではなく、会社法331条では、成年被後見人または被保佐人は「株式会社の取締役になることができない」と規定されています。そのため、社長が認知症を発症して成年後見制度を利用した結果、失職して収入を失うケースも生じていました。

 しかし新法によって、こうしたケースは今後なくなりそうです。今後は188の法律で規定されている被後見人と被保佐人の欠格条項が削除されます。もちろん、そのなかには会社法も含まれています。
 新法は早ければ今年12月にも施行される予定です。

<情報提供:エヌピー通信社>