【時事解説】株式市場再編の影響とは その1

先日、東京証券取引所は株式市場の再編を検討していると発表しました。現在、株式市場は東証1部(大企業中心の市場)、2部(中堅企業)、JASDAQ(新興企業、中堅もあり)、マザーズ(新興企業)の4つがあります。これを次の(1)~(3)のような区分で再編しようとしています。
(1) A市場…投資家の投資対象としてふさわしい実績のある企業(中堅企業中心の市場)
(2) B市場…高い成長の可能性を有する企業(現在のマザーズなどの新興市場に相当)
(3) C市場…国際的に投資を行う機関投資家をはじめ、広範な投資家の投資対象となる要件を備えた企業(現在の東証1部に相当)
これら3つに絞る案が有力です(各市場の正式名称は今後決定)。

 再編で関心を集めるのはどのような市場が生まれるかだけではありません。もう一つのポイントは東証1部の上場基準が厳格化されることにあります。具体的には、時価総額の基準を引き上げ、英文開示の義務付けなどが改正点として上がっています。詳細は検討中ですが、基準が著しく厳しい状況になると、上場企業数は大幅に減る可能性があるともいわれています。

 とりわけ、問題となるのは、現在、東証1部に上場しているのに、再編後、C市場(東証1部に相当)に残れない企業が生じてしまうことです。企業にとって、1部上場は「信用」の証でもあります。銀行融資の条件や、新卒採用で有利に働く部分があります。また、従業員にとっても、住宅ローン借り入れの融資審査に影響するともいわれています。1部上場企業でなくなると、これまで得ていた恩恵にあずかれないことになり、企業や従業員にとっては痛手となります。
 弊害は少なくできるのか、再編の行方に注目です。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における先端技術を用いたIT活用 その2

では、中小企業において、具体的にどのような先端技術を用いたIT活用の取組みがみられるのでしょうか。
 そこで「中小企業白書2018年版」において、AIを活用した事例として紹介された株式会社伝習館(本社:鳥取県鳥取市、従業員47名)の事例についてみていきましょう。

 株式会社伝習館は、鳥取県全域で小中高生向けの学習塾を展開する企業です。同社では2017年12月より、e-ラーニングによる教育サービス事業を行う、株式会社すららネットが開発したAIを活用した対話型のデジタル教材「すらら」を導入しました。「すらら」の特徴として、AI機能の搭載により生徒一人一人の回答パターンから弱点を解析して最適な問題を選んで出題するなど、生徒一人一人に合った対応をしつつ、学習意欲向上を促す対話を行う点があげられます。「すらら」の導入で予習をしてくる生徒が増えたことから、予習の有無で生徒の理解度に差が出るという問題が解決され、全体的なボトムアップが図られました。

 また、「すらら」には、復習用の小テストもあらかじめ用意されているため、講師が小テストを準備する手間や時間が省けるようになったことから、その分の時間を個々の生徒の指導やその準備等に充てることができ、サービスの質を高めることができています。また、クラウドを活用しているため、生徒の自宅での学習状況をオンタイムで講師が確認することができ、生徒に対する励ましを適切なタイミングですることができる点が、従来型のICT活用教材とは大きく異なっています。

 このように中小企業においてもAIなどの先端技術の活用によって業務の効率化を図りつつサービスの質を向上させることが可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における先端技術を用いたIT活用 その1

2017年5月に経済産業省産業構造審議会より公表された「新産業構造ビジョン」においては、人工知能(AI)、IoT、ビッグデータ、ロボットは第4次産業革命技術と位置付けられています。AIによって機械が自ら学習し人間を超える高度な判断が可能になり、IoTによって実社会のあらゆる事業・情報が、データ化・ネットワークを通じて自由にやりとり可能になり、ビッグデータによって集まった大量のデータを分析し新たな価値を生む形で利用可能になり、ロボットによって多様かつ複雑な作業についても自動化が可能になります。そして第4次産業革命技術に伴い産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性が指摘されています。

 「中小企業白書2018年版」に基づき、中小企業におけるAI、IoT、ビッグデータ、 RPA(Robotic Process Automation)の認知度と活用率についてみると、認知率の高い順に、AI(95.1%)、IoT(82.4%)、ビッグデータ(81.5%)、RPA(59.3%)となっています。一方で活用率については高い順に、IoT(5.3%)、ビッグデータ(2.1%)、AI(1.2%)、RPA(1.0%)となっています。このように先端技術は中小企業の経営者にとって認知されている一方で、中小企業による実際の活用は乏しいというのが実情となっています。

 一方で、先端技術の活用有無別に経営状況(売上高、経常利益額、3年前と比べた労働生産性)を見ると、AI、ビッグデータ、IoT、RPAのうちの少なくとも1つ以上を活用している企業は、そうではない企業よりも、売上高と経常利益額は増加傾向にある割合が高く、3年前と比べた労働生産性も向上している割合が高くなっています。
 このように先端技術を用いたIT活用は、経営にプラスの効果をもたらすのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》2019年注目の勤務間インターバル助成金

◆勤務間インターバル導入コースが拡充
 働き方改革法案の1つ、勤務間インターバル制度努力義務化がスタートしました。それに伴って4月より「時間外労働等改善助成金 勤務間インターバル導入コース」の助成金額が最大100万円に倍増しました。

◆どんな助成金なのか
 長時間労働を是正するため、勤務終了後9時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」を会社の規則にすることによって働きやすい会社を作っていくことが目標の助成金です。休息時間を作るには現状の働き方を効率化して生産性を上げていく必要があるでしょう。効率化を妨げている以下のような企業の課題解決の費用に助成金が出ます。
(1)人手に頼っている古い機械設備・システムで、調子も良くなく効率が悪い。
(2)働いている時間の記録をとっていない、または手書きをしていてはっきりとした労働時間の把握ができていない。
(3)業務上の無駄な作業があるようだが把握しきれていない。労働時間への意識があまりない。
 対策としては(1)であれば在庫管理負担軽減のためのPOS、自動食器洗い乾燥機、携帯型成分分析計、入出荷システム、ダンプカー追加、業務システム、多機能美容機器、3DCAD専用機など様々な業種、機器が対象で効率化UPを目指します。
(2)であれば出退勤管理システム、打刻機器が対象で正しい勤務時間の把握やメリハリのある働き方をサポートします。
(3)のような状態であればどんなにいいシステムや機械を入れても、意識が変わらない限り社内改革は進まないため、外部専門家による業務意識改善研修を受けることができます。

◆助成金の注目ポイント
 この中で注目なのは(1)の課題解決の有効活用です。勤務間インターバル制度を採用することで今まで高くて手が出なかった機械設備やシステムを会社負担も減らしながら導入や更新ができます。例えば11時間のインターバル制度を採用して100万円のシステム導入であれば3/4の75万円が助成金で軽減されます(助成上限は100万円)。働く環境がよくなれば社員も喜ぶでしょうし、機械導入の負担も減らすので一挙両得といえるでしょう。今年度注目の助成金をぜひ活用してみてください!

《コラム》飲食業界の人手不足対策に使える設備備品

◆どの業界も人不足の悩みはつきませんが
 昨今特に飲食店業界は「人が足りない」と悩まされています。人が採用できればそのような悩みは解消されていくと思いますが、なかなかすぐには解決できない課題でしょう。飲食店を継続していく上での損益計算で売上100に対して材料費と人件費の合計が60以上だと要注意といわれています。また水道光熱費が8以上であると使いすぎているようです。
 そのような人不足、コスト削減につながるであろう設備備品についてみていきます。

◆沸騰時間短縮寸胴
 寸胴鍋ですが、鍋底に炎をキャッチしやすくなるフィンがついている寸胴です。
 特長としては炎をキャッチしやすいフィンがついているため、同じ火力で効率的に鍋が温まります。一般的な60cm寸胴とフィン付きを比べると40分ほど短い時間で沸騰します。
 ざっくり年52,000円と年400時間の短縮になります。従業員に早く出てきてもらって仕込んであるスープを暖めてもらう時間を短くできそうです。

◆テーブル脚自動調整アジャスター
 次は1セット5,000円ぐらいで導入できる製品です。ホールにあるテーブルはガタガタすることがありますが、毎日開店前にテーブルの脚の調整をされている店も多いでしょう。そんな手間を自動調整の脚が解決します。ガタガタしていたとしても、特殊な粘弾性体によって物の数秒でテーブルのガタつきが解消されます。
 特にカフェで効果があるでしょう。毎日たくさんのテーブルを調整するのは大変です。自動で調整してくれれば他の準備に時間を回すこともできます。

◆他の業界でも色々な製品で時短が図れる
 今回は飲食店に注目しましたが「時間」は会社の経営資源(ヒトモノカネ時間)です。しかし時間短縮=コスト削減だけでなく従業員満足UP、お客様サービスUPにつなげたいものです。経営者が大きな改善に投資して、現場で小さな改善を積み重ねていくことが重要です。利益・資源を未来の会社・お客様・スタッフに投資することが繁栄する会社づくりにつながるでしょう。

 

消費増税で郵便代値上げ

総務省は10月1日の消費増税に合わせ、手紙(25グラム以下の定形郵便物)の郵便料金を現行の82円から84円に、はがきの郵便料金を62円から63円に値上げする方針を固めました。値上げは手紙が5年半ぶり、はがきが2年4カ月ぶり。

 この値上げはあくまでも郵便料金の引き上げで、切手の購入価格に税率引き上げ分が上乗せされたということではありません。消費税は国内で事業者が対価を得て行う取引を課税対象にしているものの、「土地の譲渡や貸付け」や「有価証券の譲渡」などいくつかの取引は非課税とされていて、「郵便切手類・印紙の譲渡」も課税されない取引に含まれています。増税を前に「63円切手」や「84円切手」が登場することが予想されますが、これは切手の価格が高くなったというわけではなく、配達にかかるお金が上がったことに伴い、その郵便サービスを切手一枚で提供するために発行されるものです。

 社内の税務処理においては、郵便切手を購入したときには消費税を非課税と処理し、配達代金として郵便切手を郵便物に貼って使用したときに初めて消費税を負担したとするのが本来の形と言えます。しかしそこまで厳密な処理を行うことは実務的ではありません。そこで、購入したときに課税対象の「通信費」に計上して、消費税を負担したものと扱う実務が認められています。

<情報提供:エヌピー通信社>

米ニューヨークで渋滞税を導入

市街地の交通渋滞を解消するため、ドライバーから「渋滞税」を徴収することを米・ニューヨーク州議会が決めました。4月1日に可決した予算案に盛り込まれています。慢性的な交通渋滞を緩和し、税収を地下鉄など公共交通機構の整備に充てるといいます。渋滞税の導入は全米で初めて。

 ニューヨーク市の深刻な道路渋滞は以前から有名でしたが、近年ではウーバーなどの配車サービスが普及したことにより、加速度的にひどくなっているそうです。そこで新税では、ニューヨーク市でも最も渋滞の多いマンハッタン島の南側に乗り入れる自動車から、1日1回徴収。税額は固まっていませんが、米国内メディアによれば普通車で11ドル(約1200円)、トラックは25ドル(約2800円)程度を徴収します。ただしタクシーやウーバーなどの配車業については適用外とする案で検討が進んでいるといい、どこまで渋滞緩和に実効性を発揮するかは未知数です。早ければ来年末から徴収が始まります。

 渋滞税の導入は全米では初ですが、世界的にみれば英・ロンドン市という先行事例があります。同市では道路渋滞が社会問題化していた2003年に渋滞税を導入し、現在では該当エリアに乗り入れる車から1日10ポンド(約1500円)を徴収しています。該当エリア内に住む人も自動車を使う時には1ポンドの納付が課されています。同市の交通局によれば渋滞税の導入によって渋滞は30%解消され、交通量は15%減少したそうです。

 日本では、恒久的な渋滞税が導入されたことはありません。しかし来年開催の東京五輪では深刻な交通混雑が予想されるため、首都高速道路の通行料を時間帯や車種によって変動させる「ロードプライシング」の導入が議論されています。首都高の通行料は現在最大で1300円(ETC普通車)ですが、競技が行われる日中は最大2~3千円まで値上げする案が出ています。すでに国土交通省や高速道路会社が具体的な検討を進めていて、日本でも「渋滞税」が導入される日は遠くなさそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》新元号と提出書類

◆平成40年は令和何年?
 西暦2019年5月1日から、日本の元号は「令和」となり、それに伴って国税庁から「新元号に関するお知らせ」というものが出ています。
 それによると「納税者の皆さまからご提出いただく書類は、平成表記でも有効なものとして取り扱うこととしております」となっています。ちなみに平成40年は令和で言えば10年です。今回は区切りが良いので変換しやすいですね。

◆他の役所の書類は?
 改元に伴う元号の年表示の取り扱いについては「関係省庁連絡会議申合せ」という通知が出ています。
 それによると原則各府省が作成する文章は、改元日以降は「令和」を使う。また、やむを得ず「平成」の表記が残る場合でも、該当表示は有効となるが、混乱を避けるように、訂正印や手書きの修正、文章や画面に「表記が平成でも有効」と注意書き等を入れるように推奨しています。
 また、「国民が各府省に申請等を行う場合において、改元日以降の年の表示が平成とされていても、有効なものとして受け付けるものとする」と記載されています。やはり平成でもOK、ということでしょう。

◆法律や政令はどうなるのか
 法律及び政令についても「平成」を用いて改元日以降の年を表示している場合はそのまま有効となります。
 また「改元のみを理由とする改正は行わない」としていて、「改元以外の理由により改正を行う際についでに直す」という方針のようです。ただし「改正しないと支障がある場合は、個別に検討して措置します」としているあたり、「念には念を」の気持ちを感じる文章です。

◆穏やかに少しずつ変わる改元
 今回の改元は前もって行われる日が分かっており、システム関係の方は「もっと時間を」と思ったかもしれませんが、対応は徐々に浸透してゆけばよいといった、柔軟な感じがします。
 ただ、外務省は西暦表記を検討する等、変化する姿勢もありました。この令和という時代、いったいどのように世の中は移ろってゆくのでしょうか。

【時事解説】財務諸表の時間軸の変遷 その2

IFRSでは有価証券だけではなく、多くの資産に時価評価(公正価値)を迫ります。しかし、すべての資産について、株式市場のように透明性の高い市場が存在するわけではないので、市場価格に頼っている限り、そうした資産については時価が算定できません。そこで脚光を浴びるのが、資産が生み出す将来キャッシュフローです。

 資産を買おうとする企業は、生産設備や販売設備などで活用することにより収益を上げる目的で資産を購入します。将来収益が高ければ資産価格は高くなりますし、低ければ安くなります。つまり、資産の価格はその資産が獲得できる将来キャッシュフローの現在価値(将来キャッシュフローは将来の不確実な事象に基づくキャッシュフローの予想ですから、割引率を用いて現在価値に割り引きます)により測ることができると考えるのです。将来キャッシュフローの獲得額に基づいて資産価格を測定するということになれば、売買市場がなくてもほとんどの資産について時価の測定が可能となります。実際にすべての資産を将来キャッシュフローから評価するわけではありませんが、IFRSでは基本的に、資産価格は将来の収益獲得能力から評価できると考えます。

 資産価格は過去にいくら支払ったかではなく、将来どれだけ稼げるかという視点から算定されるようになるというわけです。将来キャッシュフローの獲得額は企業によって異なりますから、資産価格は保有する企業の収益力によって変わる時代になったともいえます。無論、将来の収益は見積もりであり、恣意性の介入する余地があります。それでも、資産価格は過去の客観より将来の主観により決まっていいと考えるのです。ただ、それだけに企業側はその主観の根拠について、これまでの実績に基づいた説得力ある説明が必要とされます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】財務諸表の時間軸の変遷 その1

同じ物事でも視点をどこに置くかで見え方が変わります。たとえば、過去に功績をあげた老人は実績に焦点を当てれば偉大な人間として記録されますが、将来の可能性から見れば、活躍残余年数の短さが災いし、低い評価しか付けられません。逆に、今までの実績は見るべきものがない若者でも潜在能力の高さに注目すれば、高く評価できます。視点の機軸を過去にするか将来にするかで、映る姿は違ってきます。ただ、過去の実績は誰が見ても変わらないものですが、将来の見え方は人によって評価が変わる不確実なものとなります。こうしたことは財務諸表の見方にもいえます。

 これまでの会計は客観性や確実性に重点を置いていました。誰が財務諸表を作成しても同じ結果になること、あるいは結果について誰もが納得できる根拠があることが重要でした。
 資産の評価方法の主要な選択肢には取得原価と時価の二つがあります。時価は確かに現時点での価格を表示し有用ですが、価格の客観性という点で難点があります。それに対し、取得原価は実際にキャッシュで支払った金額であり客観性が高いため、以前の財務諸表は取得原価主義を全面的に採用していました。

 ところが、時代は変わります。上場企業では常時変動する株主に正確に利益を割り当てることが必要になります。資産保有期間中の株主にも正しく利益を分配するとすれば、期末時点の資産の時価を算定して、毎期の保有損益を正しく算定しなければなりません。2000年から開始された会計ビッグバンではこの思想が一部取り入れられました。ただ、すべての資産について時価を求めることは困難なので、誰もが納得できる客観性の高い時価が存在する上場株式を中心とする有価証券について時価評価を採用しました。
 これも大きな変革なのですが、時代は更に歯車を前に進めます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)